脳科学者・中野信子先生の子ども悩み相談 #03 ~人間関係トラブル「嫉妬・ねたみ」~

脳科学者でベストセラー著者としても知られる中野信子先生が、幼少期から思春期の子どもが抱きがちな悩みに対して、脳科学の見地からアドバイスを送ります。子どもたちの悩みやイヤな気持ちを上手に汲み取って、保育の現場でぜひ活用してください。
連載第3回目は、ケンカやいじめなど、人間関係トラブルの原因ともなり得る「嫉妬・ねたみ」について。生きていれば、誰でも他人を「うらやましい」と思うことはあります。特に、幼少期や思春期の淡い恋心が関係する「ねたみ」は、子どもにとってはじめて味わう感情かもしれず、とまどってしまうしょう。
ネガティブな気持ちとうまく折り合いをつけ、ポジティブなモチベーションにどう変えていけるのか——。子どもの頃に、そのプラス思考回路をつくっておくことは、とても大切なようです。
Q:子どもの悩み
好きな子が誰かと仲良くしていると、イライラします
中野信子先生からのアドバイス
好きな子が誰かとばかり仲良くしていると、それは気になりますよね。
「どうしてあの子とばかり仲がいいの?」。そんな気持ちが、「ねたみ」です。自分よりもいいものを持つ人に対して、「ねたましい」「できれば引きずり下ろしたい」と思うこと——。これは、脳の前頭前野にある「帯状皮質」という部分がその役割を担っています。
ねたみから、「シャーデンフロイデ」と呼ばれる、「誰かが失敗したときに湧き上がるよろこびの気持ち」に至ることもあります。個人差はありますが、これは男性のほうが強いとされるものです。
もうひとつ、自分にとって特別な誰かが別の人に取られるときに起こる気持ちがあります。それが、「嫉妬」です。
哺乳類が生まれたときから持っているもので、脳の「大脳辺縁系」にある「偏桃体」がその役割を担当しています。
哺乳類の例でいうと、豚の赤ちゃんは母親のお乳を吸うときに自分だけの乳首があって、いちど決まるとずっと変わらないそうです。そのときお乳がよく出る胸に近いほうの乳首を取るためには、兄弟に自分の乳首を奪われないようにしなければなりません。豚にはそんな競争相手をしりぞけたいと感じさせる仕組みがあり、人間にもまた、似たような仕組みがあるのです。
これからあなたが心地よい状態を目指すには、その誰かよりも、あなたのほうが魅力的になるしか解決方法はありません。しかも、自分が思う魅力だけではなく、「相手によって魅力的である」必要があります。でも、相手にとってどんなことが魅力的なのか、若い頃は考えるのが難しく、これからも思い違いや失敗をするかもしれません。
恋愛にまつわる落ち着かない気持ちは、イヤなものであると同時にどこか楽しい気持ちも混ざっていませんか?
こんな気持ちを持つのは、決しておかしいことではありません。マイナスな気もちも含めて、恋の状態をめいっぱい楽しんではいかがでしょうか?
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 協力/長野真弓
※この連載は、『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』(フレーベル館)をアレンジして掲載しています。
中野信子のこども脳科学「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!
著者名:中野信子
出版社:フレーベル館
2021年8月発売