【夜間保育園②】保育士が気をつけている点は? 東京都初の一般・夜間併設「キッズタウンうきま夜間保育園」

【夜間保育園②】保育士が気をつけている点は? 東京都初の一般・夜間併設「キッズタウンうきま夜間保育園」

夜はお友達と一緒に遊んだり、一人で工作をしたりする子も。

東京都北区にある「キッズタウンうきま夜間保育園」は、最長23時までの夜間保育を行っている保育園です。夜間保育を利用する子どもたちは、自宅と同様に遊んだり、ごはんを食べたりしながら保護者のお迎えを待っています。今回は、「一般的な保育園よりも開所時間が長い夜間保育園だからこそ、気をつけている点はあるのか?」について、「キッズタウンうきま夜間保育園」の園長 小林美樹さんと副主任の小泉美果さんに話を聞いてみました。(役職は2023年2月取材時)

夕飯、入浴など規則正しいリズム身につける

――夜間保育園だからこそ、気をつけていることはありますか。

いちばん気をつけているのは、夜型に偏らない生活のリズムを作りつつ、子どもたちの成長を促していくことです。「夜間保育園って夜に遊ぶの?」と言われることも多いのですが、決してそのようなことはなく、おうちで過ごしているのと同じように、ごはんを食べたり、ゆっくりくつろいだりして過ごしています。また、子どもたちは遊びながら発達していくので、昼間は活動する時間を多く作り、お友だちとたくさん関われるように心がけています。

お迎えが22時や23時になる子もいますが、その時間に家に帰ってからごはんを食べ、お風呂に入ると、寝る時間はどんどん遅くなってしまいます。だからこそ、夜間保育園では規則正しい生活をして、正しい生活リズムを身につけてもらおうと考えています。昼ごはんやおやつ、夕食を必ず決められた時間に食べられるように配慮しているのも、そうした思いからです。

また当園では、ご要望があれば入浴のサービスも行っています。とはいえ、お風呂は親子にとって貴重なコミュニケーションの場。その役割を奪わないように、週に何回かお手伝いをするような形です。なかには「お願いしたいけれど、言い出しにくい」という方もいらっしゃるので、「この曜日は園で入浴をお手伝いしましょう」など、ご家庭の背景を見ながらこちらから提案することもあります。子どもたちはきちんとした生活リズムの中で遊んだり、ごはんを食べたりすることが重要なため、そうやって保護者の方と相談しながら、夜型の生活にならないように気をつけていますね。

お祭りごっこをする子どもたち。お寿司屋さんになりきっています。

昼の保育とは気持ちを切り替えて接する「夜間保育」

――「キッズタウンうきま夜間保育園」では、家庭的な保育に力を入れられているとか。具体的にはどのような取り組みをしているのでしょう。

ハード面とソフト面の両方で、家庭的な環境を整えることを意識しています。ハード面の特徴は、ゴロゴロとのんびり過ごせるようなマットを敷いたり、テレビがあったり、好きなおもちゃがあったりするところでしょうか。ソフト面では、午前中のような教育的活動をあまり求めず、どちらかと言えばより養護的な視点をもって子どもたちの求めに応じるようにしています。そういう意味では、「昼間の保育とは気持ちを切り替えて接している」と言っていいかもしれません。

夜間保育園は少人数なので、側にいる友だちのことによく気づきながら関われる点も、家庭的な保育につながっていると感じます。たとえば、5歳の子が3歳の子に折り紙を教えていたり、0〜2歳の部屋から泣き声が聞こえると、そばに行って「大丈夫だよ」と優しく声をかけたりする姿を見かけることもしょっちゅう。みんな同じように育ってきたので、「自分もお世話をしなきゃ」という心が芽生えるようですね。こうした兄弟姉妹のような関わりができる点は、保護者の方にもすごく好評で、「やっぱり夜間保育園で良かった」と言ってくださる方も多くいます。少人数だと職員も一人ひとりの子に目が行き届くので、いつもと様子が違うときにもすぐ気づけるし、本人にじっくり話を聞くこともできます。また、夜間保育中に気になったことがあれば、昼間の先生にも伝えて、職員全員で注意するようにしています。

――夜間保育園を運営されるうえで、大変だったことはありますか。

スタッフがいないと運営できないので、職員の確保には苦労しています。23時まで開所していると、最遅が午後の14時15分から23時15分のシフトになるのですが、普通の保育士であれば、昼過ぎに出勤することなどありません。そのため、当園での勤務を希望してくれる職員を見つけるのは、なかなか大変です。

ただ、保育士にもいろいろなタイプがいて、朝が苦手な人もいれば、少人数かつ家庭的な保育園で働くのが向いている人もいます。そうした職員にとって、当園は非常に働きやすいようですね。新しい人材を確保するのは難しいですが、一方で長く勤めてくださる方も多いので、その点はありがたく感じています。

夜間園に戻ってから、夕方散歩に出かける子どもたち。

――夜間保育園について、保護者からの反応はいかがですか。

毎年、卒園する頃には「夜間保育園があったから、働きながら子育てができたし頑張れた。子どもも頑張ってくれた」と声をかけていただくことが多いです。そうした言葉は、私たちのいちばんの喜びであり、励みにもなっています。

一般的な保育園だと、保護者の方とじっくりお話する機会がなかなかもてないこともありますが、夜間保育園の場合は、帰りの時間に保護者の方の悩みを聞くこともできます。そして、そうした機会を持つことは、保護者の方の安心にもつながっているのではと感じています。逆に、こちらから子どもたちの園での様子や、エピソードをお伝えすることもあるので、しっかりとコミュニケーションをとりながら、より信頼関係を深めていけたらいいですね。

――保育士さんに向けてメッセージをお願いします。

夜間保育園の認知度は低いので、もっと多くの方に知っていただきたいです。「夜間保育園」という名前を聞くと、「子どもたちが夜遊んでいるの?」とびっくりされることも多いのですが、実際はそうではなく、適切な保育環境のもとで、子どもたちの発達を促す保育を展開しています。保育士さんや保護者の方を含めて、一人でも多くの方が夜間保育園に興味を持ってくださったら嬉しいですね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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