【体験②】四季を感じる「縁側給食」で食育体験|中里どろんこ保育園

【体験②】四季を感じる「縁側給食」で食育体験|中里どろんこ保育園

縁側の好きな場所で、思い思いに食事をとる子どもたち。

東京都清瀬市にある「中里どろんこ保育園」では、「裸足保育」のほかに、子どもたちが縁側で給食を食べる「縁側給食」も取り入れています。また、食育の一環として園内で野菜を育てたり、ニワトリやヤギなどの動物を飼育したりといった取り組みにも力を入れています。インタビューの後編では、「中里どろんこ保育園」の施設長である小川 愛さんに、縁側給食や食育の取り組みについて話を聞いてみました。

季節を感じながら食を楽しむ「縁側給食」

――縁側給食とは、具体的にどんな取り組みなのでしょう。

縁側に机と椅子を並べ、そこで毎日の昼食とおやつを食べる取り組みです。座る席は決まっていないので、子どもたちはどの席で食べるか、誰と食べたいかなどを自分で決めたうえで食事を楽しんでいます。

「寒い時期や暑い時期も縁側で食べるの?」と驚かれることもありますが、縁側で給食を食べるかどうかは、すべて子どもに任せています。その日が寒かったとしても、私たちは「今日は寒いから縁側に出なくていいよ」とは言わず、「外に行くと寒いけどどうしようか?」と問いかけるだけ。そこで「じゃあ上着を着る」などの言葉が返ってきたら、「上着を着てでも外で食べたい」という子どもたちの気持ちを尊重するようにしています。自分で考えて行動する力を育むためにも、大人が子どもの選択肢をせばめないようにしたいんです。

――縁側で給食を食べることのメリットは何だとお考えですか。

四季を感じられることだと思います。ごはんを食べながら景色を見ていると、季節によって自然の様子が変化するんだなということがよくわかります。ちょっと空気が冷たくなってくれば、そろそろ冬が来るのかなと感じますし、暖かくなってきたら、明日から上着を着ないでごはんを食べられるかなと思ったりします。そうやって、食事と共に四季を感じ取れるのは、子どもたちにとって良い刺激になっているのではないでしょうか。

給食はバイキング形式。自分で盛り付けをします。

また、縁側給食を通じて、生活の知恵を身につけられることも、メリットの1つだと感じています。縁側はスペースに限りがあるので、みんなで広々とテーブルを使うのが難しいことが多いです。でも、子どもたちは「机をこの向きにしてみよう」「お皿の置き方を変えてみよう」と試行錯誤しながら、少しでも快適に過ごせるように工夫し始めるのです。1年を通して見ていると、考え方やトラブルの回避の仕方が変化する様子もわかるので、日々成長していることが実感できます。

――食育の一環として、野菜を育てたりみそを作ったりもしていると伺っています。そうした取り組みで重視していることを教えてください。

子どもの意見を柔軟に取り入れることは、常に意識しています。当園では毎年決まった行事を行うのではなく、スタッフ全員がどんな行事をしたいかプレゼンをしたうえで来年の行事を決めているのですが、そうした際も大人が計画しすぎないように気をつけています。

たとえば、園庭にある柿や栗、梅の実をどうやって食べるか。これについては、大人が決めるのではなく、子どもたちの意見を聞くようにしています。昨年度は「梅の実を梅ゼリーにしたい」という意見があったので作ってみました。中には想像した味わいと違った子もいたようですが、自分たちで決めたことなので、子どもたちは納得してゼリーを味わっていました。

園で栽培した大根を調理する場合も、大人だとたくあんや豚汁などにしがちですよね。でも、子どもにもそれぞれの意見があると思うので、どう使っていくかはアイデアや意見を出してもらってから決めたいと思っています。子どもたちは、家庭で体験したことをアイディアとして出してくれることも多いので、そうやって家庭と保育園がつながっていくのは、とてもうれしいですね。

園庭で育てた大根を収穫する子どもたち。

体験は子どもたちの「やりたい気持ち」を刺激する

――食育においてもさまざまな体験プログラムを実施されているとのことですが、子どもたちの様子はいかがですか。印象的なエピソードなどがあればお聞かせください。

昨年度、初めてみそ煮込みうどんに挑戦したことが、強く印象に残っています。体験では、うどん踏みを0歳児と1歳児が行い、2歳児から4歳児は野菜を洗ったり皮をむいたりする作業を担当。5歳児は野菜やうどんのカットを担当しました。

うどん作り自体はそれほど難しいものではありませんが、うどんを同じ太さにそろえて切るのは、なかなか大変な作業。実際にやってみたら、2センチくらいの太いうどんになってしまいました。でも、「これだとちょっと食べるときに太いかも」「普段スーパーに売っているうどんってどのくらいの太さだっけ?」などと話しているうちに、すごくきれいに切れるようになったのには驚きましたね。少し言葉をかけただけで、子どもたちはみるみる上達していくんです。やはり「やりたい!」という気持ちは、成長につながる大事な要素なんだなと実感しました。

――食育に関して、今後の展望を教えてください。

園で飼育しているニワトリをさばいて、食べる取り組みを行いたいと考えています。当園では生死教育についても力を入れているので、食材はどうやって作られるのか、命をいただくとはどういうことかについて、幼いうちに学んで欲しいんです。

園で飼育しているニワトリ。えさやりや小屋の掃除も子どもたちが行っています。

もちろん、ニワトリをさばいて食べることは、誰もが経験することではありません。でも知っているのと知らないのでは、今後の人生において差が出ると思うんです。見たくない子を無理に参加させることはありませんが、見たいと感じている子の選択肢はどんどん広げていきたいですね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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