保育学生にとっての最難関! 「保育実習」を乗り越えるために現場で使えるテクニック|③保育系ユーチューバー・mocaちゃん

保育学生にとっての最難関! 「保育実習」を乗り越えるために現場で使えるテクニック|③保育系ユーチューバー・mocaちゃん

しっかりと事前準備をしたつもりなのに、実際の現場は想定と違ってとまどった——。保育士として活躍するみなさんのなかには、そうした経験のある方が少なくないでしょう。もちろん保育学生も、保育実習などで「想定と違う!」という場面に出くわすことがあるはずです。そこで今回は、保育系ユーチューバーとして大人気の「mocaちゃん」に、保育実習を乗り越えるためのテクニックや、振る舞い方について教えてもらいました。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕

まずは、「保育実習ではどんなことをするのか?」をおさらい

保育士を目指すみなさんならご存じだとは思いますが、まずは「保育実習ではどんなことが行われるのか?」について簡単におさらいしましょう。保育実習は「観察実習」「部分実習」「責任実習」の3つに分かれており、それぞれ2週間ほどの期間で実施されます。

観察実習は、その名の通り保育園の1日の流れを観察して把握する実習です。観察実習では先生や子どもたちが、どの時間帯にどんな行動しているのかを観察することからスタートし、「今日は絵本の読み聞かせをやってみようか」「今日は子どもたちと一緒に遊んでみて」と、少しずつ活動に参加する場面が増えていきます。

ちなみに、観察実習の段階から最後の責任実習までは、日々の日誌も付けます。先生や子どもたちの行動、自分が感じたことなどを時間ごとにすべて書き込んでいくのです。

部分実習は、30分あるいは1時間などの限られた時間を使い、担任という立場で子どもたちと活動する実習です。最後の責任実習も、部分実習と同じく担任の先生として活動する実習ですが、その時間は半日や1日になります。現場には実習を受け入れている園の先生もいっしゃいますが、基本的には実習生と子どもたちを見守りながらサポートしてくれるだけです。

部分実習と責任実習については担任として活動しますから、指導案を作成する必要があります。もちろん、事前に本来の担任のチェックを受けなければなりませんし、修正指示が入ったときは書き直さなければいけません。そのため、保育実習の期間中はほとんどの学生が寝不足になってしまいます(苦笑)。

実習中はメモをとることすら簡単ではない

続いては、私自身が実習の現場で「これは役に立つ」と感じたテクニックをお伝えしましょう。それは、次の4つです。

1つめのテクニックは、「1日の流れを調べてメモのフォーマットを作っておく」というものです。先に紹介した通り、実習の間は1日が終わると日誌を付けなければなりません。ですから、実習中は「いつ何が起きたか」について、メモを残しておく必要があります。とはいえ、慣れない場所で慣れないことをしながら、メモまでとるのは想像以上に大変です。

そこで、私は1日8時間のタイムラインと「何があったか・何をやったか」の記入欄をフォーマット化したシートを作り、そこに起きたことを書き込むだけの状態にしていました。その際、「ゆうき君が軟便」だったら「ゆな」といった具合に、自分だけの記号を作っておくと、素早く書き込めて便利ですよ。

1日の流れについては、実習を行う園への事前訪問の際に教えてもらってもいいですし、保育雑誌やネット検索などで調べてもいいでしょう。

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2つめは、「まったく知らないダンスでも何とか踊る」です。朝の時間や外遊びのときにダンスをする園も少なくありませんが、場合によっては実習生がまったく知らないダンスをすることもあります。でも、だからといって何もしないでいると「やる気がないのかな」と思われかねません。そんなときは見よう見まねでいいので、とにかく元気に踊ってみましょう。

なお、こうした考え方はダンスに限ったではありません。実習の現場では、「自分が知らないことでも積極的に挑戦する」という姿勢がとても大事なので、ぜひ覚えておいてください。

時間がかかる指導案作成を効率的に進めるには?

続いてのテクニックは、「指導案は3パターンくらい考えておいて細部を詰める」です。部分実習と責任実習の際は、自分で指導案を作成しなければなりません。そして、せっかく作った指導案に、現場の先生からダメ出しされることも多々あります。

その際、時間をかけて細部まで詰めておくと、精神的なダメージが大きいですよね。また、次の案を一から考えることになるため、時間と気持ちの切り替えも必要になります。

そうならないためにも、まずは大まかに3パターンほどの案を考えて先生に相談し、「このパターンでいこう」という承認を取り付けてから細部を詰めるのがおすすめです。実習中はとにかく時間が足りません。なるべく時間を節約し、効率よく物事を進めることを心がけましょう。

現役保育士さんや、指導者の方々が実習生のどこを見ているかを、詳しく解説。実習で焦らないためにもチェックしておきたいですね。

さて、最後のテクニックは、「先生によって指示が違うこともあると心得ておく」というものです。園にもよりますが、先生によって指示が違うのは、保育実習でよくある話です。例えば、子ども同士がけんかになったときに、「すぐに止めないで状況を把握してからにしてね」という先生もいれば、「けがをさせないようにすぐに止めて」という先生もいます。

そんなとき、実習生としては「どっちを信じればいいの?」と困惑してしまいますよね。かといって、「○○先生はこういっていましたけど」などと主張すると、自分がきっかけで先生同士の関係をこじらせてしまうかもしれません。

だからこそ、「先生によって指示が違うこともある」と心得ておく必要があるのです。そうすれば、実際に前述のようなことが起こってもとまどわなくなりますし、「この先生のときはこうしよう」とうまく立ちまわれるようになるはずです。

「ちょっとずる賢い」と思われそうなテクニックもお伝えしましたが、厳しい保育実習を乗り越えるためには大事なことです。晴れて保育士になれたなら、子どもたちにとって安心できる存在になれるように、そして勤務先の園が「第2のおうち」だと思ってもらえるようにがんばってください!

1996年生まれ、千葉県出身。自身のチャンネルでは、保育の現場ですぐに実践できる手遊びやシアター製作、演じ方などを配信しており、そのクオリティーの高さから現役保育士、保育学生の絶大な支持を得ている。また、身近なもので簡単にできるシアター製作やおもちゃ製作の動画も人気。著書に『保育士さんの現場・日常で「困った!」に役立つ mocaちゃんの保育のコツ大全』(KADOKAWA)、『保育で使える mocaちゃんのあそびアイデアBOOK』(日本文芸社)がある。
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