【後編】子ども、家族、地域の未来について語る保育園留学サミットが開催

株式会社キッチハイクが展開する「保育園留学」を軸に、行政、認定こども園、支援企業が連携して新しい子育ての可能性を創造する「保育園留学コンソーシアム」は、台東区東上野で「保育園留学サミット」を開催しました。同イベントでは、3つのテーマでトークセッションを実施。セッション1「保育園留学が変える、地域の未来」では、保育園留学のはじまり、事業を持続可能にするための工夫、地域における変化について議論を交わしました。
後編では、トークセッション2「地域内外の交流が拓く、こどもの未来」、トークセッション3「地域資源活用による魅力的な地域づくりと、まちづくりの未来」のリポートをお届けします。
\前編はこちら/
【前編】子ども、家族、地域の未来について語る保育園留学サミットが開催
セッション2 地域内外の交流が開く、こどもの未来
\登壇した方/
【パネリスト】
内田伸子さん PU・環太平洋大学教授、お茶の水女子大名誉教授心理学者
福岡英人さん 天草市認定こども園もぐし海のこども園
尾田洋平さん 留学ご家族 (留学先:熊本県天草市崎津)、地域・教育魅力化プラットフォーム専務理事「地域みらい留学」事業責任者
宮外真理子さん 留学ご家族 (留学先:北海道厚沢部町・岐阜県美濃市) 、有限会社フォント代表取締役大阪公立大学都市行政研究科
【モデレーター】
川上真生子さん 株式会社キッチハイク取締役CRRO
こちらのセッションでは、保育園留学における受入園の当事者と留学したご家族の体験談に、発達心理学の専門家である内田さんの知見を交えながら、子どもたちやそれを取り巻く大人たちの変化について議論が行われました。内田さんは、「おかあさんといっしょ」の番組開発・コメンテーター、こどもチャレンジの監修もされています。

モデレーターの川上さんが4人のパネリストの紹介を行った後、それぞれが保育園留学との関わりについて語りました。
宮外:2022年に岐阜県美濃市で、はじめて保育園留学を体験しました。初日の登園時には、子どもの反応が心配でしたが、先生方がまるで、普段から通っているかのような笑顔で迎え入れてくれたのでひと安心。あまりにも自然な流れだったので、よい意味で驚きましたね。おかげで、子どもたちも保育園留学が気に入ってくれて、今年もう一度、美濃市に滞在させていただきました。その後、厚沢部町の「はぜる」にも留学したのですが、先生方から毎日、子どもの写真が送られてくるのが印象的でしたね。先生方は写真を撮るのがとても上手で、親の私でも撮ったことがないような笑顔の写真もありました。
尾田:「地域みらい留学」という、保育園留学の高校生版のような事業を行っている会社を経営しています。そのため、保育園留学にはとても興味があり、サービス受益者として一度留学を経験してみたいという思いがありました。普段は1か月のうち3週間くらいは出張をしていて、息子と一緒に寝たのが数える程度しかなかったので、「夜泣きをしたらどうしよう」という不安があったのですが、私の心配をよそに本人はとても楽しそうでしたね。

福岡:天草市で認定こども園「もぐし海のこども園」の園長を務めています。天草市では現在、4園が保育園留学を実施していて、当園は尾田さんが滞在された園から車で30分くらいの場所にあります。島にある園なので閉鎖的な環境だったのですが、保育園留学をきっかけに、留学生やそのご家族との新しいつながりができ、とてもうれしく感じています。
内田:長年に渡って、発達心理学の研究をしています。先ほどセッション1の話を聞いて、子どもたちの感受性に大変感動しました。保育園留学は、知能テストでは測れない社会性や自制心、挑戦力といったまさに「非認知能力」を育んでいると感じます。
ここでモデレーターの川上さんは、保育園留学に参加したきっかけ、開始したきっかけについて質問。宮外さん、尾田さん、福岡さんは次のように回答しました。
宮外:夫婦そろって旅行が好きで、よく観光地に滞在するのですが、子どもたちは歴史的な建造物などに興味がなく、公園で遊ぶほうが楽しそうです。でも、保育園留学なら、子どもは思う存分遊べるし、大人も仕事をしつつ子連れだと行きにくい場所を観光したり、ゆっくりコーヒーを飲んだりできる。全員にとって満足度が高いですよね。
尾田:普段は島根県の都市部に住んでいて、コンビニやイオンモールに行ったり、YouTubeやネット動画を見て過ごしたりという生活が当たり前になっています。なので、「家族みんなで自然と触れ合う経験がしてみたい」と思ったのが参加のきっかけです。息子はお母さん子だったのですが、留学中に何もできない父親と過ごしたことで、自立心が芽生えたようです(笑)。
福岡:天草市から話をいただいたのが、保育園留学に携わったきっかけです。これまでにも一時預かり保育を行っていたので、その延長でやってみようということではじめ ました。2022年度は8組を受け入れたのですが、今年度からはさらに保育園留学に注力しようと考えています。きっかけや過程は子どもによって違いますが、ほぼすべての留学生が最終日を迎えるまでに慣れてくれますね。受け入れる側の子どもは、一時預かり保育で園児の出入りには慣れているので、留学生の受け入れに対する不安や抵抗感はあまりないと思います。
3人の回答を聞いて、内田さんはこう反応しました。
内田:受け入れる園は、日頃から子ども中心の保育を実践されているのですね。受け入れの準備もしっかりなさっているので、お子さんたちは抵抗なくそこに溶け込めるのだと思います。ただ、人間関係に敏感なお子さんもいるので、その点では準備が必要かもしれません。
「受け入れる側として、どのような準備をしているのか」という川上さんの質問に対して、福岡さんは次のように答えます。
福岡:保育園留学を開始するにあたって、まずは「それがどういったものであるか」を園内で共有しました。受け入れの準備に関しては、キッチハイクさんが間に入ってくださったので、スムーズにできたと思います。ただ、はじめた頃は課題もあったので、その都度改善していきました。子どもの安全面に関しては、留学前にご家族と行うオンラインの打ち合わせで既往歴、アレルギー、精神面などの話をうかがい、職員全員でシェアしています。
また、川上さんから「留学後の子どもたちの変化」について聞かれた宮外さんと尾田さんは、こう回答しました 。
宮外:日本の地理に強くなりましたね。北海道や岐阜県の場所はもちろん、それぞれの土地の特徴なども自分なりに把握しているようです。親よりもその地域のことを知っているのは、保育園留学で過ごした時間が楽しく、本人が興味を持ったからだと思います。
尾田:子どもは小さいながらも、ホームとアウェーという感覚があるとことを知りました。留学先で楽しく過ごして、元の保育園に帰って来た瞬間、アウェー感があったのか硬直してしまったんです。泣きながら「行きたくない」と言ったので、しばらくは園長先生と2人きりでゆっくり過ごしたようです。それで、ようやく安心でき、何とか友だちの輪に溶け込めたのだとか。アウェー体験が終わり、ホームを感じられるようになったのでしょうね。ただ、また天草市に行きたいと言っているので、小さいなりに第二のふるさとのような感覚が生まれたのだと感じました。
そして、宮外さん、尾田さんの話を聞いた内田さんは、以下のように評しました。
内田:子どもの安全基地は親からはじまり、保育園の先生に続き、少しずつ範囲を広げていきます。また、5歳くらいになるとメタ認知が現れるようになり、自分と他者、家と園と環境の違いを比べて話をできるようになります。ですから、認知が発達してくる頃に保育園留学を体験することは、子どもの世界を広げることにつながるのではないでしょうか 。
セッション1に引き続き、セッション2でもQ&Aのコーナーが実施されました。

Q:保育園の行事があるときに留学生を受け入れることはありますか? また、そうすることで子どもや先生への影響はありますか?
福岡:受け入れることはあります。でも、影響はないですね。行事と重なるときに留学を希望されるご家族には、そのことを説明した上で、判断してもらっています。当園では、日々の生活や遊びの積み重ねを大切にしているので、行事でそれが止まることがないように、極力練習をしません。それも影響を受けない理由の1つではないでしょうか。
内田:行事のために練習を積んでいるということを想定した質問だと思いますが、2017年の幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改定によって、これらの教育基準が統一化され、子ども中心の保育を実践することが定められました。ですから、「行事のために練習をしない」という保育園も一定数あるんです。
なごやかな雰囲気に包まれたセッション2も終盤を迎え、パネリストはそれぞれの立場から保育園留学についてのまとめを行いました。
宮外:保育園留学では、子どもは新しい友だちを作れるし、大人はその地域の人と仲 よくなれる。だから、「また来年も来てください」と言われると行ってしまうんですよね。人と会うことが動機づけになるので、子どもも大人も継続的にその地域に関わっていける仕組みだと思います。
尾田:息子と「いっぱい遊ぶ」「いっぱい食べる」「早く寝る」の3つを約束して参加しました。息子はその3つをきちんと守って、毎朝、昨日の振り返りをし、今日の目標を立てるということ自発的に行っていましたね。島根に戻ったら、その3つが当たり前になったので、「変わるきっかけになったんだな」と実感しています。
福岡:デジタル化が進む現在は、リアルな体験が子どもにとって非常に重要です。親という安全基地から飛び出て冒険をし、緊張とストレスを自力で乗り超える。そして、戻って来て、体験したことを親に話す。そんな体験ができる保育園留学は、家族のあり方を考えるきっかけになると思います。
内田:ダーウィンの進化論には「強いものが生き残るのではない。環境に合わせて自分を変えることができたものだけが生き残れる」という言葉がありますが、保育園留学を知ったことで、そうではないと感じました。それと同時に、私たち大人は子どもの未来を想像しながら環境を変えることができるんだ、という実感を得られました。
セッション3 地域資源活用による魅力的な地域づくりと、まちづくりの未来
\登壇した方/
【パネリスト】
山崎亮さん studio-L代表、関西学院大学建築学部教授
松場奈緒子さん NPO法人石見銀山いくじの会理事
大谷一夫さん 岐阜県美濃市会計年度任用職員
【モデレーター】
西経子さん 内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣審議官
このセッションでは、保育園留学がどのように既存の地域資源を生かし、まちづくりに影響を与えているか、保育園、自治体の運営に携わる当事者、コミュニティデザインの専門家が語り合いました。

セッション3もパネリストの自己紹介からはじまりました。
山崎:建築家として公共施設をつくる際、「地域の方々の意見をデザインに反映させて設計をする」という手法を取っていました。そして、そうしたやり方を続けていたら、意見を出していた地域の人同士が仲よくなり、地域における公共的な課題に一緒に取り組む 姿を目にすることが多くなった。それに気づいてからは、「自分が関わっているのは、建物の設計だけではないかもしれない」と思うようになりましたね。そんなときに、デザインのワークショップを福祉活動に活用できないかという話をいただき、以来20年間、コミュニティデザインに携わっています。
松場:私は、石見銀山のある島根県太田市大森町で生まれました。東京で働き、結婚・出産も経験しましたが、東日本大震災を機に働き方と子育て方法を考え直そうと思い、2012年に島根に帰ってきました。でも、子育てが思うようにいかず、「できないお母さんでごめんね」と謝ってばかりの毎日でしたね。そんなある日、当時3歳だった第1子が「僕だって人の役に立ちたいんだ」とお祭りの手伝いを申し出たのですが、そのことにすごく衝撃を受けたんです。そして、人間が生きる上で必要な力強さを子どもから感じ、「私も変わろう!」と思いました。その後、近所の子どもを預かる機会があったりしたのですが、やっぱりうまく面倒を見ることができなかった。それで、第3子がおなかにいるときに保育士の免許を取得。以降、保育園の運営に関わっています。

大谷:大学院で「いい世界をつくるため、小さなコミュニティをつくる」といった内容の研究をしていたこともあり、以前から地域コミュニティには興味がありました。2020年に新型コロナウイルスの影響で子どもを保育園に預けることができなくなり、一時的に横浜から妻の実家のある美濃市に移ったのですが、そこで町づくりを頑張っている人たちに出会い、2021年に美濃市に移住しました。最初は企業の立ち上げや、地域での新たな事業づくりの手伝いをしていましたが、少しずつ「行政の中に入って活動したい」と思うようになり、今は美濃市の非常勤職員として働きながら、保育園留学の事業に携わっています。
自己紹介の後は、美濃市や太田市の保育園留学の特徴、体験した人の声、課題などに話題が移りました。
大谷:美濃保育園では川に行ったり、土いじりをしたり、たまに園にやってくるフクロウを観察したりと、自然あふれる環境を生かした保育を行っています。宿泊施設に関しては、フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜美濃を利用していただいていますが、その様子を見ていて感じるのは「大人が求めているものと、子どもが求めているものは違うんだな」ということです。まさに宮外さんが言っていたように、大人は付加価値のある宿泊施設を求めがちですが、子どもは日常を求めています。例えば、古民家を利用したホテルだと、子どもが段差を怖がったりすることがあるんです。行政の立場としては、保育園留学専用の中長期滞在施設をつくりたいところですが、予算の関係で費用をすべて捻出するのが難しかった。そんな折、民間の方がご好意で一棟貸しの宿をつくってくださいました。そのように美濃市では、さまざまな方の力を借り、試行錯誤しながら活動を行っています。
松場:2023年4月に、園舎を武家屋敷のある敷地内に移転。それによってスペースが 確保できたため、一時預かり保育事業をスタートさせ、保育園留学にも参加できるようになりました。観光名所という土地柄、外から来る人に関してはオープンな住民が多いので、保育園留学で来られるご家族は、とても過ごしやすいと思います。私たちの保育園は、地域の暮らしや四季を感じられるのが特徴です。5月には泥んこ遊びを行った田んぼで田植えをし、先日はそこで稲刈りをしました。そして、武家屋敷内にあるかまどでお米 も炊きました。煙突がないかまどなので、煙で目が痛くなることもありますが、それも保育の一環です。五感を刺激することで五感を養う。そんな保育を大切にしていきたいですね。
大谷さんと松場さんの話を聞いた山崎さんは、次のような疑問を投げかけました。
山崎:大谷さんは段差のある古民家ホテルが、子どもに好まれないとおっしゃっていました。一方で、松場さんは煙で目が痛くなることで五感が養えるとおっしゃいます。結局、子どもにとっては日常と非日常のどちらがいいのか、それを知りたいです。
大谷:それについては、バランスがすごく難しいと思っています。非日常を求めるご家族もいれば、日常を大切にしたいというご家族もあり、振れ幅が大きいんです。美濃市の場合、市内には外食チェーン店がありませんが、車で少し走れば馴染みのある店もあります。そこで少し日常に戻ることもできるので、どちらの方からも「美濃市に来てよかった」という声を聞く機会は多いですね。
松場:まさにバランスが大切だと思います。段差が好まれないと言いつつ、段差のある古民家で暮らしたら、1週間後に子どもの身体能力が上がっているかもしれません。また、留学家族同士の交流があったりと、オプション化されていない「出会い」があるのもこの事業の魅力だと思います。
山崎:大谷さんの美濃市と松場さんの大森町とでは、課題が違うようにも感じます。「マクドナルドがない」「もっと便利にしてほしい」といった、都市部の日常を求めるクレームはないのですか?
松場:今のところないですね。保育園留学のホームページで丁寧に説明されているので、マッチングがうまくいっているのだと思います。留学に来られた方に何を楽しみに来たのかと聞くと、江戸末期の建物を改修した一棟貸しの宿泊施設を挙げる方もいます。
その後、「保育園留学が行っているように、外から来た人との間に生まれた交流でコミュニティが元気になることはあるのか」と西さんが質問し、山崎さんは「あると思います」と答えました。
山崎:私たちデザイナーは、デザインを通じて「何かしら新しいものがいいものである」と消費者を教育し続けてきたんですよね。だから、消費者には「新しいものが出るたびにローンを組み、購入することが本当の幸せなのか」などと考えてもらっては困る。なるべく考えさせないように、「ラグジュアリーかつ魅力的」にデザインするんです。でも、この力が強すぎたせいで、対抗するための教育に力を入れようとする動きが少しずつ減って しまいました。本来なら、「古民家の段差がいかに子どもの身体能力を上げることにつながるか」「目が痛くなるお米の炊き方がいかにいいか」ということをラグジュアリーにデザインしなければいけなかったんですよね。もちろん、新しい商品の消費を促すのは、東京に限った動きではありません。メディアの情報は大森町にも美濃市にも届きます。だから、「外から来た人が地域を刺激し、相互作用によって地方創生になる」と言われても、地域の中に対抗教育に取り組む人がいないと、気づくべきことのシャワーを浴びられないんです。やるべきだったけどやらなかった対抗的な教育を、誰が担うのか。これはとても大事なことかもしれません。繰り返しになりますが、保育園留学の保育園で行っている取り組みを、魅力的に見せるような教育をする人がどこもいなかったんです。でも、今は少しずつバランスが取れる状態になってきている気がしますね。
山崎さんの発言を踏まえた上で、今後の展開について大谷さんと松場さんが発言しました。
大谷:外から人が来てくれることで、美濃市の足りない部分が見え、美濃市をほめられることでシビックプライドが高まってきたと感じます。そして、地域の成長力や競争力についての意識も高まっていると思います。でも、まだまだ足りないものがある。大きなキャパシティを持った公的な滞在施設が必要ですし、滞在施設から保育園まで通園する際の 負担を減らすような移動手段、例えば電動自転車なども必要かもしれません。ゆくゆくは、厚沢部町のような体験イベントも取り入れていきたいですね。今回のサミットは、「もっとやるべきことがある」と実感するよい機会になりました。実は、「保育園留学は親のエゴ」という声を聞くこともあるのですが、親が幸せになると子どもにもしっかり向き合えるので、この取り組みはエゴでいいと思っています。
松場:乳幼児期は人間の基礎をつくる時期です。そのときに人を信じる力を養うことがすごく大切だということを、保育園留学を通じて再認識しました。園児を連れて町を散歩する際、すれ違う町の人たちとあいさつをしますが、留学生からはよく「さっきの人、知り合い?」と質問があります。大森町では知らない人同士でもあいさつをするのが普通ですが、留学生たちの普段の生活では、それがないんですよね。散歩先の神社に「ちょっと使わせてください」と言って、かけっこをはじめるような経験もはじめてでしょう。そういう姿を見ていると、日本人は見えない何かに感謝したり、見えないものを信じたりする力が弱くなっているのかもしれないと感じます。だからこそ、人格形成時に信じる力を養えることは、とても大切なことだと思いました。

今回のセッションでもQ&Aのコーナーが設けられ、松場さんとセッション1で登壇した橋端さんが質問に答えました。
Q:保育園留学を実施することで、現場の負担や反発はないのでしょうか。
松場:留学生のケアは必要ですが、保育園留学をはじめてからは、先生方の町への愛着や保育園に対する誇りが高まったように感じます。その町に住んでいる子どもにしか保育を提供できなかったのが、ほかの地域の子どもにも提供できるようになった。そこに魅力を感じているように見えます 。
活発な議論が行われたセッション3も、パネリストの感想で締めくくられました。
山崎:楽しかったし、松場さんの話を聞いて人を信じようと思いました。
松葉:保育園留学を通じて、信頼されるような人間になれるという希望を抱けたので、成長を見せられるように頑張りたいと思います。
大谷:保育園留学はソ リューションではなく生き物。行政や地域がそれぞれのリソースを使って、ブラッシュアップをしていく必要があると思っています。
総評/クロージング

保育園留学サミットの最後には再び山本さんが登壇し、あいさつを行いました。
山本:みなさんはブリコラージュという言葉をご存じでしょうか。これは既存のものを組み合わせて新しい価値を生み出すという概念です。私は大学生のときからこの概念に興味があり、ブリコラージュな価値づくりについてずっと考えてきました。そして、今までにあったものを組み合わせて、新しい価値を生み出した保育園留学は、まさにブリコラージュです。新しい建物や制度をつくって、古いものを抜本的にひっくり返すのではなく、過去や歴史を大切にしながら、地域と向き合って、組み合わせていく。今後もそうした活動から、新しい価値を生み出せていけたらと思います。
山本さんのあいさつ後、会場は大きな拍手で包まれました。3つのセッションすべてで活発な議論が交わされ、会場にいた参加者も有意義な時間を過ごせた様子でした。
◆ 保育園留学:https://hoikuen-ryugaku.com/
◆ 保育園留学コンソーシアム :https://hoikuen-ryugaku.com/consortium
◆ 株式会社キッチハイク: https://kitchhike.jp/
取材・文/増田 洋子 写真/木村 周平 編集/イージーゴー


