シンプルなデザインで育児をより楽しく。知育雑貨ブランド「フォルネ」の目指すものとは?

シンプルなデザインで育児をより楽しく。知育雑貨ブランド「フォルネ」の目指すものとは?

みなさんは「フォルネ」という知育雑貨ブランドをご存じですか?
キャラクターが描かれたおもちゃや色鮮やかな知育グッズが溢れるなか、落ち着いた色味とシンプルなデザインで注目を集めているのが「フォルネ」です。「フォルネ」は、シンプルカラーであるがゆえに、どんな空間にもなじみやすく、ナチュラルなインテリアとの相性もぴったり。子どもの目にもとまりやすいように、視認性にこだわっている点も大きな特徴です。
今回は、デザイナー伊場麻世さんに、「フォルネ」を立ち上げた経緯や、商品に込めた思いをうかがいました。

\お話をうかがった方/
伊場麻世さん 知育雑貨「フォルネ」デザイナー

デザイン制作会社勤務を経て、フォルネのブランドディレクターとして活動している伊場麻世さんは、現在、3児の母。「子どもも本物の素材に触れてほしい」「五感を使ったあらゆる体験を」といった母親の視点でものづくりを行っています。

子どもと一緒に使えて、インテリアにもなじむ知育雑貨が作りたかった

——知育雑貨「フォルネ」について、簡単にご紹介ください。

伊場:「つくる あそぶ しる を くらしのなかに」をコンセプトに、2019年に設立した子ども向けブランドです。愛媛県伊予郡砥部町を拠点に、オリジナルの知育玩具や工作キット、雑貨などを製作しています。

——ブランドを立ち上げた経緯とは、どのようなものだったのでしょうか。

伊場:2018年に、仕事でフィンランドを訪れたことがきっかけでした。フィンランドではアーティストやデザイナーの話を聞いたり、さまざまな作品に触れたりしたのですが、どれを見ても「作り手が表現することを楽しんでいる」と思えるものばかり。それで、「私は自分の作りたいものを作れているのだろうか」と感じ、同時に「自分の好きなものを作りたい」と思うようになったんです。それで、その話を知り合いの印刷会社(株式会社明朗社)の社長にしたところ「一緒に何か作りましょう」と提案され、フォルネを立ち上げることになりました。

はじめはインテリア雑貨を作ろうとしたのですが、自分のなかで少し違和感があり、なかなか前に進めませんでした。そんななか、視点を変えて自分が本当に作りたいもの、自分にしかできないことを考えてみたら、「子どもたちのために作りたい商品なら山ほどあるな」と気づき、いまのフォルネにたどり着いた感じです。たとえば、私は当時小学1年生と幼稚園の子どものために「あいうえおポスター」を自作したりしていました。

また、普段インスタグラムで目にする投稿は、自分と同じように子どもがいる状況でも、好きな空間で暮らしたいと考える方が多く、「子どもと一緒に使えて、インテリアにもなじむ知育雑貨があれば喜んでもらえるのでは?」と感じられたからです。

フォルネが、「シンプルなデザイン」にこだわる理由とは?

——ポップなカラーリングの知育玩具が多いなかで、シンプルなデザインにこだわっている理由をお聞かせください。

伊場:シンプルなデザインは、リビングやダイニングのような家族が集まる空間に溶け込みやすく、インテリアのじゃまにもなりません。

「知育ポスター」の場合も、空間になじみやすいことや、子どもの目にとまりやすいことを念頭に置いています。子育て中は、リビングで子どもと一緒に過ごす時間が多いので、「親子にとってよいもの・いつもそばにいる存在になってほしい」と考え、このデザインに行き着きました。

お風呂に貼られた人気の知育ポスター。子どもが「なな、はち、きゅう…」と数字を数えて、遊んでいます。

フォルネのイラストには、グレーや白、グレージュなどの落ち着いたトーンのものが多いのですが、そこにも色や形に対する先入観をなくして、想像力を広げてもらいたいという狙いがあります。多くの子ども向け知育雑貨は、「リンゴは赤、うさぎはピンク」で描かれてますが、実際のリンゴは赤だけではないし、うさぎはピンクだけではありません。だからこそ、子どもの創造力を高めるには、「これはこんな色だよ」と決めつけないことも大切だと思うんです。

とはいえ、視覚的な色彩感覚を考えると、赤、黄といったカラフルな色の知育雑貨も必要です。子ども部屋にはカラフルな色味や子どもの好きなキャラクターを取り入れ、リビングやダイニングは落ち着いた色味の知育雑貨を取り入れる。そんなふうに、用途に合わせてうまく活用していただけるとうれしいですね。

1つの商品でさまざまなことを楽しく学べるのも、フォルネの面白さ

——デザインや色のほかに、商品を開発する上で意識していることはありますか。

伊場:子どもたちが、1つの商品でさまざまなことを学べるように工夫しています。

たとえば、世界地図を描いた「知育ポスター」であれば、国名だけでなく11種類の言語で「こんにちは」の発音が書いてあったり、時計のマークで時差の情報を加えたりしているので、地図以外の使い方もできます。

子どもたちが日常のルーチンを楽しく学べる「お支度ボード」は、子どもが直接日付を記入することができ、「すること」が完了したらマグネットをひっくり返して「できたよ」と表示する形にしました。保護者が子どもに伝えたい内容を書き込んだり、朝起きる時間や出発時間を記入したりするスペースも作って時間の感覚も身につけられるようにしています。

伊場さんのお子さんが、小学校に上がるタイミングで製作したお支度ボード。子どもが楽しく行動するきっかけを作り、朝の身支度をスムーズにするために開発されました。

デザインの力で、子どもたちの「作りたい、知りたい」というわくわくした気持ちに応えつつ、保護者の育児負担を少しでも減らす。そういう意識は、常に持っていたいですね。

知育ポスターやお支度ボードが、日々の暮らしの強い味方に!

——人気の知育ポスターやお支度ボードを使っている、子どもたちや保護者の反応はいかがですか。

伊場: 知育ポスターをリビングに貼っている方からは、「子どもが気に入り、自然にポスターを眺めている」「漢字に興味を持つようになった」などの声をいただいています。子どもたちの好奇心や学びの幅が広がっているようで、私たちもうれしい限りです。

また、お風呂に飾っている方からは「進んでお風呂に入るようになったので助かっている」と言っていただくことが多く、フォルネの商品が育児の手助けになっているようです。

シンプルなデザインの知育ポスターは全11種類。「作成する際、どこまで情報を入れるべきかいつも悩みます」と伊場さん。

お支度ボードに関しては、「ゲーム感覚で取り組んでいる」「子どもが機嫌よく身支度に取り組むようになった」「お風呂に入りなさいと言うストレスが減った」などの声が聞かれます。子ども自身が進んで朝の支度をしてくれるおかげで、保護者の育児ストレスが軽減されているようですね。

お支度ボードは、親子でコミュニケーションを取るきっかけになるほか、子どもの達成感や満足感にもつながります。

フォルネの活用で、大人も子どもも楽しく過ごしてもらいたい

——今後の展開をお聞かせください。

伊場:子どもが成長するにつれて得られる、気づきやアイデアを生かしながら、大人も子どもも楽しめる商品を開発していきたいです。そしてこれまでコロナ禍で、オンライン中心の販売でしたが、これからはワークショップやPOPUP SHOPにもより力を入れて、全国の皆さまに見ていただける機会を増やしていきたいと思います。

また、運営会社の印刷技術と地元のすぐれた技術を活用して、耐久性のある和紙や素朴な風合いの織物といった伝統工芸品とコラボレーションするなど、地域活性化にも貢献したいと考えています。

取材・文/ほりちゃん  編集/イージーゴー

この記事をSNSでシェア