保育士を目指す学生たちの力作が全国から集結!「手作りおもちゃコンテスト」の表彰式をレポート

自分たちが考えたおもちゃで、子どもたちに喜んでもらいたい——。そんな思いのもと、保育士を目指す学生たちがおもちゃのアイディアを競い合う、「手作りおもちゃコンテスト」が今年も開催されました。
今回は、「手作りおもちゃコンテスト」のWeb表彰式の様子をレポートするとともに、受賞作品の一部を審査員の寸評コメント付きで紹介します。表彰式にあわせて、事務局長の山村祐輝さん(株式会社HOPPA)に、コンテスト開催の背景やコンテストの思いなどをうかがったので、そちらもご覧ください。
おもちゃ作りを通して、保育の楽しさを再確認してほしい

2025年9月7日(日)、全国94か所で保育施設を運営する株式会社HOPPAが、「手作りおもちゃコンテスト」のWeb表彰式を開催しました。このコンテストは、全国の保育士養成校や短期大学、大学で保育を学ぶ学生から、手作りのおもちゃのアイディアを募集し、優秀な作品を表彰するというもの。応募作品は公式SNSで紹介されていましたが、どれも学生が作ったとは思えない力作ばかりでした。
コンテストは今年で4回目を迎えますが、企画した背景には、資格を取得しても保育士にならない「潜在保育士」の問題があるといいます。事務局長を務める山村さんはこの点について、「保育という仕事のすばらしさを知る立場として、この問題を解決するきっかけを作りたかった」と話します。
「おもちゃ作りを通して、学生さんに制作の楽しさ、保育の楽しさを再確認してもらいたい。そうした思いからコンテストを企画しました。自身のアイディアが、子どもたちの笑顔につながれば、保育の仕事に対する興味がより強くなるのではないか、と考えたのです」
ちなみに、応募作品には2つの規定があります。1つは、大きさが一辺50cm以内、3辺の合計が150cm以内であること。もう1つが「2歳児を対象としたおもちゃ」であることです。山村さんによると、発達が著しい2歳児を対象としたおもちゃを作るのは、思っているよりも難しいのだとか。
「2歳児は物をつまむ、引っ張るなど、細かな手や指の動きができるようになる時期。そうした発達にあわせた細かな工夫が求められると同時に、口に入れるなどの事故を防ぐ安全性の確保も大切です。学生さんたちにとっては、取り組みがいのあるテーマではないでしょうか」
今年は、全国から105点の作品が集まり、二次審査を勝ち抜いた49点から、最優秀賞をはじめとする各賞が選ばれました。いったい、どのような作品が受賞したのでしょうか?
楽しいだけでなく、安全性にも配慮された逸品ぞろい

Web表彰式は、司会を務める山村さんの開会宣言からスタート。メイン会場には、特別審査員であるわくわくさんこと久保田雅人さん、東京おもちゃ美術館・副館長の貝原亜理沙さん、審査員長で株式会社HOPPAの取締役社長である水口加緒里さんの3名が列席しました。
また、過去に手作りおもちゃコンテストで最優秀賞チームを指導された金沢学院大学の講師、森舞先生も特別審査員としてオンラインで参加。応募した学生が発表の瞬間を見守るなか、各賞の発表が始まりました。
ここからは、表彰された9部門12点のなかから、最優秀賞、優秀賞、審査員長賞の4作品をピックアップし、制作者の言葉や審査員の寸評を交えながら紹介していきます。
審査員長賞:洗足こども短期大学「からふるず☆」チームの作品


収納箱にレジスターや買い物かご、陳列棚に並べる商品(食品)などを入れ込んだ、お買い物ごっこのセットです。子どもたちは、店員さんやお客さんになりきって、「いらっしゃいませ」「これください」などのやりとりを楽しめます。制作チームによると、「なりきって遊ぶことで、買い物の流れや人との関わりを学べるようにしました」とのこと。遊んでいるうちに、想像の世界がどんどん広がりそうです。
| 大人のまねごとが好きな2歳児の特性に着目し、お店屋さんごっこができるものを考えました。レジのボタンにスポンジを入れ、指が沈む感触を味わえるようにしたり、バーコードリーダーに鈴を入れて揺らすと音が鳴るようにしたりと、本物っぽさが感じられるように工夫しています |
| 目をひいたのは縫製の美しさです。レジに付いているバーコードリーダーのように四角いものをフェルトで覆おうとすると、角や端から中身が見えてしまうことがありますが、細部まできれいに処理されていて感動しました。また、制作者がこだわったというボタンの感触や、時代性を感じさせるICカード、エコバッグなども、子どもが喜ぶポイントです。レジ本体とカゴ以外を土台の箱に収納できる、お片付けへの工夫もよかったです |
優秀賞:新潟県立大学「ぺったん子」チームの作品


肉屋、魚屋、八百屋の3つの箱からなる、食育を意識したおもちゃ。お店に商品を並べるだけでなく、食事の材料となる魚や野菜の捕獲・収穫が擬似体験できる仕組みになっています。「網や手を使って箱から魚を獲ったり、野菜を育てて収穫したりするなかで、想像力を育むのがねらい」だと制作チームは話します。お店遊びを通じて、食のことが学べるというのは素敵なアイディアです。
| 2歳児の“自分でやりたい”という好奇心を引き出し、擬似体験ができる食育のおもちゃです。魚の捕獲や野菜の収穫が、食事に行き着くまでの流れがわかるように工夫しました。また、外側の枠には木を使い、子どもが力を加えても壊れないように耐久性を持たせています |
| 引き出しを開ける、箱から取り出すなどの動作は子どもがワクワクするポイント。それを食育とからめ、上手にまとめられていました。お店ごとに箱が分かれているので、子ども同士でお店を分担し、コミュニケーションもはかれます。遊びの広がりが期待できる点がすばらしいです |
優秀賞:武蔵野大学「くまちゃん」チームの作品


くまの蝶ネクタイを外してお顔を開くと、食事プレートに変身! トマトやブロッコリー、オムライスなどプレート上の食べ物は、ボタンやマジックテープで付けてあるので、取り外しができます。制作チームによると、「ボタンやテープの取り外しで指先を使う力を育て、生活のなかで衣類の着脱ができるようになるのがねらい」なのだそう。見た目のかわいらしさも際立っていました。
| 口に入れても誤飲しないよう、すべてのパーツを大きめに作り、安全面に配慮しました。お友だちや人形を遊び相手にして、一緒に作る・食べる・食べさせるといった食事の流れを楽しんでほしいです。遊びを通して、食べることに興味を持ってくれたらうれしいですね |
| 実物を見て評価する二次審査で、大きくポイントを伸ばした作品です。特に、取り外しできる食材が、子どもの手になじむサイズ感だった点が好評でした。また、子どもが反応する、黄色、赤、緑といった原色を中心とした色選びも見事。縫製も丁寧で、安全性も確保されていると感じます |
最優秀賞:常磐短期大学「プリンセス常磐」チームの作品


子ども自身が王子様やお姫様に変身できる、“なりきりセット”で、衣装の着脱をくり返すなかで、楽しみながら衣類の着脱の練習ができるようになっています。衣装や武器には、お花や星などのモチーフを自由に飾り付けられるようになっていて、遊びの要素も満載です。
| 王冠をかぶる、スカートに足を通す、マントを首に巻くというように、着脱の動作に変化を付け、さまざまなパターンの脱ぎ着に対応できるよう工夫しました。また、スカートは前面だけにマジックテープを接着。普段の生活のなかでも、衣類の前後を確認する習慣が身に付くようにしています |
| 自分が王子様、お姫様に変身するというのは、手作りおもちゃコンテストでは珍しいコンセプト。オリジナリティを感じました。楽しい遊びのなかに、衣類の脱ぎ着を意識した仕掛けがたくさん盛り込まれていた点も、高評価につながっています。子どもが好きな変身遊びがテーマで、安全性や発達の促進にも目を向けている。審査員一同、大絶賛のおもちゃです |
最優秀賞が発表された後は、サプライズとして2歳の男の子が登場。最優秀賞作品のマントや王冠、パンツを身に付けて遊ぶ姿を披露し、参加者を楽しませました。
カメラを気にすることなく、夢中で遊ぶ男の子の様子を見た山村さんは、「これこそがおもちゃの持つ力ですね」と思わず笑顔に。制作チームの代表者も、「自分たちで作ったおもちゃで、実際に子どもが遊んでいる姿を見ることができて、うれしいです」と喜びの声を伝えました。
式の最後は列席者による総評が行われ、久保田さんは「オリジナル性や見た目の華やかさを重視するのも大事ですが、安全性や巧緻性などへの配慮を疎かにしないよう心がけてほしい」と学生たちにアドバイス。水口さんも、「コンテストを通して、同じ保育の道を志す仲間としての熱い気持ちが伝わってきました。いつか一緒に子どもに携わる仕事ができるよう応援しています」とエールを送りました。
「手作りおもちゃコンテスト」を制作の腕を磨く場にしていきたい

授賞式の終了後、山村さんにあらためてコンテストの感想をうかがうと、「今年は特に発想力の豊かさが際立っていたように感じます」との言葉が返ってきました。
「どの作品にも、『ほかのチームと違うものを作りたい』という熱意が表れていました。個人的に印象に残っているのは、“ぺったん子”チームです。このチームは昨年も参加していたのですが、今年は発想力を鍛えて優秀賞を獲得。一次審査の時点から、これは賞を狙えるだろうと感じていました。見た目や独自性にとらわれすぎず、安全性や子どもの喜びといった視点を大事にしていたところがよかったですね」
回を重ねるごとに参加者の熱意が高まり、多様なアイディアが集まるようになったそうですが、一方で山村さんのなかには、「受賞を目指すだけでなく、制作を学ぶ場としてコンテストを活用してほしい」という思いがあるといいます。
「音楽や読み聞かせなどと違って、保育実習では制作が行われないこともあります。ですから、コンテストを実習の場だと考えてほしいのです。満足のいく作品でなくても、まずは応募して、みんなの作品を見て、制作の腕を磨いてほしい。そして、その学びを現場で役立ててもらえたらうれしいです。コンテストでは一般の投票も受け付けているので、そちらもいろいろな方に参加してほしいですね。第三者の評価は、きっと参加者の励みや学びにつながるはずです」
実は、「手作りおもちゃコンテスト」は、特設サイトを通じて応募作品に投票できる仕組みになっています。もちろん、現役の保育士さんによる投票も大歓迎。プロならではの視点で、作品を評価するのも楽しいかもしれません。山村さんは、最後にほいくらしユーザーに向けて、こんなメッセージをくださいました。
「保育はすばらしい仕事なので、資格を取ったら現場で活躍してほしい。この思いは私だけでなく、現役の保育士さんたちも同じではないでしょうか。ぜひ私たちと一緒に、学生さんの夢を応援しましょう」
取材・文/木下喜子
株式会社HOPPA
https://keceg.jp/


