『保育に関わる方のための保育フォーラム』井上さく子先生登壇 子どもそして私も!楽しんで自己肯定感を育んでみませんか?

『保育に関わる方のための保育フォーラム』井上さく子先生登壇 子どもそして私も!楽しんで自己肯定感を育んでみませんか?

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9月7日、一般社団法人 全国保育連盟の主催で東京大学の安田講堂(東京都文京区)にて『保育に関わる方のための保育フォーラム』(後援=JFSラボ株式会社、マイナビ保育士、マイナビ幼児教育)が開催されました。フォーラムでは、マイナビ保育士サイトの連載コラム『子どもに学ぶ21世紀型保育』でおなじみの井上さく子先生(保育環境アドバイザー)が登壇。『子ども そして 私も!楽しんで自己肯定感を育んでみませんか?』というテーマで講演されました。その様子をリポートさせていただきます――。

東京大学のシンボルでもある安田講堂は、関東大震災(1923年)による工事中断を経て1925(大正14)年に完成。今年で築94年を数え、国の登録有形文化財でもあります。

そんな品格と伝統を誇る会場で開催された今回のフォーラムは、子どもたちの「生きる力を育む」という観点から、東京大学名誉教授の眞鍋昇氏が『なぜ毎日食べるのか? 進化生物学から見た食育の重要性』、そして井上さく子先生が『子ども そして 私も! 楽しんで自己肯定感を育んでみませんか?』というテーマで講演。これは子どもに限ったことではなく、人間が生きていくのに欠かすことができない両輪である「身体の栄養」と「心の栄養」です。

まずは内閣府の食品安全委員会の座長を務める眞鍋先生が、子どもの「野菜嫌い」はなぜ多いのか? を理論的に分析。また、子どもの好き嫌いには理由があること、そしてヒトの祖先にまで話が遡り、改めてヒトの食性、健康やダイエットのためと思い多くの人が実践している食事法の問題点や危険性などを指摘しつつ、「食の専門家」ではない方々にも分かりやすい視点で講演してくれました。

さく子先生は休憩を挟んだ後半パートに登壇。安田講堂の舞台中央に座ったさく子先生は、暗転した館内にて遠野あとむ名義で発表した自作詩から、3篇を選び朗読しました。

講演のテーマは子どもたちの自己肯定感を楽しみつつ育むことです。目指すべき子ども像はさまざまですが、まず保育する側にそれが定まっていないと現場は混乱するばかりです。さく子先生自身、まだ「若手」「新人保育士」と呼ばれていた時代に、保育園の舵取りをすべき園長先生と衝突した時代もあったことを認めつつ、そんな時期にも「保育士とは人としてどうあるべきか?が問われる職業である」ことを肝に銘じつつ、「やがて自分が園長になった時、どんなビジョンを持っていられるか?」を常日頃から考えつつ勤務していたそうです。

そんな時期、さく子先生が思い描いていたビジョンは「実家のような保育園」でした。実家のような~とは、幼いながらも子ども自身の「喜怒哀楽」のすべてを、包み隠すことなく出せる環境ということです。人間としての土台を築く大切な幼児期に、大人の事情で「喜怒哀楽」に強引にフタをしてしまうことは「その子に忘れ物だらけの人生を背負わせることになってしまうのです」と、大人たちにとって恐ろしくも耳の痛い警告を発しました。

そんな環境を実現するためには、一にも二にも職員集団の乱れぬ呼吸が大切となってきます。それには常に子どもたちを軸とした観察力を研ぎ澄ます習慣が必要です。それを怠ってしまうと、日々変化を続ける子どもたちの「育ち」も物語(エピソード)として紡ぐことはできないからです。そのために保育する側の人間は、常に五感を研ぎ澄ませて保育にあたる必要があります。
「見ようとしなければ見えてこない。聞こうとしなければ聞こえない。感じようとしなければ感じることはできません」(さく子先生)

そういった理想を実現させるためには、保育士さんや保育園側だけの力ではどうにもなりません。そこには親御さん、保護者や地域住民の協力が不可欠となってきます。「子ども・保育園・保護者」のトライアングルがバランス良く整い、一つの輪になっていることが理想といえるでしょう。

昔も今も保護者や地域住民からの苦情やクレームなどに、頭を悩ませたり、やや保育に怖気づいてしまうケースは後を絶ちません。保育士時代も園長時代も、そういった数々の事態に直面してきたさく子先生は、あくまでポジティブにそれらの問題と向き合ってきた結果「クレームこそ宝」「苦情こそ学びの糧になっていく」という結論に至ったとか。やはり、子どもたちが喜怒哀楽を存分に表現できる「実家のような保育園」は一朝一夕の対処や、耳障りが良いだけの小手先の理想論では実現できないようです。

その他、保育園で起きるさまざまな事象や解決法を、温かい目線とともに紹介し、また時にはバッサリと一刀両断する「さく子トーク」で、約3時間半にわたるフォーラムは終了。安田講堂が大きな拍手に包まれました。

井上さく子先生

【プロフィール】
井上さく子先生(いのうえ・さくこ)
1953(昭和28)年、岩手県遠野市出身。1976(昭和51)年より東京・目黒区立保育園に保育士として勤務。同区立ひもんや保育園の園長として38年のキャリアを終えた後は保育環境アドバイザーに転身。あくまで子どもたちの目線を軸足に置きつつ「子どもの代弁者」であるために全国各地の保育園を訪問し続けると同時に、ご自身の3人の孫の「孫育て」にも追われる慌ただしい日々。2018年度までは新渡戸文化短期大学の非常勤講師としても活躍。また、「遠野あとむ」のペンネームで詩作や挿絵イラストも手がけ、自作詩の朗読は各種セミナーやフォーラム等の名物コーナーとなっている。
◎主な近著
『だいじょうぶ~さく子の保育語録集』2014年(解説・汐見稔幸=サンパティック・カフェ)
『なんでも見ている、知っている、感じている 赤ちゃんの微笑みに誘われて~さく子の乳児保育』2015年(解説・汐見稔幸=サンパティック・カフェ)
『ぜんぶ子どもが教えてくれる 探しながら自分を生きる~さく子の幼児保育』2016年(解説・汐見稔幸=サンパティック・カフェ)
『保育士という生き方』2018年(イースト新書Q)
など

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