人間関係や職場の環境で悩まない保育士のマインドとは?カリスマ保育士・てぃ先生インタビュー【第1回】

人間関係や職場の環境で悩まない保育士のマインドとは?カリスマ保育士・てぃ先生インタビュー【第1回】

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「保育士の仕事って、世間からしたらブラックボックスなんです。だから、不利益な誤解を与えてしまう」

と保育士のイメージ刷新を訴えるのは、Twitterフォロワー数46万人超のカリスマ保育士・てぃ先生。Twitterでは、面白くて可愛らしい子どもたちとの日常を切り取る一方で、保育士の仕事のプロフェッショナル性や可能性を広く世間に伝え続けています。そんなてぃ先生に聞く、保育士という仕事への向き合い方と、つぶされないためのマインドとは――。

構成/岩川 悟 取材・文/吉田大悟 写真/石塚雅人

目次

「保育士に向かない」ではなく「施設と合わない」だけ

僕は子どものころから漠然と、「毎日、窮屈なスーツを着る仕事はしたくない」と感じていて、ユニフォームを着用するような仕事に就きたいと考えていました。野球選手、パイロット、お医者さん……いろいろな華やかな仕事があることを知ると同時に、だんだんと現実が見えてあきらめていくわけです(笑)。そしてたどり着いた仕事が、エプロンを着用する保育士でした。

子どもは大好きだし、「人から感謝されて、お金をもらえる仕事って素晴らしいな」という思いもありました。でも、けっして高尚な理想や目的があったわけではありません。「その仕事がしたかったから」「向いている気がしたから」という理由です。たぶん、多くの保育士さんも同じではないでしょうか?

でも、実際に保育園で仕事をすると、みんな愕然としてしまうのです。子どもと接する時間以上に事務作業が煩雑で、そういった作業が1日の半分を占めてしまう。それも現代的な感覚からすれば、効率性に疑問を感じる作業も多い。例えば、保護者の皆さんの連絡ノートを一冊一冊、手書き対応を求められたり、園内の壁の装飾を保育士が残業して手作業で作ったり。もちろん、その仕事に価値がないとは思いません。でも、これだけ人材不足が叫ばれる状況では、ほかに優先すべきことがあるはずです。休憩もなく残業を求められ、心が疲弊し、若い方ほど非合理につぶされて保育士を辞めてしまいます。

だから、特に若い方は、もっとラクに考えていいと思います。あなたが仕事で苦しいのは、「保育士に向いていなかった」のではなく、単に「施設の考え方と合わなかった」だけなのですから。例えば、僕が非合理に感じた作業に、価値を見出して納得して働ける方もいたはずです。つまりこれは、仕事内容との相性の問題なのです。

僕の保育士のキャリアは11年目ですが、3回の転職を経験し、いまの保育園が4カ所目。そうして自分に合う保育園で働いてみると、「保育士って楽しい仕事だ!」と改めて感じることができました。

保育士の仕事を楽しむには「余裕」が必要

保育士が楽しく仕事をするためには、余裕が不可欠です。それがどんな余裕かといえば、「子どもにこんなことをしてあげたいな」「次はこうしたらよろこぶかな?」と自分なりの保育を考えるための余裕です。しかし日常業務が煩雑だと、その余裕はまず得られません。

近ごろ、保育士の処遇改善が取り沙汰され、家賃補助の制度が広がったほか、月収も増えたことは誰もがうれしいことだと思います。ただ、現場の保育士さんが抱える不満の根源は、単なる収入額以上に、収入に対する「負荷」の大きさでしょう。僕はひとりの現場の保育士として、業務の負担軽減に施設の運営母体や決裁者が取り組むべきだと感じています。

書類のテンプレートを必要最低限にしたり、手書きではなくパソコン対応にしたりするなど、事務作業の効率化は必須です。また、ICTの導入も僕たちの業務軽減に大きく貢献してくれます。例えば、保護者の入園時に、玄関のロック解除をインターフォンで行っている場合、チャイムが鳴るたびに保育士は作業の手をとめて対応しないといけません。1回1回は短時間でも、お迎えの時間は保護者がひっきりなしに訪れ、かかりきりになります。指紋認証やパスワードロックの導入で、その手間は軽減できますよね。

また、毎日の業務を適材適所で効率的に行うことも大切です。それこそ、ピアノが苦手な保育士が自宅で必死に練習して本番でリスキーな演奏をするより、楽譜を初見で弾きこなせる保育士がいるなら全面的にお任せし、そのぶん、ほかの業務をフォローすればいいはず。それぞれの得手不得手を認めて、業務を振り分ければいいのですが、保育士にオールラウンダーであることを求める昔ながらの風潮があります。その風潮は施設全体の効率を下げ、自分たちの首を絞めているのです。

いまだ多くの施設が、無意識に保育士の都合を犠牲にする考え方をしてしまっていると思います。1日のスケジュールを組む際も、園児の取り組み内容を先に決め、そこに保育士のシフトを詰め込みます。その結果、本来は休憩であるはずの午睡の時間を事務作業に充てざるを得なくなる。そうではなく、先に休憩時間など基本的な労働上の権利を守ったうえで、保育士の稼働人数から無理のない園児の取り組み内容を考えるべきではないでしょうか。保育士を疲弊させないための、そうした仕組みづくりが急務です。

保育士の仕事と能力を、もっと世間に知らせよう!

もともと僕がTwitterを始めた理由は、保育士の仕事内容を世間にアウトプットしたいと思ったからでした。保護者からすれば、自分の子どもが今日、保育園でどう過ごしたかは詳細にはわかりません。子どもに聞いても曖昧だし、保育士に具体的になにをしたのかフィードバックを求めることも困難です。こちらも連絡帳で3~4行の報告を返すのが精一杯。その結果、保育士の仕事がブラックボックスになっています。

実際に子どもを預けている保護者ですらそうなのだから、世間一般ではなおさら保育士の実態が見えてきません。「子どもと楽しく遊んでいる仕事?」という理解で止まっていたり、ひどい場合には「昼は子供と一緒に寝ているのよね?」という認識の方がいたりします。世間に対し、ちゃんと自分たちの仕事をアピールしていかないと伝わらないし、その結果、国レベルで不利益な政策に巻き込まれる可能性もあります。

保育士は、国家資格を有する保育のプロフェッショナルです。僕たちが学校や現場で得た知識や考え方、実践的なスキルは、一般のお父さん・お母さんの子育てにも役立つものがたくさんあります。そういうことを伝えていったら、世間の保育士の職業イメージや市場価値も上がるのではないでしょうか。

また、保育士の仕事の可能性も、さらに広げていけるはずです。例えば、保育士として働きながら別の業界でも働き、二足、三足のわらじを履く人が増えたら、子どもたちはきっとその魅力に惹かれることでしょう。みんなで保育士の仕事の価値を世間に伝え、異業種から保育士への転職や、異なる知見を持った専門家が積極的に参画するようなオープンな業界に変えていきたいですね。

書影「保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね...!!」

著書紹介
保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!
てぃ先生 著
マガジンハウス(2019)
保育園では毎日、素敵な出来事がたくさん起こります。思わず笑っちゃうようなこと、ただただ面白いこと、感心すること、子どもの成長や感性にうるっとくること……。とてもハッピーな日常が保育士のまわりにはあります。著者は、ツイッターのフォロワー数49万人超!人気保育士てぃ先生。現役の保育士でありながら、保育アドバイザー「顧問保育士」としても活躍しています。「個性豊かな子どもたちとのエピソード」と「子育てで使えるワンポイントテクニック」をまとめた一冊です。

てぃ先生08

【プロフィール】
てぃ先生(てぃせんせい)
関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、可愛らしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は49万人を超える。Twitter原作のマンガでは『てぃ先生』シリーズ(KADOKAWA)は20万部を突破。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。現在は保育士の専門性を活かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。講演活動も年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。

【ライタープロフィール】
吉田大悟(よしだ・だいご) 編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て2017年に独立。ライターと言いつつ、ワードよりパワポを動かす時間のほうが長い自由業。小学生の男の子の父親です。

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