「信頼」と「リスペクト」で円滑な人間関係をつくるカリスマ保育士・てぃ先生インタビュー【第2回】

「信頼」と「リスペクト」で円滑な人間関係をつくるカリスマ保育士・てぃ先生インタビュー【第2回】

Twitterフォロワー数49万人超のカリスマ保育士・てぃ先生に、保育士の仕事との向き合い方を聞く全2回のインタビュー。第1回で語っていただいた保育士としての労働環境やキャリア、マインドの話題に続き、第2回では、保育士が仕事をする上での同僚・保護者との向き合い方、子どもに対するスタンスのあり方について伺います。

構成/岩川 悟 取材・文/吉田大悟 写真/石塚雅人

目次

保護者・同僚との「信頼関係」を築こう

保護者との関係性について、よく「モンスターペアレンツ」の問題が語られます。でも、僕は経験上、保護者に「モンスター」はいないと思っています。保護者が理不尽な要求やクレームを訴える多くの場合、わたしたちにもなにか原因があると見ているからです。例えば、長期にわたって知らず知らずに小さなストレスや不満を与え続けていて、保護者はずっと我慢していたけどなにかの拍子で爆発している、という状況です。もちろん保護者の不満や要望にすべて応えることはできませんが、話を聞いてガス抜きができていれば爆発はしなかったかもしれない。それって結局、保護者との日常的なコミュニケーションが原因であり、信頼関係の問題ですよね。

僕たち保育士は、毎日、保護者と接します。でも、単に子どもたちの様子を報告し、事務連絡をしているだけでは子どもを介した関係性に過ぎず、保護者との距離は縮まりません。「〇〇ちゃんのママ」「〇〇ちゃんのパパ」という属性ではなく、パーソナリティに関心を持つことが大切です。僕の場合であれば、相手に対して自分も興味のある話題を振ることを心掛けています。「今日のそのボーダーシャツ、すごくいいですね!」とか「花粉がすごいですよね~。〇〇さんは花粉症ですか?」など、他愛のない雑談で互いのパーソナリティを知り合い、信頼関係が築けるようにしているというわけです。

保護者との信頼関係があれば、さまざまな問題をスムーズにします。保護者に「今日、〇〇くんにこういう(問題のある)行動がありました」といったネガティブな報告・相談をする際、信頼関係があれば気分を害さずに耳を傾けてもらえるし、対処を相談し合うこともできるでしょう。

同僚との関係も、相互理解と信頼関係が大事。保育士だってみんなちがった価値観や保育方針を持っていますから、意見がぶつかることもあります。でも、関係性が構築されていれば、意見の背景にある先生の性格や考え方がわかるので、感情的にならずに落ち着いて話し合うことができます。これは保育士に限らず、あらゆる仕事でも同じですよね。

子どもをリスペクトし、余裕を持って見守る

子どもたちと保育士の関係性も、日頃の関わり方でかたちづくられます。子どもたちは正直なので、一緒にいて楽しく過ごせる先生についていきます。子どもたちからの人気がある先生の特徴は、「先生っぽく」振舞わないことです。

例えば園庭で遊ぶとき、保育士が「ほら、お片付けして!」「トイレは済ませた?」「帽子!」「靴はいて待っていて!」と細かく指示をしてきたら、子どもでなくても楽しい気分をそがれますよね?これがいわゆる「先生っぽい」振る舞いです。子どもたちには、これまでに身に付けた生活習慣があり、「園庭で遊ぶ前になにをするべきか」をわかっています。それを、わざわざ先回りして指示するのは、保育士自身の余裕のなさだと思います。

逆に、人気のある保育士は、子どもたちが自分たちで準備に取り掛かるのを、余裕を持って見守っています。大人は子どもより、ちょっとものごとを知っているだけの存在に過ぎず、ときに子どものほうが詳しいことだってあります。上からモノを言うよりも、子どもの自律性を尊重し、リスペクトし合えることが大事なのではないでしょうか。

手洗いの指導ひとつとっても、「やりなさい」と言わなくても、大人が手洗いを習慣化すれば、子どもはマネをします。わからなくて失敗してしまうときは、叱るよりも教えてあげればいい。廊下を走っている子どもに「走らないで!」と禁止するより、「廊下は歩こうね」と取るべき行動を教えるほうが、素直に聞き入れてくれます。

逆に、子どもたちの「わがまま」に対し、保育士としてどのくらい応えるべきかを悩む保育士さんもいます。「わたし、甘やかしすぎ?」と考えてしまうのです。保育士さんによって考え方はさまざまですが、ルールに逸脱した要求でない限り、僕は「子どもに求められたことは断らない」ようにしています。なぜなら、子どもたちの「欲求」と「わがまま」はちがうと思うからです。自分で靴を履ける年長さんが「先生、靴を履かせて~!」とお願いしてきたとします。「甘えたい」のか「面白がりたい」のか目的はわからないけれど、これは大事な「欲求」です。それに対し、「もう自分で履けるでしょ!」と言われたら、子どもだって「そんなこと、わかっているよ」とつまらなく思うし、甘えたかった気持ちも無下にされたと思いますよね。

それよりも、僕は「子どもたちが求めていないこと」を先回りしてしまう方が問題だと思います。自分で靴を履こうとしているのに、「先生、手伝ってあげるね!」と手を貸すような過干渉が子どもの自律性を妨げ、「わがまま」を育ててしまうと思うのです。

自分らしい保育士でいられる環境を見つけよう

今後、子どもたちへの保育のあり方は、施設によってバラバラな方向に進んでいく可能性があります。というのも、近年に改訂された新保育方針では、保育に幼児教育の観点が求められていますが、そのための保育士の教育方法も、具体的になにをしたらいいのかも示されていないからです。一例を挙げるなら、今後保育園で育むべきとされている「非認知能力」のなかには「ユーモア」といった能力も含まれると思いますが、「ユーモア」の育み方なんて誰もわからないわけです。

最近再び注目されている「モンテッソーリ教育」をはじめ、さまざまな幼児教育の考え方や枠組みがありますが、僕はひとつの枠組みにこだわるのは好みません。どんな教育法も、それが合う子と合わない子がいるからです。だから、目の前の子ども一人ひとりに合う教育や考え方を保育士がチョイスできるといいですよね。そのためには、さまざまな勉強が必要となります。

勉強する余裕を生み出すために、行政には保育士不足を招いている待遇や職場環境の改善、保育士の配置人数、根本的な体制を整えてほしいところです。でも、保育士自身も、自分なりの保育のあり方を考えるために、仕事に余裕をつくる努力や、それができる施設を選んで進んでいく必要があると思います。人材不足と言われるいま、保育士を受け入れてくれる施設はたくさんあります。自分らしく保育士の仕事に取り組める環境を探し、実り豊かな保育士生活を歩んでください。

書影「保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね...!!」

著書紹介
保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!
てぃ先生 著
マガジンハウス(2019)
保育園では毎日、素敵な出来事がたくさん起こります。思わず笑っちゃうようなこと、ただただ面白いこと、感心すること、子どもの成長や感性にうるっとくること……。とてもハッピーな日常が保育士のまわりにはあります。著者は、ツイッターのフォロワー数49万人超!人気保育士てぃ先生。現役の保育士でありながら、保育アドバイザー「顧問保育士」としても活躍しています。「個性豊かな子どもたちとのエピソード」と「子育てで使えるワンポイントテクニック」をまとめた一冊です。

てぃ先生08

【プロフィール】
てぃ先生(てぃせんせい)
関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、可愛らしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は49万人を超える。Twitter原作のマンガでは『てぃ先生』シリーズ(KADOKAWA)は20万部を突破。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。現在は保育士の専門性を活かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。講演活動も年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。

【ライタープロフィール】
吉田大悟(よしだ・だいご) 編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て2017年に独立。ライターと言いつつ、ワードよりパワポを動かす時間のほうが長い自由業。小学生の男の子の父親です。

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