自分の頭で考えられる子になるために大切なこと(増田修治)

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子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方

テストで測ることができる力を「認知能力」、テストで測ることができない力を「非認知能力」と呼ぶことは見聞きしたことがあるかもしれません。でも、非認知能力が具体的にどういうものか、なかなか明確にイメージしにくいのも事実。それがどんなもので、なぜいま必要とされるのか――。教えてくれたのは、子ども教育のプロフェッショナルを養成している白梅学園大学子ども学部教授の増田修治先生です。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/玉井美世子

※この記事は、『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社 監修:おおたとしまさ 編:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ)より引用しアレンジしたものです。

非認知能力とは、能動的な心情を自分のなかでつくり出せる力

学力のように、テストで測ることができる力を「認知能力」、テストで測ることのできない力を「非認知能力」と呼びます。この非認知能力は、これからの社会を生きていくためにとても重要な能力だといわれています。とはいえ、明確にイメージしにくいという人も多いでしょう。非認知能力がどういうものかを知ってもらうため、まずは次のクイズに挑戦してみてください。

Q:次の野菜や果物は水に浮くか、沈むか

1:ピーマン
2:キュウリ
3:ナス
4:バナナ
5:リンゴ
6:ニンジン
7:ジャガイモ

これは、わたしが4歳の子どもたちに出したクイズです。実際に水槽を用意して順番に答えを確かめながら進めました。ピーマンは水に浮きますよね。4歳児も多くが正解しました。ところが、次のキュウリは子どもたちの答えがけっこうわかれました。

正解は次のナスも含めて浮きます。大人であれば、料理中にこれらを洗うときに水に浮かぶ様子を見たことがある人も多いでしょう。それでは次のバナナとリンゴは?
このふたつも浮くんですね。

では、子どもたちはニンジンについてはどう答えたでしょうか。それは「浮く」でした。なぜそう思うのかと聞いたら「これまでの全部が浮くから」と。子どもたちはちゃんと考えているんです。これまでの正解を聞いて、「野菜や果物は水に浮く」と考えたわけです。でも、答えは「沈む」なんですよね(笑)。

それでは、最後のジャガイモはどうでしょう? 答えは「沈む」です。「野菜や果物は水に浮く」という仮説は正しくありませんでした。でも、別の仮説が浮かんできませんか? そう、基本的に地下で育つものは水に沈んで、地上で育つものは浮くというわけです。そして、このクイズのあと、子どもたちは家に帰ってお風呂にいろいろな野菜や果物を浮かべてみたのです。

これが、簡単にいえば非認知能力です。このクイズで、なにが浮く浮かないといった知識を教えようとしたわけではありません。子どもたちはクイズを通じて、自分の頭でうんと考えたのです。そして、「面白い」だとか「やってみよう」「調べてみよう」という気持ちになりました。こういう能動的な心情を、自分のなかでつくり出せる力――それが非認知能力なのです。

浮き沈みクイズで学ぶ!「非認知能力」とはなにか

次の野菜や果物は、水に浮く?沈む?
ピーマン キュウリ ナス バナナ
リンゴ ニンジン ジャガイモ

ピーマンは浮くよね。キュウリはどっちだろう?
ピーマンは浮く!キュウリ、ナスも浮く!
野菜は浮いて、果物は沈むのかな。じゃあ、バナナとリンゴは沈む?
バナナも、リンゴも浮く!
これまで全部浮いているから、ニンジンも浮かぶ!
ニンジンは…沈む!そして、ジャガイモも沈む!
地下で育つものは沈んで、地上で育つものは浮かぶのかも!他にも試してみよう!

何が浮く・浮かないという知識や答えを得る事ではなく、クイズを自分の頭で考え、面白いと感じ、能動的に調べようという姿勢が重要。この心情をつくり出す力を「非認知能力」と呼ぶ

AIの発達が進むこれからに求められる非認知能力

いま、この非認知能力が「子どもたちの人生を決める」ともいわれています。というのも、時代が大きな曲がり角に来ているからです。これからは人工知能、いわゆるAIが社会を大きく変えていきます。そして、そのAIをどういう方向で使っていくかを考えられる人間が必要とされる。

AIの時代になるからこそ、これまでとちがった角度からものを見ることができる、あるいは新しいものや発想を生み出せる力が求められるのです。それこそ、テストでは測ることができない、非認知能力そのものでしょう。

また、オックスフォード大学の研究によると、「AIの発達によって、アメリカにおいて今後10〜20年で現在の約47 %の仕事が自動化する」との試算が出ています。たとえばですが、バーテンダーの仕事は77%の確率でなくなるとか。他にもスポーツの審判員やレジ係、データ入力係、集金人などもなくなる仕事だとされています。これは遠い未来の話ではありません。現在進行形ではじまっているものです。

いま、「スマートガスメーター」の導入が全国で進んでいることをご存じですか? これは、ガスの使用量を無線通信回線で把握するというメーター。つまり、これまで検針員がやっていた仕事がなくなるということです。

なくならない仕事は、教師や保育士など人間相手の仕事、それからデザイナーといった創造性が必要な仕事などに限られてきます。単純な仕事は基本的にどんどんなくなるので、これからは自ら仕事を生み出すような人間になっていかないとならない。それがいいかどうかはともかく、そうならざるを得ないのです。

それこそ、他人とどう接するか、どういう新しい発想を持って創造性を発揮するかといったことは、なかなか点数にできるものではありません。それらはまさに、非認知能力だということです。

重要性を増す、幼少期における非認知能力を伸ばす教育

ここで、4歳の子どもを対象に行われた「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験をご紹介しましょう。その内容は、子どもにマシュマロをひとつわたして「食べずに15分待てばもうひとつマシュマロをあげるよ」と告げるというもの。すると、2個目をもらえるまで我慢できる子どもと、我慢できずに食べてしまう子どもにわかれました。

この実験でわかるのは、「自制心」が育っているかどうかということ。自制心も重要な非認知能力です。

そして、実験はこれで終わりではありません。その後の追跡調査により、2個目をもらえるまで我慢できる自制心があった子どもは、少年期には学力が高くて誘惑に強い、青年期には教育水準が高くて肥満率が低い傾向にあることがわかりました。一方、

我慢できずに1個目のマシュマロを食べてしまった子どもは、対照的に学力が低い、肥満率が高いといった結果が出たのです。

これは、4歳時点における自制心という非認知能力の有無が、その後の人生を大きく変えたということに他なりません。

まだ幼い4歳でのちがいとなると、「非認知能力の優劣は遺伝的に決まっているのか」という疑問を持った人もいるでしょう。でも、そうではありません。「幼少期における教育」の重要性が高いということです。

そして、今後は非認知能力を伸ばすための教育がより重要となるとわたしは考えています。このマシュマロ・テストで2個目をもらえるまで我慢できた子どもというのは、「先を見通して考える」ことができたということ。言い換えれば、ものと時間などの「つながり」が見えているということです。

ところが、いまはそういった「つながり」がどんどん見えなくなっている、あらゆるものが「ブラックボックス化」している時代なのです。

たとえば、自動車もそう。むかしの自動車はいまのものより構造がはるかに単純で、整備士にはなにがどうなって自動車が動くということがすべて見えていました。でも、数多くの複雑な電子部品が使われているいまの自動車だとそうはいきません。整備士にも理解できていない部分が多く、調子が悪い部分を基盤ごと取り替えるということになってしまいます。

こういうことがあらゆるものにおいて起きているため、「つながり」というものが見えにくくなっているのです。

子どもの頃に時計やいろいろなものを分解してもとに戻すのが好きだったという人はいませんか? わたしがそうで、たいてい部品が余っちゃって捨てることになっていましたけどね……(笑)。ただ、それは子どもにとって大切なことなのです。非認知能力なんてものが知られていなかった昔は、そういうふうに自然に「つながり」を知って非認知能力を伸ばす環境にありました。ところがいまはそうではない。だからこそ、意図的に非認知能力を伸ばすよう働きかけをしていく必要があるのです。

マシュマロ・テストの追跡調査結果

自制心の高い子ども自制心の低い子ども
幼少期マシュマロを2個もらえるまで待てる待てずにマシュマロを1個食べてしまう
少年期・学力が高い
・誘惑に強い など
・学力が低い
・気が散りやすい など
青年期・教育水準が高い
・肥満率が低い など
・教育水準が低い
・肥満率が高い など

日本の教育が抱える「見えない貧困」問題

いま、日本の教育は「貧困」という大きな問題に直面しています。「世帯収入が高いほどその家庭の子どもの学力も高い」という調査結果は、ニュースなどを通して耳にしたことがある人も多いことでしょう。

貧困にはふたつの種類があります。ひとつは「絶対的貧困」で、もうひとつが「相対的貧困」。絶対的貧困にあたるのは世帯年収が約60~70万円を下回る世帯。月収が5万円以下で、食べものや着るものにも困るほどです。一方の相対的貧困は、世帯年収が120万円ほどの世帯。この相対的貧困は「見えない貧困」ともいわれていて、わたしは大きな問題だととらえています。この世帯の子どもは、食べものは食べているし着るものに困るほどではない。つまり、見た目は普通なのです。でも、その世帯の子どもたちは、さまざまな機会を奪われているのです。

どんな機会かといえば、サッカーをしたくてもサッカーシューズは買ってもらえないし、バレエを習いたくても月謝を払ってもらえない。当然、学習塾に行くこともできません。この相対的貧困にあたる世帯の割合が、いまの日本ではどんどん増加しているとされています。

「子ども食堂」というものを聞いたことはありますよね。貧困世帯の子どもたちを集めて食事を与え、同時に勉強も見てあげるという社会活動です。そこに来る子どもたちは、やはり学力が低い傾向にあります。

貧困世帯の子どもは、先にお伝えしたように学習塾には通えません。となると、自分で勉強しなければならない。でも、学習教材など自分で勉強できる環境が整っているわけでもありません。となると、その子どもにとって勉強できる唯一の場所は、学校です。 ところが、子ども食堂に来る子どもたちのなんと約8割が学級崩壊を経験しているというではありませんか。学級崩壊したクラスでは、まともに授業を受けることができません。そういう子どもたちは、勉強する機会を完全に奪われているのです。逆に、学級崩壊によって勉強する場所がないから、子ども食堂に通っているともいえます。

非認知能力の育成に欠かせない、子どもの声に耳を傾ける姿勢

では、貧困世帯に育つと学力を伸ばすことができないのかというと、そうではありません。貧困世帯の子どもにも、貧困ではない世帯の子どもと遜色ない学力を持つ子どもたちがいます。彼らの共通点はなにかというと、「非認知能力が高い」ことです。

非認知能力には、「朝ごはんを毎日食べる」といった生活習慣、「毎日の勉強時間の目安を決めている」といった学習習慣、あるいは、つらいことや困ったことがあったときに学校の先生に相談できるなどのコミュニケーション能力といったものも含まれます。これらは、一般的には貧困ではない世帯の子どものほうがしっかりと身につけている傾向にあるのですが、貧困世帯に育ちながら学力が高い子どもも、こういった基本的な習慣、非認知能力を身につけているのです。

これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40

年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。非認知能力が高い子どもはテストの点数も上がるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。

となると、今後の乳幼児教育や小学校教育は大きく変わっていく必要があります。いつまでも、テストで高得点を取ることだけが素晴らしいと評価する教育ではダメなのです。もちろん、これは学校などの教育現場だけの問題ではありません。家庭教育も、「非認知能力を伸ばす」ことを意識して行うべきでしょう。

とはいえ、身構えるような必要はありません。大事なのは、「子どもの話をきちんと聞く」ことです。教育に熱心な親ほど、子どものいうことに耳を貸さず、「これが子どものためになるんだ」と勉強や習い事を押しつける傾向にあります。それでは、まったくの逆効果。まずは、「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いて一緒に考えること。そのなかで、互いに折り合いをつけていくべきでしょう。

宿題ひとつ取っても、「○時になったから宿題をやりなさい」ではダメ。「何時になったら宿題に取りかかれる?」と子どもに聞いてください。そうして決めた時間は、親が決めたものではありませんよね? これはつまり、子どもに選択権をわたしているということです。そうすれば、親からすれば「あなたが決めたことでしょう?」といえるし、子どもからすれば「自分で決めたのだからやらなくちゃ」と、自発性や意欲、責任感を養うことにもなります。 多くの親は、その過程を省いてしまっているように感じます。そうではなくて、親と子どもそれぞれが納得する「一致点」をつくるコミュニケーションをたくさん取ってください。そういったことが、子どもの非認知能力を育んでいくのですから。

Point !

AI時代には、非認知能力の高さが人生を決める
現代では、意識的に非認知能力を高めるための働きかけが必要
子どもの話を聞き、一緒に考え、お互いが納得できるポイントを探そう
ますだ・しゅうじ
白梅学園大学子ども学部教授
1958 年生まれ、埼玉県出身。白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりを行う。2002 年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』が放映され反響を呼んだ。2008 年3 月末で小学校教諭を退職し、白梅学園大学准教授を経て現職。著書に『子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保育者・教師のための子ども理解ガイド』(ぎょうせい)、『幼児期の終わりまでに育ってほしい10 の姿を育む保育実践32』(黎明書房)などがある。
2018 年2 月開設。「子どもたちの “学び” に焦点を合わせ、科学的に正しいとされる、信頼できる情報のみを発信する」ことがコンセプトの教育系ウェブメディア。「あたまを使う」「からだを動かす」「音楽をたのしむ」「芸術にふれる」「教育を考える」といったカテゴリー別に、最先端の教育情報と専門知識をわかりやすく伝え、親たちの支持を得ている。教育学、心理学、精神医学、脳科学など分野を横断し、「これからの学び」を伝える専門家インタビューも人気。
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