【話題の本】何十年も読み継がれていく絵本を――あさの先生が語る、アニマルバスと子どもたちの成長物語

【話題の本】何十年も読み継がれていく絵本を――あさの先生が語る、アニマルバスと子どもたちの成長物語

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人気アニメ「Go!プリンセスプリキュア」などの声優としてご活躍の浅野真澄さんは、「文筆家・あさのますみ」の名義で、絵本も執筆しています。中でも、アニマルバスシリーズは、絵本作家としての代表作のひとつで、この8月には、最新刊の『アニマルバスとくものうえ』(ポプラ社)が発売されました。ほいくらしでは、そんなあさのさんにインタビューを依頼。新作のことはもちろん、声優と並行して絵本を書くようになったきっかけや、絵本を通じて子どもたちに伝えたいことなど、さまざまなお話を伺いました。

取材・文/長野真弓

【あさのますみ先生インタビュー】絵本作家としての原点は、迷い込んだ絵本コーナーでの出会い

累計12万部を達成した大人気アニマルバスシリーズ全5作品。お話のイメージカラーで彩られた表紙は可愛らしく、思わず子どもたちの手がのびそう。

――声優としてご活躍される中、絵本を書くようになったきっかけは何だったのでしょうか?

もともとは、自分が創作活動をするなんて考えていませんでした。でも、20代の後半にさしかかったころ、声優の仕事だけで生きていくことに不安を感じるようになったんです。そんなとき、迷い込むように通りかかったのが本屋さんの絵本コーナー。そこには、床にしゃがみ込んで熱心に絵本を音読する女の子がいました。

しばらく聞いていると、女の子が読んでいたのは、私が子どものころに一冊まるごと暗記するほど大好きだった絵本でした。その光景に、「自分が子どものころに好きだった本が、いまの子どもたちにも読まれているんだ」と感動したことをいまでもはっきりと覚えています。

そんなことを考えながらまわりを見回してみると、そこには昔好きだった本がいくつも平積みになっていました。「絵本の世界って、一度人の心をつかむと、何十年も読み継がれていくんだ。素晴らしいな」と、さらに感激しましたね。そして……。気がつくと、女の子の隣で私も絵本を読みはじめていたんです(笑)。そしたら、その日のうちにひとつのお話が頭に浮かんできたので、原稿用紙にまとめて絵本の公募に出してみることにしました。

――それが賞につながって、絵本作家としての活動がスタートしたわけですね。

ただ、受賞はできたものの絵本の知識がまったくなかったので、「あらしのよるに」の作者で、絵本作家第一人者でもあるきむらゆういち先生のワークショップに通って、絵本のことをいろいろ教えていただきました。

声優は、競争が激しく、入れ替わりも早い業界ですが、絵本の世界には、長く読み継がれるような、ゆったりとした時間が流れています。絵本の創作活動という新しい選択肢を得て、まったく性質の違うふたつの世界を体験できたのはとても貴重なことだし、すごくありがたく感じています。

――声優も絵本作家も、何かを「表現する」という点では共通しています。絵本を書くうえで、声優としての経験は生かされていますか?

私にとっては、キャラクターの気持ちになって、彼らの感情を声で表現するのが声優のお芝居で、それを文字に置き換える作業が絵本創作。だから、お芝居することと絵本を創作することは、とても近いところにあると感じています。

もちろん、声優として演じたいろいろな役の擬似体験は、執筆にも生かされています。ただ、それ以上に役に立っているのが、本が大好きだった子どものころの読書体験ですね。大人になってからあらためて絵本を読むと、子どもの時にどういう気持ちでそのページを見ていたのかを鮮明に思い出すんです。「こういうことを言われたらとってもうれしいなぁ」とか、「こういうことができたら楽しいなぁ」とか。ですから、子どものころの自分が目の前にいると想定して、その子が喜ぶものを想像しながら書いている感じですね。

――創作するにあたって、子どもたちと実際に交流を持たれることはありますか?

自分の頭の中にあるものだけで創作すると、「大人ががんばって書きました」みたいなお話になる気がするので、絵本を書く前には、できるだけ子どもたちと接点を持つようにしています。読み聞かせの会に行ったり、友人のお子さんと遊ばせてもらったり。保育園で1日保育士さんをさせていただいたことも何度かありますよ。その中で、子どもたちがどんなことを面白がっているのか、どんなことを楽しんでいるのかを観察し、その体験を創作の参考にします。

私にとって、子どもたちはとても刺激的で新鮮な存在ですね。たとえば、読み聞かせでのリアクションの新鮮さ。大人が読んでもスルーしてしまうような場面でも、子どもたちはすごく大きなリアクションをとって、大喜びしたりします。物語に沿って体を動かしたり、歌を歌ったりと、まるでダイブするみたいに絵本の世界に入り込んでいく。そうした姿を見るのは、とても楽しいです。

――絵本を書くようになって、あさの先生の中で変化したことはありますか?

声優と絵本作家という、ジャンルの違うお仕事をさせていただくようになって、“アンテナ”が増えたように感じます。誰しも、自分の仕事に対しては、役立つ情報をキャッチするためのアンテナを立てていると思うんですが、執筆活動をはじめてからは、声優のアンテナとともに、子どもたちや絵本に関するアンテナが立つようになりました。おかげで、絵本を書く前は気にならなかったモノやコトにも注目するようになりましたね。

大人気!アニマルバスシリーズの魅力―リアリティとファンタジーの間にある成長物語

最新刊『アニマルバスとくものうえ』では、あまえんぼうのウサバス・ラビィが大活躍。もこもこした”くものうえ”の街の様子は、子どもたちのイマジネーションを刺激すること間違いなしです。

――あさの先生の作品の中で、アニマルバスは唯一のシリーズもので、今回の『アニマルバスとくものうえ』が5作目となります。累計12万部を達成するなど、大人気のシリーズとなっていますが、人気の秘密はどこにあるとお考えですか?

私はシリーズ2作目から参加させていただいたのですが、作品を拝見してまず感じたのが、「こてらしほ先生の絵には“あそび”がたくさんある」ということでした。お話に沿った絵だけでなく、全然関係のない“いきもの”が、ページの端っこであそんでいたり、何かを食べていたり。

私自身、子どものころからそうした“あそび”がある絵本が大好きで、ページの隅々まで何回も読んで、一つひとつの絵もしっかり覚えて、勝手に別のお話を考えたりしていたのですが、いまの子どもたちも、自分たちなりのあそび方ができるところを気に入ってくれているんじゃないかなと思っています。

――子どもたちからのハガキもたくさん届くと伺っています。

そう! アニマルバスのイラストや似顔絵を描いて送ってくれるんです。なかには、子どもたちからのメッセージが書かれているものもあります。あとは、お母さんが子どもたちにヒアリングして、「うちの子はこういうところが好きみたいです」と書いて下さったり、「かわいい絵本だなぁと思って買ったら、お話がしっかりしててよかった」などの感想をいただいたり……。本当にすごい量が届くんです。とてもうれしいですね。

「アニマルバスとお友達になって一緒に成長してほしい」と心を込めて絵本にサインをするあさの先生。子どもたちからたくさんの読者ハガキが届くそう。

――新作『アニマルバスとくものうえ』では、雲の上から落ちてきた“もふもふ”のためにがんばるアニマルバス・ラビィの姿が描かれていますが、一生懸命さがとてもかわらしいです。お話のアイディアは、どこから生まれたのですか?

根底にあるのは、たくさんいるアニマルバスの中から、主役を1台ずつピックアップしていきたいという思いです。『アニマルバスとパンやさん』だとファンファン、『アニマルバスとよるのもり』だとモコ、そして今回はラビィです。アニマルバスにはそれぞれ性格の違いや得意不得意があるのですが、ラビィは空をちょっとだけ飛べるんです。なので、その特長を生かすために、雲の上のお話になりました。

ただ、空の上を舞台にすると、ほかの作品よりもファンタジー要素が深まる感じがしたので、アニマルバスの世界観とかけ離れないようには配慮しましたね。アニマルバスは、架空の「いきもの」ですが、子どもたちには、その特殊さにあまり着目してほしくないと思っていて……。あえて、それぞれのアニマルバスの成長物語として書いています。だから、何か問題が起こった時に、魔法で簡単に解決するようなファンタジーなお話にすることはありません。子どもたちが幼稚園や学校で、たくさんのことを習得するように、アニマルバスたちもバスとして修練を重ねて、運転技術を身につけたり、苦手を克服して、何かできるようになることが大切なんです。

以前、『アニマルバスとよるのもり』を読んだ子が、読者ハガキを送ってくれたのですが、そこには「もこちゃんがくらいみちをはしれるようになってえらかったね」と、おぼつかないひらがなで書いてありました。それを見たときに、「アニマルバスを身近な存在だと思ってくれているんだな」と実感しましたね。子どもたちは、架空のいきものかどうかなんてことは飛び越えて、自分の分身であるかのように、アニマルバスたちの成長をすごく応援してくれているんです。

それぞれ性格が違うアニマルバスの仲間たち。次はどの子が活躍するのかも楽しみのひとつ。

――『アニマルバスとくものうえ』は、あさの先生がこだわる“子どもたちにとってのリアリティ”に、ファンタジーの要素を加えた、新しいチャレンジなのですね。そんな新作の見どころを教えていただけますか?

“くものうえ”にある街の様子を楽しんでほしいですね。私もそうでしたが、幼稚園くらいの子どもたちは、「雲に乗れる」と信じていると思うんです。雲を見ては「あの上はどうなってるんだろう?」「くものうえには何か住んでるのかなぁ?」と考えている。だからこそ、アニマルバスの世界の“かわいくて、楽しい、くものうえ”を見て、実際の雲の上を想像する時に役立ててもらえたら嬉しいなと。

――絵本には、“くものうえ”の街の様子が、とても細かく描き込まれていて、思わず見入ってしまいました。

私の予想以上に、こてら先生が雲の上の世界を、緻密かつあそび心いっぱいに描いてくださいました。“くものうえの食べもの”もとてもかわいいんですよ。そんなアニマルバスならではの世界観に触れて、子どもたちは目一杯想像力を膨らませてくれるんじゃないかと思っています。

絵本は「想像力を使って遊ぶおもちゃ」

アニマルバスのお話に登場する食べものはどれも美味しそう。「食べものが出てくる絵本ってワクワクしますよね」と、あさの先生。

――絵本作家であり、「語りのプロ」でもあるあさの先生だからこそ感じる、絵本の読み聞かせのコツやポイントがあれば、教えていただけますか?

以前、保育園の先生が読み聞かせしているのを、見せていただいたことがあるんですが、子どもたちのハートをがっちりつかむのは、先生たちのほうが何枚も上手です。声優は、イントネーションの正しさや日本語の明瞭さに配慮したうえで、感情をたっぷり入れて話そうとします。でも、保育園の先生たちは、技術うんぬんよりも「どうしたら子どもたちの注意を引けるか」に注力していて、話し方にすごく求心力がある。アドリブを入れたり、同じ箇所を繰り返し読んだりと、子どもたちのテンションを上げるのがすごく上手なんです。ですから、逆に私が勉強させていただきました。

そもそも、ナレーションなどと比べて、読み聞かせにはライブ感がありますよね。子どもたちとキャッチボールをするように読み進めるような感覚は、見ていて「すごいなぁ」と感心するばかりでした。

そういえば、読み聞かせを見学させていただいて、気づいたことがもう一つあります。それは、「子どもたちの物語を楽しむ能力がすごく高い」ということ。読み手の滑舌がそれほど明瞭じゃなかったり、読み方が多少単調だったりしても、子どもたちは、それを自分たちの想像力で補填して、十分に楽しんでいるのがわかったんです。私は書いてあることをその通りに読むタイプなので、この体験はすごく刺激的で、「子どもたちって本当にすごい!」と感動しました。同時に絵本への理解もより深まった気がします。

――今回の作品はコロナ禍での制作となりましたが、そうした状況は作品に影響しましたか?

こんな状況だからこそ、「せめて絵本の世界では自由でいたい」という思いはありました。意識したわけではないのですが、これまでの作品よりも開放感があるというか、見晴らしのいい感じになっているのも、そのあたりが影響しているのかもしれません。でも、基本的なところは、いつもと同じ気持ちで書かせていただきました。

――絵本を通じて子どもたちに届けたい想いがあれば、ぜひお聞かせください。

私は、絵本のことを「想像力を使って遊ぶおもちゃ」だと思っています。だから、おもちゃで遊ぶみたいに、そして、お友だちの家にあそびに行くみたいに、頭の中の世界でファンファンたちといっぱいあそんでほしいですね。いまは、あまり自由におうちの外に出られなかったりしますが、その分、アニマルバスのみんなとお友だちになってくれたらうれしいな、と思います。

――これからも、素敵な作品で読者を楽しませてください!

いま絵本を読んでくれている子どもたちが大きくなったときに、「アニマルバスってまだ続いてるんだ!」と懐かしんでくれたり、「子どものころ、アニマルバス読んでいました!」と言われたりするくらい、長く愛されるシリーズにしていきたいと思います。アニマルバスがこれからどんな世界にいくのか、楽しみにしていてください。

現在、「アニマルバスキャラクターコンテスト」が開催されています。あなたが生み出したキャラクターが絵本の中で大活躍するかもしれませんよ!

©アニマルバス製作委員会 ©クーリア

【アニマルバスキャラクターコンテスト】
応募締め切り:2021年12月31日(金)
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.poplar.co.jp/topics/53145.html

声優・絵本作家
1977年秋田県生まれ。「おひさま」(小学館)主催 第13回おひさま大賞の童話部門最優秀賞を受賞。
作品に、『ちいさなボタン、プッチ』『はるってどんなもの?』(小学館)、『トイレこちゃん』(ポプラ社)などがある。
また、浅野真澄の名前で声優としても活躍、多数の出演作をもつ。
【公式サイト】https://www.masumin.net/
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