コロナ禍で子どもの運動不足が加速するいま、3〜5歳の子どもにすすめたい「運動遊び」 東京学芸大学教育学部教授・高橋宏文先生

コロナ禍で子どもの運動不足が加速するいま、3〜5歳の子どもにすすめたい「運動遊び」 東京学芸大学教育学部教授・高橋宏文先生

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いま、子どもたちの運動能力が低下し続けているといわれています。

幼児の場合、小中学生のように全国体力・運動能力調査といった客観データはありませんが、東京学芸大学教育学部教授の高橋宏文先生は、「幼児の運動能力も低下していると考えられる」といいます。

子どもたちの将来の姿のベースとなる成長に大きくかかわる保育士にとっては、他人事では済ませられないでしょう。

幼児の運動能力低下の要因と併せて、3〜5歳の子どもの運動能力向上のためにおすすめの「運動遊び」を高橋先生が教えてくれました。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

子どもの運動能力低下を招く「3間(さんま)の減少」

近年、子どもたちの運動能力の二極化が進んでいるといわれています。多くの子どもがたくさんの習い事をしているいま、なんらかのスポーツ教室に通う子どもたちは運動能力がどんどん伸びている一方、そうではない子どもたちの運動能力は低下の一途をたどっています。そして、全体を平均してみた場合、数十年前と比べると子どもの運動能力は大きく低下していることがデータからわかっているのです。

このことは、小中学生に限らず幼児にもいえることでしょう。いま、習い事をはじめるのは小学生になってからではありませんよね? 多くの子どもが小学校に入学する前から習い事をはじめていますから、運動能力の二極化がより進んでいます。

そして、子どもの運動能力低下の要因としては、まず環境の変化が挙げられるでしょう。この変化については、3つの間(ま)が減っているとして「3間(さんま)の減少」と表現されます。3つの間とは、「空間」「時間」「仲間」です。

ひとつ目の空間の減少については、とくに都市部で顕著です。かつては都市部にも子どもたちが遊べる空き地がありましたが、都市開発が進むなかでそういった空間はどんどん減っています。また、以前なら自由に子どもたちが遊べた公園も、いまは禁止事項だらけ。日常的に身体を動かして遊べる場が減っているために、子どもの運動能力が低下しているのです。

ふたつ目の間は時間です。それこそ多くの子どもが習い事をしているのですから、遊ぶ時間は激減しています。

3つ目の仲間についても同様です。多くの子どもが習い事をしているため、習い事に通っていない子であっても気軽に一緒に遊べる友だち、仲間がいません。習い事に通っている子から見ても同様で、せっかく遊べる日があっても、その日は友だちが習い事に行っているということもあるでしょう。

身体だけではなく、運動は心や脳の発達も促す

さらに、このコロナ禍も子どもの運動能力低下に拍車をかけていると見ています。いまは、習い事をしている子どもも、していない子どもも外で自由に遊ぶことが簡単ではない状態です。もちろん、マスクをして運動するのも大変です。今後、コロナ禍の影響を受けてさらに子どもの運動能力が低下することも考えられます。

また、コロナ禍によって子どもが多くのストレスをためていることも推測できます。子ども自身はストレスを自覚していないかもしれませんが、これまでは「3間の減少」のなかでも少ないチャンスを生かして身体を動かし、遊ぶなかで自然にストレスを解消できていたはず。その少ないチャンスも減っているのですから、身体だけではなく、心にもコロナ禍は大きな悪影響を及ぼしているのではないでしょうか。

そして、子どもの心に与える悪影響こそ、大きな問題だとわたしは考えます。というのも、子どもが元気に身体を動かして遊ぶことは、身体だけではなく心や脳の成長にも大きく寄与するものだからです。

数多くの研究によってはっきりしているのは、「運動することで脳が活性化される」ということです。運動時に活性化されるのは脳の「前頭前野」という部位で、神経伝達物質の伝達がスムーズになることがその要因です。

この前頭前野が面白いのは、運動を司る部位であると同時に「知能」や「感情」を司る部位であるという点にあります。そのため、運動をするほど運動能力とともに知能や感情も発達するのです。その結果、集中力や記憶力、自制心が育まれたり、感情の起伏をコントロールできるようになったりします。

3〜5歳の子どもたちにおすすめする運動遊び

そういう意味でも、たとえコロナ禍のなかであってもできるだけ子どもたちに運動をさせることが大切になります。ここでは、3〜5歳の子どもを対象に、わたしがおすすめする運動遊びを紹介しておきます。

ただ、これらの運動遊びをやりたがらない子どもに無理強いさせることは避けてください。そうしてしまうと、運動そのものを嫌いにさせてしまう可能性があるからです。どんな子どもでも、それぞれに合った、興味を持てる運動があるものです。そういう運動でこそ子どもたちは「できた!」という思いを感じられ、自分から運動をするようになっていくのです。

多くの子どもを見て、一人ひとりに合った運動遊びをプログラムするのは簡単ではないかもしれません。それでも、できるだけそれぞれの子どもが笑顔になれるような運動遊びを探してあげることが大切です。

◆コアラの親子

園では子どもたちが自然と保育士さんにまとわりついてしがみつくような場面があるものです。それを活かして運動にしてしまいましょう。

【遊び方】

抱っこの状態から子どもは落ちないようにしがみつきながら、保育士さんの背中にまわって前に戻ってきます。反対まわりもやってみましょう。

【アドバイス】

落下の危険を考慮して布団などのうえで行いましょう。最初は保育士さんが正座や膝立ちの姿勢ではじめ、立ってからも慣れないうちは補助者がいるとなおよいと思います。

◆風船バンバン

わたしの専門がバレーボールだからというわけではないのですが、いわゆるバレーボールのような運動遊びです。もちろん幼い子どもがいきなりバレーボールをするのは難しいですが、風船なら落ちてくるまでに時間の余裕がありますし、ケガをすることもありません。

【遊び方】

子どもたちと保育士さんが一緒になって風船が下に落ちないように打ち上げましょう。子どもたちだけでやらせるのもいいと思います。

【アドバイス】

スポーツではありませんから、どんな打ち方をしてもOKです。これがのちのちにタイミングを合わせてボールを打つといった、スポーツで有用な力も育んでくれます。

◆のぼりタオル

園にはお昼寝用のバスタオルや小さいタオルケットがあると思いますので、それを利用しましょう。いま、小学校でも危険だとしてのぼり棒が撤去されることも増えています。でも、のぼり棒は腕や握力、背筋、腹筋など上半身全体を鍛えてくれるものですから、代わりになる運動を考えることも大切です。

【遊び方】

保育士さんが持ったバスタオルに子どもが両手両足でつかまったら、保育士さんはバスタオルをゆらゆらと揺らします。子どもにただつかまらせるだけでなく、よじのぼらせてもいいでしょう。

【アドバイス】

万が一、落下したときのことを考え、布団のうえなどでやると子どもは安心して遊べます。

1970年5月9日生まれ、神奈川県出身。東京学芸大学教育学部健康・スポーツ科学講座教授。
1998年10月より東京学芸大学に講師として勤務し、同大学男子バレーボール部の監督に就任。
各種研究により効果が実証された指導理論を用い、広く見聞きすることと併せて独自の指導体系をつくり上げている。
著書に『幼児の運動あそび 親子で楽しむ魔法のレッスン帖』『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』
(ともにメディア・パル)などがある。

『幼児の運動あそび 親子で楽しむ魔法のレッスン帖』
高橋宏文 著
メディア・パル(2020)