幼いときの「基本的な動き」が将来の運動能力を決める。0〜2歳の子どもにすすめたい「運動遊び」 東京学芸大学教育学部教授・高橋宏文先生

幼いときの「基本的な動き」が将来の運動能力を決める。0〜2歳の子どもにすすめたい「運動遊び」 東京学芸大学教育学部教授・高橋宏文先生

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「運動」というと、「0〜2歳くらいの乳幼児にはまだできない」と思う人もいるかもしれません。しかし、東京学芸大学教育学部教授の高橋宏文先生は、「乳幼児も運動をしており、むしろのちのちの発達のためにこの時期の運動がとても重要」だと語ります。いったいどういうことなのでしょうか。その言葉の真意をお聞きするとともに、0〜2歳の子どもにおすすめする「運動遊び」を教えてもらいました。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

0〜2歳の乳幼児だって立派に運動をしている

「運動」という言葉からは、なんらかのスポーツや、鉄棒とか跳び箱といったものをイメージすることが多いと思います。もちろん、そんな運動を0〜2歳の乳幼児がやれるわけがありませんが、乳幼児も立派に運動をします。

生まれたばかりの頃はまだ横になっているだけですが、成長するにつれて寝返りができるようになり、頭を起こせるようになります。その後も、支えなしで座れるようになって、はいはいができるようになり、つかまり立ちをして歩きはじめるというふうに徐々に動きのバリエーションを増やしていきます。子どもにとっては、それら自体が運動なのです。

わたしは、いま紹介したような子どもの成長に伴う運動を「基本的な動き」と呼んでいます。これらは、子どもだけが行っているものではありません。寝ている姿勢から起き上がる、立っている姿勢から座る、寝転ぶなど、子どもか大人かを問わずわたしたちが日常生活のなかで無意識に行っている運動が、基本的な動きです。

もっといえば、スポーツをするときにもこれらの基本的な動きがベースになります。世界的なアスリートたちが披露する華麗なプレーも、そのすべてが、高度になった基本的な動きを組み合わせているものに過ぎません。

つまり、幼いときから基本的な動きをしっかりやってきたかどうかが、子どもが成長したあとの運動能力に大きなちがいを生んでいくということです

運動能力向上にとくに重要な「四つんばい」「高ばい」(たかばい)

なかでも、0〜2歳の子どもたちに運動遊びをさせるなら、「四つんばい」、「高ばい」が重要な基本的な動きです。高ばいとは、膝をつかずに手足で身体を支える姿勢のことで、じつはこの四つんばいと高ばいが、のちの運動能力を高めるために非常に重要だという研究があるのです。

<将来の運動能力を高める四つんばいと高ばい>

子どもの成長過程に必ず見られる四つんばい(図・上)と高ばい(図・下)。これらが、子どもの将来の運動能力を高めることがわかっています。

わたしの研究は乳幼児を対象にしたものではありませんが、じつは大人にとっても四つんばいや高ばいが運動能力向上に有効だということもわかっています。

わたしの専門はバレーボールです。学生たちに、高ばいの姿勢で前向きや後ろ向きに移動する、より速く移動するといったいろいろな動作をさせてみると、運動能力が高くバレーボールが上手な学生はスムーズにできます。

一方、運動能力が低くバレーボールが苦手な学生はうまくできません。ところが、高ばいのトレーニングを一定期間続けさせたあとには、運動能力が低かった学生も明らかに身体の動かし方がよくなり、バレーボールのプレーも向上します。

人間は、何百万年という長い進化の過程で、四つんばいと高ばいの時期を経て立ち上がることができました。その長い過程を、人間は赤ちゃんの頃のわずか1年で経験します。この発達過程にある、四つんばいと高ばいには間違いなく大きな意味があるはずです。だからこそ、四つんばいと高ばいを大切にしてほしい。

でも、残念ながらいまの子育ての場ではそうできていないようです。親御さんには、まわりの子どもより自分の子どもに「早く立ってほしい」「早く歩いてほしい」という思いがあるのでしょう。将来の運動能力を高めるために重要な、四つんばいと高ばいの過程をどうしても短くしがちなのです。そうなると、本来達することができるはずのレベルまでその子の運動能力が伸び切らない可能性が出てきます。

それは本当にもったいないことだと思います。ですから、保育現場ではぜひ幼い子どもたちに、できるだけ四つんばいと高ばいを取り入れた運動遊びをさせてください。そして、上記のことを親御さんたちにも教えてほしいと思います。

0〜2歳の子どもたちにおすすめする運動遊び

0〜2歳の子どもを対象にした、四つんばいと高ばいを取り入れた運動遊びを紹介しましょう。

ポイントは、保育士さんも一緒になって楽しんで遊ぶこと。幼い子どもにとっては、「楽しかった!」という思いがなにより大切です。そう思えたなら、その後は自分から進んでいろいろな運動に取り組むことにもなるでしょう。

保育士さんが率先して遊んで楽しむ姿勢を見れば、子どもも「なんだか楽しそう!」「やってみたい!」と思うにちがいありません。子どもに「大事な運動」と思わせるのではなく「楽しそうな遊び」と思わせるように、笑顔を絶やさず、保育士さん自身が楽しんで見本を見せてください。

高ばい

そのままズバリ、高ばいです。わたしたちは二足歩行で生活していますが、急に四足歩行をしようとすると身体の状態をうまくつかめず混乱します。大人にとっても簡単な運動ではありませんよ。保育士さん自身もぜひ挑戦してみてください。

【遊び方】

両手両足を床につけて、前向きに歩きます。スピードを上げたり、後ろ向きに歩いたりと変化をつけてみましょう。

【アドバイス】

はじめはゆっくりやりましょう。子どもの年齢が進めば、しっぽのように腰から下げたタオルを友だち同士で奪い合うという、高ばいの状態で鬼ごっこをするというアレンジもできます。

キャタピラ

運動会の定番のひとつですね。子どもはごっこ遊びが大好きです。ただこの遊びをするだけではなく、「ブルドーザーになってみよう!」といった声かけをすれば、より楽しんでくれると思います。

【遊び方】

段ボールを円筒状につなげます。両手と両膝を床についた四つんばいの状態で段ボールをキャタピラのように動かしましょう。

【アドバイス】

キャタピラのなかにいる子どもは視界が限られているので、進行方向には注意してあげてください。

動物歩き

・カエル

・ワニ

・アザラシ

ここで紹介したものの他、犬や猫など身近な動物の真似をしてみてもいいですね。遠足で動物園に行くようなことがあれば、そこにいる動物を観察したあとに動物歩きをしてみるとより楽しめるかもしれません。

【遊び方】

四足歩行の動物の歩き方を真似しましょう。カエルなら、両足でピョンと跳んで床に手をついてから足をつきます。ワニは、右手と左足、左手と右足を交互に動かして歩きます。アザラシはうつ伏せになって手を床につき、肘を伸ばして上半身を持ち上げて手の力だけで前進します。

【アドバイス】

「1・2」と声をかけてリズムをとってあげると子どもはスムーズに動けるでしょう。

1970年5月9日生まれ、神奈川県出身。東京学芸大学教育学部健康・スポーツ科学講座教授。
1998年10月より東京学芸大学に講師として勤務し、同大学男子バレーボール部の監督に就任。
各種研究により効果が実証された指導理論を用い、広く見聞きすることと併せて独自の指導体系をつくり上げている。
著書に『幼児の運動あそび 親子で楽しむ魔法のレッスン帖』『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』
(ともにメディア・パル)などがある。

『幼児の運動あそび 親子で楽しむ魔法のレッスン帖』
高橋宏文 著
メディア・パル(2020)