保護者クレームにあたふた!保育士の私を救った園長の神対応とは [ヤメエピ@保育士辞めたい]
「保育士辞めたい!」と感じる瞬間ありませんか?もう無理。。疲れた。。そんなあなたが心底共感できる話をお届け!
子ども同士のささいなけんかが発端でした
勤続5年目の保育士です。この春、入園したばかりの親子の話を聞いてください。
園児のまさひろくんは4歳の男の子です。毎日、まさひろくんと母親、父親の3人で一緒に登園してくるので、「仲の良いご家庭なんだなぁ」と思っていました。
そんなある日、まさひろくんが園庭の手洗い場の蛇口から水を出して遊んでいると、同じ組のみさきちゃんにかかってしまいました。すると、みさきちゃんは反射的に水をかけ返してしまい、まさひろくんは激怒。癇癪を起こしたんです。みさきちゃんはすぐに「ごめんね」と謝ったのですが、それでも大泣きして怒るので、別室に連れていってクールダウンさせることにしました。
少しすると落ち着いてきて、みさきちゃんとも仲直りできたのでほっとしていたのですが……。事態は思わぬ方向に向かっていったのです。
報告を聞いた母親が見せた「予想外」の反応
夕方、お迎えにきたまさひろくんの母親に昼間の一件を報告したのですが、話を聞いたとたん、普段の温厚そうな表情が一変。「みさきちゃんの親ママは知っているんですか?」「すぐ呼んでください。私にも直接謝ってほしい」と言いはじめました。
私としては、日々の報告のひとつとして話をしたつもりだったので、予想外の反応にたじたじ。納得してもらう方法が思い浮かばず、「対応については園長に相談させてください」と伝えるのが精一杯でした。
「犯人探し」をする母親に門前は緊迫ムード
翌朝、ふと園舎の門前に目をやると、そこには仁王立ちするまさひろくんの母親の姿がありました。隣にはまさひろくんもいます。「何をしているのだろう」と様子をうかがっていると、どうやら保護者の方たちに「みさきちゃんのお母さんですか?」と聞いてまわっている様子。
そして、当人を見つけると「人の子を泣かせておいてそのままですか。親としてきちんと謝ってください」と、怒りの表情で詰め寄ったのです。みさきちゃんの母親は、突然の出来事に動揺して平謝りするばかり。私は慌てて2人のところにかけよりましたが、うまく場をおさめることができません。すると、何もできずにいる私をみかねた園長が、足早にこちらにやってきました。
ピリピリモードの母親が園長のひと言に沈黙
園長は、みさきちゃんのお母さんをその場から解放した後、まさひろくんの母親に「いつもお子様を大切にされていて感服します。でもほら、見てください」と言い、まさひろくんに視線を送りました。
そして、ただごとでない雰囲気に緊張しているまさひろくんに「もう大丈夫」と声をかけ、母親にこう伝えたのです。「お気持ちはわかりますが、子どもたちですでに解決した問題です。大人が水を差すと、謝罪を受け入れた彼のがんばりが台なしですよ」。その言葉を聞いた母親は、まさひろくんの手を握ったままうつむき、さっきまでのような強い言葉を返すことはありませんでした。
翌日、まさひろくんはいつものように親子3人で登園。引き渡しの際、母親から「よろしくお願いします」と言ってもらえたので、とてもほっとしました。きっと園長の言葉をご理解いただけたのでしょう。それにしても、怒りが収まらない保護者を前にして、毅然とした態度がとれる園長はさすがです。私はまだまだ勉強不足ですね(泣)。
※本記事は、ほいくらし編集部の記者が取材を行い、その内容をもとに執筆した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えて構成していますご了承ください。
取材・文/木下喜子 イラスト/やましたともこ