保護者にピアノの腕を批判されて呆然…傷心の私を救った音大ママの言葉とは [ヤメエピ@保育士辞めたいエピソード]

保護者にピアノの腕を批判されて呆然…傷心の私を救った音大ママの言葉とは [ヤメエピ@保育士辞めたいエピソード]

「保育士辞めたい!」と感じる瞬間ありませんか?もう無理。。疲れた。。そんなあなたが心底共感できる話をお届け!

リトミックで、20年ぶりにピアノを弾くことに!

昨年、私が勤める保育園で、保育活動にリトミックを取り入れることになりました。リトミックはピアノ、タンバリンなどの音やリズムに合わせて、子どもたちが自由に体を動かす音楽教育です。しかし、うちの園にはピアノを弾ける保育士がほとんどいません。そこで、中学までピアノを習っていた私に白羽の矢が立ち、リトミックの伴奏を担当することになりました。

もちろん、弾けるといっても、上級者のようになめらかに指が動くわけではありません。弾くことが決まってからは毎日ピアノに触るようにしましたが、1日数十分の練習ですぐに上達するのは無理な話。「せめて、子どもたちが楽しく体を動かせるようにしよう」と強弱やテンポを意識しながら、簡単な和音を弾いてしのいでいました。

しかし、ある日頭を抱えるような出来事が起こります。園長が「保育参観の日にリトミックをやってほしい」と言い出したんです。今でさえいっぱいいっぱいなのに、大勢の保護者の前で弾くなんて、ハードルが高すぎますって!

保育参観で聞こえてきた、「ピアノ下手すぎない?」の声

迎えた保育参観の日。20人以上の保護者が見守るなかでリトミックがはじまりました。自分なりに練習はしたものの、大勢に見られているとさすがに指が震えます。案の定ミスタッチが続いたとき、どこからともなくこんなヒソヒソ話が聞こえてきました。

「ねぇ、ピアノ下手すぎない?」「わかる、ミスしまくっているよね」

話していたのは、母親たちで作っている合唱サークルのメンバーでした。2人は、私には聞こえていないと思っているのでしょう。小声でまわりの母親たちに同意を求めたりもしています。私はその声に動揺してしまい、子どもたちから「先生どうしたの?」と言われるくらいミスタッチを連発。リトミックはさんざんな形で終わりました。

参観が終わり職員室に戻ってからも、頭のなかは真っ白です。同僚や先輩は、「弾けるだけですごいよ」「よくがんばったね」とねぎらってくれましたが、さっきのヒソヒソ話が頭から離れません。それで、園長に「もうピアノは勘弁してほしい」とお願いしたのですが、「音楽あそびを取り入れると保護者に伝えた手前、途中でやめるのは難しい」と言って、首を縦に振ってもらえませんでした。

子どもたちが喜んでいるのなら、それでいい

そうこうしているうちに秋になり、子どもたちの発表会が近づいてきました。園でピアノ要員だと認識されている私は、年長さんの劇の伴奏を任されることに。しかし、年長さんには、例の合唱サークルメンバーのお子さんがいます。私は「参観日の失敗を繰り返さないようにしよう」と思い、必死で練習しました。

そのかいあって、大きなミスもなく劇を終え、安心してほかの学年の出し物を見ていたのですが……。数メートル離れたところに例の2人がいて、「あんな強いタッチで弾いたら子どものセリフが聞こえないよね」「目立ちたいのかしら?」と話しはじめました。よほど気に入らなかったのか、あえて私に聞こえるように話している様子です。とはいえ、そのときは出し物の最中。その場から移動することもできず、じっと批判の言葉に耐えていました。

「早くこの場からいなくなりたい」。そう思っているとき、ある人物が2人のところに近寄り、「そうですか? 先生のピアノ、素敵でしたよ」と声をかける姿が見えました。たかひろくんの母親です。彼女は音楽大学の助教授であり、園が音楽あそびに力を入れはじめたとき、童謡の楽譜をたくさん寄付してくれた方でもあります。音楽に関して、2人が太刀打ちできるはずはありません。彼女は出し物が終わるのを待って、「発表会の主役は子どもたちです。子どもたちが楽しんでいるのだから、何も問題ないじゃありませんか」と穏やかに言葉を続けました。そして、前を向いたまま硬直している私に向かって、「ねぇ、先生?」と話しかけてきたのです。

突然話を振られた私は、引きつった笑顔を返すくらいしかできませんでしたが、気まずそうにうつむく2人の姿を見て、少しだけ気持ちが晴れました。私のピアノは未熟ですし、彼女たちが文句を言いたくなる気持ちもわかります。でも、一方的に批判されたら、さすがに傷つきます。

それ以来、2人からピアノ伴奏への批判を聞くことはなくなりました。たかひろくんの母親の励ましでモチベーションもあがり、最近はピアノを練習する時間も増やしています。「主役は子どもたち」という言葉を胸に、今後もピアノをがんばっていくつもりなので、見ていてください!

※本記事は、ほいくらし編集部の記者が取材を行い、その内容をもとに執筆した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えて構成していますご了承ください。


取材・文/木下喜子 イラスト/やましたともこ

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