人手不足の保育園。慣れないイベント準備で全員ヘトヘト…子どもから目を離した隙に事件が![ヤメエピ@保育士辞めたいエピソード]
「保育士辞めたい!」と感じる瞬間ありませんか?もう無理。。疲れた。。そんなあなたが心底共感できる話をお届け!
田舎町の小規模園で働くことになった30代保育士。子どもの数が少ないとはいえ、わずか5人の保育士でやりくりするのは大変です。
そんななか、園では保護者同士の交流を目指して「作品展」を開催することになり、大忙しに!リーダーをまかされてがんばっていたものの、保育士全員がイベント準備に集中しすぎたせいで、最悪の事件が起こってしまいます。
東京とは比べものにならない豊かな自然環境に大満足!
東京から、関東圏の田舎町へ引っ越してきて2年。引っ越した先でも、東京に住んでいたときと同様、保育士をしています。いまの職場は、園のすぐ裏側に小川が流れていて、自然豊かな環境。子どもたちは、広い園庭でのびのびと遊んでいます。実をいうと、東京では園庭のない施設で働いていたので、この環境はすごくぜいたくに感じます。
職員には40代以上の方が多く、30代前半の私は当初から「東京からきた若い人」というポジションで、とてもかわいがってもらっています。保育士さんのほとんどは、生まれも育ちもこの地域の方なので、好奇心から「東京の園ではどんな製作をしていたの?」とか「どんな遊びをしていたの?」と、あれこれ質問されることもしょっちゅうです。
「展覧会」を企画したけれど、たった5人で大丈夫?
そんなある日のことです。私はベテラン保育士の真紀子さんに、「東京での経験を生かして、大人も子どもも楽しめるようなイベントを考えてほしい」と頼まれました。
ちょうどその頃、「このあたりは、東京と比べて保護者同士の交流が少ないんだな」と感じていたこともあって、私は保護者のみなさんが交流できるようなイベントを考えてみることに。思案の末に、保護者が一堂に会する「作品展」を提案しました。簡単にいうと、子どもたちが作った制作物を「作品展」という名目で園内に飾り、保護者のみなさんに鑑賞してもらおうというものです。
アイデアを聞いた先輩や同僚は、「楽しそう!」と賛同してくれたのですが、実は1つだけ懸念材料がありました。保育士の少なさです。比較的子どもが少ない園なので、保育士は私を含めて5名だけ。清掃スタッフを雇う余裕もないため、全員が保育の合間に施設内の掃除をしたり、お茶を淹れたりと雑務までこなしており、ただでさえ人手不足の状態なんです。
「イベントって意外に大変そう」「たった5人で、準備から運営までやりきれるの?」と考えると正直不安でした。しかし、私の不安をよそにみんなは「作品展」に大乗り気。「全員で協力するから!」と説得され、私がリーダーとなって“芸術の秋”に、「作品展」を開催することになりました。
連日のオーバーワークに全員がクタクタ
さて、やると決まった以上、子どもたちには開催までに制作物を作ってもらわないといけません。でも、これが想像以上に大変でした。制作の時間を確保するため早めに食事を切り上げたり、工作が苦手な子につきっきりで教えたりと工夫しながら進めたものの、かかる労力は普段の倍以上!
加えて、イベントを盛り上げるための看板や、作品紹介のプラカードなど、私たちが作るものもたくさんあります。連日、手分けして作業したのですが、人数の少なさはやはり致命的で、作業が追い付きませんでした。
当然、1人ひとりにかかる負担も大きく、最初は乗り気だった真紀子さんも「猫の手も借りたいほどの忙しさとは、このことだわね。本当に間に合うのかしら」と弱音を吐いていたほどです。
準備に集中しすぎたせいで、あってはならない事故が発生!
そうやってみんながドタバタするなか、園では起きてはならないことが起きてしまいます。
開催日が間近に迫り、子どもたちの制作もラストスパートに入った頃、真紀子さんが受け持つ3歳児クラスでは、工作の苦手なそうしくんが、少し難易度の高い作業に取り組んでいました。真紀子さんは子どもをせかさない方針なので、根気強くそうしくんに付き合っていたのですが……。作業に夢中になるあまり、みずほちゃんが部屋を出て外に行ったのを見落としてしまいました。ほかの保育士も、「作品展」の準備や雑務に追われて、そのことに気付いていません。
そのとき私は園庭にいたのですが、突然小川のほうから泣き声が聞こえてきたので、声のする方向に猛ダッシュ。小川のほとりで、転んで泣いているみずほちゃんを発見しました。外に出たみずほちゃんは、園の裏手にある小川に行き、水面をのぞき込んだときに、足をすべらせてしまったようです。
幸い深刻な事態は免れましたが、最悪のケースを考えるといまだにゾッとします。みずほちゃんは、足を捻挫して数日間休むことになり、親御さんからは「子どもから目を離して、何をしていたんですか!」と叱責されました。私たちはというと、かなり落ち込み、しばらくは反省の日々でした。
人手が足りていなかった、展示会の準備で忙しかったなどの理由があるにせよ、絶対にあってはならないことです。
無事に開催できたけれど、来年はやりたくない!?
それでも、「作品展」はどうにか開催。当日も案内役が足りなくてバタバタでしたが、保護者の評判は上々でした。保育士からも「大変だったけど、やってよかったね!」という声が聞かれたので、イベントとしては成功だったのではないでしょうか。
みずほちゃんと親御さんも、作品展を楽しんでくれたようでホッとしました。ただ、「来年もやるのか?」といわれると、考え込んでしまう自分がいます。準備にかまけて子どもにけがを負わせるなんて言語道断。もし来年も開催するなら、保育補助を入れるなどして体制を整えないと厳しいでしょう。いや、開催しないとしても、子どもたちの安全を守るためにもう少し人手が必要です。
経済的に保育士が雇えないなら保育補助パートさんでもかまわないので、来春からの人員補充を園長にお願いしようと思います。
※本記事は、ほいくらし編集部の記者が取材を行い、その内容をもとに執筆した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えて構成していますご了承ください。
取材・文/木下喜子 イラスト/やましたともこ