非認知能力育成にまつわる大豆生田啓友先生の名言「保育現場でできる、『非認知能力を育てる遊びレシピ』6選」のインタビュー記事より【子どもと関わるあなたへ贈る魔法の言葉】#08

非認知能力育成にまつわる大豆生田啓友先生の名言「保育現場でできる、『非認知能力を育てる遊びレシピ』6選」のインタビュー記事より【子どもと関わるあなたへ贈る魔法の言葉】#08

仕事をしていると、必ずと言っていいほど悩んだり、逃げ出したくなったりする場面があります。もしかすると、人生には楽しいことと同じくらい、試練があるのかも。だからこそ、壁にぶつかった時は上手に気持ちを切り替えることが大事です。このコーナーでは、「ほいくらし」に掲載されたインタビュー記事や対談記事のなかから、前向きになれる言葉や学びになる言葉などを厳選して紹介します。識者や人生の先輩方の“名言”に耳を傾けて、気持ちを切り替えるためのきっかけにしてください。

現在、世界中の教育現場で「非認知能力」がクローズアップされています。非認知能力は「人生を豊かにする力」などと言われたりもしますが、具体的にはどういった能力なのでしょう。そして、どうやって育てていけばよいのでしょう。玉川大学教育学部教授である大豆生田啓友の言葉から、非認知能力の要点を確認してみましょう。

保育者にとって大切なのは、子どもたちにとっての「心の安全基地」をつくること
――大豆生田啓友(玉川大学教育学部教授)

専門は乳幼児教育学・子育て支援。青山学院大学大学院教育学専攻修了後、青山学院幼稚園教諭などを経て現職。他に日本保育学会理事、こども環境学会理事も務める。『非認知能力を育てる「しつけない」しつけのレシピ』(講談社)、『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(小学館)など著書多数。

先の見えない時代に必要とされる、非認知能力とは?

保育の現場で働く方、あるいいは小さなお子さんを持つ保護者の方であれば、「これからの時代は非認知能力が大切」「非認知能力は幼児期から育むのが効果的」といった話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

非認知能力というのは、客観的な数字で測ることができない能力のことで、具体的には物事をやり抜く力、自分を信じる力、やる気、自制心、協調性などを指します。日常生活や社会活動において欠かすことのできない「心の力」と言ってもよいでしょう。

従来の教育では、読み書きや計算、IQ(知能指数)など、点数などで数値化できる能力が重視されてきました。しかし、近年はグローバル化やデジタル技術の発達、少子高齢化、地球温暖化などで社会の仕組みが大きく変化。先の見えない時代を生き抜くための力=非認知能力に注目が集まるようになっています。

では、非認知能力を育むためには、何が大事なのでしょうか? それに対する答えの一つとして、大豆生田先生が挙げたのが、冒頭で紹介した「心の安全基地をつくること」です。

先生は、子どもの育ちの基盤になるのはアタッチメント、すなわち「幼く不安定なころにしっかりと大人にくっつき、たしかな安心感を得ることで形成される情緒的な絆」だと言います。つまり、大好きな大人と安心してくっつける温かい信頼関係こそが、子どもたちの心の安全基地(安心や心地よさが保証された環境)となり、非認知能力を育むための起点になるというのが、先生の考えなのです。

信頼できる大人がいて、戻れる場所があるからこそ、子どもたちは自分から周囲と関わり、冒険することができる。そして、新しいことや困難なことと関わるなかで、やり抜く力や自分を信じる力、自制心、協調性などを学んでいく──。そうとらえれば、心の安全基地と非認知能力の関連性も理解しやすいのではないでしょうか。

非認知能力の育成には、子どもを「丸ごと温かく受け止めること」が大事

大豆生田先生は、心の安全基地をつくるにあたって大事にすべきなのは、「子どもの気持ちを丸ごと温かく受け止めること」だと言います。非認知能力の一つである「自分の気持ちをコントロールする力」を例にとりながら、この点について考えてみましょう。

自分の気持ちをコントロールする力は、「自分の気持ちを切り替える力」と言い換えることもできますが、それは子どもにとってなかなか難しい行為です。保育園の活動を見ていても、遊びの時間が終わったのに、なかなか遊びをやめないような子どもはたくさんいます。散歩の途中で疲れてしまい、「もう歩きたくない」と座り込んでしまう子どもも、けっして珍しくはありません。

そうしたときは「歩かないと置いていくよ」と言って、強制的に気持ちを切り替えさせることもできますが、それでは意味がありません。先生は、「子どもたちの気持ちを受け止めつつ、声かけなどで気持ちを切り替える方向に促すことが大事」だと話します。

「もう歩きたくない」と言われたら、「疲れちゃったね、ここまでよくがんばったもんね」と受容しつつ、「手をつないで歩いてみる?」「〇〇ちゃんの大好きな公園があそこに見えるから、あそこまでがんばってみようか?」などと声をかけてみる。そうやって選択肢を示しながら、子どもたちの気持ちの切り替えをサポートすることが、信頼関係につながるというわけです。

たしかに、気持ちを受け止めてもらえれば、子どもたちは安心します。そのうえで、次の行動を提示してあげれば、気持ちを切り替えるための心の準備や、感情のコントロールもしやすくなるでしょう。付け加えるなら、気持ちを切り替えて何かを達成できれば、自己肯定感の向上にもつながるはずです。

子どもの健やかな成長をサポートするためにも、「心の安全基地」という言葉は、ぜひ覚えておきたいですね。

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