第2回 子どもたちの「良質な食習慣」をつくるために保育士さんができること 栄養士|笠井奈津子

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文/栄養士 笠井奈津子 写真/櫻井健司

糖尿病や高血圧症のように、日頃の食生活が引き起こす生活習慣病は少なくありません。そして近年、これらの病気が若年化の傾向にあり、子どもたちのあいだでも広がりを見せています。

子どもにいい食習慣を体得させるために、大人が考えるべきポイントはどんなことでしょうか。

これまで多くの食事相談を受けてきた栄養士の笠井奈津子さんは、幼少期に身につけた食習慣による影響はとても大きいと話します。

大人のその場しのぎの選択が子どもの食習慣に影響を与える

子どもを保育園に預けながら仕事をしている保護者の方の相談を受けると、ほぼ必ずといっていいほど話題に挙がるのが夕食のこと。食事時間が遅くなってしまうことを含め、ライフスタイル全般に付随する悩みもよく聞きます。保育士のみなさんもこのような質問を保護者の方からされることがあるのではないでしょうか?

  • 夕食ができるまでに時間がかかるので、ついおやつをあげてしまって……おかずをあまり食べなくなってしまう。
  • 園からの帰り道に子どもに騒がれるとこちらも疲れてしまうので、ついお菓子をあげてしまって……。
  • すぐ出せるものをと思って、レトルトを使った丼や麺類など1品で終わることも。
  • 夕食の時間が遅いせいか、朝はあまり食欲がなくて、パン1枚を食べさせるのがやっと。

これを読んで、「うんうん、わかる!」「そういうときあるよね」と保育士や保護者の方も少なくないでしょう。もちろん、小さな子どもがいるわたし自身もこうした経験がまったくないとはいえません。

ですが、「わたしたち大人の選択が、子どもの食習慣を形成している」という意識を持つことはとても重要なことです。

たとえば、上記のような選択を頻繁に繰り返していたら子どもたちはどんなことを学ぶと思いますか? 

「お菓子で空腹をまぎらわせばいい」「騒いだら親がお菓子をくれる」「レトルトは日常的に食べるもの」というようなことを学んでいくでしょう。

一つひとつは、忙しい日常において「仕方ない」と思われるようなとても小さなことかもしれません。でも、これを在園中にずっと繰り返すと、その子の食習慣の土台になってしまうことは間違いありません。

大人になるにつれて食に関する知識が増えたとしても、「小さい頃からしていたことをやめる」というのは一朝一夕でできることではありません。

だからこそ、大人は子どもの食習慣にしっかり気を配る役目があります。

では、どんな対応がベストでしょうか? もちろんケースはさまざまで絶対的な答えはありませんが、子どもに対して次のように声をかけるのはいいと思います。

  • 「もうすぐごはんができるからちょっと一緒に我慢しようね」
  • 「食後に食べようと思っていたみかん、先に食べる?」
  • 「冷凍してあるおにぎりならすぐ出せるよ!」

少しだけ我慢することを学ぶのも大切ですし、空腹を満たすのはお菓子よりおにぎりのほうが断然いいでしょう。

子どもの食生活上の問題への対処に悩んだら、まずは「その子が大人になったときに続いていても問題がない食習慣かどうか」を基準に考えることです。

「野菜も嫌いだし果物も苦手」という子どもに対して、「ビタミンCがとれていないのではないか」と心配して「ジュースでいいわよ」とするのか、「食べられるものから食べようね」とするのかでは、大人になったときの食習慣は確実に変わります。

「果物の代わりにはジュース」という習慣が続いたら、当然、生活習慣病のリスクも高まります。よくやりがちなのが、子どもがお菓子をねだったときに「ごはんを全部食べたら、飴をひとつあげるね」というのも同じようなことですね。

こうしたことは、園ですることではないし、保育士には関係ないことだと思われるかもしれません。でも、保育士さんにも関係することはたくさんあります。

幼少期に身につけた食習慣が将来の食生活を左右する

子どもというのは自分の周りにいる大人をよく観察して、いいことも悪いことも学習していきますよね。それは、食事面においても同様です。

それこそ、園内の仕事が忙しくて立ったまま流し込むように食べている先生の姿を見て、「立ったまま食べてもいいんだ」と学習することがあるかもしないし、「早く食べるのってカッコいいな! すごいな!」と、誰がクラスで一番に食べ終えるかを競うことも……。

先生方にとって、仕事中の食事はスピード優先だと思いますが、ときには子どもたちと一緒になって、「誰が一番、ゆっくり食べられるかな?」と、よく噛むことに重きをおいた企画を考えてみするのもおすすめです。

また、見るだけではなく、子どもたちは会話からも食についての学びを深めています。

いまは低学年のうちから「痩せ」への憧れを抱いて、ダイエットをする子どもが増えていることが問題視されています。

そんな風潮があるなかで、先生同士が「ごはんを食べると太るから抜こうかなあ」なんて話していたことが耳に入ると「どうやらごはんを食べると太るらしい」などと間違った解釈をしかねません。

炭水化物は子どもにとって良質のエネルギー源であり、体の発育に欠かせないものです。

子どもに誤解されないような会話を心がけるとともに、「早寝早起き朝ごはん」のように、いいとされる食生活について先生からも折に触れてたくさん話してあげてください。

大人になると、多かれ少なかれ忙しさに負けて食生活が乱れてしまうことがあります。

でも、「実家にいるときは朝食をちゃんと食べていました」「実家の夕食の時間は早いほうでした」というような、もともといい食習慣を持っていた人たちは比較的スムーズに食生活を改善させることができます。

土台があるぶん、ゼロからはじめるよりも改善しやすいのです。幼少期に身につけた食習慣は、将来の食生活を左右するといっていいでしょう。

子どもの睡眠をサポートするために園内でできること

それからもうひとつ、夕食と睡眠の関係についても触れたいと思います。

「寝る子は育つ」といわれるように、睡眠は心身の健やかな発育において欠かせないものです。でも、登園ギリギリまで寝ていたせいで朝食を食べられず、午前中はどこか元気がない……。幼稚園や保育園にいると、そんな子どもの姿も少なからず見ていることと想像します。

これは実際、家庭内における課題であり問題ですが、保育士さんが子どもたちの大好きな給食やお弁当のレシピを保護者のみなさんに伝えることで、子どもの睡眠をサポートができるかもしれません。

夕食のスタート時間が遅いだけでなく、子どもがなかなか食べ進めなくて困っているという家庭は多いものです。

それこそ、なかには毎晩1時間半をかけて夕食を食べるなんていうケースも聞くほど。でも大好きな料理が夕飯にでれば子どものダラダラ食べを防げ、睡眠時間やコミュニケーションを取る時間を増やせるかもしれません

それこそ園内で出る給食は、切り方ひとつとっても子どもが食べやすい工夫がたくさんあります。そんなことを親御さんたちとの会話のなかで、自然に伝えてあげましょう。

また、どうしても家庭ではお肉を使った炒めものや揚げ物が中心になりがちですから、短時間で簡単にできるお魚料理を紹介するのもいいでしょう。

お肉よりはお魚、油を多く使う調理法よりは油を使わない調理法のほうが消化によく、翌朝すっきり目覚めやすくなります。

夕食の時間や食事内容は、睡眠の質を大きく左右します。いい食習慣を身につけることで生活習慣も整い、朝から元気に走り回る子どもの姿を見ることができたらうれしいですね。

栄養士/食育アドバイザー
1979年、東京都に生まれる。1児の母。聖心女子大学文学部哲学科卒業後、香川栄養専門学校(現・香川調理製菓専門学校)を経て栄養士になったのち、都内心療内科クリニック併設の研究所で食事カウンセリングに携わる。
産後、働き方を見直すなかでパラレルキャリアの道を開拓。
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