第5回 子どもたちと一緒に元気に遊べる、「疲れ知らず」な体づくり

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寒風吹く時期でも、園庭で「風の子」ぶりを発揮する子どもたち。子どもは元気であることが仕事のようなものですから、保育者であるみなさんにとっては微笑ましい光景だと思います。

しかし一方で、「大人は火の子」です。寒さで体が縮こまることはもちろん、元気いっぱいな子どもたちと真正面から向き合って遊ぶのは、本当に大変だと思います。

とくにいまはコロナ禍ですから、平常時の保育よりも格段に神経を使い、心身ともに疲れが出やすいタイミングなのではないでしょうか。

「最近、食事も睡眠もちゃんととっているのに疲れがとれない」と感じる人は、日々の食事から栄養がうまくとれていないのかもしれません。今回は疲れにくい体を作る秘訣を、栄養士の笠井奈津子さんに教えてもらいました。

文/栄養士 笠井奈津子 写真/櫻井健司

「疲れている」をあたりまえにしてはいけない

冬休みに、4歳のわたしの息子がお年玉を握りしめてこんなことを言いました。

「先生のところに行きたいな。疲れたっていっていたから、おいしいごはんを食べて元気になってもらおうと思って」

大人はどうしても、忙しかったり疲れたりすると食事に手を抜きがちです。「おいしいごはんを食べると元気になる」という感覚は、もしかしたら子どものほうが敏感なのかもしれない。そう思うような出来事でした。

もちろん、わたしたち大人も、おいしくて栄養バランスがいい食事をしたときに、心身の疲れが一掃されたように感じることはあります。ちょっとくらいの疲れであれば、一晩よく寝ただけでスッキリ! ということもあるでしょう。

「栄養」と「睡眠」が疲労回復に欠かせない要素だということは、これまでの経験で実感されていると思います。でも、日常的に「疲れ」をリセットするように心かげているかというと、そうではない人のほうが圧倒的に多いのです。

「ちゃんと食べて寝ているはずなのに、スッキリと気持ちよく目覚められない」

「疲労が取れない」

このようなことが日常的になっていても、「仕事が大変な時期だから仕方ない」で終わらせてしまう人は少なくありません。

でも、「なにをするにもおっくう」「疲れてしまって、食べたいものすら思い浮かばない」というような状態になってしまう前に、食事面での改善を試みてほしいのです。

なぜなら、自分ではしっかり食べているつもりでも、気づかぬうちに「栄養不足」になっている可能性があるため。必要な栄養素が不足した状態を長く続けていると、メンタル面にも負荷がかかり、ストレスへの抵抗力や免疫力が低下して、かぜなどの感染症にもかかりやすくなってしまうのです。

「疲れている」ことをあたりまえにしても、いいことなどひとつもありません。

食べているつもりでも「栄養不足」はあり得る

「なんだか体がだるい」「疲れがとれない」など、健康診断ではとくに問題はないけれど周りにも理解されにくく、本人としてはつらい状態——。食事カウンセリングではこのような病気未満の相談をよく受けますが、疲労回復のためにおすすめしている栄養素はビタミンB群です。

なかでも、糖質をエネルギーにかえるために必要なビタミンB1(豚肉や玄米や雑穀のような未精製の穀類、豆類に多く含まれる)、タンパク質や脂質、糖質の代謝に関与するビタミンB2(魚、卵、乳製品などに多く含まれる)はしっかりとおさえていきたいポイント。

これらが不足すると代謝が滞り、その結果、疲労物質が蓄積しやすくなってしまうからです。「バランスよく食べているつもりなのに疲れが取れない」という人は、これらの栄養素が多く含まれる食材を積極的に摂取するように心がけてください。

【疲れが取れない人におすすめの食材】

多く含む食材
ビタミンB1豚肉や玄米・雑穀など未精製の穀類、豆類
ビタミンB2魚、卵、乳製品

また、特定の栄養素の不足だけではなく、朝食を抜いたり、主食・主菜・副菜のバランスが偏ったりすることでも疲労回復力は確実に下がります。まずは自分の食事内容を3日分ほど書き出して、「なにをどれくらい、どんな時間に食べているのか」を可視化してみましょう。

「体重が減っているわけではないからよく食べているはず」と思っている人でも、実際に書き出してみると欠食や偏食が多かったりするケースはめずらしくありません。1日の総摂取カロリーだけで見れば十分だとしても、ビタミンやミネラルが不足していては体を快適に動かすことはできません。

もちろん栄養不足で疲労感が出るのは、大人だけではなく子どもだって同様です。「運動嫌い」「いつもボーッとしていてやる気がない」という子が園にいたら、それはもしかしたら栄養不足のせいかもしれません。

「疲労回復」というテーマは保護者も気になるキーワードですから、園だよりなどで「疲労回復におすすめの栄養素・食材」などを情報共有するのもよいでしょう。

ストレス抵抗力を高める栄養素を知ろ

現代社会は「ストレス社会」などとも言われますが、わたしたちはストレスを感じたときにより強く疲れを感じることがあります。実際、ストレス下にある体は、たくさんの栄養を消耗しています。というのも、ストレスと戦う副腎皮質ホルモンをつくるためには、タンパク質、ビタミンB群、ビタミンCなどの栄養素が必要だからです。

とくに、ビタミンB群には精神を安定させる作用もあるため、不足すると余計にストレスを感じ疲労感も強まるという悪い循環に陥ります。

タンパク質やビタミンB群は主菜を意識して摂ることで補えますが、ビタミンCはその摂り方に少し注意が必要です。ビタミンCは果物や野菜に多く含まれますが、水に溶けやすく熱に弱いという性質があるため、とくに野菜を調理する際には「茹で過ぎない」「加熱し過ぎない」ということを心がけましょう。

そして、ビタミンCは一度にたくさん摂取しても、余分なぶんは体外に排出されてしまううえ、体にためておくことができません。「朝にビタミンCたっぷりの果物を食べたら今日の補給は終わり」ではなく、毎食ごとに補給したいものです。

エネルギー切れをしない食べ方のコツ

疲れを感じたときや集中力をアップさせたいときに、「ちょっと甘いものを食べよう」と思ったことはありませんか? 実はこの対処法、本当はおすすめできないものなのです。

その理由は、わたしたちが集中できるコンディション、気持ちを安定させるコンディションには、「血糖値をただ上げることではなく、血糖値の変動が穏やかであること」が求められるから。

糖質が多く含まれる食べ物を摂取すると、血糖値は一気に上昇します。しかし、血糖値の急激な上昇は体にとって危険な状態であるため、血糖値の上昇を抑えるインスリンが膵臓から大量に分泌され、一気に血糖値を下げようとします。

こうした急激な血糖値の乱高下を繰り返すと、疲労感を感じやすく情緒も不安定になりやすいのです。

とはいえ、人間の体は食べなければエネルギー切れを起こします。そこで重要なのは、「血糖値の上がりにくい食べ方」を心がけることです。

1日2回の食事では、3回しっかり食事をとったときよりも食後の血糖値が上がりやすくなるため、できるだけ欠食をしないようにすることは基本です。

忙しくておにぎり1個しか口にできないようなは、血糖値の上昇をゆるやかにする食物繊維に注目しましょう。同じ穀物でも精製度が低いほど、食物繊維が多く含まれます。つまり、おにぎりであれば白米より雑穀入のもの、パンであれば白いパンよりも全粒粉を使った茶色いパンと、食物繊維が豊富な炭水化物を選ぶといいでしょう。

不規則な勤務形態だと、欠食をしやすかったり、ちゃんとした食事をとるかわりに間食が多くなったりということが起きがちです。忙しいとどうしても自分のケアが後回しになってしまいますが、疲労感を放置してはいけません。

子どもたちをいつも見てあげているように、自分自身が「どれくらい食べているか」も定期的にチェックしてほしいと思います。

「ちゃんと食べて元気な体をつくろうね!」という子どもへの声かけも、元気な大人が言ってはじめて説得力が増すというもの。元気いっぱいの子どもと、一緒に元気に遊べるように、日々の食事で疲れをこまめにリセットしていきましょう。

栄養士/食育アドバイザー
1979年、東京都に生まれる。1児の母。聖心女子大学文学部哲学科卒業後、香川栄養専門学校(現・香川調理製菓専門学校)を経て栄養士になったのち、都内心療内科クリニック併設の研究所で食事カウンセリングに携わる。
産後、働き方を見直すなかでパラレルキャリアの道を開拓。
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