第6回 頭がよくなる食事と、頭がよくなる園での生活習慣

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「病気知らずで、元気に育ってくれるだけで充分」と思っていても、年齢が上がるほどに子どもたちの学習面も気になってくるものです。むかしから、「魚を食べると頭がよくなる」と言われていますが、なにかを食べて頭がよくなることは本当にあるのでしょうか? 

「脳にいいとされる食材」や「NGな食べ方」、また、園での生活習慣からのアプローチについて、栄養士の笠井奈津子さんに教えてもらいます。

文/栄養士 笠井奈津子 写真/櫻井健司

近年よく聞くブレインフードってなに?

近年、脳を活性化する食べ物、脳にとっていいとされる食べものを「ブレインフード」と言うようになりました。

ブレインフードの代表例としては、栄養素・DHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含む魚が挙げられます。DHAは脳の細胞膜を形成するリン脂質に含まれていて、それが多いほど記憶促進物質の情報伝達がスムーズになり、記憶力や学習力の向上に寄与するとされます。

しかしながら、そこには問題があります。DHAを多く含む食材は子どもが好むものではなく、頻繁に食卓に上る食材ではないからです。

<DHAを多く含む食材の例>

  • ぶり、さば、さんま、いわしなどの青魚
  • まぐろ
  • うなぎ

そのうえ、DHAは必須脂肪酸の一種なので、焼き魚にすると脂が流出しDHAの摂取量も少なくなってしまいます。DHAを摂りたいならば、お刺身などの生食がもっとも効率はいいのですが、消化機能が未熟な子どもには難しい話です。

そこで提案したいのが、日々少しずつ補給をすることです。たとえば、ひき肉を使った料理であればハンバーグやミートソースの一部をさば缶などに置き換えることができます。さばの味噌煮缶などはすでに味がついているので、ご飯を炊く際に一緒に加えていつもどおり炊飯すれば、味付け不要でさばの炊き込みご飯のできあがりです。

「目が怖い」「骨が面倒」など、魚に対してネガティブな印象を持っている子どももたくさんいます。絵本の読み聞かせや食育の時間を有効活用して、子どもたちが魚を好きになり、ポジティブな印象を持てるように保育士さんからも働きかけていただけると嬉しいです。

「魚を食べると頭がよくなる」「人参を食べると目がきれいになる」――。小さい頃に言われたことは、そのとき理解できていなくても、意外と覚えているものです。子どもたちに、そう伝えてあげてください。

また、身近な食材の「卵」や「大豆」に多く含まれるレシチンも、記憶力や集中力を高める食材です。魚、卵、大豆はいずれもタンパク質で主菜となるもの。それらをバランスよく食べることは、健康面だけではなく学習面にとってもいいのです。

子どもの糖質オフは絶対にNG!

そして、体を動かすのはもちろん、脳をきちんと働かせるためには糖質も欠かせない存在です。もしかしたら「なにも食べないよりはいいから」と、朝から子どもに菓子パンを食べさせているご家庭もあるかもしれません。白状すると……我が家でも、時折、砂糖がコーティングされたシリアルが朝食に出ることもあります。朝はどこの家庭も戦場ですから、綺麗事ばかりは言っていられませんよね。

でも、これが「ほとんど毎日」になったら黄信号。甘いものを食べ過ぎると、その代謝のために「脳機能を正常に保つ」「集中力や記憶力をアップする」働きを持つビタミンB群が消耗されてしまうのです。

子どもが好む食材といえば、かぼちゃ、さつまいも、とうもろこしなど糖質が高いものが多いと思います。それに加えて、菓子パンのように「菓子」と名がついたものが食事代わりに出るようになったら、確実に糖質を取り過ぎてしまうので注意しましょう。

主食はしっかりと!炭水化物=糖質ではありません

ごはん、パン、麺類などの炭水化物についても考えてみましょう。たとえば、「今日はお菓子をいっぱい食べたからごはんは控えようね」なんて調整を子どもにするのはいい選択でしょうか? 大人である皆様にも誤解してほしくないのですが、「炭水化物=糖質」ではありません。

炭水化物は、糖質に食物繊維という栄養素が合わさったものであり、「糖質+食物繊維=炭水化物」なのです。主食を控えてしまったら、食物繊維という必要な栄養まで不足してしまいます。

また、主食を控えると、好きなおかずばかり余計に食べてしまうこともありますので、食事のバランスがくずれないよう、間食ありきで食事を調整するのはやめましょう。

炭水化物が嫌いな子どもはそういないと思います。「食べる」「噛む」という行為自体が刺激を与え、血流を増やして脳を活性化することになるので、子どもたちが好きな主食はしっかり食べさせましょう。

「食べる」からはじまる好循環を知っておこう

脳を活性化するためには、食べものだけではなく、しっかり体を動かして脳に刺激を与えることも大切なことです。でも、食べる量が少なかったり、食べていても栄養が不足気味だったりではエネルギーが足りずに思いきり遊ぶこともできません。そして、体を動かさないからお腹が空かず、また次の食事もあまり食べないという悪循環に陥ります。

この悪循環を断ち切るのは、保育士さんにできることのひとつだと思います。子どもも大人も、「空腹が最大の調味料」になるのは同じです。いまは大人数での外遊びを避けるために、半分は室内で遊ぶ、半分は外で遊ぶというような対応をしていて、例年よりも運動量が少なくなっているかもしれません。

関連して、室内遊びが多い子どもはお昼寝をあまりしない傾向にありませんか? そんな日の昼食は、いつもより食べ残しが多かったり、食べ終わるまでに時間がかかったりすると思います。なにかと制限が多いなか、遊びひとつとっても配慮すべきことが多く大変だと思いますが、「昼食をいっぱい食べてもらい、お昼寝もしっかりする」。そんなイメージで午前中の園の予定を組むといいのではないでしょうか。

「脳に刺激を与える運動」「記憶を定着させる睡眠」。こうした基本的な生活習慣も子どもの学習面の向上には欠かせないものです。食事が苦手な子には、このような生活面からのアプローチが有効なのでぜひトライしてみてください。

また、子どもの食欲はまわりにいる大人の表情や雰囲気によっても左右されがちです。家庭は「食事を作る人=一緒に食べる人」なので、好き嫌いがあると「せっかく作ったのに!」とつい不穏な空気になりやすい傾向にあります。でも、園ならではの保育士さんの立ち位置をうまく生かして、好き嫌いがあっても、楽しく食べることができるように見守ってあげてください。

栄養士/食育アドバイザー
1979年、東京都に生まれる。1児の母。聖心女子大学文学部哲学科卒業後、香川栄養専門学校(現・香川調理製菓専門学校)を経て栄養士になったのち、都内心療内科クリニック併設の研究所で食事カウンセリングに携わる。
産後、働き方を見直すなかでパラレルキャリアの道を開拓。
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