【心理カウンセラーが教える】子どもの自己肯定感の高め方⑥「自己決定感」「自己有用感」を高める

【心理カウンセラーが教える】子どもの自己肯定感の高め方⑥「自己決定感」「自己有用感」を高める

日本における「自己肯定感」ブームを作った第一人者であるカリスマ心理カウンセラーの中島輝さんが、自己肯定感の重要性と自己肯定感を高める方法を解説してくれる連載「【心理カウンセラーが教える】子どもの自己肯定感の高め方」もいよいよ最終回。中島さんは「自己肯定感とは『6つの感』で構成されている」と提唱しますが、第6回目に取り上げるのは、いずれも「子どもたちの幸せに直結する『感』」だという「自己決定感」と「自己有用感」です。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
取材・文/清家茂樹 写真/川しまゆうこ

自分で決定できるという感覚――自己決定感

いまや数多くの場面で見聞きする「自己肯定感」。その意味するところは、「ありのままの自分を肯定し、認めることができる感覚」です。この自己肯定感は、わたしが「6つの感」と呼ぶ要素で構成されていると考えています。そして、自己肯定感を1本の「木」だと考えると、「6つの感」はそれぞれが根や幹、枝、葉にあたります。

今回は、「6つの感」のうち、「自己決定感」と「自己有用感」について解説しましょう。

自己決定感とは、「自分で決定できるという感覚」のこと。ここでいう「決定」とは、進学先や就職先を決める、または、結婚を決断するといった特別な決定に限ったものではありません。日常にも、「決定」はたくさん存在します。

朝、目を覚ましたら、このままベッドを出るのか、それとも少しまどろむのか。水で顔を洗うのかお湯で洗うのか。どんな服を着てどんな靴を履いて出かけるのか。そのような大小様々な選択の繰り返しが、わたしたちの1日、1年、そして人生をつくっていきます。

だからこそ、誰かに決められるのではなく、自分自身の意志でものごとを決められるかどうかが、わたしたちの幸福度を大きく左右するのです。実際、数多くの心理学の研究が、「自分で決めた!」という「人生を自分でコントロールできている感覚」と幸福度が比例することを示しています。

自己決定感と幸福度のあいだにある大きな関連性

では、どんな子どもが自己決定感をしっかり育むことができないのでしょうか? それは、親など周囲の大人が先まわりをして勝手な「答え」を与える環境で育った子どもです。

そういう環境に置かれた子どもは、なにかをしたいと思ったとしても、「それは危ないから駄目!」「それよりこういうことをしたほうがあなたのためになるよ」というふうに子ども自身の意志を否定され、決定権を奪われます。

そういう子どもが、どんな大人になるのかは想像できますよね? 周囲の意見に頼り、依存するという、いわゆる「指示待ち人間」になってしまいます。

指示待ち人間の持つ問題は、ただいわれたことだけをやって主体性に欠けるということにとどまりません。他人に決められたことを優先するため、その指示に従ってものごとがうまくいかなかったような場合には、まわりのせいにする他責的な人間になってしまうのです。

もちろん、そういう人間が周囲とよい関係を結ぶことは難しく、結果として幸せな人生を歩むことも難しくなるでしょう。このことからも、やはり自己決定感と幸福度のあいだに大きな関連性があることが見えてきます。 子どもたちに幸せになってほしいと願わない親や保育士さんは誰ひとりいないはずです。子どもが幸せな人生を歩んでいけるように、ぜひこの自己決定感をしっかりと伸ばしてあげてください。

自分はなにかの役に立っているという感覚――自己有用感

今回取り上げるもうひとつの「感」が、「自己有用感」です。自己有用感とは、「自分はなにかの役に立っているという感覚」であり、木でたとえると「実」にあたります。

人間は、自分のためだけに頑張ることができない生き物です。人類の長い歴史において、狩猟民族も農耕民族も集団生活を送ってきました。集団で力を合わせて狩りをしたり作物をつくったりして遥かむかしから生き抜いてきたのです。

もちろん、いまという時代を生きるわたしたちの生活様式はむかしとはまったくちがうものになっていますが、集団のなかで自分が役に立つということ、誰かのために頑張ることで幸せを感じられるという本能は、わたしたちにいまなお息づいています。

「〇〇さんは頼りになるなあ」とか「○○さんがいると場が明るくなる」といった言葉はもちろん、ただシンプルに「ありがとう」という言葉を誰かにかけられただけでもうれしくなりますよね。周囲の人や社会とのつながりのなかで「自分は役に立っているんだ!」と思えることは、まさに甘い果実のようなご褒美を受け取っているようなものなのです。

そうしてうれしいご褒美を受け取れば、周囲にも同じようにそのご褒美をわけ与えたくなります。つまり、感謝されたら感謝する、幸せを与えられたら幸せを与えるというふうに、社会のなかで前向きな連鎖を生むことにつながるのです。 この自己有用感は、簡単には「社会性」といってもいいでしょう。社会生活を営む人間に必要不可欠の力です。子どもたちが今後の人生のなかで社会から取り残されることなどないよう、しっかりと社会性——自己有用感を育んであげたいものです。

思いつくままに自分の願いを書き出す「Wishリスト」

では、自己決定感と自己有用感を高めるためのワーク「Wish(ウィッシュ)リスト」を紹介します。

◆ワーク【Wishリスト】

Wishリストとは、自分が持っている願い(Wish)をノートにどんどん書き出していくワークです。書き出す願いは、自分のやりたいこと、興味のあること、楽しみたいこと、望んでいることなどなんでも構いません。思いつくままに書いていきましょう。

願いを書き出すと、その実現の可能性が高まることが知られています。専門的には「機能的自律性」といいますが、自分の興味や関心を自覚すると、それを実現したいというモチベーションが高まるのです。

そして、自分の願いを自分で書き出してその実現に向かって行動することはどういうことかというと、自分で決めて自分の人生をコントロールすることに他なりません。そのため、Wishリストによって自己決定感が高まるのです。

また、先述したように「誰かの役に立ちたい」という願いは、人間の本能的なものです。そのため、Wishリストに数多くの願いを書き出すと、そのなかには「誰かの役に立ちたい」ということにつながる願いも含まれるでしょう。

たとえば、「保育士としてもっと成長したい!」という願いだって、子どもたちや親御さん、勤務先の園はもちろん、ひいては社会や世界のために役に立ちたいという願いだといえるはずです。そういう願いを自覚し、その実現に向かって行動することが、自己有用感を高めることにつながります。

もちろん、幼い子どもたちが自分で願いを書き出すことは難しいでしょう。ですから、保育士さんや親御さんが、「やりたいことある?」「食べたいものは?」「なにが欲しい?」というふうにどんどん子どもから願いを引き出してあげてください。

子どもの夢を肯定することで、自己決定感や自己有用感が高まる

そのとき、現実的な判断によって子どもの願いを否定するようなことは避けてほしいと思います。子どもの「宇宙に行ってみたい!」という言葉に、「それはちょっと難しいんじゃないかな…」なんて返してしまったら、子どもが自由に願いを思い描くことができなくなります。

そうではなく、「いいね、いいね!」と肯定し、さらなる願いを引き出してあげる。そうすることで、子どもの自己決定感と自己有用感はどんどん高まっていくでしょう。

【自己肯定感を高めるワークを行う際の留意点】

・大人にも子どもにも効果があるため、保育士と子ども、あるいは親子で一緒に楽しむ
・子どもがやりたがらないワークは、無理にやらせない
・保育士や親が楽しんで取り組んでいる姿を子どもに見せる

心理カウンセラー
「トリエ」代表。「肯定心理学協会」代表。心理学、脳科学、NLPなどの手法を用い、独自のコーチングメソッドを開発。
Jリーガー、上場企業の経営者など1万5000名以上のメンターを務める。現在は「自己肯定感の重要性をすべての人に伝え、自立した生き方を推奨する」ことを掲げ、「肯定心理学協会」や 新しい生き方を探求する「輝塾」の運営のほか、広く中島流メンタル・メソッドを知ってもらうための「自己肯定感カウンセラー講座」「自己肯定感ノート講座」「自己肯定感コーチング講座」などを主催。著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)、『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)など多数。

自己肯定感アカデミー(https://ac-jikokoutei.com/