いざ転職を考えたとき、意外に難しいのが「どのエリアを選んで就職活動をするか」ということ。地方から上京して就職する場合はもちろん、都内に住んでいたとしても、自分の住んでいる地域以外のことはなかなか、わからないものです。ここでは、東京都23区を中心とした保育園事情と、働く上でのエリア選びのポイントをお伝えします。
こんな人におススメ!23区エリア別の保育園事情とは?
まずは、23区を大きく4つのエリア(都市部、南部、西部&北部、東部)に分け、それぞれの特徴や待機児童数などを比較してみましょう。
※表内の数値は、すべて東京都福祉保健局の調査による2017年4月1日時点のものです。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2016/07/DATA/20q7j503.pdf
都心部(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)
「せっかく東京で働くなら、都会らしい環境でカッコよく活躍してみたい!」という人にぴったりなのが都心部エリア。教育熱心な家庭が多かったり、国際企業や大使館が集中していたりすることもあり、語学力など特別なスキルを生かして働きたい人にも向いています。また、大企業が立ち並ぶ都心部には事業所内保育所もたくさん。運動会のような大規模行事がないことの多い事業所内保育所では、「日々の保育に集中しやすい」という保育士さんの声もあります。
都心部 | 就学前児童人口 | 保育サービス利用児童数 | 待機児童数 |
---|---|---|---|
千代田区 | 3,364 | 1,513 | 0 |
中央区 | 9,674 | 4,344 | 324 |
港区 | 15,208 | 6,737 | 164 |
新宿区 | 12,550 | 6,147 | 27 |
文京区 | 11,219 | 4,379 | 102 |
渋谷区 | 10,347 | 4,402 | 266 |
南部(品川区、目黒区、大田区、世田谷区)
就学前児童人口が多く、世田谷区を中心に待機児童数も多めの東京南部。もちろん、保育士の求人にも事欠きません。都心部と並んで物価が高いこともあり、住むには敷居が高そうにも思えますが、自治体による保育士向けの住宅借り上げ制度などをうまく活用すれば、あこがれのエリアで暮らすことができるかもしれません。また、旅行好きの人にとっては、羽田空港が位置する大田区で働くというのもひとつの魅力となるでしょう。
東京南部 | 就学前児童人口 | 保育サービス利用児童数 | 待機児童数 |
---|---|---|---|
品川区 | 19,674 | 9,516 | 219 |
目黒区 | 12,963 | 4,840 | 617 |
大田区 | 32,441 | 13,388 | 572 |
世田谷区 | 44,314 | 16,503 | 861 |
西部&北部(中野区、杉並区、豊島区、北区、板橋区、練馬区)
子育て環境に恵まれたイメージが強い東京西部と北部。保育サービスを利用する子どもの数が多いエリアで、待機児童対策にも熱が入っています。保育施設数が増加傾向にある区も多く、「若手のうちから役職に挑戦したい」「オープニングスタッフとして活躍したい」という気持ちがある人にピッタリ。また、埼玉県とのアクセスがよく、隣県から通勤しやすいことも特徴です。
東京西部&北部 | 就学前児童人口 | 保育サービス利用児童数 | 待機児童数 |
---|---|---|---|
中野区 | 13,006 | 5,526 | 375 |
杉並区 | 24,818 | 10,793 | 29 |
豊島区 | 10,595 | 5,350 | 0 |
北区 | 14,846 | 7,430 | 82 |
板橋区 | 25,515 | 12,233 | 231 |
練馬区 | 34,871 | 14,643 | 48 |
東部(台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)
下町情緒あふれる東京東部には、長年その土地に愛着を持って住み続けている人が多い傾向にあります。保育園も、長い歴史を持つ法人が運営する、地場に強い園が多いようです。自然豊かなエリアでもあり、広い園庭やお散歩ルートを活用しながらのびのびとした保育を実践したいという人におススメです。また、23区内では比較的物価が安いことや、隣県の千葉県から通いやすい立地も特徴だといえるでしょう。
東京東部 | 就学前児童人口 | 保育サービス利用児童数 | 待機児童数 |
---|---|---|---|
台東区 | 7,552 | 3,149 | 227 |
墨田区 | 11,953 | 5,944 | 148 |
江東区 | 26,987 | 12,758 | 322 |
荒川区 | 10,005 | 5,273 | 181 |
足立区 | 31,054 | 12,712 | 374 |
葛飾区 | 21,037 | 10,585 | 76 |
江戸川区 | 34,865 | 11,800 | 420 |
東京都と近隣3県(神奈川、千葉、埼玉)を比較してみると?
東京都と比較検討しておきたいのが、隣接する神奈川県、千葉県、埼玉県です。保育所、こども園、小規模保育所の総数を比較すると、東京都が2,281件と圧倒的なのは当然ですが、次いで多いのは埼玉県の919件。公営と私営の割合で比較すると、公営の割合が多いのが千葉県(44%)で、私営の割合が多いのが神奈川県(76%)でした。また、採用者数や退職者数については、やや東京都での動きが激しいものの、各県でその割合に大差はありません。
保育所等の総数 | 採者用数 | 退職者数 | ||
---|---|---|---|---|
東京都 | 2,281件 | 5,976人 | 3,328人 | |
746件 (33%) | 1,535件 (67%) |
|||
神奈川県 | 407件 | 937人 | 560人 | |
99件 (24%) | 308件 (76%) |
|||
千葉県 | 407件 | 1,238人 | 716人 | |
280件 (44%) | 362件 (58%) |
|||
埼玉県 | 919件 | 1,756人 | 1,105人 | |
295件 (32%) | 624件 (68%) |
※保育所等の総数は、2016年10月1日の調査時点のものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001192415のH05K
※採用者数・退職者数は、2015年10月1日~2016年9月30日の間に実施された調査によるものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001192415のH16-01
それでは、保育士への待遇についてはどうでしょうか? それぞれのエリア事情に詳しいマイナビ保育士のキャリアアドバイザーに話を聞いてみましょう!
「東京都が2017年度より月額平均4万4000円と大胆に補助を拡充したこともあり、近隣3県も保育士の確保によりいっそう力が入っているようです。給与水準や補助制度などを考えると、神奈川県、特に横浜市や川崎市は、都内23区とほとんど条件的に変わらない印象があります」
「東京都に十分対抗できるほど保育士確保に熱が入っているのは、千葉県も同じです。特に船橋市では、ふなばし手当(年額45万6,780円)、家賃補助、就学資金貸付を三本柱とした大胆な施策が功を奏し、多くの保育士が船橋市で働くことを希望するようになっています。これまで千葉県と東京都の境界部では、給料格差から東京都で働くことを選択する人が多かったのですが、現在では『逆走』の動きも見られるというわけです」
「これまで埼玉県は、保育士への補助制度に人数制限などがあるケースが多く、東京北部に保育士が流れがちという傾向が感じられました。しかし最近では、よりいっそうの処遇改善のために予算を割こうとする流れが強まり、バスツアーなどで地元の魅力をアピールする試みも始まったそうです。今後の動きに期待が高まりますね」
自分にとってベストのエリアを選ぶポイントとは?
それでは、数多くあるエリアから働く場所を探すとき、どのような点に注意すればいいのでしょうか? マイナビのキャリアアドバイザーがこっそり教えてくれた、エリア選びのポイント3つをお届けします。
ポイント①:保護者層の性格を知っておく
保護者の「子育てについての考え方」や「保育園・保育士に求めること」は、地域によって一定の傾向が見られるケースが少なくありません。例えば、都心部など教育志向の高いエリアと、人情味あふれる下町エリアでは、求められる保育士像がかなり違う可能性があります。また、外国籍の保護者が多いエリアでは、英語や中国語など第二言語を話せたり、異なる文化の人へも柔軟に対応できたりする保育士が高く評価されることもあります。自分の性格やスキルが、その地域のニーズにマッチするかどうか考えてみましょう。
ポイント②:エリア独自の「特典」の有無を調べる
保育士確保に積極的な自治体では、保育士のための住宅借り上げ制度や奨学金制度を備えていることが少なくありませんが、さらに独自の「上乗せ」や「お祝い金」などが用意されていることも。例えば杉並区では、2017年4月1日付で常勤の保育士として新規採用される保育士有資格者に、5万円分の区内共通商品券を支給する取り組みを実施しました。このような自治体ごとの取り組みは年度によって変更がありうるため、必ず最新情報をチェックしておきましょう。
また、認可保育園の開園時間(延長保育含む)は20:30までとするところが多いなか、中央区など一部の自治体では19:30までが基本となっています。いわゆる「特典」とは違いますが、毎日の終業時間が1時間早まるというのは大きいもの。特に仕事とプライベートの両立に悩んでいる人にとっては、魅力的な選択肢のひとつとなるはずです。
ポイント③:園までのアクセス状況を確認する
自宅から職場までの距離は、離れすぎていると疲れてしまう一方で、あまりに近所だと「保護者や子どもたちとプライベートでばったり出会ってしまう」ということも頻繁に起こりがち。通いやすい場所でありながら、適度な距離感を保つことができるエリアはどこなのか考えてみましょう。
また、自宅だけでなく、実家、友人や恋人の家、頻繁に買い物などに出かける街などへのアクセスも重要です。このとき、単純に地図上の距離だけを見るのではなく、交通網(電車やバス)の具合や道路の混雑状況なども考慮するのがポイント。「実際に何分かかるか」を確認することが肝心です。
このように、自分にとってベストの保育園を選ぶためには、さまざまな要素を勘案する必要があります。初めから「絶対に〇〇駅付近がいい」「△△区内じゃないとイヤ」などとイメージだけで選択肢を狭めてしまうのは、とてももったいないことだといえそうです。多様な視点から園選びをするためには、それぞれのエリア事情に精通したプロの力を借りるのが一番。ぜひ、マイナビ保育士のキャリアアドバイザーに相談してみましょう!