20190807_average_salary_main_01-thumb-690x350-1181.jpg

保育士さん専用年収診断

待機児童問題の解決に向けた保育士の処遇改善が、社会的な関心を集めています。関心を持つ方の中には、「保育士の給料の手取り金額で、生活は可能であるか」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。

保育士の給与事情は、働く地域や環境、さらに役職など、多くの要素に左右されます。これらの要素をふまえ、待遇の良い求人を選択することで、年収アップを目指すことが可能です。

この記事では、私立・公立、都道府県別、経験年数、企業規模、役職と5つの視点を取り上げて、保育士の給料の平均値やより良い職場選びのコツを紹介します。

私立・公立別にみる保育士の給料

お給与の差で反応の違う二人の保育士

公私別の保育士給与と平均勤続年数は、次の表の通りで、公立保育園勤務の保育士と私立保育園勤務の保育士の年収乖離は、約21万円です。 公立保育園に勤務する保育士と私立保育園に勤務する保育士の平均年収は、平成29年度「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」から確認できます。

年収概算値 平均勤続年数
私立保育園 314.5万円 8.8年
公立保育園(常勤) 335.8万円 8.7年

(出典:平成29年度「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」報告書https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/kijun_34/pdf/s1-2.pdf

私立保育園

常勤 非常勤
平均勤続年数 平均給与月額 平均勤続年数 平均給与月額
8.8年 262,158円 6,7年 169,091円

(出典:平成29年度「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」報告書https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/kijun_34/pdf/s1-2.pdf

公立保育園

常勤 非常勤
平均勤続年数 平均給与月額 平均勤続年数 平均給与月額
8.7年 279,797円 6.4年 172,980円

(出典:平成29年度「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」報告書https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/kijun_34/pdf/s1-2.pdf

公立の保育園に勤務する保育士の給料が、私立の保育園に勤務する保育士よりも高い理由は、平均年齢や昇給率の違いが原因です。公立保育園に勤務する保育士は平均年齢が高い傾向にあり、昇給も順調に行われるため、平均年齢が低い私立保育園より給料が高くなります。さらに、私立保育園の中には昇給率が低く、昇給額が小さいという保育園も存在します。

公立の保育園のように着実な昇給を見込むことが難しいため、公立の保育園に勤務する保育士のほうが給料が高い傾向にあります。

公立・私立の差についてもっと詳しく知りたい方はこちら

都道府県別にみる保育士の給料

日本地図と電卓

保育士の給料は、物価や地価、人口密集率などの理由から、都道府県ごとによる平均年収の格差が生じます。給料水準が高い東京都は、全国平均以上の年収を得ることが可能です。ただし、給料水準が高い分、物価や地価も高いため、より豊かな暮らしが実現するとは限りません。

ここでは、保育士の都道府県ごとでの平均年収について紹介します。都道府県によってどれほどの差があるのか、是非参考にしてください。

都道府県名 平均年収概算値(※) 都道府県名 平均年収概算値(※)
北海道 341万円 滋賀県 348万円
青森県 364万円 京都府 407万円
岩手県 336万円 大阪府 349万円
宮城県 317万円 兵庫県 366万円
秋田県 326万円 奈良県 343万円
山形県 312万円 和歌山県 335万円
福島県 339万円 鳥取県 321万円
茨城県 326万円 島根県 327万円
栃木県 357万円 岡山県 381万円
群馬県 360万円 広島県 379万円
埼玉県 356万円 山口県 342万円
千葉県 397万円 徳島県 327万円
東京都 434万円 香川県 338万円
神奈川県 384万円 愛媛県 337万円
新潟県 331万円 高知県 331万円
富山県 321万円 福岡県 377万円
石川県 368万円 佐賀県 344万円
福井県 321万円 長崎県 358万円
山梨県 341万円 熊本県 348万円
長野県 332万円 大分県 343万円
岐阜県 364万円 宮崎県 346万円
静岡県 332万円 鹿児島県 333万円
愛知県 365万円 沖縄県 319万円
三重県 341万円

(出典:平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

※年収概算値の計算式 年収概算値=きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

経験年数別にみる保育士の給料

ベテラン保育士と若手保育士

保育士の給料は、経験年数によって変動します。とくに大きな昇給が期待される境界線は、経験年数5年です。以下の表に示す通り、1年から4年と5年から9年の平均年収概算値では、約57万円の乖離がみられます。

経験年数 0年 1〜4年 5〜9年 10〜14年 15年以上
年収概算値(※) 248.4万円 311.1万円 368.2万円 399.4万円 468.8万円

(出典:平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

※年収概算値=所定内給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

5年目から9年目の保育士の多くは、副主任保育士・専門リーダーといった役職に就き、保育園全体の運営や後輩教育を担います。高度な仕事内容を担当する保育士に対し、所定内給与の上乗せ支給を行うことで、5年目から9年目保育士の平均年収概算値が上がる形になります。

経験年数に対する所定内給与の変動のみを示す内容が次の表です。5年目から9年目の保育士は、経験年数5年未満の保育士と比較し、1ヶ月あたり約3万円の所定内給与上乗せ支給を受けることが伺われます。

経験年数 0年 1〜4年 5〜9年 10〜14年 15年以上
所定内給与 20.1万円 21.3万円 24.2万円 26.2万円 30万円

(出典:平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

企業規模別にみる保育士の給料

企業規模の違う保育所

企業規模別の保育士給与額は、次の表の通りです。小規模な保育園ほど年間賞与及びその他特別給与額が高く、ボーナスや各種手当の支給が多いことが分かります。

1,000人以上 100〜999人 10〜99人
きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額
24万円 38.5万円 24.1万円 67万円 23.8万円 74万円

(出典:平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

所定内給与(きまって支給する現金給与額から所定外給与を除く数値)を比較すると、企業規模による給料額の大きな乖離は生じません。そのため、労働契約や求人情報記載の基本給与は、企業規模の影響を受けにくく、同程度の水準であるといえるでしょう。

企業規模 1,000人以上 100〜999人 10〜99人
所定内給与額 23.2万円 23.5万円 23.2万円

(出典:平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

保育園の規模により保育士の働き方は大きく異なることから、どちらが良い・どちらが大変と言い切ることは困難です。給与処遇や仕事内容など、詳細事項を確認し、総合的な判断を行いましょう。

保育所内の役職別にみる給料への加算額比較

役職の違う二人の保育士

多くの保育所では、主任や園長といった役職者に対し、役職手当を支給しています。経験年数別の給与でみたように、役職手当の支給により、大幅な年収アップも可能です。

年収アップの例として、2017年に新設された職務分野別リーダー・副主任保育士・専門リーダーの3種類の役職に就く保育士に、月額5,000円もしくは4万円の処遇改善が推奨されています。処遇改善手当支給にかかる費用は、キャリアアップ補助金など公的機関の補助制度利用が可能です。

大まかな目安として、施設職員のうち約3分の1が月額4万円・約5分の1が月額5,000円の加算対象に該当する公算です。副主任保育士に対する加算により、主任保育士の待遇と矛盾が生じる保育所では、事業者による調整が認められます。たとえば、主任保育士に対して月額5,000円から4万円未満の加算を行い、昇給構造を維持することが可能です。

この仕組みの本格運用により、保育士の技能や経験に応じたキャリアパスが明確化します。初任給と比較し、期待される給与平均の上昇が数字として把握できるため、保育士としても安心です。

キャリアアップ研修の修了履歴は全国に対する効力を持つため、転居を伴う転職活動を行う際にも、技能や経験に応じた役職・報酬が期待されます。キャリアアップ研修受講は、派遣社員や契約職員、アルバイトなど、正社員以外の勤務形態である保育士も受けることができます。

このように、高度なスキルを保有する人材に対し、正当な評価を与える環境が整うため、技能習得や経験向上に励むことが大切です。

まとめ

今回は、保育士の給料の実態に関して紹介しました。保育士業界全体としては給与改善が進んでいるため、少しずつ働く環境が良くなっているといえます。しかし、都道府県ごとによる差が大きいという事実もあります。

今の職場の待遇に不満を感じるようであれば、条件の良い職場に転職し、やり直しキャリアを行うことも一案です。その際には、求人サイトの転職支援サービスを活用し、平均賃金や福利厚生制度、離職率に関する情報収集を行うことをおすすめします。

保育士さん専用年収診断