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結婚や出産を控え、仕事と家庭の両立に悩む女性は多くいます。 とりわけ、子どもや赤ちゃんに対する思い入れの深い保育士は、多くの悩みを抱えがちです。 特に、「出産後に仕事の継続は可能であるか」「保育士と子育ての両立は、我が子のために良くないのではないか」といった感情を持つ人も多いのではないでしょうか。

この記事では、保育士の仕事と子育ての上手な両立方法を紹介します。妊娠中の不安や心配事を解消し、理想の生活スタイルを実現するためのヒントとして活用ください。

保育士は仕事と子育てを両立できる?

保育士の多くは、仕事と子育ての両立に難しさを感じています。
過去に保育士として働いていた人の退職理由として、妊娠・出産(22.3%)、結婚(18.4%)、子育て・家事(13.5%)があがっています。 また、平成29年度に退職した保育人材のうち、30.1%が結婚と回答しており、転職(保育業界)に次いで2番目に多い退職理由となっています。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

このようなデータから、子育てに入る前の結婚や、妊娠・出産を理由に退職する保育士が多いことが分かるでしょう。 もちろん、子育てと仕事の両立に成功している方も多いですが、出産や育児開始に伴うライフスタイルの変化に苦労する方も少なくありません。

保育士の仕事と子育ての両立が難しい理由

保育士の中には、仕事と子育ての両立が難しいという現実に直面し、職場を離れてしまう人が少なくありません。 それでは、具体的にどのような問題により、仕事と子育ての両立に難しさを感じるのでしょうか。多くの保育士が直面している問題としては、下記のものがあります。

【1】産休・育休制度が不十分

産休・育休制度が不十分な職場で働く保育士は、仕事の継続が困難です。周囲の理解不足や人間関係の問題から、休暇の取得が困難であるケースもあります。

【2】時間外の業務が多い

時間外の業務をこなし、子育ても行う生活は、非常に多くの労力を要します。出産に際し、残業時間の制限や業務負担の軽減といった配慮を行う職場でなければ、仕事と家庭の両立は困難です。

【3】急な休暇取得が困難

人手不足の深刻な職場では、他のスタッフに仕事を任せ、急な欠勤や早退を行うことが困難です。そのため、子どもの病気や急な用事に備えて、退職を決意する保育士も存在します。

【4】託児制度の不備

保育園・幼稚園など、子どもを預かる施設が不十分であることも、職場復帰を妨げる要因です。一部の自治体は、子どもの入園の可能性を可能な限り高める対策を行うものの、全ての保育士の需要を満たす水準には到りません。

仕事は続ける?保育士が子育てする際の3つの選択肢

悩む保育士

保育士の仕事と家庭の両立を図るためには、「保育士とはいえ、子育てを楽にこなすことは難しい」といった心構えが必要です。

我が子の子育てでは、夜泣きや体調不良、トイレトレーニングや親子の信頼関係構築など、保育士の仕事と別の苦労が生じます。そのため、出産前と同様にフルタイムの勤務を続けることは困難でしょう。

仕事と家庭の優先順位を自分自身の中で決めて、下記の選択肢から、生活スタイルの切り替えを検討しなければなりません。

(1)仕事を退職し、子育てに専念する
(2)仕事を休業し、子育てがひと段落したときに復職する
(3)子どもを保育園に預けて、保育士の仕事を継続する

(3)の選択肢を希望する保育士は、妊娠中から仕事を継続するための準備を行い、環境整備を進めましょう。

保育士が仕事と子育てを両立するために必要な環境とは?

保育園と環境

仕事と子育ての両立を行うために求められるのは、家庭と職場、保育士自身が連携し、助け合う環境です。仕事や家事、育児など、多くのことを保育士自身が抱え込み、多大な負担を感じることのないように、役割分担を行います。

環境整備を開始するタイミングは、出産を迎える前です。以下の内容について、家族や職場の責任者と話し合い、環境整備を進めましょう。

家族の理解とパートナーとの家事・育児の分業

保育士の仕事を続けるためには、パートナーの協力が不可欠です。家事、育児の役割分担を話し合い、1人にかかる負担を軽減しましょう。

分担を行う際のポイントは、詳細な家事項目を書き出し、行う時間帯と担当者を決めることです。「洗濯→夫」など、大まかな枠組みで区切ることは避け、「洗濯(取り込み)→夕方に夫」といったように、詳細事項を話し合います。

分業を無理なく行うためには、パートナーの会社が提供する育児支援制度の利用が必要であるケースもあります。職場の状況や支援制度に関する情報を共有し、出産後の生活を具体的にイメージしましょう。

保育園の協力と勤務条件・時間の見直し

仕事と子育ての両立には、保育園の協力も求められます。安心して出産を迎えるためにも、勤務先の設ける育児支援制度を確認しましょう。

近年では、保育料・ベビーシッター費用の補助や時短勤務など、子育て中の保育士を対象とした福利厚生制度を伴う求人も少なからず見つかります。子育ての経験者とプレママ保育士の交流を促し、アドバイスを行う取り組みも、育児支援の一貫です。

育休明けに向けた話し合いでは、勤務条件や勤務時間の調整について相談しましょう。育児のための所定労働時間の短縮措置を受けることは、育児・介護休業法に明記された権利です。「負担の軽い働き方を希望する」といった要望を伝え、無理のない勤務形態へと切り替えます。

転職も選択肢に入れよう!仕事と子育てが両立できる働き方

転職

職場環境に不安を抱える保育士は、より良い環境の求人を検索し、転職を行うことも一案です。自ら子育てを行う保育士は、保護者の気持ちに寄り添った仕事が可能であるため、一定の需要が見込まれます。

以下の働き方は、時間の調整を行いやすく、子育て中の保育士におすすめです。

公務員保育士

公務員保育士とは、自治体の行う採用試験に合格し、公立保育園や児童福祉施設に勤務する保育士のことを指します。臨時職員の求人情報掲載を年間通して行う自治体は多く、契約社員や保育補助人員として、短時間勤務が可能です。

短時間勤務を行う場合の給料は、時給換算で計算します。担当する仕事内容や給与水準は、求人によって異なるため、応募の前に確認しましょう。保育士資格を活かし、都合の良い時間帯に働き、一定の収入を得ることを希望する保育士におすすめの働き方です。

時短正社員

時短正社員とは、短時間正社員制度を活用し、短時間勤務を行う働き方です。 法律上、3歳未満の子どもを育てる労働者に対しては、短時間勤務制度の利用が認められます。1日の所定労働時間を5時間45分から6時間に制限し、家庭と仕事の両立を支援する制度です。

労働時間や給料の取り決めは、職場によって異なります。就業規則や育児休業規程から、詳細を確認しましょう。

保育士が時短正社員を選ぶメリットは、子育てが落ち着いたタイミングで正社員への移行を希望した場合、スムーズに進む点です。正社員保育士として働くキャリアを中断することに抵抗を感じる保育士と相性の良い働き方に該当します。

派遣保育士

派遣保育士とは、人材派遣会社と雇用契約を締結し、保育士資格保有者を必要とする企業や社会福祉法人、保育施設で勤務を行う働き方です。保育士の派遣社員は主に、正社員保育士の補助業務を担当します。正社員保育士と比較し、残業が少なく、業務負担の軽い働き方です。

派遣保育士の給料は、時給によって計算します。キャリアや保有スキルに応じた時給交渉も可能であるため、一般的なアルバイトと比較し、高収入を得ることも可能です。

パート・アルバイト

公立保育園で働く職員の約半数、私立保育園で働く職員の3~4割は、パートやアルバイトといった非正規職員に該当します。

(出典:厚生労働省「保育士等に関する関係資料」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf

正社員保育士の待遇改善対策の一環として、パートやアルバイトを採用する動きも多く、高い需要の見込まれる働き方です。

パート・アルバイトの保育士は、短時間勤務を前提とした契約を締結します。そのため、子育てを優先した生活スタイルの実現が可能です。「週3日」や「1日数時間」など、希望する生活スタイルに対応する求人を選択し、応募資格を確認した上で、申し込みを行いましょう。

パート・アルバイト保育士の仕事内容は、保育業務全般です。派遣保育士同様に正社員保育士の補助業務を担当することが多いものの、応募前に確認しましょう。

保育士不足が深刻である職場の場合、パート・アルバイト保育士に対して、正社員保育士に準じた役割を期待することもあります。求人票の記載内容や面接の質疑応答内容からお互いの認識合わせを行い、ミスマッチを予防しましょう。

【母親になる保育士向け】子育てと保育の違い

保育士経験者だから子育てに慣れていると思われがちですが、子育てと保育士業務は全くの別物です。

保育現場では、他の保育士や保育補助者と協力して助け合いながら子どもたちを保育しますが、子育ては自分ひとりで子どもを育てなければなりません。また、同じ子どもでも、園児への対応はうまくいくのに我が子には通用しないことは少なくありません。

保育園に通う園児たちは、子どもながらに社会性を持った「いい子モード」に入っています。一方、家庭での子どもたちは、親に対する安心感や信頼感から、甘えたりわがままを言ったりします。親に甘えられる環境は、子どもにとって必要不可欠なものですが、対応する親にとってはハードなものです。

「保育士の子育ては余裕」とは限らない?

1人で数人の子どもを保育する保育士にとって、1人や2人の子どもの面倒をみる子育ては簡単にできると思われがちです。しかし、 実際に母親になると、たとえ保育経験者として子どもに慣れていても、下記のように子育てで大変な思いをする場面があります。

・子育てと家事を並行する必要がある

保育園では子どもの保育関係が主な仕事ですが、子育てとなると家事を並行して行わなければなりません。掃除や洗濯など毎日こなさなければならない家事は多岐にわたります。また、買い物や子どもの病院の付き添い、書類整理など、細々としたタスクも負担しなければなりません。保育園のように他の職員と仕事内容を分担することもできず、育児の合間に家事をこなすのは想像以上に重労働です。

・自分の時間を確保することが難しい

子育てをはじめると自分のために使う時間を確保することが難しくなります。特に保育士を経験していると、子どものお昼寝の時間に打ち合わせを行ったり、事務仕事をこなしたりすることが多いため、お昼寝の時間は自分の時間にできると考える人も多いでしょう。

しかし、保育園のように決まった時間にみんなでお昼寝をするわけではないため、家では思うように寝てくれないことがほとんどです。お昼寝の時間をあてにして自分の時間を確保しようとすることは難しいでしょう。

・子どもの夜泣きで寝不足になる

生後半年から2歳までの子どもにみられる「夜泣き」は、子育てをする親のほとんどが経験する悩みです。保育園での保育であれば、勤務時間の終わりがありますが、子育てでは日中の子どもの世話に加えて、夜泣きや夜間の授乳に対応しなければなりません。思うように寝てくれない子どもを相手にしていると、自分の寝る時間も取れず24時間寝不足で子育てをしている人も少なくありません。

保育士の経験が子育てに役立つシーン

保育園での保育と子育ては全くの別物であり、保育士でも子育てに苦労する場面はありますが、保育士生活の経験が役立つことも多くあります。園児たちの保育で培った自分の知識・経験が役に立てば、保育士をしていてよかったと思う瞬間になるでしょう。

ここでは、保育士の経験が子育てに役立つ3つのシーンを紹介します。

子どものおむつを交換するとき

子育ての中でスムーズに子どものおむつを交換できることは、保育士ならではの経験やスキルによるものです。 初めての子育ての場合は、おむつ替えに苦労する人が多くいます。特に男の子であれば、おむつ替えの途中におしっこを飛ばされることもあり、対処や後始末に困ってしまう人も少なくありません。

保育士を経験していると、あらかじめ近くに新しい紙パンツを用意しておき、おしっこが飛んできたときにおさえるなどの対応方法が頭に浮かぶでしょう。動きが活発になる8か月頃のおむつ替えも、園児でこなした経験があるため慣れた手つきですばやくこなすことができるはずです。忙しい毎日を過ごす母親にとって、おむつ替えをスムーズにこなすことができれば、時間短縮やストレス軽減につながるでしょう。

子どもが病気になったとき

子どもが病気や怪我をしたとき、保育士の経験や知識は大いに役立ちます。 子どもは免疫力が低く風邪や感染症などにかかりやすいと分かっていても、母親は心配や不安がつきないものです。保育士を経験していると、季節ごとの感染症の予防法や、鼻血・すり傷といった怪我の対処法などの知識をある程度身につけることができます。子どもの緊急事態にきちんと適切な判断ができるでしょう。

子どもと2人で遊ぶとき

保育士の経験があると、最初から子どもと2人きりでも楽しく過ごせる人が多い傾向です。 母親の多くは、日中子どもと2人きりになり、どのように過ごせばいいのか分からないと感じています。

保育士経験があれば、子どもと「遊ばなければならない」という考えにはならないでしょう。特に乳児期の遊びは、生活の延長線上にある保護者とのふれあいから子どもに安心や居心地の良さを感じてもらうことに意味があります。歌を歌ったり、ピアノを聴かせたりと、保育園で培った保育経験を生かし、日常の中でゆったり子どもと遊びを楽しめるのが保育士の特徴です。

保育士の子育て経験で仕事に生かせること

保育士経験が子育てに役立つだけではなく、子育て経験を保育士の仕事に生かすこともできます。子育て期間中は仕事を休んでいたとしても、実は保育士としてスキルアップしていることも多くあります。

保育士として職場復帰する際は、子育てを通して学んだ経験を踏まえて、よりよい保育に取り組むとよいでしょう。

乳幼児の接し方が分かる

毎日近くで子どもたちの成長を見守る中で、子どもの年齢に合わせた接し方ができるようになります。 2歳頃から始まる「イヤイヤ期」の対処法などは、実際に子育てを経験した保育士のほうがスムーズな声かけやコミュニケーションで支援できます。

また、子どもたちの小さな変化や機嫌の良し悪しにも気づきやすくなり、園児と保護者双方に安心感を与えられる保育ができるでしょう。

保護者の気持ちに寄り添える

子育て経験があると、保護者の状況を自分に置き換えて考えられ、保護者の気持ちに寄り添って話を聞くことができるでしょう。 夜泣きや父親・母親へのわがままなど、保育中には見られない姿に悩んでいる保護者も少なくありません。

子育て経験があれば、家庭での園児の状況に対して、自分の子育て経験からアドバイスすることもできます。保護者にとっても、共感してもらえる保育士のほうが相談しやすく、関係性の構築にもつながるでしょう。

まとめ

子育ての悩みの解決策や、保育士の仕事と子育ての両立を行うために役立つ情報を紹介しました。仕事や子育ての悩みを1人で抱え込むことは避け、家族や地域の人々、職場の同僚や先輩保育士など、身近な人のサポートを受けましょう。

これから出産を迎える保育士は、出産後の生活を具体的にイメージし、自分自身の想いと向き合うことが大切です。その上で、今の職場の責任者と話し合いを行う・転職を検討するといった具体的な一歩を踏み出しましょう。