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どのような仕事であっても、新人時代はだれもがさまざまな悩みを抱えるものです。しかし、保育士においては、多くの業務をこなす必要があるうえ、子どもたちを教育し身の安全も守らなければなりません。さらに、保育士は女性が多く、現場の人間関係に悩まされる保育士の方も少なくありません。

今回は、1年目の保育士によくある失敗・悩みから、1年目の新人保育士が気をつけるべきポイント・対応方法まで解説します。保育士の仕事が辛くなっても、いきなり退職してしまう前に落ち着いて対応方法を探すことで、悩みを解決できるかもしれません。もちろん、辞めることを決心した場合も、適切な行動が欠かせません。

1年目の保育士によくある失敗と悩み

保育士生活1年目の方は、新卒で社会人も1年目であることが多く、慣れない仕事や職場環境に不安や緊張を感じる毎日でしょう。分からない業務で失敗することもあれば、小さなミスに悩むことも少なくありません。

ここでは、同じ1年目の保育士によくある失敗や悩みを紹介します。

先輩保育士に委縮してうまく関われない

初めての社会人、初めての保育現場で、先輩保育士に萎縮してうまく関われないという方は珍しくありません。保育士は子どもたちの命を預かる仕事であるため、園長や先輩の指導が厳しい保育園もあります。

保育現場は日々忙しく業務をこなすため、分からないことがあっても質問しづらいと感じることもあるでしょう。「そんなことも分からないのかと思われたらどうしよう」「仕事の邪魔だと思われたくない」と考え、悩みや不安を溜め込む方は多くいます。

連絡ミスをして他の保育士と連携が取れない

保育園では、クラス担任を1人で受け持つのではなく、数人の保育士や保育補助の担当者で運営するため、コミュニケーションを取りながら連携することが大切です。その日の子どもたちの様子や怪我、病気に関する情報など、他の保育士に報告したり相談したりすることは頻繁にあります。

子どもたちの保育や作業に追われているうちに、連絡ミスをしてしまうこともあるでしょう。中には、先輩保育士に相談できず自己判断で進めてしまい、大きなトラブルにつながったケースもあるため注意が必要です。

子どもとの関わり方が分からずクラスがまとまらない

学校で保育について学んだり、保育実習で先生を経験したりしても、働き始めるとうまく子どもたちと関わることができず悩んでしまう方もいます。同僚や先輩保育士の保育と比べて、落ち込むこともあるでしょう。

実際の保育現場は、子どもたちの年齢や性格、成長の度合いなどによって状況が異なります。特に1年目のときは、子どもたち一人ひとりの性格が違うのにクラスをまとめることができないと、ストレスを抱える方も少なくありません。

保護者の名前と顔がなかなか覚えられない

園児や先輩保育士、保護者など、1年目の保育士はたくさんの人の顔と名前を覚えなければなりません。特に、日中一緒に過ごすわけではない保護者は、顔と名前を一致させるのに時間がかかります。

保護者と顔を合わせるのは、毎日の登降園時のわずかな時間のみです。保護者の顔や名前が分からない間は、うまく声をかけられない、連絡事項を伝え忘れるといった失敗をする方もいます。

保護者に緊張して対応の仕方が分からない

保護者に緊張してうまく対応できない保育士も多いでしょう。特に1年目の保育士は、保護者のほうが年上の場合がほとんどのため、委縮してしまうことも少なくありません。

緊張や不安から保護者対応に苦手意識を持つと、子どもの様子をしっかり言葉にできなかったり、大切な連絡事項を伝え忘れてしまったりというミスにつながる可能性があります。また、保育士の苦手意識が保護者に伝わることで、保護者との関係作りに失敗し不安に思われるケースもあります。

仕事量が多く事務作業が終わらない

保育士は子どもたちの保育業務に追われつつ、多くの事務作業をこなさなければなりません。連絡帳の記入や保育カリキュラム・指導案の作成、保育だよりの作成など、多岐にわたる事務仕事に苦手意識を持つ保育士は少なくありません。

特に1年目の保育士は、事務作業の要領を得て、スムーズにこなすまでに時間がかかります。一つひとつの作業を丁寧にこなしているうちに、提出期限が過ぎていたという失敗を経験した保育士も多いでしょう。

仕事内容が覚えられず何度も同じミスをする

1年目は初めてのことばかりで余裕が持てず、同じミスを繰り返してしまうこともあるでしょう。仕事内容を覚えきれないうちは、ルーティン業務やその日の役割分担を忘れるなど、単純なミスが増えます。

ときには教育保育士に怒られたり、カバーしてもらったりと、ミスが続いて悩む保育士は少なくありません。中には、自分は保育士に向いていないと思う方も多く、退職のきっかけとして挙げられる理由の1つです。

残業や持ち帰り仕事で疲れが取れない

子どもたちの保育と大量の事務仕事をこなす保育士は、残業や持ち帰り仕事が多くなる傾向です。働き始めのときは、1年の流れや効率的に仕事を進める方法が分からず、業務量をこなすまでに時間がかかってしまいます。

就業時間内に仕事が終わらず休日出勤をしたり、家に持ち帰って作業したりすると、仕事とプライベートの切り替えが難しくなります。プライベートな時間がしっかり取れないことは、大きなストレスを抱える原因となるでしょう。

体調を崩して早退や欠勤をしてしまう

保育士1年目のときは、環境の変化によるストレスや生活習慣の乱れから、どうしても体調管理が難しくなります。体力・健康に自信のある人でも、体調不良による早退や欠勤が続くことも珍しくありません。

保育士は子どもの保育をする中で、せきやくしゃみをあびたり、鼻水や排泄物の処理をしたりすることが多くあります。子どもの感染症がうつってしまい、体調を崩すことも保育士ならではの悩みでしょう。

1年目でも転職できる施設を紹介してもらう

保育士1年目の仕事内容

保育士の仕事

保育施設の種類や規模などによって差がありますが、保育士1年目の仕事内容はおおむね下記の通りです。

  • 先輩保育士の保育補助
  • 子どもの身の回りの世話
  • 社会性や協調性の指導
  • 安全で清潔な保育環境づくり
  • 保護者の対応
  • 週・月・年間の保育カリキュラム設定
  • 子どもの連絡帳記入などの事務作業
  • 職員会議・外部の研修への出席
  • 行事の企画・実行

小さな子どもは、大人の思い通りに動かないこともしばしばです。さらに、保育士は限られた時間の中で多くの仕事をこなさなければならず、やりがいが大きい代わりにハードな仕事です。

また、子ども一人ひとりの状況に合わせた対応を求められる場面も少なくありません。例えば、食物アレルギーがある子どもにはアレルゲン不使用の除去食を準備する必要があります。ひとり親家庭の子どもがいる場合、保護者が参加する運動会や母(父)の日関連イベントなどへの配慮が必要です。

家族のあり方や保育サービスに対するニーズの多様化によって、保育制度や保育施設はどんどん整備されつつあります。しかし、ニーズの多様化が保育士の仕事を複雑にしているともいえるでしょう。

1年目の新人保育士が気をつけるべきポイント

気をつけるべきポイント

仕事をスムーズに進めつつトラブルを最小限に抑えるためには、基本的に下記のポイントを押さえる必要があります。

  • 自身の体調管理
  • 社会人・保育士としてのマナーや身だしなみ
  • 丁寧な言葉遣い

また、下記に当てはまる保育士は、先輩保育士や保護者からマイナスイメージを持たれやすくなります。

  • 笑顔がなく表情が暗い
  • 無断欠勤・無断遅刻をする
  • 常に受け身で、積極的に学ぶ意欲がない
  • 保護者への連絡ミスが多い

上記のポイントは、保育士に限らず社会人として、どのような職場であっても注意すべき要素です。難しく考えず、まずは基本的なポイントを確実に押さえましょう。

続いて、新人保育士が注意したいポイントについて、5つの観点から詳細に解説します。

職場の人間関係

保育士は女性が多いため、人間関係が難しいといわれることもあります。職場の人間関係を良好に保ち仲間との連携プレーをスムーズにする第一歩として、以下のポイントを心がけるとよいでしょう。

■密な報連相を心がける

困ったことや分からないことがあったら、素早い報連相を心がけましょう。周囲に迷惑をかけまいと自分1人で問題を抱え込むと、状況が悪化する恐れがあります。また、体調不良ややむを得ない私用などでどうしても出勤できない・遅刻する場合も、必ず報告しましょう。

■積極的に行動する

仕事に自信がなかったり、経験が浅くても、積極的に行動したり意見を求めたりすることはできます。積極的な行動は、やる気がしっかりと目に見えることから、周囲に良い印象を与えます。
さらに、仕事に慣れてくると、周囲の状況から自分ができることを見極める判断力が育っていきます。自ら積極的に判断しながら行動し、ときには失敗から教訓を得ることで、さらなるモチベーションアップにつながるでしょう。

■雑用も率先して行う

新人のうちはたいてい単純な仕事が中心になるものの、単純作業がきっかけで意外な学びを得ることもあります。あらゆる物事から勉強しようとする姿勢は周囲にも好印象を与えるため、雑用であっても率先して取り組みましょう。

保育や子どもへの接し方

多くの子どもの命を預かる保育士の仕事には、大人相手の仕事にはない難しさがあります。日々の保育および子どもへの接し方について、新人保育士が気をつけたい注意点は以下の通りです。

■危機管理能力を身につける

大人の感覚では危険ではないものも、乳幼児にとっては思わぬ事故の元となることがあります。子ども目線で周囲をよく観察し、トラブルを防ぐことが大切です。例えば、子どもが口に入れそうなものは高いところに置くなど、普段の大人の生活では気づきにくい点などです。
保育園では免疫力の低い子どもの間や、子どもと触れ合う保育士の間で、病気が広がりやすい環境にあります。具合の悪い子どもをいち早く見つける、感染症の拡大を防止するための知識を身につけることも必要です。

■子どもの名前はフルネームで暗記する

保育士が子どもと関わるうえでまず必要なことは、子どもの名前を正確に覚えることです。子どもの名前を呼べなければ、子どもとコミュニケーションを取りにくくなります。また、同名の子どもも多いものです。保護者の前で子どもの名前を間違えると保護者の心証を害する恐れもあるため、フルネームでしっかりと覚えましょう。

大勢の子どもの名前を効率よく記憶するコツの例として、「積み木遊びが得意な〇〇くん」というふうに子どもの特徴と名前を関連づける方法があります。

■困ったことがあれば、早めに先輩・園長に相談する

小さな子どもは大人の思い通りにならないことが多く、特別な配慮を必要とする子どもも少なくありません。もし自力で対処しきれない問題が起こった場合は、無理せず早めに周囲に相談しましょう。
保育士として正しい対応が学べるよう、経験がある人に意見を求め、保育士としてのスキルを磨くことが重要です。

保護者の対応

特に核家族の保護者にとって、保育士は子育ての強い味方となります。以下のポイントを心がけることで、保護者と信頼関係を築きましょう。

■笑顔で明るいあいさつを心がける

保育士が無表情や暗い表情でいると、保護者に不安を与える恐れがあります。自然な笑顔で明るくあいさつできるよう、普段から練習してください。

保護者に良い印象を与えるためには、身だしなみへの配慮も重要です。爪を短く切りマニキュアやジェルネイルは控える・髪をシンプルなゴムでまとめるなどして、清潔感のある装いを心がけるとよいでしょう。

■普段から保護者と密にコミュニケーションを取る

普段から保護者と綿密にコミュニケーションを取り、子どもの様子を細かく保護者に伝えましょう。連絡帳に毎日目を通し、保護者からの質問や悩みが書かれていればしっかり返事を書くことも重要です。
日々のコミュニケーションを大切にすることで、保護者から「この先生は子どものことを気にかけてくれる」と信頼されやすくなります。

■状況が悪化する前に前に先輩・園長に相談する

保護者関連のトラブルが起こったときも、先輩・上司への相談が大切です。ベテラン保育士は、経験や保護者との付き合いが長い分、多くの情報を持っていることもしばしばです。信頼できる先輩・上司に相談することで、解決の糸口が見つかる可能性があります。

■すべての保護者に対して、平等に対応する

保育士も保護者も人間であるため、相性の良し悪しが分かれることもあります。しかし、保護者によって態度を変えると「あの先生はえこひいきする」と思われかねません。すべての保護者に対して公平な態度で、かつ丁寧な言葉遣いで接することが重要です。

仕事の進め方

仕事をただこなすだけでは一人前の保育士とはいえません。仕事の進め方を工夫すると、他の仕事に時間をかけたり、プライベートの時間を充実させたりすることができます。

■仕事の効率化を図る

一通りの仕事の流れを経験したら、効率化する方法を検討するのがおすすめです。毎月作るおたよりなどは、昨年までのものを参考にして、事前にフォーマットを作っておくとよいでしょう。先輩たちの経験や失敗例などを参考にするのも効率的です。

■ToDoリストを作る

たくさんの仕事量をこなすためには、ToDoリストを作成することが効果的です。やらなければならないことをリストアップすると、業務の漏れが少なくなります。締め切りの近いものや重要度の高いものなど、優先順位を決めて順に作業を進めましょう。

■短期的な目標を立てる

初めから完璧を求めると挫折しやすいため、短期的な目標を立てて仕事を進めましょう。保育園の流れを把握する、積極的に子どもや保護者に話しかけるなど、簡単な目標を一週間や1か月ごとに定めることがおすすめです。1年目は周囲を頼りながら、少しずつステップアップするための「経験の年」だと考えましょう。

自分の体調管理

保育士は心身ともに疲労が絶えない仕事です。怪我や病気に備え、体調管理には十分注意しましょう。

■規則正しい生活で健康に気を遣う

早寝早起きや栄養に配慮した食生活など、健康な身体を維持できるよう規則正しい生活を心がけましょう。特に保育園は、免疫力の弱い子どもたちが集まるため、風邪や感染症が流行りやすい場所です。こまめな手洗い・うがいも忘れずに、自分の身は自分で守ることを意識して生活しましょう。

■ストレス発散方法を見つける

ストレスを溜めて塞ぎ込まないために、あらかじめ気分転換やストレス発散になる対処法を見つけておきましょう。就業後や休日にリフレッシュできる趣味があると、仕事の励みになります。仕事とプライベートをうまく切り替えるスキルを身につけることが大切です。

保育士1年目で辞めたいときは?

頭を抱える保育士

保育士の仕事はやりがいが大きい分激務であることも多く、ときにはプレッシャーに負けそうになることもあるでしょう。無理を重ねて心身への健康被害が出る前に現状を冷静に見つめ直し、なぜ仕事が辛いのか、よい対処法があるか探ってみましょう。周りの人に相談することで、スムーズに解決できる可能性があります。

自分の意志で解決できないと判断した場合は、思い切って転園してもよいでしょう。保育士の求人サイトでは、実務経験が少なくても応募しやすい求人や託児所・幼児教室など保育園以外の求人も多く見られます。自分に合う職場の見極め方が分からない場合は、転職アドバイザーに相談しましょう。

保育士の中には転職経験者が多く、理由にもよりますが早期退職・転職自体が大きなマイナスとなる心配はあまりありません。さらに一度の転職では、次の職場が良い保証はありません。転職回数を気にしすぎず、自分に合う職場を探しましょう。

まとめ

国内では保育士不足が続いており、都市部を中心として保育士へのニーズは高まりつつあります。しかし、保育士は仕事量が多いうえに多くの子どもや保護者と関わるため、他の仕事にはない独特の辛さがあることも事実です。

心の余裕がなくなったらまずは自身の状況を冷静に見つめ直し、自力での解決が難しければ先輩たちに相談してください。どうしてもよい解決法が見つからない場合は、保育士資格を活かせる別の職場への転職を視野に入れてみましょう。