神奈川県は全国有数の人口が多い都道府県です。県庁所在地である横浜市をはじめとする規模の大きな自治体が多く、隣接する東京都へ通勤・通学する方も多くいます。
このことから「神奈川県では保育士の仕事の需要が多く高待遇が望めるのでは」と考える方もいるでしょう。
今回は、神奈川県における保育士の給料水準やエリアごとの給料相場、保育士に対する支援制度についてご紹介します。保育士の資格を持っており、かつ神奈川県内で新卒での就職活動や転職活動を考えている方は必見です。
目次
【神奈川県】保育士の給料相場|全国平均との比較
保育士の給料を左右する要素には、「私立・公立」「経験年数」「役職」「施設形態」「勤務形態」などがありますが、就業場所も給料に大きく影響します。 では、神奈川県で働く保育士が受け取る給料の相場はどのくらいなのでしょうか。東京都・大阪府・愛知県・埼玉県、そして全国の保育士平均年収と比較して確認してみましょう。
都道府県 | 平均給与(年収) |
---|---|
神奈川県 | 403万円 |
東京都 | 398万円 |
大阪府 | 385万円 |
愛知県 | 404万円 |
埼玉県 | 364万円 |
全国平均 | 364万円 |
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、神奈川県で働く保育士の平均年収額は403万円となっています。これは、全国的にも高い数値であることが表からも分かるでしょう。
また、横浜市と同じ関東地方の政令指定都市にはさいたま市(埼玉県)があります。神奈川県と埼玉県を比べてみると平均年収の差は39万円ほどであり、神奈川県の平均年収のほうが高いことがわかります。
神奈川県内には横浜市をはじめとする人気が高い街が多く、待機児童もまだまだ多い地域です。
出典:厚生労働省「令和3年4月の待機児童数調査のポイント (参考)令和3年4月1日 全国待機児童マップ(都道府県別)」
このような状況から、神奈川県では高収入・高待遇の職員募集も少なくありません。神奈川県は、保育士としてできるだけ高い収入を得たいという方におすすめの地域と言えるでしょう。
神奈川県内で違いはある?保育士の給料が高い市区町村はどこ?
神奈川県は全国的に見ても保育士の平均月給が高めになっているため、高収入を目指す方にはおすすめの地域です。ただし、都市部や地方部といったエリアにより、平均の職員月給に差があるという点には注意しましょう。
都市部と地方部では、都市部の平均給料の方が比較的高い傾向にあります。特に政令指定都市である横浜市や相模原市、川崎市では、年収400万円を超える保育士求人も多く見られます。また、政令指定都市以外でも鎌倉市や藤沢市など人気の高いエリアでは年収400万円以上の求人も少なくありません。
年収400万円以上となると、保育士の平均年収第1位である東京都と給料面では大きく変わりません。都心から少し離れているものの、利便性の良いエリアで働きたいという方は、給料面も環境面も満足のいく職場を見つけられる可能性が高いでしょう。
一方で、神奈川県の地方部(町村部)では、都市部に比べて給料の水準が低い傾向があります。神奈川県内でできるだけ高い収入を得たいという方は、都市部を中心に求人を探すと自分に合った条件の職場を効率良く見つけられるでしょう。
エリアごとで給料に違いがある理由
同じ神奈川県内でもエリア間で平均月収に差がある理由のひとつとして、家賃や物価水準が異なるということが挙げられます。家賃や物価水準が高い地域では、給料も上げなければ人材も集まりにくくなるためです。
また、子育て世代に人気があるエリアかどうかも影響してくるでしょう。 たとえば横浜市は、保育園の利用を考えている方や実際に利用している方も多く、今後も保育園の拡充や整備が期待されるため、高収入の求人も比較的見つけやすいというメリットがあります。
横浜市と同じく、神奈川県の政令指定都市の1つである川崎市は、横浜市にも東京都心部にもアクセスしやすい特徴があります。人口増加率が高く平均年齢も若いため、保育士の需要も多く高収入が狙えるでしょう。
また、鎌倉市は待機児童がなかなか減少しないため、行政側も本腰を入れて保育園などを整備していこうとしています。このように今後待機児童の解消に力を入れていくと考えられるエリアを検討すると良いでしょう。
神奈川県で実施!保育士に対する「支援・補助制度」とは
神奈川県で働く保育士の給料は全国平均よりも高水準であり、都市部ではさらに高収入が見込めることを紹介しました。加えて、自治体によっては人材を確保するために、保育士向けの支援制度や補助制度が設けられているところもあります。
では、神奈川県内で実施されている保育士に対するサポート制度にはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、神奈川県で実施されている「保育士に対する支援・補助制度」を紹介します。
社宅を用意した事業主を支援する「宿舎借り上げ支援事業」
横浜市は保育ニーズが高く高収入な求人も多いという事情から、横浜市で働きたいと思っている方もいるでしょう。 しかし横浜市は、神奈川県内でも家賃相場が高いエリアであることから、住宅費が心配で横浜市で保育士として働くことにためらいがある、という方も多いはずです。
横浜市では「保育士宿舎借り上げ支援事業」を実施しており、保育士に借り上げ社宅を提供している事業所は、一定の条件を満たせば次のような運営補助を受けられます。
【助成内容】 | |
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対象経費 | 雇用する保育士向け、宿舎借り上げに係る経費のうち賃借料、共益費(管理 費)。※礼金、更新料、敷金等は対象になりません。 |
補助率 | 対象経費の 3/4 |
助成金額 | 宿舎 1 戸当たり月額 82,000 円の 3/4(61,000 円)を上限(1,000 円未満は切り捨て) |
引用:横浜市「~横浜市保育士宿舎借り上げ支援事業令和3年度のご案内~」
家賃や共益費の大部分が補助対象となっており、事業主にとっては嬉しい助成でしょう。この補助金が、保育士の給料に直接反映されるというわけではありませんが、一般的な賃貸物件を借りるよりも、借り上げ社宅を利用することで家賃負担を軽減して居住することができるでしょう。
出典:横浜市「保育士宿舎借り上げ支援事業【令和3年度申請分】」
未就学児をもつ保育士への「保育料の一部貸付」
神奈川県はエリアによっては、待機児童や保留児童の数も多い自治体もあります。 妊娠・出産を経て復職する方の中には、乳幼児のお子さんがいる場合「保育士として働きたいものの、子どもを保育園やこども園に入れられるかどうか不安」「保育料が心配」といった悩みを持つママも少なくないでしょう。
神奈川県では、未就学児の子どもがいる保育士が、優先的に保育園を利用できる「子育て支援制度」を設けている自治体があります。子どもを保育園に入れられるか心配という方は、このような自治体の保育園の求人への応募を検討することをおすすめします。
さらに、これら自治体のうち横浜市と川崎市を除く市町村では、神奈川県社会福祉協議会によって「未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付事業」が実施されています。 保育所などに就職したり産休・育休から復帰する際に、保育料の半額を月額27,000円を上限として最長1年間借りられるため、子どもを保育園に預ける際の経済的な不安を和らげることができるでしょう。
参考
貸付額・貸付期間
1 未就学児の保育料の半額とし、月額27,000円を上限とします。
※保育料負担額の変更が生じた場合、貸付額が変更されることがあります。
2 勤務開始日から1年間を限度とします。
※貸付申請日以前の勤務期間については貸付期間として扱われません。申請する時期によって貸付対象と
となる期間が1年間とならない場合があります
引用:神奈川県社会福祉協議会「未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付事業のご案内」
給料に上乗せされる「処遇改善等加算」
2017年度から、約7年以上の経験がある中堅保育士に対し、国が月額4万円の加算を行うという制度がスタートしました。
しかし、この制度で加算を受けることができる保育士の数は、各園で働く先生の3分の1を上限としているため、7年以上の経験をもつ保育士が3分の1以上を占める保育園では、加算を受けられない保育士もいるという現状があります。
この現状を防ぐため、横浜市では国が実施している制度に加え、独自の制度である「処遇改善等加算」を整備しています。これにより、横浜市内の保育園に勤務する7年以上の経験をもつ中堅保育士全員が月額4万円の加算を受け取れるようになりました。
参考
平成29年度から始まった処遇改善等加算Ⅱは、公定価格上の職員数全体の概ね3分
の1を対象とする制度となっており、必ずしも経験年数7年以上の全ての保育士等が対
象とならない制度となっていました。
また、横浜市の施設・事業所の保育士等の平均経験年数は8年となっており、7年以
上の全ての保育士等に月額4万円が支給されず、対象者が絞られていました。
そのため、平成30年度から市独自助成として、経験年数7年以上の全ての保育士等
に月額4万円の賃金改善を実施することを目的として、職員処遇改善費の助成を行って
います。
引用:横浜市「子ども・子育て支援新制度令和2年度 説明テキスト」
処遇改善等加算があることで、神奈川県では保育士として長く働けるという方も多くなるでしょう。勤務年数を重ねることで、保育スキルの向上やキャリアの充実も図れるだけでなく、月収の昇給も期待できます。
収入アップとともに、園全体の保育の質が向上することも、保育士として嬉しいポイントなのではないでしょうか。
まとめ
神奈川県で働く保育士の平均月額給与は全国平均額より高く、東京都を含めた主要府県と比較しても高水準となっています。エリアによって保育士の平均給与月額は異なるものの、より高収入な求人を効率良く探したいのであれば、求人数も多い都市部の求人情報を探してみましょう。
また神奈川県では保育士に対する支援制度や補助制度が整備されている自治体も多くあります。保育士資格取得予定の方やブランクがある方も、給与面で高待遇が見込める神奈川県での就職・転職をぜひ検討してみてください。
※当記事は2022年3月現在の情報を基に作成しています