どのような職業でも、ストレスのない仕事はありません。保育士の仕事も同じことが言えますが、保育士は特に人材不足や平均給与水準の低さなどの問題が目立っており、ストレスの多い仕事だとも言われています。
では、保育士がストレスを感じる具体的な原因には、どのようなものがあるのでしょうか。また、それぞれのストレスに対してどのように対処すべきなのでしょうか。
ここでは、多くの保育士がストレスを感じている原因と対処法を説明します。加えて、長年のストレスによって引き起こされる病気からストレスの解消法についても解説するため、「いつでも前向きな姿勢で保育士として活躍したい」と考えている人は、ぜひ参考にして下さい。
目次
保育士が抱えるストレスの原因と対処法
保育士は世間一般的に、以下のようなイメージを持たれることが多いでしょう。
- 子ども好きで優しい人が多そう
- いつも笑顔で子どもたちと楽しく遊んでいそう
- 毎日子どもから元気がもらえそう
上記のようなイメージから、保育士はやりがいがあり、仕事上でさほどストレスを感じないものであると世間からは見られがちです。
しかし実際、保育士は大変な肉体労働で、精神的にもストレスの多い仕事です。
子どもが好きな人が多いことは確かですが、「子どもが好き」という理由だけでは勤まらない仕事であるとも言えるでしょう。
ここからは、多くの保育士が実際にどのような場面でストレスを抱えているかを解説します。
職場の人間関係
最近では男性の保育士も増えていますが、保育士といえばかつては「保母さん」と呼ばれ、女性ならではの仕事でした。
現在も働く保育士だけでなく、子どもの保護者も女性の比率が高いことには変わりありません。そのため、女性特有の「面倒な人間関係」に悩まされる保育士が多いことが現状です。
加えて、保育士は園長・副園長・主任の3つ以外は横並びであり、役職という役職がない傾向にあります。中堅保育士やベテラン保育士は、役職のある先輩の対応と新人保育士の教育などをしなければならず、いわばパイプ役ともなるため、人間関係や業務量に悩まされる人も少なくありません。
忙しすぎる労働環境
保育士の仕事は、園児と接する時間だけではありません。書類作成などの事務作業や行事・イベントの準備などで残業や家に持ち帰って仕事をする保育士も多くいます。
ストレスが多く体力も使う保育士の仕事は、休日にしっかり休んでリフレッシュすることがとても重要です。しかし現実には、プライベートな時間を確保することすら難しい程仕事量が多く、多忙を極める労働環境の職場が少なくありません。
難しい保護者への対応
職員同士の人間関係以上にストレスを感じやすいといわれることが「保護者対応」です。最近では、モンスターペアレントと呼ばれる保護者からの理不尽なクレームも増えています。
このようなクレーム対応に、神経をすり減らしてしまう保育士も多いことが現状です。
常識的に考えられないようなクレームをつける保護者は、対応を間違えるとさらに騒ぎを大きくする関係にあります。大きなトラブルに発展してしまうこともあるため、理不尽だと感じても、丁寧に対応する以外に対処法はありません。クレーム対応が重なると、保育士の中に大きなストレスが溜まっていきます。
合わない保育方針
子育てをする際の教育方針は大切な譲れないものであるように、保育士にとっても教育方針は大切で、理想とする教育方針は一人ひとり異なります。勤めている園の教育方針が自分の理想と大きなズレがある場合、子どもとどう接していいか悩むことも増えるでしょう。
教育方針が自分に合っていると感じてその園に決めたにもかかわらず、その後方針が大きく変わってしまっては、その園にいる意味を見失ってしまいます。また、園長の気分でコロコロ方針が変わったりするような職場では、大きなストレスを感じてしまうでしょう。
低いお給料
保育士の平均給与水準の低さは、深刻な保育士不足の問題とともに語られます。公立の園に勤める公務員保育士の場合は、ある程度の給与が保証されていますが、私立や無認可の園の場合は、事業者により待遇が大きく異なります。
園によっては、基本給が低い上に残業手当も休日手当もつかないケースもあります。子どもの命を預かる責任の重大さを考えると、仕事内容に見合った給与とは言い難いでしょう。
保育士に多い!ストレスが原因で発症する「うつ病」
「うつ病」とは、ストレスが積み重なるなどの要因で、脳の機能障害が起きることです。脳の機能が全体的に低下することで判断力が鈍ったり、急に悲観的になったりします。
保育士の仕事は、常に大きなストレスが付きものです。保護者から子供の大切な命を預かるというだけでも責任重大で、ストレスが多い仕事と言えます。ストレスを溜め込まないためにも、疲れたと感じた時にはゆっくり休養を取りましょう。
保育士になる人は、個人差はあれどおおむね、真面目で責任感が強い人が多いと言われます。どちらも素晴らしい資質ですが、このような人ほど多大なストレスがかかった場合にうつ病にかかりやすくなってしまいます。
うつ病の症状は心理面だけにとどまらず、体の不調となっても表れます。以下のセルフチェックを行い、症状が2週間以上続くようであれば、心療内科を受診することをおすすめします。
心理面にあらわれる症状 | 身体面にあらわれる症状 |
---|---|
・憂鬱で楽しくない ・何事にも興味がない ・会話の内容が頭に入ってこない ・一日中眠い ・常にイライラしてしまう ・自分は無価値だと考える ・死にたくなる |
・食欲がない ・疲れやすい ・よく眠れない ・朝起きられず体がだるい ・頭痛や肩こりがひどい ・めまいや吐き気がする ・口が渇く |
溜め込みNG!保育士のストレス解消法
うつ病は一度かかってしまうと長引くことが多い上に完治が難しい病気です。そのため、まずはかからないように予防することが重要です。仕事においてどうしてもやる気が出ない場合などは、思い切って休みを取ることも視野に入れましょう。
一人で溜め込んでしまうと、ストレスはどんどん大きくなってしまいます。心の病を防ぐためにも、自分に合ったストレスの発散方法を、日常生活の中で見つけるようにしましょう。
1人で抱え込まない
ストレスを感じた時に最も重要なのは、「1人で抱え込まない」ということです。
信頼できる先輩保育士に相談することで、少しは状況が改善する可能性があります。
職場以外の気の置けない友人に話すだけでも気持ちが楽になり、ストレス解消になるでしょう。現場を知らない人の客観的な意見が解決策の参考となる場合もあります。
身近な人に相談しづらい場合は、公的機関の相談窓口やカウンセリングを受けることも視野に入れましょう。
好きなことをする
保育士は日々の業務に忙殺されてしまい、自分自身の好きなことや趣味を楽しむゆとりのない人もいます。
少しでも「昔は趣味がたくさんあったけど、今は何もできない」と感じているのであれば、思い切って何日か仕事を休んで趣味に没頭することが大切です。何も考えずに打ち込むことで、大きなストレス解消となります。
趣味を作ったり、好きなことに没頭したりすることが難しい場合、ゆったりとリラックスできる時間を少なからず持つよう心がけるだけでも、気分転換には効果的と言えるでしょう。
転職を視野に入れる
周りに相談したり、好きなことをして気分転換を図ったりしても効果が出ないのであれば、「ストレスがかなり溜まっており、心の病となってしまう一歩手前」のしるしです。
何をしても気分が晴れない場合は、思い切って転職を視野に入れることも大切です。どれほど努力してもうまくいかないときは、自分ではなく園に何らかの原因がある可能性が高いです。
しかし職場環境が変われば、いきいきと働くことができる可能性も高いでしょう。
女性の社会進出が進み共働き家庭が増えている近年、保育士の資格を持つ人は今後ますます必要とされる貴重な人材です。年齢を重ねても長くキャリアを活かせる場もあるため、ぜひ自分に合った職場を見つけましょう。
転職の流れをさらに詳しく知りたい!という人は、以下の記事を参考にしてください。
→保育士が転職する際の流れは?成功するためのポイントや注意点も解説
まとめ
保護者から大切な子どもを預かる責任は重大で、それだけでも大きなストレスとなることは避けられません。加えて、保育士は職場や保護者との人間関係や業務の多忙さ、さらに給与水準の低さなどに悩み、消耗してしまうことも多く見られます。
心の病になってしまわないためには、一人で抱え込まずに周りに相談することが大切です。次に出来るだけ休養を取り、趣味の時間を持つなどして気分転換を図ることも重要だと言えます。
職場自体にストレスの原因がある場合は、思い切って退職・転職することも視野に入れましょう。この記事を参考に、ストレスとうまく付き合いながら、ぜひ保育士の経験を活かして活躍できる職場を探してみてください。