保育士の離職率の実態|離職理由から職場選びのポイントまで

保育士は、子ども達の輝かしい未来を支援する素晴らしい職業です。しかし、保育士は離職率が高いことを指摘されており、就職することに二の足を踏んでしまう方もいるでしょう。

この記事では、保育士の離職率は本当に高いのか、そして保育士が離職する際に多く挙げられる4つの理由について、それぞれ解説します。併せて、就職後に失敗しないために気を付けたい職場選びのポイントも紹介するため、興味のある方はぜひご覧ください。

保育士の離職率は本当に高いのか?

エプロンを脱ぐ女性

保育士は一般的に離職率の高い職業だと言われていますが、実際のところはどのような結果となっているのでしょうか。

【産業別の離職率】

産業計 14.6%
不動産業・物品賃貸業 13.7%
宿泊業・飲食サービス業 26.9%
医療・福祉 15.5%

出典:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概要 概況全体版」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf

厚生労働省から発表されている「平成30年雇用動向調査結果の概要」によると、産業全体の離職率は14.6%です。

一方、保育士も含まれる「医療・福祉」分野の離職率は15.5%となっています。また、「不動産業・物品賃貸業」の離職率は13.7%、「宿泊業・飲食サービス業」は26.9%です。産業全体で見ると、保育士の離職率だけが特別高いわけではないことが分かります。

保育士が離職する主な理由

悩む女性02

産業全体で見ると、実際は保育士の離職率が極めて高いとは言えません。

しかし、近年では待機児童問題により、保育士の人員不足に対する社会的な注目度が以前よりも高まっています。そのため、保育士離職率の高さが目立っている状況です。

ここでは、保育士が離職する際の主な理由を4つ紹介します。

人手不足で仕事量が多い

保育士の仕事内容は、子ども達を預かる保育業務だけではありません。保育士の業務には、連絡帳やおたよりの作成など事務作業に加えて、製作物の作成や行事の準備など、様々な雑務が存在します。

元々人手不足の現場では、1人に割り振られる仕事量が多く、勤務時間も長くなりがちです。勤務終了が深夜になったり、自宅に仕事を持ち帰ったりするケースがあります。

また、研修や職員会議への参加が、勤務時間外や休日に行われることもゼロではありません。大半の保育園では休日などに行われる研修・会議に対しては残業代が支払われますが、中にはサービス残業を求める職場も見られます。職場探しの段階でいわゆる「ブラック保育園」を見抜かなければなりません。

業務量が極端に多かったり、サービス残業を保育士に強いたりする保育園では、離職者が後を絶たず、さらなる人手不足で労働条件が悪化するという悪循環を招いています。

仕事量に見合った給料ではない

保育士が離職を望む理由の中で、最も多く挙げられることが給料の低さです。

【全職種平均と保育士の平均給料(月額)】

全職種 32万9,600円
保育士 21万6,100円

(出典:厚生労働省「第3回保育士等確保対策検討会 参考資料1保育士等に関する関係資料」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf

全職種の平均給料に対して保育士の平均給料は、月収にして10万円以上の差があります。

さらに、小規模な私営の保育園などでは、各種保険や手当など福利厚生制度が整っていない施設も少なくありません。結果として実際の手取り額が、15万円以下となるケースも見られる状況です。また、保育園の経営状況によっては昇給が期待できないケースもあります。

保育士を離職する人の中では、仕事量の多さや長い勤務時間に対して、給料額が見合っていないことを理由に離職を決意する人が多い傾向です。

人間関係がうまくいっていない

上司や同僚との関係はもちろん、保護者との関係で悩み、離職に繋がる場合もあります。

基本的に忙しい保育士の職場では、些細なすれ違いが原因でトラブルが発生しやすい傾向です。同僚や上司との関係が悪化することにより、「働きづらい環境」だと感じてしまうことで、離職を選択する人がいます。

職員間だけではなく、保護者相手にも相性の良し悪しがあることは事実です。中には、モンスターペアレントのように度を越した要求を突き付けてくる人もいます。

もちろん理不尽に振る舞う保護者は、ごく一部の心ない人たちです。しかし、日々の仕事で疲れている保育士にとっては、大きなストレスとなってしまうこともあります。

保育方針が合わない

自分と保育園の掲げる保育方針が一致しないことも、代表的な離職理由の1つです。

元々保育士を目指す人は、ある程度自分の中に理想とする保育像を持っています。そして、自分の目指す保育像は保育士として生きていくための、大切な芯となっている場合が多い傾向です。保育士として根底にあるものが異なることにより、職場で意見が衝突してしまい、孤立するケースがあります。

また、ワンマンタイプの園長や、一族経営などで職員の意見が通りづらいケースも、不満を蓄積しやすい職場と言えるでしょう。

保育士として就職する際の職場選びで重視すべきこと

保育士と子供

離職率の高いと言われる保育士業界ですが、就職する際の職場選びを注意することで、不本意な離職のリスクを減らすことが可能です。
ここでは、これから保育士として就職を目指す方に向けて、安定した良い職場を見つけるためのポイントについて解説します。この記事で紹介した離職する際の代表的な4つの理由に、それぞれ対応しているため、ぜひ参考にしてください。

職員の人数

人手不足で仕事量が多い状況を避けるためには、職員の人数が十分に確保されている必要があります。職員の人数が少ない保育園では、保育士1人あたりに割り振られる業務量が多くなる傾向です。

まずは、求人情報に記載されている勤務体制と残業について、しっかりチェックしましょう。特に、シフト制を取り入れている場合は、時間帯ごとにきちんと分業ができて、人員に余裕のある可能性が高い保育園です。

面接時など就職前に保育園の様子を見学できる場合は、保育士の人数や働いている様子を見て、どの程度の忙しさであるのかを確認しましょう。

経営状況や福利厚生

求人情報を調べる際は給料額だけではなく、どのような福利厚生が受けられるのか確認することが大切です。また、保育園の経営状況にも、注意を払いましょう。経営状況が悪い保育園では、福利厚生や昇給に期待できません。

保育園の経営状態は実際に職場を見学することで、ある程度把握できます。園内の施設や遊具がきちんと手入れされているのか、タイムカードは適切に押されているのか、チェックしましょう。

子育て中の人が多く働いている場合は、職員の働きやすさを重視する職場である可能性が高い傾向です。子どもの病気や行事参加などで早退したり、休んだりできるだけの職員数が確保できている証であり、職員同士の理解が得られやすい職場と言えます。

職場の人間関係

「十分な職員数」と「安定した経営状態・充実した福利厚生」が期待できる保育園は、職場の人間関係も良好な傾向です。

経営状態が良く福利厚生が充実した職場は、保育士の仕事に対する満足度が高くなります。また、十分な人員が確保できていれば、職員1人に多大な負担を強いられることはありません。

結果的に、職員同士のコミュニケーションが活発化し、人間関係での問題が起こりづらくなります。さらに、職員同士のコミュニケーションが活発であれば、保護者からのクレームがあったとしても、お互いにフォローし合うことが可能です。

保育理念・保育方針

保育理念や保育方針は、保育園の運営者が掲げるものであって、基本的に1人の保育士だけで動かせるものではありません。

どれほど福利厚生の良い職場であっても、「保育理念の合う・合わない」といったことは起こりえます。そのため、職場を探す際は保育園のホームページを確認し、園の保育理念・保育方針を確認してください。

就職を希望する保育園が見つかった際は、必ず自ら足を運んで職員同士のやり取りや、子ども達への接し方などを直接自分の目で見るようにしましょう。面接の際に採用担当者に聞くだけではなく、職場見学やインターンシップを行うことがおすすめです。

待遇面が魅力的な保育園であっても、職場の雰囲気に違和感を覚えるようであれば、就職後に不満を抱く可能性があります。一旦保留として、別の就職先を検討すると良いでしょう。

まとめ

保育士は他の業種と比べて、極端に離職率が高いわけではありません。しかし、慢性的な人手不足が解消されないという問題があることも事実です。

保育士として長く働きたいと思うのであれば、職場を十分に吟味する必要があります。保育園の経営状況や配置されている人員数、職場の人間関係などを可能な限りチェックするようにしましょう。

そして、求人内容だけではなく、必ず直接自分の目でどのような職場環境なのかを確認するようにしてください。