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近年、保育士不足は全国で深刻な問題となっています。兵庫県も同様で、新たな保育人材の確保に努めつつ、すでに勤務している保育士の離職に歯止めをかけようとしている状況です。そして、兵庫県のそうした活動の一例として挙げられるのが、保育士の就職支援制度や人材の定着を目指した支援・補助制度でしょう。

当記事では、兵庫県における保育士の給料相場やエリアごとの給料事情、支援・補助制度の内容などについて解説します。兵庫県で保育士として働こうと考えている方は、就職活動や転職活動にお役立てください。

【兵庫県】保育士の給料相場|全国平均との比較

厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、賞与などを含んだ全国の保育士の平均年収は約391万円で、兵庫県の保育士の平均年収は約352万円です。兵庫県の給料相場は、全国平均と比べるとやや低めで、近畿地方の2府5県のなかでも5番目の水準となっています。

都道府県 平均年収
全国平均 約391万円
兵庫県 約352万円
京都府 約445万円
大阪府 約424万円
滋賀県 約350万円
奈良県 約363万円
和歌山県 約394万円

(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html

ただし、保育士の給料は年齢や勤続年数、勤務先の施設形態、規模などによっても異なります。新人のうちは給料がそれほど高くなくても、長く勤めてスキルを磨いたり役職についたりすれば、平均以上の月給・年収も期待できるでしょう。

また、厚生労働省は保育士向けの施策として、平成29年に保育士のキャリアアップ研修とガイドラインを制定しました。これは、保育士の労働環境・処遇改善を目指した制度で、研修を通じて新たな技能・経験を身につければ、キャリアアップや給料アップを目指せます。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

保育士として働きたいと考えている方のなかには、「保育士はあまり給料が高くない」というイメージがじゃまをして、就職や転職、復職を思いとどまっている方もいるかもしれません。しかし、上記のように、保育士をサポートするさまざまな制度があるので、上手に活用するとよいでしょう。

この後、兵庫県の保育士向け支援・補助制度についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

兵庫県内で違いはある?保育士の給料が高い市区町村はどこ?

兵庫県と首をかしげる女性

マイナビ保育士をはじめとする複数の求人サイトを見ると、兵庫県内で比較的高額な求人が多いエリアは、神戸市の中央区・灘区・兵庫区、西宮市、尼崎市、宝塚市、芦屋市などです。どの地域も複数の鉄道が乗り入れているほか、各駅の周辺には企業や商業施設も多く、人の往来が盛んです。なかにはベッドタウンになっているエリアもあり、保育園を利用する世帯も多い傾向にあります。

特に、兵庫県の東南部に位置する神戸市と大阪市に挟まれた阪神エリアには、高級住宅地となっている区域があり、保育士求人のなかには年収400万円を超えるものも少なくありません。

逆に、兵庫県北部はやや人口が少ない地域です。保育人材の需要も南部ほど高くないことから、兵庫県北部の保育士の給料はやや低めの水準となってます。

このように同じ兵庫県内でも、勤務地によって保育士の給料に違いがあります。

エリアごとで給料に違いがある理由

兵庫県内で保育士の給料に違いがある理由は、地域によって物価や家賃が違うためです。兵庫県では、北部よりも南部のほうにオフィスや学校などが集中しており、南部は物価や家賃もやや高い傾向にあります。そのため、保育士の給料もそれに見合うよう設定されているわけです。

また、兵庫県北部と南部では人口密度が異なるため、保育の需要にも違いがあります。南部は人が多く集まる分、保育に対する需要も高い状態です。そして、需要に応えるためには、保育人材をしっかりと確保する必要があります。そうした点も、南部の給料水準が高い理由と言えるでしょう。

兵庫県で実施!保育士に対する「支援・補助制度」とは

奈良県の景色と女性

兵庫県の各自治体では、新たな保育人材の確保や勤務中の保育士の離職防止などを目的に、保育士に対する支援や補助制度を実施しています。

例えば、神戸市や明石市には、一定期間勤続する条件を満たした保育士に支援金を支給する制度があります。また、ほかの自治体でも、子どもが優先的に保育園に入園できたり、保育料が免除されたりするなどの取り組みを行っています。

ここからは、「保育士修学資金貸付事業」「保育士就職準備金貸付事業」「保育士定着支援金事業」という3つの事業を取り上げ、その詳細を紹介しましょう。どの事業も年度始めに施行されるかどうかが決まるため、興味のある方は公式ホームページなどで最新の情報を確認してください。

保育士修学資金貸付事業

保育士修学資金貸付事業は、保育人材確保のための取り組みの1つとして、公益社団法人兵庫県保育協会が実施しています。

具体的には、兵庫県保育協会が指定する保育士養成施設に通学する学生に、無利子で修学資金を貸し付けるもので、貸付限度額は月額5万円(授業料・実習費、教材費など)、入学準備金20万円、就職準備金20万円です。貸付期間は養成施設に在学する期間で、2年分が限度となっています。また、保育士養成施設を卒業後、1年以内に保育士として登録し、兵庫県内の保育施設で5年間勤務した場合は、貸付金の返還が免除されます。

<保育士修学資金貸付事業の概要>

●貸付限度額
① 月額5万円(対象経費:授業料、実習費、教材費等〕
② 入学準備金20 万円
③ 就職準備金20 万円
※返還免除対象施設で働きながら修学する方は、就職準備金の貸付を受けることはできません。
※必要な経費の範囲で貸し付けるため、使途を領収書等(将来の支出の場合には使途の見込み)により確認します。

●貸付期間
養成施設に在学する期間
ただし、貸付できる額は修学資金2年間分を限度とします。

●返還免除
下記の要件を全て満たすと、返還は免除されます。
① 養成施設卒業の日から1年以内に保育士として登録
② 兵庫県内(神戸市域含む)の従事先施設で保育業務に引き続き5年間従事

(出典:公益社団法人兵庫県保育協会「令和5年度 兵庫県保育士修学資金貸付事業の手引」/ https://hyogo-hoikukyokai.or.jp/pdf/loan_business/shugakushikin_kashitsuke_tebiki_r5.pdf

保育士就職準備金貸付事業

保育士就職準備金貸付事業は、保育士資格を持ちながら保育士として勤務していない人の再就職を支援することで、保育人材の確保を図る制度です。

この制度は、就職するにあたって必要なものを購入した費用を貸し付けてくれるもので、兵庫県内の保育園で2年間勤務を継続した場合は、貸付金の返還が免除されます。なお、出産休暇、育児休暇の期間や災害などのやむを得ない理由で就業できない期間は、引き続き業務に従事しているとみなされます。

保育士就職準備金貸付事業を利用する際は、就労前に購入したものの領収書を保管しておき、就職日から4か月以内に就職先の施設を通じて申請する必要があります。

<保育士就職準備金貸付事業の概要>

●申込期間
就職日から4か月以内に、勤務先施設を通じてお申込みください。勤務先施設の担当者は、申込期日までに必ず届出をしてください。
なお、審査会はおおむね4か月に1回、不定期で開催されています。そのため、申請書の到着時期によっては、審査会結果の通知まで5か月以上かかる場合があります。

●貸付金額(無利子)
一人1回限り40万円以内 ※貸付上限額は変更することがあります。

(出典:公益社団法人兵庫県保育協会「令和5年度 就職準備金貸付の手引き」/ https://hyogo-hoikukyokai.or.jp/pdf/loan_business/tebiki_shushokujumbikin_r5.pdf

また、下記は、就職準備金として認められているものの一例です。それぞれの上限金額については、兵庫県保育協会の公式サイトでご確認ください。

転居が必要な場合(市や県をまたぐ場合のみ) 敷金、礼金、引っ越し代、仲介手数料、日割り家賃、鍵交換代※ただし、保育士宿舎借り上げ制度を利用していない項目に限る
業務に必要な場合 パソコン本体、タブレット本体、マウス、ソフト、プリンター本体、インク、カメラ本体など
通勤に必要な場合 自動車購入の一部(本人名義)、タイヤ、点検代、バイク(本人名義)、自転車本体など
保育現場で必要なもの 被服費(Tシャツ、トレーナー、ズボン、園指定の制服、エプロン、上着等の仕事着、時計、カバン、リュック、運動靴、帽子)、文具類(ペン、ハサミ、のり、ペンケース)、備品類(弁当箱、水筒、マスク、消毒液)、書籍費(絵本、保育関連書籍)など
復帰のために必要なもの 健康診断、ワクチン接種、研修受講費
子どもを保育所等に預ける際に必要なもの 被服費(着替え用の衣類、園指定の制服、靴、通園カバン)、布団、ベビーカー、備品(弁当箱、水筒、マスク、名前シール、雨具、布)

(出典:公益社団法人兵庫県保育協会「令和5年度 就職準備金貸付の手引き」/ https://hyogo-hoikukyokai.or.jp/pdf/loan_business/tebiki_shushokujumbikin_r5.pdf

保育士定着支援金事業

保育士定着支援金事業は、保育士の人材確保や離職防止、待機児童の解消を目的とする制度です。自治体ごとに支援金の金額は異なりますが、支給額の目安は1年間に20万円〜30万円程度です。

なお、保育士定着支援金事業の対象者となる条件も、各自治体で異なります。保育士定着支援金事業の利用を考えている場合は、勤務先のある市町村の公式ホームページなどで確認しましょう。

下記に、神戸市・明石市・姫路市・芦屋市における保育士定着支援金事業の支給額をまとめておきます。

神戸市
神戸市内の私立保育園・幼稚園などに保育士として採用された方を対象に、1〜2年目に最大30万円、3〜7年目に最大20万円の一時金を支給します。
※各施設は最低10万円を対象者に交付し、残額を対象者以外の正規保育士等に配分することがあります。
※一度、一時金を受けたあと、離職した場合は同じ一時金を受けることはできません。

(出典:神戸市こども家庭局 幼保振興課「神戸市でせんせいになる」/ https://kobe-kn.jp/iine//引用日2022/03/10


明石市
市内の私立認可保育施設(保育所、認定こども園、小規模保育事業所)に採用された保育士が、長く働き続けることができる環境を整え、中堅保育士に至るまで、切れ目のない処遇改善を図ります。

上記の施設で、保育士(正規または常勤的非常勤)として採用されると、採用後3か月経過で10万円(令和2年10月以降に3か月が経過した方/令和2年7月以降勤務開始の方)、その後1年経過ごとに6年経過まで毎年20万円、7年経過すると30万円の支援金を直接支給します(合計160万円)

(出典:明石市「保育士になるなら明石市へ ~待遇を充実させています~」/ https://www.city.akashi.lg.jp/kodomo/taikijidou/201611_kakujyu.html


姫路市
採用後1年ごとに3年目まで、年額24万円を対象者に支給します。

(出典:姫路市「保育士等定着支援一時金給付事業」/ https://www.city.himeji.lg.jp/bousai/0000008301.html


芦屋市
(1)対象保育士等が、事業の対象となった初年度:300,000円
(2)対象保育士等が、事業の対象となり2年度目から6年度目まで:200,000円
(3)対象保育士等が、事業の対象となり7年度目:300,000円

(出典:芦屋市「芦屋市保育士等確保定着支援事業補助金交付要綱」/ https://www1.g-reiki.net/ashiya/reiki_honbun/n700RG00001572.html

※対象者をはじめとする諸条件については、それぞれの公式サイトでご確認ください

このように、兵庫県では保育士をサポートする支援・補助制度が充実しています。保育士として就職や転職、復職を考えている方は、積極的に利用しましょう。

まとめ

兵庫県の保育士の平均月給は全国平均と同じくらいの水準です。ただし、地域によって人口や物価、家賃、保育人材の需要などが異なるため、保育士の給料にも差があります。兵庫県南部や阪神エリアは比較的求人が多く、保育士の給料も高めです。

また、神戸市や明石市などでは、保育士修学資金貸付事業、保育士就職準備金貸付事業、保育士定着支援金事業といった保育士向けの支援・補助を実施し、保育士を積極的にサポートしています。ほかにも保育士の支援・援助を行う自治体が見られるため、兵庫県は保育士が働きやすいエリアと言えるでしょう。

兵庫県で保育士の仕事を探している方は、当記事を参考に自分に合う職場を見つけてください。

※当記事は2024年3月現在の情報をもとに作成しています

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