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未就学児の教育をしたいと考える人にとって、幼稚園教諭の仕事は非常におすすめです。 幼稚園教諭は安定した需要があり、幼児教育を通してやりがいも感じられるため、魅力的な仕事となっています。 しかし幼稚園教諭となるためにどのような手順を踏めばよいのか、分からない人もいるでしょう。 そこで今回は、幼稚園教諭となるために必要な流れを解説します。また幼稚園教諭に向いている人の特徴も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

幼稚園教諭になるために必要な資格と取得方法

幼稚園教諭となるためには、まず免許を取得し、その上で採用試験に合格する必要があります。

ここでいう免許とは、国家資格である「幼稚園教諭免許状」のことです。免許を取得するためには、専門の教職課程で学ぶ必要があり、基本的には大学、もしくは短大を卒業しなければなりません。免許を取得し、希望する保育園の採用試験に合格すれば、晴れて幼稚園教諭として働くことが可能です。

以下では、免許の種類と免許取得の流れに関して解説します。

3種類の幼稚園教諭免許状

幼稚園教諭免許状は「専修」「一種」「二種」の3種類に分かれていて、それぞれ資格取得方法が異なります。基本的な要件は以下の通りです。

・専修免許状
大学を卒業後、さらに大学院の養成課程で2年間勉強して学位(修士)を取得し、卒業することが要件です。免許状の中で一番上位の免許にあたります。

・一種免許状
大学の養成課程で4年間勉強して学位(学士)を取得し、卒業することが要件です。

・二種免許状
短大や専門学校の養成課程で2年間勉強して学位(短期大学士・学士・専門士のいずれか)を取得し、卒業することが要件です。

上記の通り、幼稚園教諭となるためには、最低でも2年間教職課程で勉強し、免許取得する必要があります。免許状は卒業と同時に取得できるため、資格試験はありません。

保育士資格がある場合

保育士の資格と、3年以上の実務経験がある人は、大学などで8単位を修得して教育職員検定に合格すれば、幼稚園教諭免許状を取得できる特例があります。

この特例は、「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(幼保特例制度)というものです。改正認定こども園法によって創設された新たな「幼保連携型認定こども園」への移行に向けた経過措置として、2025年3月31日まで実施されます。

(出典:文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」/ https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339596.htm

幼保連携型認定こども園とは、幼稚園の「教育」と保育所の「保育」を一体的に提供する施設です。そのため、幼保連携型認定こども園で働く「保育教諭」は、幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を保有することが原則です。

しかし、現状は保育士資格しか保有していない人も少なくありません。そのため、両資格の併有を促す目的で一定期間、保育士に対して幼稚園免許の取得要件が緩和されています。

・保育士に対する特例の概要

       
基礎資格実務経験修得が必要な最低単位数 取得する資格
保育士 3年以上
(勤務時間の合計が4,320時間以上に限る)
8単位 幼稚園教諭普通免許状

また、保育士が上記の特例制度以外で幼稚園教諭の二種免許状を取得する方法として、緩和のない教員資格認定試験を受ける方法があります。受験資格は、20歳以上で、高校卒業もしくは大学に入学する資格があり、保育士として3年以上の勤務経験があることです。特例制度の期限内に受験が難しい場合は、検討するとよいでしょう。

幼稚園教諭免許状と保育士資格の違い|難易度は?

免許のイラスト

幼稚園教諭免許状は教育職員免許法に規定された「教員免許」です。教員免許には有効期限があり、免許の更新には講習の受講が義務付けられています。

幼稚園教諭免許状を得るには大学院や大学、短大、専門学校で学位を取得して卒業すればよく、資格試験はありません。

履修科目は、国語、算数、図画工作などの教科に関する科目のほか、教育基礎理論や生徒の指導に関する科目、日本国憲法などさまざまです。

一方で、保育士資格には有効期限がなく、資格を得るには指定の保育士養成学校を卒業する以外に、児童福祉法に規定された保育士資格試験(国家試験)を受験する方法もあります。保育士資格試験の受験を選択する場合は、学校に通う必要がなく、通信教育や独学でも挑戦できるため、費用を抑えられるメリットがあります。

保育士資格取得のために学習する知識としては、児童福祉や発達心理学、小児栄養などがあります。

どちらの資格も専門性の高い内容を理解する必要があり、簡単には取得できません。難易度ではなく、自分の将来を見据え、どのような仕事がしたいかによって進路を決めましょう。

第一種・第二種・専修によって幼稚園教諭の働き方・待遇は変わる?

幼稚園教諭のイラスト

幼稚園教諭免許状の区分は第一種、第二種、専修と別れていますが、免許状の種類によって職務内容は大きく変わりません。具体的には、子どもの健康や発達状況のチェック・園内の環境整備・ダンスや歌唱の指導・保護者対応・送迎の手伝いなどを、免許状の区分に関係なく担当します。

ただし、給与面に関しては二種よりも一種のほうが優遇される傾向です。幼稚園によっては初任給で2万円程度の差が出る場合があります。たとえば、東京都の特別区立幼稚園の教員は、令和3年4月採用者の初任給が大学卒で約244,400円、短大卒は約222,900円と2万円以上の差があります。

(出典:特別区人事・厚生事務組合「特別区立幼稚園教員 募集案内」/ http://www.tokyo23city.or.jp/kinder_pdf/panf_r03.pdf

幼稚園教諭免許状の区分別の割合は、2016年度の調査では専修が0.5%、一種が27.2%、二種が68%と二種が最も多い結果です。英才教育系の幼稚園に就職するなどでなければ、二種免許状でも就職活動で不利になったり、勤務先で気後れしたりすることはないと考えられます。

(出典:文部科学省「平成28年度学校教員統計調査」/ https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/kekka/k_detail/1395309.htm

また、幼稚園には担任や主任などさまざまな役職があり、経験を積んで昇進試験に合格すれば昇進が可能です。しかし、園長や副園長の職は資格要件が法律で定められており、専修または一種免許状がある場合は、5年の実務経験が必要です。実務経験が10年以上あれば、必ずしも一種免許状は必要ありませんが、一種を保有することがキャリア上有利に働く場合がある点を理解しておきましょう。

なお、私立・公立を問わず、運営上特に必要があり、資質を認められれば、免許状の有無に関係なく園長になることは可能です。

幼稚園教諭免許状は第二種から第一種へ切り替えできる?

5年以上の在職年数があり、所定の単位を取得すれば、幼稚園教諭免許状を第二種から第一種に切り替えられます。

「免許法認定講習・公開講座・通信教育」は、すでに持っている免許状をもとに上位の免許状を取得するための制度です。この制度を利用して大学などで必要な単位を取得することで一種免許へ切り替えが可能です。

幼稚園の在職年数によって必要単位数は変わり、長く在職しているほど必要単位数は少なくなります。具体的には大学を卒業していない方の場合、以下のように1年在職年数が長くなるごとに5単位が軽減されます。ただし、都道府県教育委員会による履修指導を受け、勤務年数を確認することが必要です。

   
在職年数必要単位数
5年 45単位
6年 40単位
7年 35単位
8年 30単位
9年 25単位
10年 20単位
11年 15単位
12年 10単位

(出典:東京都教育委員会「1 二種免許状を所持する者が、一種免許状を取得する場合」/ https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/static/kyoinsenko/menkyo/m_shinsei/data/m_shinsei_15.pdf

免許状を第二種から第一種へ上進することは、教育職員免許法で努力義務として規定され、教員の質向上を目的に文部科学省も推進しています。通信教育のみで単位を修得できる場合もあるため、要件を満たす人はぜひ検討してみましょう。

資格取得後に幼稚園教諭として採用されるまでの流れ

幼稚園教諭の資格を取得しただけでは幼稚園で働くことはできません。就職活動をし、希望する幼稚園から採用されれば職員となれます。ただし、求人に応募し採用されるまでの流れは公立と私立とで大きく異なります。

以下では、公立幼稚園に応募する場合と私立幼稚園に応募する場合に分けて採用までの流れを解説します。

公立幼稚園の場合

公立幼稚園で実施される採用試験の時期や内容は自治体により異なりますが、おおむね以下のスケジュールです。

(1)4月 採用案内、受験申込書配布

(2)4~6月 受験申し込み

(3)6~7月 第一次選考(一般教養、専門教養、小論文などの筆記試験)

(4)7~9月 第二次選考(実技、模擬授業、面接などの選考)

(5)9~10月 合格発表

第二次選考を通過すれば合格となり、採用候補者として名簿に名前が掲載されます。教育委員会や、各園での最終面接の後、採用先が決定します。

公立幼稚園の場合、職員は地方公務員となり、給与面や待遇面で安定するため人気が高く、高倍率です。また、退職者が少ない傾向があり、自治体によっては採用がない年度もあります。

私立幼稚園の場合

私立幼稚園の場合は、各園で採用試験が行われます。求人情報は学校の求人票や各幼稚園・私立幼稚園連合会のホームページのほか、保育士求人サイトでも見られます。

応募から採用までの流れと内容は、幼稚園によって異なりますが、多くの園では以下の内容で行われます。

(1)書類選考

(2)筆記試験(一般教養、専門教養、小論文など)

(3)実技試験(演奏など)

(4)面接

私立幼稚園の採用過程では、面接が特に重視されます。人柄のほか、園の方針と合致しているかをチェックされるため、事前に十分に情報収集し、想定される質問に答えられるよう準備しておきましょう。

私立幼稚園は園により教育方針がさまざまです。自分が理想とする幼児教育とはどのようなものかを明確にし、それに合った園を選ぶと採用後も仕事内容にやりがいを感じられるでしょう。応募する前に見学が可能な場合は、あらかじめ園の様子を見ておくことをおすすめします。

幼稚園教諭免許は更新が必要

上述した幼稚園教諭免許には有効期限があり、一定期間ごとに資格を更新する必要があります。平成21年度以降に授与された新免許状の場合、その有効期限は10年です。

具体的な更新の流れは以下の通りとなっています。

(1)受講資格の有無を確認する
新免許状の場合、有効期限の満了日までに更新講座を受講する必要があります。

(2)受講したい講習を選択する
文部科学省や教育機関(主に大学)のホームページに情報が掲載されています。開催場所や日時、受講料などを事前に確認しましょう。

(3)それぞれの教育機関に申し込む
各自で教育機関に受講を申し込みます。その際、受講対象であることを証明する書類の提出が必要です。

(4)講習課程を修了する
免許を更新するためには、30時間以上に及ぶ講習の受講が必要です。この課程を修了すると、教育機関から修了証明書が発行されます。

(5)更新申請を行う
勤務先の免許管理者(都道府県公安委員会)に修了証明書を送付し、免許状の更新を申請します。

具体的な講習内容としては、教育史に関する知識から、近年における教育環境の変化、英語教育の重要性など多岐にわたります。一部の講習は選択制となっているため、各自の置かれている職場環境や、取り組んでいる問題に適した講習を選ぶとよいでしょう。

幼稚園教諭に向いている人の特徴

前項まで、幼稚園教諭となるための道のりを紹介しました。これから幼稚園教諭を目指そうとする人には、自分が幼稚園教諭に向いているか気になる人もいるでしょう。ここからは、幼稚園教諭に求められる人物像を解説します。

・子どもが好きな人
幼稚園教諭の大前提として、子どもが好きであることは何よりも重要です。
教育という重要な責任を負う立場であるため、全身全霊をかけて子どもたちと接する必要があります。信頼関係を築くことはもちろん、ときには厳しく叱ることで、自発的な成長を促すことが求められます。

親戚や近所の子どもと接する中で、自然と笑顔になれる人であれば問題ないでしょう。もちろん、子どもの方から懐かれるような性格であれば、より幼稚園教諭に向いています。

・面倒見のよい人
子どもたちは、食事やトイレといった日常生活をこなすのにも一苦労です。ときには助け舟を出す場面も生じます。決して無理に急かさず、その行動を親身になって見守ることが重要です。

また、親離れが不完全な子どもの場合、急に泣き出したり、怒ったりすることもあります。心理的にも大きく構えて、柔軟に対応しましょう。

・手先の器用な人
幼稚園では、細かい作業を求められる場面が多くあります。保育日誌や職員会議の資料、保護者への案内など、作成業務に追われる日もあるでしょう。

幼稚園の先生と聞くと、ピアノを演奏する姿が思い浮かびますが、お遊戯会で衣装を作ったり、運動会の小道具を工作したりする機会もあります。それぞれの仕事内容を丁寧にこなす能力が必要です。

まとめ

幼稚園教諭は、子どもたちが学び、成長する姿を見守ることができる魅力的な職業です。もちろん一筋縄ではいかないこともありますが、たくさんの無邪気な笑顔に囲まれながら働く時間は、何物にも代えられません。 私立幼稚園の採用試験は年齢制限がないことがほとんどであるため、最低限の条件を満たせば、ほぼ誰でも私立幼稚園で働くことができます。 公立幼稚園では年齢制限があることが一般的ですが、30代中盤以降で就職できるところもあり、ほかの職業と比べて、年齢は重要視されない傾向にあります。 将来幼児教育にかかわりたい人は、ぜひ一度、幼稚園教諭を検討してみてください。