保育士の仕事をするなかで「辞めたい」「自分は向いていない」と感じたことがある人は、意外に多いのではないでしょうか。しかし、いざ転職を検討しようとすると、「自分が辞めてしまったら他の保育士が困るのでは?」「自分の退職理由は単なるわがままになっていないだろうか」などが気になって、なかなか第一歩を踏み出せない人もいるようです。
そこで当記事では、保育士が仕事を辞めたいと思う一般的な理由や、転職する際の選択肢にスポットを当てて詳しく解説します。あわせて、円満退職する方法も紹介するので、保育士を辞めたいと感じている人や転職を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
保育士を辞めたいと思ってしまう理由
子どもの成長に携われる仕事にやりがいを感じる一方で、「もう辞めたい」と考えたことがある保育士の方も多いでしょう。実際、子どもとの関わり合いに不満はなくても、「サービス残業が多い」「有給休暇をとりにくい」など、労働条件に不満を感じている保育士はけっして少なくありません。
ここでは、保育士が仕事を辞めたいと思う一般的な理由について解説します。
仕事量が多い
保育士の仕事は、子どもの保育だけではありません。例えば、以下ような仕事も保育士の日々の業務に含まれます。
- 発表会や運動会、遠足などの年間行事の準備
- 保護者への連絡プリントなどの書類作成
- 連絡帳や日誌への記入などの事務仕事
年間行事の準備では、園児たちが使う道具や衣装を保育士が手作りすることも珍しくありません。また、保育園では大勢の子どもの相手をするため、なかなか事務作業の時間をとることができません。場合によっては、休憩時間やお昼寝の時間を使っても作業が間に合わず、残業や持ち帰り仕事になるケースもあります。
このような過酷な労働環境が、保育士を辞めたいと思ってしまう理由の1つです。
給料が安い
子どもを預かる責任の重さや、仕事量の多さに給料が見合っていないことも、保育士が仕事を辞めたくなる理由です。以下は、保育士、幼稚園教諭、栄養士、介護支援専門員、看護師、保健師の平均給与をまとめた表です。
職業 | 平均給与 |
---|---|
保育士 | 約26万7,000円 |
幼稚園教諭 | 約26万7,000円 |
栄養士 | 約26万4,000円 |
看護師 | 約35万2,000円 |
保健師 | 約33万4,000円 |
介護支援専門員 | 約28万5,000円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html)
看護師や保健師、介護支援専門員(ケアマネージャー)などの医療系・介護系の職種に比べて、保育施設で働く保育士、幼稚園教諭、栄養士の平均給与はやや低い水準となっています。
また、公立保育園・私立保育園といった施設形態や規模、経営状況によって、平均給与や平均賞与、手当(残業手当や住居手当、交通手当など)の有無などが異なります。そのため、施設によっては、上記の金額より給与が少なくなるケースもあるでしょう。
そうしたことから給与面に不満を持ち、給与アップを目指して転職を決意する人も多く見られます。
他の職員や保護者との人間関係に疲れた
保育士は、子どもだけでなく、保護者や他の職員をはじめとする大人とも関わらなければなりません。そして、職場に職員同士の派閥などがある場合、大きなストレスを抱えることになります。
また、保護者のなかには、保育園のルールを無視して自分の都合を押しつけてきたり、希望を通そうとしたりする人もいます。そのため、「保護者の要求に対してどこまで応えるべきだろう」「どうすればよい関係を築けるのだろう」と、頭を悩ませている保育士も少なくありません。
そうした状況が続くと精神的な負担が大きくなり、保育園を辞めたいと考えるようになってしまいます。
保育士を辞めて転職する際の選択肢
保育士が転職するにあたっては、キャリアや資格を生かせる職場に転職する方法と、保育士とはまったく違う業界に転職する方法の2パターンがあります。
ここでは、それぞれのパターンに当てはまる職場の例を紹介します。転職を検討している保育士の方は、ぜひ最後までご覧ください。
資格や経験を生かせる職場
保育士の資格や経験を生かせる職場であれば、比較的スムーズに転職できます。自治体によっては、「待機児童ゼロ」を目指した取り組みの一環として、保育士の転職や復職サポートも行っている場合もあります。
以下は、保育士の資格を生かせる職場の一例です。
- 病院内保育施設
- 事業所内保育施設
- 病児保育室
- 託児所
- 家庭的保育事業所(保育ママ)
- 学童保育・児童館
- 乳児院・児童養護施設
- 幼児教室
- ベビーシッター派遣事業所
- 介護事業所
保育士の資格を生かせる職場は多様化しており、ほかにもフリーランス(個人事業主)として、幼児教室を開業したりベビーシッターとして働いたりする方法があります。
保育士とは関係のない職場
接客業やサービス業など、保育士とはまったく関係のない業界・職種に転職することも可能です。そのなかでも、保育士の経験が評価されやすい職種は、以下の2つです。
〇サービス業のスタッフ
アミューズメントパークやテーマパーク、子ども服売り場などのスタッフは、子どもと接する機会が多い職種です。商業施設やショッピングモールなども、多くの子どもが訪れるため、保育士としての経験を生かせる場面があるでしょう。
〇事務職
事務職は未経験からの募集も多く、人気の職種です。保育施設とはまったく異なる環境ですが、保育士時代に資料作成などで培ったパソコンスキルを生かせる場面は少なくないでしょう。
ただし、保育士とは関係のない職場に転職する場合、キャリアゼロからのスタートとなることがほとんどです。転職先が見つかるまでに時間がかかったり、覚える仕事の量が多かったりするリスクがあることを覚えておきましょう。
保育士を辞めて転職する際に気を付けるべきこと
「忙しすぎて休みがとれない」「同僚や保護者との人間関係に限界を感じている」などの理由から、すぐにでも保育士を辞めたいという人もいるでしょう。しかし、退職の進め方やタイミングによっては子どもたちを不安にさせたり、職員・保護者とトラブルになったりするケースがあるので注意が必要です。
最後に、転職する際に気を付けるべきことを紹介しましょう。
時期などを考えて円満退職を心がける
クラスの担任になっている場合は、辞める時期に配慮することが大切です。出産や健康上の理由、家庭の事情で辞めなければいけない場合を除き、年度の変わり目に退職するのがよいでしょう。
いまの職場を辞めるにあたっては、人員の補充を考えて早めに伝えることが大切です。人員確保が間に合わない場合は引き止められることもありますが、早めに辞める意志を伝えておけば、人間関係がギクシャクすることもないでしょう。
意思表示が遅れると、転職活動を始める時期も遅れてしまうため、辞める意思が固まったら早めに伝えるようにしてください。
加えて、子どもや保護者に「園を辞める」と伝えるタイミングも重要です。年度の途中で仕事を辞めると、急な環境の変化に追いつけず、子どもたちが困惑する可能性があります。また、保護者から「無責任だ」などのクレームが出ることも考えられるため、十分注意しましょう。
トラブルを避けるには、子どもたちがお別れできる期間を設けつつ、保護者に対してもきちんとお礼を伝えることが大事です。
辞める理由や要因を考えて転職先を決める
転職を始める前には、自分のなかで「辞めたい理由」を明確にしておきましょう。保育士を辞める要因や理由がはっきりしていないと、転職先でも同じ理由で仕事を辞めたくなる可能性があるからです。
事務作業などの量が多くて辞めたいと思ったのであれば、経験を積んだり、ICTシステムを導入している施設を選んだりすることで問題は解決できます。また、園の教育方針が思い描いていたものと違った場合は、自分の保育観を明らかにしておくことで、理想に合った環境が探しやすくなります。
転職の失敗を防ぐためにも、「転職することで、いま抱えている課題を解決できるか」をしっかり見極めるようにしましょう。
まとめ
仕事量が多かったり、人間関係がこじれたりして「保育士を辞めたい」と考える人は多くいます。しかし、転職活動を始める前に「辞めたい理由と要因」を明確にしておかないと、転職先でも同じ課題にぶつかりかねません。
転職で失敗しないためには、「どういった職場・条件であれば、自分が抱えている課題を解決できるのか」を見極めることが大切です。問題の解決策が分からない場合は、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談するのもよいでしょう。保育士には幅広い転職先があるので、焦らずに自分に合った職場を見つけてください。