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保育士が活躍できる場は多岐にわたりますが、なかでも公立保育士は人気が高く、公立保育士としての就業を目指して頑張っている方も珍しくありません。では、公立保育士とは一体どのような職業を指すのでしょうか。

当記事では、公立保育士と私立保育士の違いや、公立保育士のメリット・デメリットについて解説します。給料や待遇、受けるべき試験なども併せて確認し、保育士として就職活動・転職活動する際の参考にしてください。

公立保育士とは?

「公立保育士」とは、地方自治体(都道府県や市区町村)が設置した保育園や幼保連携型認定こども園、児童福祉施設に代表される保育施設で働く保育士のことです。公立保育士は、地方自治体が実施する公務員保育士試験に合格した地方公務員でもあるため、「公務員保育士」ともよばれています。

「公立保育士は、認可保育園や認定こども園で働いている保育士」というイメージを持っている方もいますが、必ずしも認可保育園が公立保育園とは限りません。

認可保育園・認定こども園は、国が定めた基準に合格している保育施設のことです。公立保育園は認可保育園である場合がほとんどですが、認可保育園には社会福祉法人や企業といった、地方自治体以外が設置者となっている施設(私立保育園)も多数あります。公立保育士は、あくまでも地方自治体が運営する保育園で、公務員として働く保育士を指すことに注意しましょう。

公立保育士と私立保育士の違いやメリット

迷う女性

公立保育士は、公立の保育園やこども園など、地方自治体が設置する保育施設で働く公務員保育士です。一方、保育士が活躍できる職場には、私立の保育施設もあります。では、公立保育士と私立保育士では、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、公立保育士と私立保育士との違いとメリットについて紹介します。

就職施設がほぼ全て認可保育施設

専任職員として働く学童保育指導員の平均年収は、約300万~340万円です。

公立保育士が勤務する公立の保育園・こども園の多くは、認可保育施設となっています。認可保育園は、法律によって保育時間の長さや、預かる子どもの数が決められており、残業も比較的少なく安定した保育を行うことが可能です。

一方で、私立の保育施設には認可保育園もありますが、認可外保育施設も多数存在します。認可保育園は公立保育園と同様の働き方ができますが、認可外保育施設の場合は施設の規模や立地、園児数、施設が行っているサービスなどによって働き方が大きく異なります。

公立保育士として働く場合は、「勤務先が認可か認可外か」と深く考える必要はありません。ただし、私立保育士として働く場合は、認可保育施設かどうかも視野に入れて求人を探す必要があります。認可保育施設で働きたい方は、施設情報を事前に確認しておきましょう。

給与が安定しており昇給も定期的にある

公立保育士は、地方公務員の一般行政職とよばれる職域に含まれており、給与体系も所属する地方自治体の給与体系に準じています。平成31年に総務省が発表したデータによると、公立保育士の平均月給は、以下の通りです。

区分 月給
地方 36万2,047円
41万1,123円

(出典:総務省「平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000660140.pdf

一方、私立保育園に勤務した場合の平均月給は、19~21万円程度です。

(出典:政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査職種別第2表」 https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003085570

上記の表から分かるように、私立保育士よりも公立保育士のほうが給与が高い傾向にあります。また、公立保育士は地方公務員であるため、景気に左右されることは基本的にはありません。

また、所属先の倒産リスクが限りなく低く、年功序列で役職や勤続年数に応じた昇給も定期的にあることも、公立保育士のメリットの1つです。賞与(期末手当・勤勉手当)や退職金も確実に支給されるなど、収入も安定しており、安心して働けるでしょう。

福利厚生や待遇が充実している

公立保育士は地方公務員であるため、都道府県庁や市区町村役場で勤務している公務員の方々と、ほぼ同じ福利厚生を受けることが可能です。福利厚生の内容は、自治体によって異なりますが、特に出産や育児に関する待遇は、多くの一般企業よりも充実しています。

民間企業に勤めている場合、会社によってさまざまな育休制度がありますが、基本的には育児・介護休業法に定められた育児休業を取得することとなります。民間企業の育休が原則1年間である一方、公立保育士を含む地方公務員は、最長3年間の育休を取得することが可能です。

公務員の福利厚生には、出産・育児関連以外にもさまざまなものがあります。「育児などのプライベートと、保育士としての仕事をしっかり両立させたい」「安定して働きたい」と考えている方にとって、待遇面の良さは大きなメリットでしょう。

公立保育士のデメリット

公立保育士には、「認可保育園での勤務が基本」「安定した収入・好待遇が望める」などのメリットがありますが、公立保育士として働くデメリットもいくつか存在します。では、保育士が公務員として働くことのデメリットには、どのようなものが考えられるのでしょうか。

ここでは、公立保育士として働く場合に考えられるデメリットについて解説します。メリットとデメリットの両方を把握した上で、今後のキャリアプランを考えましょう。

転勤・異動の可能性がある

公立保育士のデメリットの1つとして、一般的な地方公務員と同様に、転勤や異動があることが挙げられます。

私立保育士の場合、保育園を運営している法人などに雇用されているため、系列園がなければ、転勤や異動はありません。一方、公立保育士の場合、勤めている自治体が運営する保育園が複数あれば、数年周期での転勤・異動が一般的です。数年ごとに職場が変わるため、環境の変化が苦手な方は注意が必要となります。

しかし、転勤・異動があるとはいえ、原則的には勤めている自治体内での異動です。勤務場所(勤務地)の変更によって、通勤にかかる時間は変動する可能性がありますが、転居が必要となることはほとんどありません。

保育経験の幅が限られている

公立・私立を問わず、保育園にはそれぞれ「保育方針」が定められています。私立保育園は運営する法人によって保育方針も異なり、伝統的な保育を行うところもあれば、最先端の保育研究に基づく保育を行うところもあります。就職する保育園にもよりますが、幅広い保育経験を積み、スキルの向上やキャリアアップを図ることができるでしょう。

一方、公立保育士は異動や転勤があるとはいえ、どの保育園も同じ自治体が運営しているため、保育方針も業務内容も大きく変わりません。多様な保育方法や教育分野に触れる機会は、私立保育士よりも少ないと考えて良いでしょう。

しかし、保育方針が大きく変わらないことで、「転勤や異動があってもスムーズに対応できる」「働き方が安定している」というメリットもあります。保育方針や仕事内容が変わらないことは、悪い面ばかりではないことを押さえておきましょう。

競争倍率が高い

保育士業界は常に人材不足が問題となっている業界であるため、保育士資格を持つ方が保育士として就職することは、それほど難しくありません。

しかし、公立保育士は安定性や待遇の良さから、常に高い人気を集めています。募集も限られていて競争倍率も非常に高いため、公立保育士になるためには、自身の大きな努力が必要です。

公立保育士になるためには公務員試験の合格が必須

試験中の女性

公立保育士になるためには、「保育士資格を取得している」「採用日までに保育士資格を取得する見込みがある」という条件を満たす必要があります。その上で、地方自治体が実施する地方公務員試験(職員採用試験)に合格しなければなりません。

自治体によっては、受験資格(応募資格)に年齢制限やその他の条件がある場合があります。試験の日程や試験内容(筆記試験・実技試験・面接など)、採用までの流れと併せて、求人情報や募集要項で確認しておきましょう。

また、採用試験に合格しても、公立保育園で欠員がでなければ、公立保育士として働けないことに注意が必要です。「採用試験に合格すること=採用候補者名簿に1年間登録すること」であるため、合格後1年以内に配属先が決まらなかった場合、採用試験を再受験しなければなりません。公立保育士として任用されるためには、試験対策や勉強とともに、根気強くチャレンジする精神力も重要です。

まとめ

公立保育士は、雇用や収入が安定しており、待遇が良いというメリットがあります。 その一方で、募集人数が限られているため、競争率の高い公務員試験を突破しなければなりません。合格者となっても、採用試験合格後1年以内に採用枠が空き、配属が決まらなければ、再受験となります。

「卒業後や退職後、期間を空けずに就職先で働きたい」と考えている方は、公務員試験の準備と並行して私立保育園の求人を探すことがおすすめです。保育士専門の求人サイトなどを活用し、自分のライフプランに合った就職活動・転職活動を行いましょう。