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保育士になるためには、保育士試験に合格する必要があります。保育士試験は出題範囲が広く、合格率も低い試験です。保育士試験に合格したい場合は、まず保育士試験の概要を把握しましょう。また、勉強方法や勉強時のポイントを把握することで、合格する可能性は高くなります。

今回は、保育士試験の概要と勉強方法、合格するために押さえるべきポイントも解説します。保育士を目指す人は参考にしてください。

保育士試験は独学の勉強法でも合格できる?

独学でも、時間をかけて勉強をすれば、合格できる可能性があります。保育士試験には、受験資格を持っている人なら誰でも挑戦できます。そのため、指定保育士養成施設に通わずとも、勉強計画を練りながら試験対策をしっかりと行えば、合格対策をすることが十分可能です。

保育士資格取得に必要とされる勉強時間は、100~150時間ほどです。1日1時間を勉強時間に充てれば、4~5か月で保育士試験に合格できる計算になるため、独学でも半年間の勉強期間を設けることができれば資格取得を目指せるでしょう。

​保育士の国家試験とは?

保育士の国家試験とは、保育士の資格を取得するための試験です。筆記試験と実技試験の2種類があり、筆記試験には、教育原理・社会福祉・子どもの食と栄養などの9科目があります。実技試験は、音楽表現・造形表現・言語表現の3科目です。ここからは、保育士試験について詳しく説明します。

保育士試験の筆記試験の内容

保育士試験の筆記試験では、下記の9科目を実施します。筆記試験はマークシート方式で行われ、合格すれば2次試験となる実技試験に進めます。

1.保育原理
保育の内容や方法、現代保育における課題についての問題です。保育の意義を理解するにあたり、保育所保育指針と保育に関わった歴史上の人物を押さえることが求められます。

2.教育原理
教育に関する概念や原理についての問題です。法律と歴史に則った教育の制度や思想だけではなく、生涯学習社会における現状と課題についても出題内容となっています。

3.社会的養護
家族と離れて暮らす子どもを社会で養育するための方法や、児童福祉施設の特徴、家庭への支援制度についての問題です。子どもの権利や福祉支援、里親制度について幅広く理解しましょう。

4.子ども家庭福祉
家庭福祉の意義や、子どもの人権擁護についての問題です。子ども家庭福祉の制度や法律から現状と課題、動向と展望まで、出題範囲は多方面にわたります。

5.社会福祉
児童福祉関連だけではなく、社会全体の福祉についての問題です。社会保障制度や相談援助など、自分たちの生活に関わる社会福祉を理解することが求められます。

6.保育の心理学
子どもの発達や心理学についての問題です。子どもの発達過程や、子ども同士の関わりと関係作りについての理解が細かく求められます。

7.子どもの保健
子どもの心身の健康についての問題です。子どもの疾病や事故の内容と、防止方法や対策方法について把握しているかが出題されます。子どもの健康状態を汲み取る知識も必要です。

8.子どもの食と栄養
子どもの健康を保つための食生活と栄養についての問題です。食についての特別な配慮が必要な子どもの対応や、食を通した保護者との関わり、食生活の課題についての見識が問われます。

9.保育実習理論
保育実習で学ぶ理論と、保育所保育指針の内容についての問題です。音楽や絵本、絵画、言語など、保育について必要なものに関する知見を広めましょう。

保育士試験の実技試験の内容

筆記試験の9科目をすべて合格すると、2次試験として実技試験が行われます。実技試験は3分野中2分野を選択します。具体的な試験内容は下記の通りです。

1.音楽に関する技術
課題曲をピアノ、アコースティックギター、アコーディオンのいずれかで弾き歌いします。子どもに聴かせることを想定しながら演奏するため、歌だけではなく伴奏・リズムの技術、豊かな表現方法について身に付けることが必須です。楽譜の持ち込みができることから、暗譜をしなくても問題ありません。

2.造形に関する技術
鉛筆かシャープペンシルと色鉛筆を使用して、保育の状況をイメージしながら絵画を描く分野です。問題として設定された場面を想像し、適切な描写や色使いで具現できる表現力が求められます。絵が苦手分野であっても、幼児にもわかりやすく、かつ明るい絵を描くことで高評価につながります。

3.言語に関する技術
課題のお話から1つ選択し、3歳児クラスの15人程度の子どもたちに3分間聴かせることを想定して行われます。声の出し方や表現の技術、子どもへの話し方の実力がチェックされます。幼児がお話に興味を持つように、あらすじを3分間でまとめること、適切な身振り手振りを行うことが必要です。

保育士試験の流れと受験料

保育士試験は、春と秋の年2回開催されます。保育士試験を受験する際は、受験申請をしたうえで、受験手数料を支払いましょう。 保育士試験における一連の流れは、以下のような内容です。

願書入手 4か月ほど前から願書配布が始まるため、入手する
願書提出・受験手数料払込 受験手数料を支払い、受験資格などを確認のうえ願書を提出する
筆記試験 2日間の日程で行われる
実技試験 筆記試験の合格者のみ受験できる

保育士試験の受験手数料は12,950円です。ただし、幼稚園教諭免許状保持者など試験が免除される場合、受験手数料は2,650円となります。

実技試験は、筆記試験を全科目合格した人のみ受験可能です。ただし、筆記試験の各科目に一度合格すると、それぞれ3年間の受験免除が与えられます。したがって、3年のうちに全科目合格すれば、筆記試験を通過することが可能です。

保育士試験の合格点・合格率

筆記試験の点数の合格ラインは、教育原理及び社会的養護はそれぞれ50点満点中30点以上、それ以外の7科目は100点満点中60点以上の得点が要求されます。

実技試験は2次試験となるため、筆記試験に合格した人のみが受験できます。音楽・造形・表現の3分野のうち2分野を選択し、それぞれ50点満点中30点以上の得点で合格です。具体的な合格基準は公表されていませんが、自分の得点は確認できます。

厚生労働省の「保育士試験の概要」によると、保育士試験における合格率は15%~25%で推移しています。ただし、実技試験だけの合格率は70%~90%と高い数値です。

(出典:厚生労働省「保育士試験の概要」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000088256.pdf

保育士の国家試験に関して、出題科目や合格率をより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

「保育士の国家試験とは?科目や難易度を知って合格を目指そう」

保育士試験の科目免除条件

保育士資格試験での免除内容は、所有している免許や資格など、個々の状況によって異なります。具体的な科目免除条件は、下記の通りです。

・幼稚園教諭免許状を持っている
幼稚園教諭免許を有していれば、保育士試験の筆記試験からは「保育の心理学」「教育原理」が、実技試験からは3分野すべてが免除されます。また、指定保育士養成施設で「学び」を行えば、該当する科目が免除されます。さらに、幼稚園教諭免許を取得し、幼稚園での実務経験が3年以上かつ4,320時間以上あれば、特例制度の対象です。特例制度の対象者は筆記試験の「保育の心理学」「教育原理」とすべての実技試験に加え、筆記試験から「保育実習理論」が免除されます。

・社会福祉法人・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格を所有している
福祉に関する社会福祉法人・介護福祉士・精神保健衛生士のうち、いずれかの資格を有していれば、筆記試験から「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」が免除になります。3つの筆記試験科目以外にも、指定保育士養成施設で筆記試験・実技試験に対応する科目を修得することで、該当の試験が免除となります。筆記試験の一部または全部と実技試験のすべての免除を受けることができますが、指定保育士養成施設が発行する「社会福祉、介護福祉士又は精神保健衛生士保育士試験免除科目専修証明書」の提出が必要です。

・筆記試験で合格した科目がある
合格した筆記試験科目は合格した年を含めて3年間免除されるというのが、従来の免除制度です。しかし、2020年の筆記試験が新型コロナウイルスにより中止になったため、2021年と2022年は合格科目の有効期間を最長5年とする特例措置が適用されます。2021年の試験では、従来の「2019年」「2020年」の合格科目と、「2018年」の合格科目を免除できます。2022年の試験では、従来の「2020年」「2021年」の合格科目と、「2019年」の合格科目を免除できます。2021年の試験にて「2016年」と「2017年」の合格科目、2022年の試験にて「2017年」と「2018年」の合格科目を免除するには、対象施設において一定の勤務経験が必要です。

独学でも可能!保育士試験の勉強方法

勉強する女性二人

保育士試験の勉強法には、主に通信講座を利用して勉強する方法と、市販の対策本を用いて独学する方法があります。

通信講座を利用する大きなメリットは、手厚いサポートを受けられる点です。教材には、過去の保育士試験における傾向と対策が綿密に行われており、わかりやすく学習できるよう作成されています。添削サービスを実施している講座もあるため、第三者の客観的な視点が得られることも利点です。

一方、独学では通信講座よりも少ない費用で試験勉強ができます。ただし、自分のペースで進めることができる分、モチベーション維持が難しいというデメリットも存在します。自身の傾向やライフスタイルに合わせ、適切な勉強方法を選択しましょう。

ここからは、独学で保育士試験を勉強する際のポイントを説明します。

【筆記試験】勉強をするうえでのポイントは?

勉強を始める際は、まず目標設定や勉強計画を立てることから始めることがポイントです。全体像を明確にすることで、自身の到達度を客観的に把握できます。余計な不安や焦りが少なくなり、勉強をスムーズに進められるでしょう。独学で筆記試験を勉強するうえでのポイントは、下記の5つです。

〇目標を決める

目標は、試験勉強を継続して続けるために大切な要素です。保育士試験の筆記試験は容易なレベルではなく、相応の勉強量を求められます。目標を決める際には、将来どのような仕事をしているかという長期的な視点と、毎日何をするかという短期的な視点を持ちましょう。特に、毎日の目標はハードルを高くせず、達成しやすい事項にしてください。

小さな目標をコツコツと達成することが、勉強を継続するコツです。

〇勉強計画を立てる

次に、勉強計画を立てます。計画は大まかなものでも構いません。試験日までの日数を逆算し、いつの時期にどの科目を学習するか、スケジューリングをします。スケジューリングをするためには、早い段階で保育士試験の過去問を解き、どの科目を重点的に勉強するべきか把握することが大切です。勉強のスタイルは、問題集ベースがおすすめです。問題集を解き、解答集を読み込むことで、派生した知識も覚えられます。筆記試験日までに、問題集を3回ほど解けるようにスケジューリングしましょう。

〇得意な科目と不得意な科目を把握する

保育士試験を受験するときは、得意な科目と不得意な科目の把握が大切です。保育士試験では、全科目で一定水準の得点を獲得する必要があり、不得意科目の克服が重要となります。自分の不得意な科目を把握できた後は、不得意科目を重点的に学習しましょう。メリハリを付けて勉強することで、効率的な学習が可能です。

〇ノート作りを効率よくする

時間効率のよい勉強をするためには、ノート作りの優先順位を下げることも有効です。書くことは暗記方法の1つとして有効な手段であるものの、時間を大量に消費するデメリットがあります。ノートを作る際には付箋メモなどを活用し、できるだけ負担なく、効率よく勉強しましょう。通信講座や市販のテキストをノート代わりとし、自身でノートを作らない方法もあります。

〇過去問を活用する

保育士試験に限らず、筆記試験のある試験において、過去問の活用は鉄則です。勉強計画を立てる時期や、計画の中間地点など、適度なタイミングで過去問を解いてみましょう。過去問を解くことで、その時点での学習水準を把握することができます。過去問は公式サイトに公開されていますが、市販の過去問題集の利用もおすすめです。市販の過去問題集には、過去問の意図や必要な情報が解説されています。解説を読み込むことで、保育士試験の傾向を肌で感じることが可能です。

【実技試験】対策方法はある?

保育士試験の実技試験には、音楽表現・言語表現・造形表現の3科目があります。実技試験には筆記試験のような正答がないため、対策が困難です。ただし、教室や動画など身近なリソースを活用すれば、対策ができます。

〇教室などを活用する

音楽表現では、ピアノやギター、アコーディオンを演奏します。ピアノやギターの教室は民間のものが多数あるため、音楽表現対策に活用するとよいでしょう。

〇インターネットの動画を活用する

インターネットには、音楽表現や言語表現に関する動画が多数投稿されています。通信講座でも動画を配信している業者があるため、積極的に活用しましょう。

〇自分の話し方を動画で撮る

独学ではアドバイスをしてくれる人がいないため、受験対策として自分の話し方を客観的に確認することが大切です。話し方や声量、表現方法を動画で撮ることで、子どもに対する表現として適切かを見極められ、言語表現の課題点を見つけやすくなります

〇人物や風景を描く練習をする

造形表現では保育の一場面が課題となります。そのため、保育士や子どもなどの人物と、保育において想定される風景を描く練習をすることが必須です。色塗りや描き方など、自分なりの表現方法を見つけて練習することで、本番においてもスムーズに取り組めます

​試験に合格した後は求人を探そう!

求人を探す保育士

保育士の資格試験に合格した後は、実際に保育士の求人を探しましょう。「保育士の求人」と一口に言っても、公立の保育施設や私立の保育施設など、さまざまな求人があります。それぞれで昇給や福利厚生に違いがあるため、事前に求人情報の精査が必要です。

保育士の求人情報を調べる際は、保育士専門の求人サイトをおすすめします。保育士求人に特化しているため求人を検索しやすく、掲載されている求人数も多いサイトがほとんどです。また、保育士へのお役立ち情報を掲載している求人サイトもあります。

保育士専門の求人サイトのなかでも、マイナビ保育士は求人者の満足度が高いサイトです。多数の求人情報や求人特集を掲載しており、かんたん条件で検索できる検索システムを設置しています。保育士の求人を検討している人は、マイナビ保育士をぜひご利用ください。

まとめ

ここまで、保育士試験の概要と勉強方法に関して、合格するために押さえるべきポイントも含めて解説しました。保育士試験の合格率は15%~25%という水準であるため、独学で試験に合格するためには相応の勉強量が必要です。あらかじめ目標を立てたり、過去問を解いたりして、勉強を効率よく進めていきましょう。

試験に合格した後は、求人を探す必要があります。求人を探すときは、保育士専門の求人サイトである、マイナビ保育士をご活用ください。