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近年、共働き世帯の増加や核家族化に伴い、預かり保育のニーズが高まっています。そのため、「預かり保育制度が利用できる幼稚園に子どもを通わせたい」と思っている人は多いでしょう。
しかし、預かり保育の制度内容や利用するメリットを十分に理解している人は、多くありません。

そこで今回は預かり保育について、制度の概要やメリット・デメリットを詳しく解説します。預かり保育の利用を検討している人や、預かり保育のある施設で働きたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

預かり保育の概要

預かり保育とは、幼稚園や認定こども園が、従来の教育課程に該当する9時~14時以外の時間帯で子どもを預かる制度のことです。園によっては、土日や夏季・冬季の長期休業中に預かってくれる所もあります。

預かり保育で実施する内容は、通常の保育時間に行う遊びや創作活動だけではありません。英語やスポーツ、音楽などの活動を実施することがあり、中には専門性の高い外部講師を招いている園もあります。そのため、預かり保育が習い事の時間となっている場合があることも特徴的です。

預かり保育を利用する人の多くは、仕事の都合などにより、従来の教育終了時間(14時)に子どもを迎えに来られない親です。そのため、利用にあたっては、就労状況の証明書類を提出するなど、一定の条件が課せられる場合があります。

共働き世帯やひとり親世帯など、毎日14時までに子どもを迎えにくることが難しい家庭は多いでしょう。預かり保育は、忙しいママやパパの負担を和らげるために大きな役割を担っています。

一時保育との違い

預かり保育と似た制度に保育園の「一時保育」がありますが、両者の違いを明確に理解している人は多くありません。幼稚園における預かり保育と保育園の一時保育では、下記の違いがあります。

預かり保育 一時保育
預けられる子ども 当該幼稚園に通っている3歳以上の子ども 普段、保育施設などを利用していない子ども
料金 幼稚園ごとに設定されている
※共働きやひとり親の家庭は、無償化の対象となる場合がある
自治体ごとに設定されている
環境 普段から通っている幼稚園であるため、子どもが環境に慣れている 子どもにとって初めての場所であるため、ストレスを感じる可能性がある

一時保育は、普段保育施設などを利用していない子どもを臨時的に預けるサービスであり、園に通っている園児以外は対象外となる預かり保育とは、大きく異なります。

また、一時保育は主に病気や仕事の都合など、突発的な出来事で家庭での保育が難しくなったときに利用できるサービスです。また、少しのあいだ育児から離れてリフレッシュしたいときに利用される場合があります。

預かり保育のスケジュール例

幼稚園などでは実際にどのようなスケジュールで預かり保育を実施しているのでしょうか。以下では預かり保育のスケジュール例を通常時と長期休暇期間中に分けて紹介します。

・通常時スケジュール

7:00~8:30 早朝預かり保育(クラス保育の開始まで、ほかのクラスの子ども達と過ごす)
8:30 登園、自由遊び
9:00 クラス活動(合唱や体操、工作など)
12:00 昼食
13:00 クラス活動・自由遊び
13:50 降園準備
14:00 降園
14:00~18:00 預かり保育(おやつ、自由遊び)

・長期休暇期間中スケジュール

7:00~8:30 登園、自由遊び
8:30 朝の挨拶、クラス活動
12:00 昼食
13:00 クラス活動・自由遊び
14:00 随時お迎え、降園の開始
15:00 おやつ
18:00 預かり保育終了

早朝預かり保育の開始時間は園によって異なり、7時30分からの場合もあります。夜は、18時以降にさらに「延長保育」として19時頃まで預かりを実施する園も一定数存在します。また、午後の時間は自由遊びを室内遊びに限定する園や、子どもの体力に配慮して午睡が取り入れられる園などもあり、スケジュールや教育活動は園によりさまざまです。

預かり保育の主な種類4つ

国が実施する「一時預かり事業」は、家庭で保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児を保育施設などで預かる保育事業です。一時預かり事業の主な種類は、下記の4つです。

・一般型
保育所などに通園していない子どもを対象に、保育所、幼稚園、認定こども園のほか、地域の子育て支援拠点、駅周辺など、利用者が見込まれる場所で実施する一時預かりです。

・余裕活用型
保育所などで子どもの数が定員に達していない(定員割れ)の際に、定員の範囲で行う一時預かりです。

・幼稚園型
幼稚園または認定こども園で実施されます。以前から幼稚園で行われていた預かり保育と同様、主に満3歳以上で1号認定の在籍園児が対象者です。

・訪問型
障害や疾病などの理由で集団保育が難しい場合や、ひとり親家庭などで夜間の仕事をする場合に、自宅で行われる一時預かりです。ほかの種類の一時預かりが行えない際に、市町村と協議の上で実施されます。

(出典:内閣府「子ども・子育て支援新制度ハンドブック」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/handbook8.pdf

預かり保育の実施状況は?

預かり保育の実施状況は、令和元年度で公立幼稚園は70.5%、私立幼稚園は96.9%です。

(出典:文部科学省「令和元年度 幼児教育実態調査」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/01/30/1278591_06.pdf

公立幼稚園の預かり保育実施率は、私立幼稚園に比べて20%以上低い状況です。しかし、近年の共働き家庭の増加により、預かり保育のニーズが高まっているため、今後さらに実施率が上昇する可能性があります。以下では、預かり保育の実施条件や状況について説明します。

預かり保育を行う条件設定

幼稚園によっては、預かり保育利用者に条件を設定している場合があります。令和元年度の幼児教育実態調査では、公立幼稚園の58.9%、私立幼稚園の25.6%が、何らかの利用条件を設定しています。

(出典:文部科学省「令和元年度 幼児教育実態調査」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/01/30/1278591_06.pdf

条件の内容を詳しく見ると、「保護者の就労」が公立・私立ともに90%近くと最も多い結果です。続いて「兄弟の学校行事など」が幼稚園全体で73.5%、「介護」が75.8%、「保護者の社会参加」が41.0%、「リフレッシュなど」が42.0%となっています。

また、預かり保育を受ける理由とは別に、書類やインターネットによる事前の予約、利用申請が必要となるケースもあります。

預かり保育における利用料金の状況

預かり保育利用の料金形態には、以下の4種類があります。実費は、おやつ代など保育料以外の費用です。

  • 保育料のみ徴収
  • 保育料のほか、実費も徴収
  • 実費のみ徴収
  • 保育料、実費ともに徴収しない

令和元年度の調査では、保育料のみを徴収する幼稚園が最も多く、公立幼稚園で44.8%、私立幼稚園で60.5%でした。続いて、保育料以外に実費も合わせて徴収する幼稚園が公立で40.3%、私立で29.0%となっています。実費のみの徴収は公立で5.7%、私立で8.4%とともに1割を下回り、保育料も実費も徴収しない幼稚園は公立で9.2%、私立で2.1%です。

(出典:文部科学省「令和元年度 幼児教育実態調査」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/01/30/1278591_06.pdf

なお、幼児教育・保育の無償化に伴い、幼稚園の預かり保育を利用する場合、3~5歳児クラスでは月額1.13万円を上限に無償とされます。ただし、金額が無償になるには就労などの所定の要件を満たし、「保育の必要性の認定」を受けることが必要です。

(出典:内閣府「幼児教育・保育の無償化について」 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/about/index.html

平日・休日・長期休業期間中の実施状況

平日の預かり保育は、月~金曜日までの5日間実施している幼稚園がほとんどで、公立は72.6%、私立は93.6%に昇ります。これに対し、土曜日は預かり保育を行っていない幼稚園が多く、公立の91.4%、私立の73.9%が実施していません。土曜日の預かり保育を毎週実施している幼稚園は、公立で7.5%、私立では15.6%です。

平日の預かり保育の終了時間は、35.2%の公立幼稚園が午後4〜5時としています。私立幼稚園では、午後5~6時の間に終了する幼稚園が最も多く48.6%となっています。

夏休み、冬休み、春休みの長期休業期間中に預かり保育を実施している幼稚園は、公立幼稚園が1,497園、私立幼稚園が5,374園です。このうち、夏季・冬季・春季すべての休業期間で預かり保育を実施している幼稚園は、公立で52.0%と半数程度で、私立は75.6%となっています。長期休暇期間中の預かり時間は6〜7時間とするケースが最も多く、公立幼稚園は56.0%、私立幼稚園は70.0%です。

(出典:文部科学省「令和元年度 幼児教育実態調査」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/01/30/1278591_06.pdf

幼稚園教諭免許と保育士資格の併有状況

令和元年度の調査では、預かり保育の担当者のうち、幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を併有する人の割合は、公立幼稚園では68.7%、私立幼稚園では79.3%です。

(出典:文部科学省「令和元年度 幼児教育実態調査」/ https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/01/30/1278591_06.pdf

現在、幼保連携型認定こども園へのスムーズな移行を目的に幼保特例制度が設けられ、保育士資格所有者の幼稚園教諭免許状の取得に必要な単位数が軽減されています。この特例制度は2025年3月31日まで実施されるため、今後幼稚園教諭免許状と保育士資格を併有する人は増加すると考えられます。

(出典:文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」/ https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339596.htm

預かり保育のメリット・デメリット

預かり保育の導入が進んでいる理由は、ニーズの増加だけではなく、利用者や子どもへのメリットがあるためです。預かり保育には、下記のメリットがあります。

【預かり保育のメリット】
  • 独自のカリキュラムがある
  • 急用が発生したときの預け場所が確保できる

預かり保育では、子ども達をただ遊ばせるだけではなく、園が独自のカリキュラムを設定して教育活動を行う場合があります。学習系・文化系・運動系など園によって多種多様なプログラムが組まれており、子ども達の可能性を広げる機会となるでしょう。

また、預かり保育には、利用予定日を申請することで予め枠を確保してもらう「登録利用」と、予定ができたときに臨時で利用できる「一時利用」があります。そのため、突然仕事に行かなければならなくなった場合や、兄弟姉妹が急に体調を崩し病院に連れて行く場合など、急用が発生したときの預け場所となることも魅力的です。預け場所が確保できていることで、普段から安心感を持って生活を送ることができるでしょう。

預かり保育には上記のメリットがある反面、下記のデメリットが考えられます。

【預かり保育のデメリット】
  • お金がかかる
  • 子どもが不慣れな環境で過ごすこととなる

預かり保育は、幼稚園ごとに設定された利用料金がかかります。預ける時間が長ければ長いほど費用がかかるため、「早く迎えに行かなければならない」とプレッシャーに感じる場合があるでしょう。

また、預かり保育では、年齢や組が違う園児と一緒に過ごすことがあるため、不慣れな環境が子どもにとって負担となる可能性があります。ただし、新たな友達を作るきっかけができることもあるため、普段と違う環境での生活は必ずしもデメリットとはなりません。

預かり保育の求人で働くときに押さえておきたいポイント

この記事を見ている人の中には、預かり保育での就労を検討している人もいるでしょう。ここでは、預かり保育で働く場合に押さえておきたいポイントを解説します。預かり保育で働く場合は、下記の2点を理解しておくことが大切です。

  • 幼稚園で預かり保育の仕事を行う場合、資格があると働きやすくなるものの、無資格でも働くことができる
  • 預かり保育の場合は短時間勤務が多く、ライフスタイルに合わせた働き方ができる

以前は預かり保育で仕事を行うためには、幼稚園教諭や保育士などの資格が必要でした。しかし、2017年の子ども子育て支援新制度により、現在は市町村等による研修を受講することで、無資格でも預かり保育の仕事が行えます。資格があったほうが働きやすくなるものの、未経験歓迎の求人も多くあり、必ずしも現在資格を所有している必要はありません

また、預かり保育は基本的に平日14時からであるため、短時間勤務の求人が多いことも特徴です。「実務経験を重ねながら資格取得の勉強を行う」「育児や家事を優先しながら働く」など、ライフスタイルに応じた働き方ができます。

預かり保育で働くための要件はある?

預かり保育のニーズが高まっていることに伴い、当分の間、幼稚園の預かり保育については担当者の資格要件が緩和されています。以前は、預かり保育を担当する職員の2分の1以上は保育士資格や幼稚園教諭免許状を所有している必要がありました。2016年4月1日からは資格者の要件が緩和され、下記のようになっています。

  • 担当職員の3分の1以上が保育士資格または幼稚園教諭免許状の所有者
  • 教育・保育に関して一定の知識がある小学校教諭、養護教諭も配置可能
  • 幼稚園教諭の教職課程および保育士養成課程を履修中で、教育・保育に関して一定の知識がある学生も配置可能

(出典:内閣府「一時預かり事業(幼稚園型)における担当職員の資格要件の緩和について」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_27/pdf/s5.pdf

これまで通り、一時預かり事業の一般型と余裕活用型については原則的に担当職員の2分の1以上が保育士などとされています。保育士以外の保育従事者は、研修を修了することが必要です。訪問型の場合は、研修を修了した保育士、家庭的保育者またはこれらの者と同等以上と認められる者が配置されます。

(出典:政府の行政改革「幼稚園における預かり保育の促進について」/ https://www.gyoukaku.go.jp/review/aki/R02/img/s10.pdf

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まとめ

預かり保育は、従来の教育時間以外の時間帯に子どもを保育するサービスです。追加でお金がかかってしまいますが、その分独自のカリキュラムを受けられることや、急に予定ができたときの預け場所となるメリットがあります。

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