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多様化する保護者の保育ニーズ・教育ニーズに応えるため、保育園が提供するサービスは年々変化しています。「延長保育」は、近年導入する保育園が増加しつつあるサービスのひとつです。

今回は、延長保育の仕組みや特徴、延長保育を取り入れる保育園が増えている理由、保育士が延長保育を担当する際のポイントを解説します。
これから保育士として活躍する場合、延長保育を担当する可能性があるため、延長保育に関する理解を深めておきましょう。

延長保育とは?どんな仕組み?

延長保育とは、保育園が提供している従来の預かり時間の範囲を延長して行う保育サービスのことです。定時の預かり時間が終わった夕方から夜までが延長保育だとイメージされがちですが、開園前の早朝保育も延長保育に分類されます。

ここからは、延長保育となる時間帯や利用料金について詳しく解説します。

延長保育となる保育時間

それぞれの保育園で通常保育時間は異なるため、延長保育の時間帯は早朝・夕方・夜間から深夜まで存在します。

そもそも通常保育時間は、保育園の方針・認定・認可により変わります。
一般的な認可保育園は、7:00~18:00または7:30~18:30が本来の保育時間です。認可外保育園であれば、17:00以降に開園する夜間保育園や24時間開園している保育園もあります。

したがって、定時の預かり時間の前後が延長保育となると考えるとよいでしょう。

延長保育の利用料金

保育園に子どもを預けている保護者全員が延長保育を利用するわけではないため、延長保育の利用料金は一般保育の保育料とは別途で支払う必要があります。

細かな料金設定は保育園により異なりますが、月額で支払う場合は2,000円~3,000円程度、日割り(1日単位)で支払う場合は300円~600円程度となっているケースが多い傾向です。

常時延長保育を利用する方が多い場合は月額徴収、スポット利用(臨時利用)の方が多い場合は日割り徴収など、基本的に延長保育の利用料金は保護者の利用状況に合わせて設定されています。保護者の要望に柔軟に対応できるように、月額と日割りの両方の料金体系を設定している保育園も存在します。

延長保育の時間帯に補食や夕食を利用する場合は、上記に加えて別途料金が発生することもあります。

延長保育を導入する保育園が増えている理由

延長保育を導入する保育園が増えている理由は、時代とともに家族形態の在り方が変化したことが挙げられます。

近年は、夫婦共働きで生計を立ててフルタイムで働く女性が増えたことから、保育園が提供する規定の保育時間では足りない方が多くなりました。一昔前であれば両親と同居している夫婦もめずらしくありませんでしたが、単世帯化が進んだ現在では祖父母を頼れる夫婦は少なくなっています。

また、中には昼間保育ではなく夜間保育が中心の保育園もあります。しかし、朝から夜までフルタイムで働いている場合、昼間に預けている保育園から夜間専門の保育園へ子どもを連れていくことは簡単ではありません。

このように、共働きの単世帯夫婦が子育てと仕事を両立することは非常に困難です。
そこで延長保育を利用すれば、安心して子どもを任せて仕事することができます。

家族形態の在り方や女性の働き方が変わり、便利な延長保育のニーズが高まっているために、保育園でも延長保育のサービスを取り入れるようになりました。

保育園が行う延長保育の特徴

延長保育には、通常保育とは違う側面があります。また、提供している延長保育の内容や形態や園によってさまざまです。延長保育について理解を深めるためには、保育園で行われている延長保育の特徴を押さえることが大切です。

ここでは、実際に保育園が行っている延長保育の特徴を紹介します。

小学校低学年の子どもを預かる場合がある

保護者が遅い時間帯まで仕事をしている場合、小学校入学後は大人による送り迎えがなく、放課後の子どもの様子は心配になるものです。こうした保護者のニーズに応えるために、学童保育という位置づけで小学生を預かる保育園もあります。

通常の学童保育では、家庭に代わって子どもを見守り、健全に育成することが主な目的です。一方で保育園が小学校低学年の子どもを預かる場合は、年齢に合わせた学習や遊びを行います。保育園によっては、小学生の子どもが宿題や習い事ができる場所を設けているところもあります。

希望者には子どもに夕食・捕食を用意する

延長保育を実施する保育園によっては、夕食・捕食を提供しています。
夕食・捕食の内容は、主にパンやおにぎりなどの軽食です。おせんべいやクッキーのほか、手作りのお菓子を提供している保育園も存在します。

「希望者のみに夕食を出す」「子どものお迎えが既定の時間を過ぎたら捕食を用意する」など、夕食・捕食の提供方法も保育園によってさまざまです。

延長保育を依頼する保護者にとって、お迎えが遅くなると同時に子どもたちの食事の心配もあるため、保育園が提供する食事サービスは非常に助かるでしょう。

保育士として延長保育を担当するときの心構え

延長保育では、子どもたちの状態や置かれている環境が通常の保育とは異なります。そのため、保育士として延長保育を担当する場合はいくつか注意点があります。

最後に、保育士が延長保育を担当するときの心構えを解説します。

延長保育に携わる際にしっかりと業務を行えるよう、延長保育に慣れていない保育士の方やこれから保育士を志す方はぜひチェックしておきましょう。

子どもが静かに過ごせるよう工夫する

延長保育の対象となる子どもたちは昼間の一般保育の時間帯とは異なり、「自分だけお迎えが来ないことに対する不満を抱えている」「1日の活動後で疲れている」「夕食の時間が遅れていらだっている」といった傾向が見られます。

このような状況下にある子どもたちを少人数の保育士で見守るため、外でのボール遊びなど、子どもが活発に動き回る外遊びを延長保育に行うと対処しきれなくなる恐れがあります。

延長保育では、いたずらに子どもたちを刺激しない、静かに過ごせる環境づくりが基本です。アットホームな雰囲気を作り、積み木やお絵かき、絵本の読み聞かせなど、室内でできる遊びを取り入れましょう。

また、延長保育では複数クラスの年齢の異なる子どもたちを一緒に見守ることがほとんどです。
3歳~5歳の幼児が興味を持てる遊びを取り入れたり、0歳~2歳の乳児が静かに過ごせるようスペースを区切ったりするなど、子どもたち一人ひとりに合わせた配慮も意識しましょう。

保育士同士できちんと情報共有する

延長保育において保育士は、クラスや年齢が混同した子どもたちの見守りから食事提供、保護者への引き渡しまでを担当します。そのため、普段自分が担当しているクラスの子どもたち以外の情報も別の保育士から共有してもらうことが大切です。

日勤の保育士や他のクラスの担任保育士と情報を共有することで、延長保育業務や保護者への引き渡しもスムーズに行えます。

情報伝達のためのコミュニケーションを密に行うと同時に、ITツールの活用などスムーズな情報共有の仕組みづくりも心がけましょう。

まとめ

延長保育は、従来の預かり時間の範囲を延長して行う保育サービスです。定時の預かり保育以外の時間が延長保育となるため、夕方や夜間だけでなく、早朝にも行われることがあります。

また、通常保育とは異なり、小学生などの異年齢の子どもを一緒に保育したり、夕食や捕食を用意したりすることが延長保育の特徴です。延長保育では、保育士同士が密に連携し、子どもたちが静かに過ごせる環境を作りましょう。

共働き世帯の増加や女性の社会進出により、延長保育に対するニーズは高まっています。
これから保育士を目指す方は、延長保育を担当する可能性があるため、延長保育の仕組みや延長保育業務の心構えを理解しておきましょう。