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教員免許を保持するためには、講習を受けて免許更新する必要があります。教員免許の一種である幼稚園教諭免許状も同様です。しかし、幼稚園教諭免許状を保有していても、現在免許を必要とする仕事に就いていない方は、免許更新の必要性に疑問を感じるでしょう。

今回は、幼稚園教諭免許状の更新が必要となるケースから、実際の更新方法・講習内容まで解説します。また、期間内に免許更新を行わない場合の免許状の効力や取り扱い、幼稚園教諭免許状の更新に関するQ&Aも紹介するため、幼稚園教諭免許状の有効期限が満了を迎える方や、幼稚園教諭免許状を持っている保育士の方は最後までチェックしてください。

幼稚園教諭免許状は更新が必要

幼稚園教諭免許状には有効期間が定められており、免許を保持し続けるためには定期的な更新が必要です。更新を怠ると免許は失効してしまい、再度申請するまで幼稚園教諭免許状を必要とする職業に就くことはできません。

幼稚園教諭免許状は、免許状を取得した時期によって新免許状と旧免許状に分かれ、それぞれ有効期間や更新の要件が異なります。

新免許状の場合

新免許状は、平成21年(2009年)4月1日以降に初めて取得した免許状、または免許状に「有効期間の満了の日」の記載がある免許状です。新免許状の有効期間は授与から10年間とされています。

複数ある免許状の中で、1つでも平成21年(2009年)3月31日以前に授与された免許状があれば、すべての免許状は旧免許状となります。

新免許状の有効期間満了日は、今までに一度も免許状の更新や延長をしたことがなければ、免許状に記載された日です。免許状が複数あり、すべてが新免許状の場合は、最も遅い満了日を見ます。今までに免許状の更新または延長をしたことがある人は、証明書に記載された日付が有効期間の満了日です。

旧免許状の場合

旧免許状は、平成21年(2009年)3月31日以前に授与された免許状です。

旧免許状には有効期限の設定はありませんが、取得者の生年月日に応じて更新講習修了確認期限が設定されており、最初の期限は文部科学省ホームページで確認できます。

今までに修了確認期限の更新や延期、更新講習の免除を受けたことがある場合、更新講習修了確認期限は各証明書に記載された日付です。

期間内に免許更新を行わない場合はどうなる?

期間内に免許更新を行わない場合の免許状の効力や取り扱いは、免許状の種類と修了確認期限の時点で教員であるか否かで異なります。

・新免許状の場合

有効期間の満了日の時点で教員をしているか否かにかかわらず、免許状は失効します。

新免許状が失効した際は、免許状の返納は必要ありません。再度、免許状の取得を希望する場合は、30時間以上の更新講習を受講して都道府県教育委員会に申請します。大学に再度通って単位を修得する必要はありません。

・旧免許状の場合

修了確認期限の時点で教員をしているか否かで免許状の効力が変わります。

修了確認期限の時点で教員をしている場合、免許は失効します。すべての免許状を都道府県教育委員会に返納しなければなりません。再度、免許状の取得を希望する場合は、30時間以上の更新講習を受講し、都道府県教育委員会に申請が必要です。大学に再度通って単位を修得する必要はありません。

修了確認期限の時点で教員ではない場合、免許状は失効せず、休眠状態となります。教員になる際は、更新手続きによって免許状の効力を回復する必要があります。

保育士として働いている場合も更新は必要?

保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方の所持者で、保育士として働いている人の中には、免許更新を行うべきか迷う人もいるでしょう。

現在、保育士として働いている場合は、幼稚園教諭免許状を更新する必要はありません。しかし、更新講習を受講することは可能です。

昨今は、就学前の子どもに教育と保育を一体的に提供することを目的に、認定こども園の設置が進んでいます。保育士と幼稚園教諭の両方の資格があれば「保育教諭」となることができ、今後のキャリアを考える際に選択肢が広がる可能性があります。

また、保育と教育の両方に精通していれば、人材としての魅力も高まるでしょう。幼稚園教諭の免許を更新するべきかは、自分の今後の働き方をイメージしつつ検討することがおすすめです。

幼稚園教諭免許状は、失効後に再取得もできますが、更新講習の受講には30時間以上が必要です。キャリアアップのチャンスを逃さないためには、免許状を失効させずに維持するほうがよいでしょう。

幼稚園教諭免許状の有効期間延長は可能?

幼稚園教諭免許状の有効期間満了の日(修了確認期限)の2か月前までであれば、免許管理者へ申請手続きをすることで有効期間の延長(期限の延期)が可能です。

免許状の有効期間を延長(修了確認期限の延期)するためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 申請できる者に該当すること
  • 「やむを得ない事由」により免許状更新講習の課程を修了できないと認められること

申請できる者には、現職の教員のほか、教育現場で働く人が該当します。「やむを得ない事由」には、休職中や休暇中の場合などが当てはまります。詳しくは下記を参考にしてください。

・申請できる者

・新免許状の場合
現職教員、実習助手、寄宿舎指導員、学校栄養職員、養護職員、教育長、指導主事、社会教育主事、その他教育委員会において学校教育又は社会教育に関する指導等を行う者

・旧免許状の場合
現職教員、教育長、指導主事、社会教育主事、その他教育委員会において学校教育又は社会教育に関する指導等を行う者

・「やむを得ない事由」

  • 休職中であること
  • 産休、育休、病気休暇、介護休暇中であること
  • 地震、積雪、洪水その他の自然現象により交通が困難となっていること
  • 海外派遣中であること
  • 専修免許状の取得のための課程に在籍していること
  • 教員となった日から有効期間の満了の日(または修了確認期限)までの期間が2年2か月未満であること
  • その他免許管理者がやむを得ないと認める事由があること
  • 所持する免許状の授与の日から修了確認期限までに10年経っていない場合

(出典:文部科学省「幼稚園教諭免許状をお持ちの方へ-教員免許状の更新について-」/ http://www.kyowa-u.ac.jp/license_renewal/pdf/kindergarten_teacher_license.pdf

免許状の有効期間の延長(修了確認期限の延期)が認められた場合は、証明書が発行されます。

幼稚園教諭免許状の更新方法

ここでは、幼稚園教諭免許状を更新する際の一連の流れを解説します。免許更新完了までの手順を把握することで、スムーズに手続きを行えるようになるでしょう。

(1)免許状の有効期間を確認する

まずは、幼稚園教諭免許状の有効期間をチェックします。新免許状保持者の方は、免許状に記載されている有効期間の満了日を確認します。旧免許状保持者の方は、文部科学省のホームページで修了確認期限を確認できます。

(2)更新講習の受講資格を確認する

幼稚園教諭免許状の更新講習を受けるためには、保持している免許状に応じた受講資格対象者であることが条件です。文部科学省のホームページなどで受講資格を確認しましょう。

(3)更新講習実施教育機関に申し込む

更新講習を実施している教育機関は文部科学省のホームページに記載されています。通える範囲にある教育機関へ申し込みを行い、保持している免許状や学校の種類に応じた免許更新講習を講習科目一覧から選択しましょう。

(4)指定された時間分の免許状更新講習を受講・修了する

申し込みを行った教育機関で更新講習を受講します。講習課程を修了すると修了証明書が、講習過程の一部を履修した場合は履修証明書が発行されます。

(5)有効期間の更新または更新講習修了確認申請を行う

修了証明書もしくは合計30時間以上の履修証明書を同封して、有効期間の更新または更新講習確認申請を行います。現職の方は免許管理者へ、現職でない方は住所地の都道府県教育委員会へ申請します。

(6)有効期間更新証明書または更新講習修了証明書を受け取る

有効期間更新証明書もしくは更新講習修了証明書が発行されるため、免許の更新が完了していることを書面で確認します。

なお、更新講習を受講しただけでは免許更新とはなりません。必ず申請手続きを行い、証明書を発行してもらいましょう。

幼稚園教諭免許状更新の講習内容|オンラインでも可能!

講習を受ける女性

幼稚園教諭免許状を更新するためには、所定の受講料を支払い、計30時間以上の免許状更新講習を受講する必要があります。

免許状更新講習は、必修領域(6時間以上)、選択必修領域(6時間以上)、選択領域(18時間以上)の3つの領域で構成されています。受講対象者は、各地域の大学などで実施されている講習を対面受講できるほか、通信・放送・インターネットでも受講可能です。

更新講習の受講期間及び申請期間は、免許状の有効期間満了日または修了確認期限の2年2か月前から2年間です。

必須領域(6時間以上)

必須領域は、免許状の種類を問わず全員が共通して受講しなければならない領域です。

下記は、必須領域の講習内容となります。

  • 国や世界の教育動向
  • 脳科学や心理学分野における子どもの発達に関する最新情報
  • 教諭としての教育観・子ども観の思索
  • 子どもの生活や生活の変化をテーマとした課題
必須領域の講座例「教育の今日的状況」
・社会環境の変化・貧困問題など、現代の子どもたちに生じている教育上の課題について、その実態と課題を解説する
・さまざまな問題に起因して子どもに起こる発達や学習面での問題、人間関係のゆがみについて分かりやすく説明する
・実情に応じて求められる教育指導、心のバリアフリーの課題を捉える
必須領域の講座例「教育改革の動向と幼児教育の課題」
・世界と日本の幼児教育の動向、幼児理解に基づく保育、教育相談による支援を理解する
・幼児教育に欠かせない子どもの心の発達について、発達心理学、脳科学の最新知識に基づき学ぶ
・今後の幼児教育の課題をともに考える

選択必修領域(6時間以上)

選択必修領域は、免許状の種類や勤務する学校の種類などにより、所定の講習内容から選択して受講します。

下記は、講習内容の一部です。

  • 近年の学校関連の状況や状況の変化
  • 学校の危機管理にまつわる課題
  • 道徳教育や異文化理解教育
選択必修領域の講座例「幼稚園の役割を広め深める」
・家庭での不規則な生活習慣が幼児の心身に与える影響を考慮し、体力や運動能力を低下させないよう、幼児期の取り組みに着目する
・幼児の生活習慣と運動能力に関する現状と課題を考える
・幼児期の運動遊びをZOOMを通して実技実習する
選択必修領域の講座例「幼稚園教育要領と幼児教育のこれから」
・「人間関係」に焦点を当て、子どもたちの共同的な遊び、地域交流活動などについて考える
・今の時代に求められる保育者の専門性について検討し、幼児教育のこれからを考える

選択領域(18時間)

必選択領域は、所持する免許状に応じた講習を任意で選択し、一定時間以上受講する必要がある領域です。幼稚園教諭は教諭に分類されるため、対象職種が教諭の講習内容を受講します。

選択領域のテーマは「幼児、児童又は生徒に対する教科指導及び生徒指導上の課題」です。なお、免許状の新旧や所持数によっては、選択する講習内容が異なる場合があります。

選択領域の講座例「幼児期の「教育」と「保育」」
・幼稚園教育要領等改訂の背景、幼児教育施設の現状や保育の長時間化など、保育の課題を探る
・幼児期の教育のあり方を「教育」「保育」をキーワードに考察する
・養護と教育の一体化、ケアと教育の関係を考える
選択領域の講座例「世界の乳幼児教育・保育改革最前線」
・20世紀末から世界において急ピッチで進められている乳幼児教育・保育の制度改革、カリキュラム改革などの現状と課題を知る
・外国での保育者の質的向上への取り組みを学習する
・日本の乳幼児教育の動向と世界各国を照らし合わせて考察し、課題を明らかにする
選択領域の講座例「幼児教育の振り返りと今後の課題」
・幼稚園教諭、保育所保育士、認定こども園教諭を対象に、幼児教育や保育の基本的な知識や技能を振り返る
・今後の教育、保育の質向上のため、法改正や政策の動向から貧困問題への対応を取り扱う

幼稚園教諭免許状の更新に関するQ&A

疑問をもつ女性

幼稚園教諭免許状の更新は手順や要件が複雑であるため、さまざまな疑問が浮かぶ方もいるでしょう。最後に、幼稚園教諭免許状の更新に関するよくある質問にQ&A形式で解説します。

Q:出身大学以外でも講習は受けられる?

A:出身大学でなくても、幼稚園教諭の免許を発行している各地の大学で受講することができます。時間がない場合や近隣に受講できる大学がない場合は、オンライン受講が可能です。

Q:講習受講料はいくら?

A:講習受講料は、講習を実施している機関や団体によって異なります。 更新講習を受講する前に、講習実施期間のホームページなどで費用を確認しておきましょう。

Q:講習受講料の支払い方法は?

A:講習受講料は、機関や団体が指定する支払い方法で、開設者に直接支払います。更新講習の受講を予約した機関や団体が定める支払先・入金方法を確認したうえで、期日までに支払いを済ませておきましょう。

Q:更新講習はどのくらいの時期に予約すればよい?

A:実施する機関や団体によって異なりますが、人気のある講座はすぐに埋まってしまうこともあります。できるだけ早い時期に予約するとよいでしょう。

Q:修了認定試験の仕組みが知りたい!

A:修了認定試験(履修認定試験)は、受講した更新講習ごとに実施されます。 各講習に対応した試験で内容を習得していると認められた場合に、修了認定(履修認定)が行われます 。

まとめ

幼稚園教諭免許状には有効期間があるため、満了日を迎える前に更新する必要があります。現在は保育士として働いており、幼稚園教諭免許状を活用していない場合でも、幼稚園教諭免許状を更新しておいて損はないでしょう。

幼稚園教諭免許状の有効期間は、新免許状か旧免許状かによって異なります。有効期間をきちんと確認したうえで、更新講習の受講を申し込んでください。

なお、講習受講料や支払い方法などは、講習を実施する機関や団体ごとに変わります。幼稚園教諭免許状を更新する方は、ホームページなどでしっかりと情報を確認しましょう。