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保育施設が多様化している現代は、保育士が求められる職場も多種多様です。 たとえば、託児所の一種にあたるベビーホテルも人材の需要がある職場のひとつです。

ホテルと名がついていますが、必ずしも子どもが宿泊するとは限りません。 また、通常の宿泊施設のようなサービスを提供する施設ではないため、ベビーホテルで働く場合は事前に仕事内容について十分に理解しておく必要があります。

今回は、ベビーホテルで働くことに興味を持っている方に向けて、主な仕事内容やメリット・デメリットについて解説します。

ベビーホテルとは?保育所との違いも解説

厚生労働省が定義するベビーホテルは、下記いずれかの条件に当てはまる常時運営の施設を指します。

  • 20時以降の保育を請け負っている
  • 施設に宿泊する子どもの保育がある
  • 一時預かりの児童が全体の半数以上を占める
(出典:厚生労働省「平成21年地域児童福祉事業等調査結果の概況:用語の定義」
/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jidou/09/yougo.html

ベビーホテルは、宿泊目的専用の施設ではなく、あくまで通常の保育施設が深夜の託児を受け付けている施設です。 24時間体制で保育を行っている施設も存在しますが、ベビーホテルに分類されるすべての施設が該当するわけではありません。 中には、早朝2時前後から7時ごろまで預かっている施設や、夜間から早朝にかけて請け負っているところも含まれます。

保育施設は、大きく分けると認可保育所と認可外保育施設の2タイプがあり、ベビーホテルは認可外保育施設にあたります。 ベビーホテルの他には、事業所内保育施設や院内保育施設が同じカテゴリです。 一般的な保育サービス(認定保育園など)との違いは行政による認証・認可の有無で、補助金など行政による関与が少ないという特徴を持っています。

ベビーホテルという名がついていますが、受け付けている子どもは乳児のみではありません。深夜や早朝、休日の保育が必要な小学生も預かりの対象です。

ベビーホテルを利用する子どもの年齢

ベビーホテルを利用する子どもの年齢は、2歳が21.6%と最も高く、次いで1歳が19.0%、3歳が18.9%となっています。最も割合が少ない年齢は0歳の5.5%で、2歳を超えると年齢が上がるにつれて割合が下がる傾向です。

ベビーホテルの利用を始めた年齢について、全体では1歳が32.8%、0歳が22.6%、2歳が21.8%です。年齢別の利用開始時期を見ると、1〜2歳では1歳が半数を超えており、3〜6歳においては2歳が約30%と最も高くなっています。 このことから、1〜2歳の間に初めてベビーホテルを利用する子どもが多いと推測できます。
(出典:厚生労働省「令和元年 地域児童福祉事業等調査の概況 」
/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00009.html

  ベビーホテルの利用に必要な月額保育料

 ベビーホテルの月額保育料について「7万円以上」と回答した割合が多い傾向で、児童1人の世帯で41.6%、児童2人の世帯で78.1%と、いずれのケースでも大半を占めています。

児童1人の世帯では、「3万円以上4万円未満」が14.8%、「4万円以上5万円未満」が13.0%と、利用料にばらつきが見られます。一方で、児童2人の世帯では、6万円未満の価格帯はいずれも5%未満と非常に少数です。

また、ベビーホテル利用時には、食事やおむつ代などの実費徴収が加算されることもあります。実費徴収額は「1万円未満」が48.2%、「1万円以上2万円未満」が24.3%です。
(出典:厚生労働省「令和元年 地域児童福祉事業等調査の概況 」
/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00009.html

ベビーホテルの開始時間と終了時間

ベビーホテルの開始時間の傾向として、「9:00〜9:59」が39.2%、「8:00〜8:59」が39.0%と、8〜9時台に開所する施設が最も多くなっています。終了時間は「17:01~18:00」が31.2%、「16:01〜17:00」が30.7%となっており、日中に利用できる施設が多い傾向です。

一方で、開始時間が「10:00〜」の施設が11.8%、そのうち6.8%は「〜15:00」に終了すると回答しており、夜間にかけて運営する施設も少なくありません。また、「~7:59」に利用開始するベビーホテルは7.9%と、早朝から開所する施設も見られます。
(出典:厚生労働省「令和元年 地域児童福祉事業等調査の概況 」
/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00009.html

ベビーホテルのサービス&仕事内容

ベビーホテルの基本的なサービスや仕事内容は、通常の保育施設と同じです。 大まかな流れは下記の通りで、特別な業務はありません。

  • 自由遊び・お散歩をさせる
  • 食事のサポート・指導
  • お昼寝・おやつ
  • 定時に消灯(夜間)

大人数を預かるケースは少ないため、乳児以外の子どもはクラス分けすることなく一緒の時間を過ごします。認可保育所に入れなかった待機児童も利用者に含まれており、定期的な利用はもちろん、一時的な利用も可能です。夜間から早朝にかけての預かりなど、仕事内容が寝かしつけのみとなる場合もあります。

保育士がベビーホテルで働くメリット4つ

 ベビーホテルは一般的な保育園とは異なる施設であるため、ベビーホテルならではの経験や働き方ができることが魅力です。保育園での業務内容と異なる点は多々あるものの、保育士としての経験を大いに生かすことができるでしょう。

ここでは、保育士がベビーホテルで働くメリットを詳しく解説します。

夜間や早朝に働くことができる

ベビーホテルは、子どもの宿泊を伴う施設や夜間保育施設など、運営時間が多様であるため、早朝や深夜の時間帯でも勤務できます。副業として空いた時間を活用したい人や、学校へ通っている人など、何らかの事情で日中に働くことができない場合におすすめです。中には24時間運営しているベビーホテルもあり、希望の時間帯で働くことができるでしょう。

また、ベビーホテルはシフト制であるケースが多いため、スケジュールが組みやすいことも魅力です。他の仕事や家事と両立しやすく、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。

給与の設定金額が比較的高い場合がある

ベビーホテルの給与は、一般的な保育園と比べて高いケースも少なくありません。特に、深夜・早朝の時間帯では深夜手当が加算されるため、高い給与が見込めるでしょう。

深夜手当とは、午後10時から翌日午前5時までの勤務で発生する割増賃金のことで、賃金の25%以上を加算するよう法律で定められています。ベビーホテルでは深夜手当の他、早朝7時頃まで早朝手当を支給する施設もあります。
(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

また、資格手当の加算や、保育士の経験に準じて基本給を調整するなど、給与面において保育士資格所持者を優遇するベビーホテルも見られます。

イベントや事務仕事が少なくなる

ベビーホテルでは、子どもを預かることが業務の中心となるため、季節の行事や親を招いてのイベントを開催するケースは滅多にありません。イベントの企画や準備を行う必要がなく、保育業務に集中できるでしょう。

また、ベビーホテルの大半は小規模施設であるため、連絡帳や日誌記入、報告書作成といった事務仕事も少なくなります。その分、一人ひとりの子どもに手をかけることができ、充実した保育が行えるでしょう。事務作業の減少に比例して残業時間も少なくなり、精神的に余裕を持って仕事に取り組むことができます。

一般的な保育園とは異なる経験を積める

多くのベビーホテルでは年齢によるクラス分けがなく、乳児以外は同じ部屋で保育が行われます。子ども同士の交流を見守りつつ、幅広い年齢の子どもの保育に携われることは、ベビーホテルならではの魅力です。

また、夜間や宿泊を伴うベビーホテルでは、沐浴・入浴の世話や歯磨き、園への送迎、夜の寝かしつけなど、幅広い保育内容が含まれます。ベビーホテルでの保育時間が長くなることもあるため、より子どもの気持ちに寄り添ったケアが必要です。ベビーホテルでの経験は保育士としての視野を広げ、スキルアップにも役立つでしょう。

保育士がベビーホテルで働くデメリット2つ

ベビーホテルでは一般的な保育園のように、必ずしも日中に働けるわけではありません。また、すべてのベビーホテルに万全の勤務体制が整っているとは限らず、保育方針も施設によりさまざまです。

ベビーホテルの求人に応募する際は、施設情報や求人情報をしっかり確認し、無理なく働ける就職先を選びましょう。

勤務時間が不規則になりやすい

ベビーホテルではシフト制のケースが多く、勤務時間が固定されていません。24時間運営のベビーホテルに勤務する場合、普段は日中勤務を担当であっても、状況によっては深夜・早朝の勤務を依頼されることも考えられます。

日勤と夜勤を繰り返すことにより生活リズムが崩れると、体力的にはもちろん、精神的にも辛いと感じる人もいるでしょう。寝不足で注意散漫な状態では、事故につながる危険性もあります。なるべく健康的な生活を心がけ、自己管理が行える人であれば、ベビーホテルでの勤務も向いていると言えます。

人手不足の施設が少なからず存在する

認可外保育施設であるベビーホテルには、国や自治体からの助成金がありません。このため、十分な資金を確保できないベビーホテルでは、スタッフの人数を最小限に抑えて経費削減を図っているケースもあります。人手不足の施設では職員1人あたりの業務負担が大きく、長時間勤務が課せられるなど、労働環境が整えられていないこともあるでしょう。

人手不足のベビーホテルでは、すべての子どもに目が行き届かないため、事故やけがが発生する可能性も高まります。人材の質や量は、施設の事業へ対する責任感の表れとも取れるため、応募時に確認するとよいでしょう。

ベビーホテルの問題点|人手不足問題への施設による対策

ベビーホテルは人手不足に悩む施設が多く、保育士一人あたりに割り振られる子どもの数が規定人数を超えるケースも少なくありません。そのため子どもたちが十分な保育を受けられないなど、従来の施設は問題点を多く抱えていました。


しかし、現在は事故防止や環境改善のためのさまざま取り組みが行われています。
行政による監督が強化された結果、下記の安全対策が各施設で取り入れられているようになりました。

  • 指導監督指針を新たに策定し、通知する
  • 自治体による立ち入り検査の実施(年1回以上)
  • 遊具からの転落事故を防止するための措置
  • 子どもの動線に配慮した家具の配置
  • 食物アレルギーに対する職員教育の徹底
  • 睡眠中の呼吸確認によるSIDS(乳児突然死症候群)対策
  • 施錠・防犯カメラで不審者侵入や連れ去りの防止

ベビーホテルでも、自治体による立ち入り検査を年に1回以上行い、現状の保育体制を把握することで対策や指導につなげています。 遊具の転落事故防止のために周囲にマットを敷いたり、家具にぶつからないよう動線を考えた配置に変えたり、園による対策もさまざまです。また、一部の対策は、ベビーホテル以外の保育施設でも取り入れられています。

(出典:厚生労働省「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000159998.pdf

ベビーホテルで働くには?無資格でも求人はある?

ベビーホテルでは、無資格でも働くことも可能です。認可外保育施設では保育スタッフの全員が有資格者である必要はなく、各施設は基準に則って有資格者を雇用することとなります。

下記は、厚生労働省による認可外施設指導監督基準からの引用です。

保育に従事する者の概ね3分の1(保育に従事する者が2人の施設及び(1)における1人が配置されている時間帯にあっては、1人)以上は、保育士又は看護師の資格を有する者であること。

(出典:厚生労働省「認可外保育施設指導監督基準」/https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/094/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/02/07/1330504_9.pdf

一方で、安全面や保育の質を考慮して、積極的に保育士を採用するベビーホテルも少なくありません。保育士資格所持者を必須条件とする求人もあるため、資格所持者はベビーホテルへの転職に有利と言えます。

ベビーホテルの求人を探す際の注意点

ベビーホテルの求人は、他の保育施設と同じく保育士専門の求人サイトで探すことができます。ただし、キーワード欄に「ベビーホテル」と入力するのみでは求める募集案件は見つかりません。


また、安心して長く働けるよう、自分に合った就職先を吟味することも必要です。最後にベビーホテルで働きたい方へ、求人情報を探す場合の注意点を紹介します。


安全対策がしっかりと取られている施設を選ぶ

行政主導の改善により、ベビーホテルの中には安全対策が行われているところが増加しました。また、人員数についても多くの施設で改善傾向が見られる状態です。

一方で、対策が不十分なところや実施が遅れているところも一部残っています。 そのためベビーホテルの求人を比較するときは、下記の2点を必ず確認しておきましょう。

  • 具体的な安全対策が行われている
  • 十分な人手が確保されている

きちんと基準を設けているか経営状況や雰囲気に問題はないか、求人上の労働条件や労働環境を確認することはもちろん、直接施設を見学する方法もおすすめです。

認可外保育所のカテゴリで検索する

日々改善が行われているベビーホテルですが、マイナスなイメージが完全に拭われたとは言い切れません。 このような事情もあり、現在は施設名に「ベビーホテル」と明確に表示するところは見つかりにくい状態です。

求人サイトで検索するときは、「ベビーホテル」ではなく「認可外保育所」の分類で探しましょう。夜間保育施設や夜間保育所などの施設名で募集されていることがあります。

24時間開園など日中も開園している施設も含まれるため、募集されている勤務時間や施設の開園時間を参考にしてください。 また、ベビーホテルをはじめ保育士の求人を探している方は、マイナビ保育士をぜひご利用ください。

保育士専門の求人サイトで「時間固定・パートOK」「未経験可能」「月収20万円以上可」など多種多様なこだわり条件で検索できるため、効率良く仕事探しができます。

まとめ

ベビーホテルとは、夜間や早朝の預かり保育を行っている保育施設のことを指します。 一般的な宿泊サービスではないため、家庭の事情によっては宿泊を伴わない利用も少なくありません。 保育士がベビーホテルで働くメリットは、都合のよい時間帯に働けたり日中の勤務とは仕事内容が異なったりと複数あげられます。

デメリットもあげられますが、応募する求人を慎重に選ぶことでリスクを軽減させることが可能です。 安心して働けるベビーホテルを探すために、求人情報はじっくりと比較検討しましょう。 数多くの求人情報を掲載している上、アドバイザーによる相談対応や転職支援も行っている「マイナビ保育士」をぜひご利用ください。