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保育園・保育施設を運営している方のなかには、保育士の配置基準の見直しを検討している方もいるのではないでしょうか。

保育士の配置基準は、園や施設の運営上満たさなければならない基準のひとつですが、保育業界の慢性的な人手不足から人員の確保や配置に頭を悩ませている方は少なくないことが実情です。

今回は、保育士の配置基準の概要や、配置基準の計算方法、配置基準の緩和について詳しく解説します。保育士の配置基準の見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

保育士の配置基準とは

保育士の配置基準とは、保育園・保育施設運営にあたって、保育の質と子どもの安全を担保するために定められた、人員配置の基準のことを言います。端的に説明すると、「1人の子どもに対して何人の保育士が必要であるか」を定めた基準のことです。

配置基準は国が定めた基準が基本となりますが、自治体や保育園・保育施設の形態などによって基準は異なります。

保育士の配置基準は、厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)」によって定められているため、配置基準を満たしていない場合は保育園を運営することはできません

保育園・地域型保育事業における保育士の配置基準

保育園の配置基準は、国によって定められている保育士の人員配置基準となります。

下記は、国が定める保育士の配置基準をまとめた表です。

国が定める保育士の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0歳児 3人 1人
1~2歳児 6人 1人
3歳児 20人 1人
4歳児以上 30人 1人

預かる子どもの年齢が上がるほど、保育士のサポートを必要とする機会が減るため、1人の保育士が保育できる人数は多くなります。

保育園・地域型保育事業においては、国の配置基準を満たしていることを前提に、自治体が独自の配置基準を定めることも可能です。保育・子育てに力を入れて取り組んでいる自治体では、保育の質を高めるために、国の配置基準を上回る厳格な基準を設けている自治体もあります。

保育園における保育士の配置基準

保育士就学資金貸付は、将来に保育士として働きたいと考えている人に、修学資金を貸付ける制度です。

近年では保育園の形態も多様化してきており、それぞれの形態にあわせた保育士の配置基準が設けられています。各保育園形態の配置基準は、以下のとおりです。

・幼保連携型認定こども園

幼保連携型認定こども園とは、幼稚園と保育園の良さを併用して、幼児教育と保育の両方を提供する新しい施設形態です。

幼保連携型認定こども園の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0歳児(乳幼児) 3人 1人
1・2歳児 6人 1人
3歳児 20人 1人
4・5歳児 30人 1人

配置基準と同時に、満3歳以上の子どもを教育する時間は、学級を編成することと専任保育教諭を1人配置することが定められています。

・認可外保育施設

認可外保育施設とは、国が設けた保育園の面積や、職員数などの基準を満たしていない保育園のことを言います。

■認可外保育施設の配置基準
・保育時間が11時間以内である場合認可保育施設(国や自治体が定めた配置基準)と同様の配置基準が定められています。
・保育時間が11時間以上である場合現に保育されている子どもが1人の場合を除く、常時2人以上の配置基準が定められています。

・地域型保育事業

地域型保育事業とは認可型保育施設に属する施設形態で、主に保育ニーズの高い0~2歳児を対象とした小規模保育事業のことを言います。

同事業には小規模保育事業・家庭的保育事業・事業内保育事業・居宅訪問型保育事業の4つの事業形態が該当します。

地域型保育事業における保育士の配置基準

ここでは、地域型保育事業の各事業における配置基準について、事業の特性と併せて解説します。

・小規模保育

小規模保育とは、0~2歳の子どもを対象に、6~19人までの少人数で保育を行う事業のことを言います。定員によってA型・B型・C型に分かれており、それぞれ配置基準が異なります。

小規模保育A型(定員6~19名以下)の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0歳児 3人 1人
1~2歳児 6人 1人
小規模保育B型(定員6~19名以下)の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0歳児 3人 1人
1~2歳児 6人 1人
小規模保育C型(定員6~10名以下)の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0~2歳児 3人 家庭的保育者1人
0~2歳児 5人 家庭的保育者1人(補助者がつく場合)

・家庭的保育事業

家庭的保育事業とは、主に自宅などで少人数の子どもを預かり保育を行う事業のことを言います。

家庭的保育事業の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0~2歳児 3人 家庭的保育者1人
0~2歳児 5人 家庭的保育者1人(補助者がつく場合)

・事業所内保育事業

事業内保育事業とは、企業や病院の内部や近隣に併設された保育事業で、そこで働く従業員の子どもを預かる保育施設のことを言います。

事業内保育事業の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0~2歳児 19人以下 小規模保育A型B型と同様の基準
0~2歳児 20人以上 国が定めた配置基準と同様の基準

・居宅訪問型保育事業

居宅訪問型保育事業とは、ベビーシッターや保育士が保育を必要とする子どもの自宅を訪問して保育を行う事業のことを言います。

居宅訪問型保育事業の配置基準
子どもの年齢 子どもの人数 保育士の人数
0~2歳児 1人 1人

保育士の配置基準が緩和された背景と緩和内容

保育士の配置基準は、策定されて以降約70年以上変化がありませんでした。しかし、近年では女性の社会進出に伴う待機児童の発生や、保育ニーズの高まりから、保育業界の担い手である保育士人材の不足が深刻化しています。

このような状況から従来の配置基準を満たすことが難しい保育園が増えてきたこともあり、保育士の配置基準も規制が緩和されて見直しが行われるようになりました

保育士の配置基準の緩和内容は、下記のとおりです。

▼保育士の配置基準の緩和内容
・朝夕など子どもが少ない時間帯の保育士の配置従来の配置基準では、開園時間は最低2人の保育士の配置が必要と定められていました。しかし、規制緩和により朝夕の子どもが少ない時間帯に限り、必ずしも保育士2人ではなく1人は子育て支援員に代替できるようになりました。
・子育て支援員の活用保育園の長時間の開園などにより、従来の配置基準以上の保育士が必要となる場合において、基準を上回った人員については子育て支援員で代替できるように規制緩和されました。
・幼稚園教諭や小学校教諭の活用「幼稚園教諭及び小学校教諭などの活用に係る特例」により、子どもと関わりのある職種であれば、保育士の業務を代替できるようになりました。具体的には、幼稚園教諭・小学校教諭・養護教諭といった職種が該当します。
ただし、代替職員は研修を受けて保育知識を習得することや、職員全体の3分の2以上は保育士資格を持つ職員を配置することが条件とされています。
・看護師・保育士・准看護師の活用「保育所などに置ける保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例」では、看護師・准看護師・保健師を、保育現場の一員として配置できるように規制が緩和されました。
保育士と同等の役割を果たせるとして、乳児を4人以上保育する施設を対象に、1人に限り上記の職種を保育士1人の配置とすることができます。

保育士の配置基準の計算方法

保育園の配置基準の現状を正確に把握して、適切な見直しを行うためには、保育士の配置基準の計算方法を知っておく必要があります。

最後は、保育士の配置基準の計算方法について、計算例を用いながら解説します。

①保育園の定員数を確認または設定する

配置基準を計算するためには、まずは園の正確な定員数を確認することが先決です。

下記のように、子どもの年齢ごとに人数を把握します。

■保育園の年齢別定員数
0歳児:6人1歳児:12人2歳児:15人3歳児:20人4歳児:30人5歳児:30人

②年齢ごとの定員数を配置基準で割る

園が該当する国・自治体・施設形態の配置基準に応じて、上記の年齢別定員数を割ると、必要な保育士の人数を算出することができます。

ここでは、認可保育園であるとして、国が定める配置基準を用いることとします。

■国が定める配置基準
0歳児:子ども3人に対し保育士1人1~2歳児:子ども6人に対し保育士1人3歳児:子ども20人に対し保育士1人4歳以上児:子ども30人に対し保育士1人
■必要な配置人数の計算例
0歳児:6人÷3=2人1歳児:12人÷6=2人2歳児:18人÷6=3人3歳児:20人÷20=1人4歳児:30人÷30=1人5歳児:30人÷30=1人

子どもの年齢別に必要な保育士の人数を合算すると、園の配置基準がわかります。この園の場合は、最低10人の保育士が必要となります。

③延長保育など特別に配置が必要な保育士の人数を加算する

上記はあくまで最低人数であり、延長保育を実施している園などでは全員が毎日開園から閉園まで勤務することはできません。延長時間帯を担当する保育士と延長保育の子どもの人数から、必要となる保育士の人数を上記で算出した人数に加算する必要があります。

日勤の保育士の退勤後に勤める保育士の人数を3人とした場合、実質上の保育士の配置基準は13人となります。

まとめ

保育士の配置基準は一見複雑に見えますが、園や施設が該当する配置基準を用いて計算することで、適切な保育士の配置人数を把握することができます。

基本となる配置基準を把握しておけば、基準緩和を加味した保育士人員の確保や人数配分といった見直しも、スムーズかつ適切に行うことができるでしょう。

保育園の配置基準の見直しを検討している方は、ぜひ今回の情報も参考に、適切な人員体制を模索してください。