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子どもと接する仕事が好きであっても、現在の職場で勤務時間が長く不満や疑問を感じている保育士の方は少なくありません。特に仕事量の多い保育施設では、残業時間が増えやすい傾向です。

当記事では、保育士の平均勤務時間や残業時間・休憩時間の実態、長時間労働を回避するためのポイントについて解説します。法的に定められた勤務時間について知り、より納得できる働き方をしたい保育士の方はぜひ参考にしてください。

【都道府県別】保育士の平均勤務時間

保育士の平均勤務時間については、厚生労働省より統計データが明らかになっています。

以下は、都道府県別における保育士の平均労働時間(男女平均値)の一覧表です。

【男女計】都道府県別 保育士の労働時間(単位:時間)
所定内実労働時間数 超過実労働時間数
全国平均 168 2
北海道 167 1
青森県 168 2
岩手県 172 2
宮城県 165 2
秋田県 170 3
山形県 169 1
福島県 169 3
茨城県 167 1
栃木県 164 3
群馬県 169 4
埼玉県 165 2
千葉県 163 2
東京都 170 1
神奈川県 164 3
新潟県 170 1
富山県 162 2
石川県 160 0
福井県 171 2
山梨県 166 4
長野県 168 0
岐阜県 163 3
静岡県 169 1
愛知県 166 2
三重県 172 4
滋賀県 175 5
京都府 166 1
大阪府 166 1
兵庫県 163 3
奈良県 171 1
和歌山県 170 1
鳥取県 167 1
島根県 168 1
岡山県 168 5
広島県 184 5
山口県 164 1
徳島県 150 1
香川県 168 2
愛媛県 168 7
高知県 180 3
福岡県 166 2
佐賀県 169 1
長崎県 170 1
熊本県 181 2
大分県 169 2
宮崎県 174 1
鹿児島県 173 1
沖縄県 174 1

(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html

統計データ上において、保育士の所定内実労働時間数はおおよそ月間160~175時間で推移している傾向です。1日8時間を所定と仮定すると、おおよそ月20~22日の勤務が平均であることが分かります。

基本的に正社員が多く採用されている地域は、所定内実労働時間数が多く計上されやすいと言えます。逆に徳島県のように、所定内実労働時間数が少ない(徳島県では150時間)都道府県では、パート・アルバイトとして活躍する保育士も割合的に多いと推察できます。

男女別の平均勤務時間

続いて、以下は「男女別」における保育士の労働時間を示したデータです。

【男女別】都道府県別 保育士の労働時間(単位:時間)
所定内実労働時間数 超過実労働時間数
男性 女性 男性 女性
全国平均 169 168 3 2
北海道 156 167 8 1
青森県 173 168 4 2
岩手県 165 172 2 2
宮城県 180 165 7 2
秋田県 177 170 2 3
山形県 171 169 0 1
福島県 180 168 12 3
茨城県 171 167 1 1
栃木県 166 164 4 3
群馬県 171 169 1 5
埼玉県 167 165 1 2
千葉県 160 163 1 2
東京都 172 170 1 1
神奈川県 165 164 7 3
新潟県 169 170 3 1
富山県 176 162 7 1
石川県 164 160 0 0
福井県 178 170 0 2
山梨県 168 166 0 5
長野県 174 167 0 0
岐阜県 176 162 0 3
静岡県 173 169 2 1
愛知県 163 166 3 1
三重県 172 172 16 3
滋賀県 185 174 9 4
京都府 172 166 0 1
大阪府 167 166 1 1
兵庫県 160 163 4 3
奈良県 172 171 0 1
和歌山県 160 170 0 1
鳥取県 168 167 1 1
島根県 173 168 1 1
岡山県 167 168 14 5
広島県 176 184 3 5
山口県 171 164 0 1
徳島県 168 150 3 1
香川県 167 168 1 2
愛媛県 163 168 44 5
高知県 184 180 4 3
福岡県 154 166 1 2
佐賀県 164 170 2 1
長崎県 184 170 3 1
熊本県 184 181 1 2
大分県 148 169 3 2
宮崎県 - 174 - 1
鹿児島県 180 172 2 1
沖縄県 166 174 1 1

(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html

都道府県のデータを見ると、おおむね男性のほうが所定内実労働時間数・超過実労働時間数ともに多い傾向です。

なお、愛媛県の男性の超過実労働時間数が非常に大きい値(44時間)となっていますが、回答した労働者数が60人程度と少ないデータです。よって、「愛媛県で働く男性保育士=長時間の残業がある」ということではないため、ご安心ください。

実際はデータ以上にもっと勤務・残業している?

ここまで紹介したデータは、あくまで「統計値」として参考にすることが大切です。各職場の状況や働き方にもよりますが、例えば「月の残業時間「0時間」というのは、なかなか考えにくいな」と思う方も多いのではないでしょうか。

実際に保育士の退職理由のデータを見ると、回答者全体の24.9%の方が「労働時間が長い」、27.7%の方が「仕事量が多い」と回答しています。また再就職を考える保育士の方を対象とした調査では、再就職の条件として「勤務日数」が2位、「勤務時間」が3位にランクインされていました。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

保育士は、園児が帰った後にも行うべき業務がたくさんあり、中にはサービス残業をしている人も少なくないと言われている業界です。

もし就職・転職にあたり、無理のない勤務時間で働きたいと思っている方は、ぜひマイナビ保育士にご相談ください。マイナビ保育士では、各施設の状況に精通したアドバイザーが在籍しているため、無理なく働ける職場のご案内が可能です。

【働き方別】保育士の平均勤務時間

保育士の雇用形態には正社員・契約社員・パート・アルバイトなどと、様々な種類があります。

また、どの雇用形態であっても、基本的には「シフト制勤務」が多い傾向です。一方で、働き方改革の推進もあり、プライベートなどの状況に合わせて「固定時間勤務」「短時間勤務」などの働き方ができる職場も少しずつ増えています。

以下では、各勤務形態における保育士の平均勤務時間について解説します。

シフト制勤務

シフト制は、1日の業務時間を時間帯によって分けて交代制で働く勤務形態です。シフト制勤務は、多くの保育施設で取り入れられる働き方となっています。シフトは早番・中番・遅番などに分けられていることが一般的です。早い時間に閉園する保育施設では、早番と遅番の2つしかシフトがない場合もあります。

出退勤の時刻やシフトの組み方は、保育施設によって様々です。例えば、早番が7時~16時、中番が9時~16時、遅番が11時~20時などと設定されています。

シフト制における勤務時間の目安は8時間前後で、残業が発生した場合は勤務時間がより長くなる傾向です。

固定時間勤務

固定時間制は就業時間や出勤する曜日などが固定されている勤務形態で、主に一般企業で導入されています。ただし、保育業界では固定時間勤務を導入している施設は少ない傾向です。

固定時間制が導入されている職場では、8時~16時など就業規則によって決められた労働時間で働きます。派遣社員として保育施設で働く場合は、固定時間勤務が多い傾向です。

固定時間勤務制における勤務時間の目安は8時間前後で、残業をした場合は勤務時間が長くなります。

短時間勤務

短時間勤務制は育児・介護休業法によって定められた勤務形態です。3歳に満たない子どもを養育する労働者であることなど、一定の条件を満たした保育士が短時間勤務の対象となります。

(出典:厚生労働省「短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について」/ https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/manual/doc/attention.pdf

短時間勤務制は、育児や介護などの事情によってフルタイムの勤務が難しい保育士のために用意された制度です。また、産休や介護などでブランク期間のある保育士が職場復帰をする際に、短時間勤務制が活用されるケースもあります。

短時間勤務制における1日の所定労働時間は6時間です。フルタイムの勤務と比べて、短時間勤務制の労働時間は2時間短く設定されています。

変形労働時間制勤務

変形労働時間制は、月単位や年単位などで労働時間を調整する勤務形態です。変形労働時間制を採用する職場では、就業規則によって繁忙期と閑散期で異なる所定労働時間があらかじめ決められています。

保育施設においては、変形労働時間制が取り入れられているケースは少数です。社会福祉法人や株式会社が運営する保育施設では、変形労働時間制が取り入れられていることがあります。

変形労働時間制では、繁忙期の労働時間が9時間や10時間など、閑散期と比較して長く設定される傾向です。一方、閑散期には長期休暇をとったり、週休3日で働いたりできるなど、業務内容に応じた柔軟な働き方が可能となっています。

保育士の残業時間の実態|休憩時間の取得状況

スマホを操作する女性

近年は、保育士のニーズが非常に高まっているため、残業時間は増加傾向です。

労働基準法によって定められている週あたりの法定労働時間は40時間で、法定労働時間を超えた分は残業扱いとなります。

(出典:厚生労働省「労働時間・休日」/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

全国保育協議会のデータによると、週あたりの実働時間が40時間以上50時間未満の正規職員は回答者の55.3%、50時間以上60時間未満は1.7%、60時間以上は0.2%でした。また、週あたりの実働時間が40時間以上と回答した正規職員の合計は、57.2%となっています。

(出典:全国保育協議会「会員の実態調査報告書2016」/ http://www.zenhokyo.gr.jp/cyousa/h29_06/201706.pdf

つまり、保育士として働く方の多くで残業が発生していることが実情です。施設形態や雇用形態、働き方によっては月に40時間~60時間の残業が発生するケースもあります。

また、労働基準法では6時間以上の勤務に対して45分間以上、8時間を超える勤務に対して少なくとも1時間の休憩が必要と定められています。

(出典:厚生労働省「労働時間・休日」/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

保育士の勤務時間は8時間以上となるケースが一般的なため、原則として1日あたり1時間以上の休憩が必要です。

しかし、保育施設によっては休み時間中にも、連絡帳のチェックや行事の準備など事務作業が発生している場合があります。本来であれば事務作業を行っている時間は休憩時間に含まれないため、休憩時間が十分に取得できない職場は違法な状態です。

長時間労働を回避するための3つのポイント

保育士が長時間労働を避けて働くためには、いくつかのポイントを押さえることが重要となります。労働環境の改善に気を配っている保育施設への就職・転職や、自分に合った雇用形態で働くことが、適切な労働時間で働くための主な方法です。

最後に、保育士が長時間労働を回避するためのポイントを3つ紹介します。

1:時間外労働の短縮に取り組んでいる施設で働く

保育士が長時間労働を回避する1つ目のポイントは、時間外労働の短縮に取り組んでいる施設で働くことです。

一般的に、公立保育園では勤務時間の管理が徹底されています。早朝保育や延長保育を行っていない公立保育園では、原則として長時間の時間外労働は発生しません。ただし、公立保育園の保育士は、私立保育園と比較して就職難易度が高い傾向です。

私立保育園においても、短い時間外労働で働ける職場は存在します。特に、運営者が子育て支援を重視している保育施設では労働環境が整っている場合が多く、無理なく働くことが可能です。また、児童福祉施設や託児所なら、持ち帰り残業なしで働ける可能性があります。

時間外労働を短縮するため、人員配置の工夫や労働環境改善に取り組んでいる保育施設を探しましょう。

2:定員数・行事数の少ない施設で働く

保育士が長時間労働を回避する2つ目のポイントは、定員数や行事数の少ない保育施設で働くことです。小規模保育園・企業内保育所・院内保育は、通常の保育施設と同じ仕事内容で、定員数や行事数が少ない傾向となっています。

・小規模保育園
小規模保育園とは、2015年から設立された認可保育施設です。小規模保育園の定員数は6人~19人までで、家庭的な環境で保育を行います。小規模保育園で保育を行う対象年齢は0歳~2歳です。

(出典:内閣府「子ども・子育て支援新制度について」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/setsumei

小規模保育園は定員数が少ないため、忙しい保育施設と比較して少ない業務負担で働けます。

・企業内保育所
企業内保育所とは、企業によって運営される事業所内の保育施設です。企業内保育所は小規模な場合が多く、クラスを担当せず保育士同士が協力して保育を行います。

企業内保育所はオフィスビルに併設されているため園庭や体育館がなく、行事が行われないケースが一般的です。そのため、行事の準備などによる時間外労働が発生しにくい環境となっています。

・院内保育
院内保育とは、主に病院内で働く医療従事者の子どもたちを預かる保育施設です。企業内保育所と同様に、院内保育でも担任クラスや行事は基本的にありません。そのため、院内保育ではサービス残業や持ち帰り仕事が発生しにくく、定められた時間内で業務を終えることができます。

3:短時間正社員または非正規社員として働く

保育士が長時間労働を回避する3つ目のポイントは、短時間正社員や非正規社員などの雇用形態で働くことです。

短時間正社員なら、フルタイムの正社員と同じく福利厚生を受けながら、短い時間で働けます。また、非正規社員は自分のライフスタイルに合わせて、最適な時間帯や勤務日数で働くことが可能です。

保育士として働き方を重視する場合、フルタイムの正社員以外も候補の1つとなります。労働形態の変更も視野に入れて、より快適に働ける職場を探しましょう。

保育士の処遇改善は年々進行中!

これまで紹介した通り、一般的に「保育士の勤務時間は長い傾向にある」と考えられていますが、政府は保育士に安心して長く働いてもらえるよう、保育士の処遇改善を精力的に進めている状況です。

例えば、岸田政権では2021年11月に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を策定しました。この施策には、保育士や幼稚園教諭の収入を引き上げる措置として、2022年2月から月額で9,000円を引き上げるとの方針が定められています。

(出典:内閣府「公的価格評価検討委員会中間整理」/ https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kouteki_kakaku_hyouka/pdf/tyuukanseiri_20211221.pdf

以下では、保育士に関する具体的な処遇改善施策について紹介します。

保育士の処遇改善の推移

保育士の処遇に関しては、「勤務時間・勤務内容に対して支払われる賃金が低すぎる」として、10年以上前から問題視されていました。

政府は、保育士の処遇改善を図る「処遇改善等加算Ⅰ」と、経験・技能のある保育士・保育教諭向けの「処遇改善等加算Ⅱ」を設立し、2012年から保育士関連職の処遇改善率は、右肩上がりで上昇している状況です。

実際に、2013年から2019年の間を見ると月額約4.4万円の改善が見られました。同様に、保育士の平均年収も2013年の約310万円から、2020年では約374万円になるなど、右肩上がりで増加しています。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

キャリアアップ研修の創設による処遇改善

園長や主任保育士になり得る人材の育成や、保育士の長期的なキャリア形成のため、政府は2017年に「キャリアアップ研修」を設立しました。キャリアアップ研修は、おおむね平均勤続年数8年を超えた保育士を対象にしています。

例えばキャリアアップ研修を受講し「職務分野別リーダー」となることで、月額5,000円の処遇改善、「副主任保育士」「専門リーダー」では月額40,000円の処遇改善が受けられます。

このように、保育士の場合はキャリアを積めば積むほど平均年収が上がりやすい職種と言えるでしょう。

まとめ

保育士の労働時間は原則として1日8時間と定められています。ただし、保育士の勤務時間は、シフト制や変形労働時間制など働き方によって大きく異なる傾向です。近年は保育士のニーズが高まっているため、月の残業時間が40時間以上となるケースもあります。

長時間労働を回避するためのポイントは、時間外労働の短縮に取り組む施設や定員数・行事数の少ない施設で働くこと、短時間正社員または非正規社員として働くことです。ワークライフバランスを意識して働いていきたい保育士の方は、ぜひ自分に合った就職先を探してみてはいかがでしょうか。

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