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「子どもが好き」「人の役に立つ仕事をしたい」など、保育士を目指す理由は人それぞれです。理想の職場で働く自分を想像する一方で、「忙しい」「大変」という声に不安を抱えている方も少なくありません。

転職や就職で実際の仕事内容とイメージに差が生じるケースは、保育士に限らずさまざまな業種・職種で起こり得ることです。

当記事では、保育士の仕事が大変と感じる主な理由と、大変さをやりがいに変えて楽しく働くためのポイントを紹介します。

保育士の仕事が「大変」と感じる理由5選

頭を抱える保育士

厚生労働省が発表した資料によると、保育士の有効求人倍率は2017年以降約2.0倍~3.8倍の間で推移しています。全職種を含めた場合の数字が1.0倍台を推移している状態から見ても、保育士は社会的に需要の高い仕事です。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

売り手市場が続いている保育士は、多少の制限がありつつも勤務先を吟味することができます。しかし、どのような職場であっても子どもを預かることに変わりはなく、以下の理由によって大変さを感じることも少なくありません。

子どもたちの対応に悩む

集団生活に慣れきっていない年齢の子どもは、大人の理屈が通用せず、予定通りに行動してくれるとは限りません。お遊戯の時間に外で遊びたくなったり、食事の時間にじっと座っていられなかったりと、感情のままに行動します。そのため、保育士としての経験が浅い方ほど、子どもたちの対応・クラス運営に悩みを抱えるでしょう。

しかし、対応がうまくいったとき・子どもに信頼しきった笑顔を見せてもらったときなど、保育士の仕事に醍醐味を感じる場面も多いものです。先輩や同僚の姿を参考に経験を積むことで、次第に対応方法で悩むことが少なくなります。

保護者との関係性を築くことが難しい

子どもを安心して任せてもらうために、保護者との信頼関係を築くことが重要です。各行事のお知らせや体調不良時の連絡など、送迎以外にも保護者と関わる場面は多くあります。

子どもを想うあまり過剰な要望を出す保護者もいるため、問題なく連携が取れることもあれば、何らかのクレームが発生することもあります。自分の安易な保護者対応が思いがけないクレームに発展してしまい、深く落ち込んでしまう保育士もいます。

職場の人間関係がうまくいかない

厚生労働省が発表した資料によると、保育士の退職理由の中で最も高い割合を占めるものは、職場の人間関係となっています。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

普段は子どもたちに「みんなと仲良くしましょう」と指導している分、現実とのギャップに違和感を覚えることは、保育士ゆえの悩みと言えます。

人間関係がうまくいかなければ保育士同士で連携を取れず、問題が生じやすくなるため、良好な関係性を築く努力が求められます。しかし意識しすぎてストレスや悩みを抱えこまないよう、注意が必要です。

休憩・休日を確保しにくい

行事の準備や事務作業など、保育以外の仕事に追われ、予定通りに休憩を取れない場合もあります。人手不足の職場は保育士一人あたりが担当する業務が多くなるため、休日出勤や残業が生じやすく、休暇を取ることに躊躇する方も少なくありません。

また、年中無休や時間外保育を行っている保育施設は、土日祝日が必ずしも休日となるとは限りません。シフト制を導入している場合は、出退勤時間が日によって大きく異なります。

一方で、労働環境改善に力を入れている職場も増加しつつあるため、休憩・休日を確保しにくいことに負担を感じている方は、転職を視野に入れることもおすすめです。

労力が給料に見合わない

ここまでに紹介した悩みを抱えた覚えのある方は、労働に対する対価(給料)が少ないと感じたこともあるでしょう。令和元年度における保育士の平均年収を全職種のデータと比較すると、下記の結果となりました。

保育士のみの平均年収 約363万円
全職種の平均年収 436万円

(出典:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html
(出典:国税庁「民間給与実態統計調査」/ https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf

ただし、上記の数字はあくまで全国平均に過ぎません。雇用主や地域など、さまざまな要素によって上記以上の年収を得ている保育士も多く存在します。

また、国を挙げて保育士のキャリアアップを支援する施策が複数実施されており、需要の高さも影響して今後は給料問題の改善が期待できるでしょう。

【理由別】大変さを「やりがい」に変えるポイント

保育士と子供たち

保育士の仕事は前述したようにさまざまな場面で大変さを感じる一方で、やりがいを感じることも多くあります。

たとえば、子どもたちの成長を実感したり、準備していた行事が成功したりと、日々の努力が報われる瞬間です。他にも保護者から信頼を寄せられたときや、子どもたちの笑顔に囲まれたときなど、相手の何気ない言動で自信を得られることがあります。

保育士の仕事でやりがいを感じるためにも、大変さを覚える悩みやトラブルは適宜解消することが重要です。ここでは、「大変さ」を「やりがい」に変えるポイントとして、悩みやトラブルの解消方法を紹介します。

【子どもたちの対応】年齢に合わせた関わり方を身につける

子どもたちの対応で悩む理由は、対応方法そのものの考え方にあります。総合的に対応方法を模索するのではなく、年齢や傾向に合わせた関わり方を身に付けることが悩みを解消するポイントです。

乳児期は周囲の人間と気持ちが通じ合うこと、感性を育てることを目的とし、言葉以外のコミュニケーションに重きを置きましょう。幼児期はある程度の言葉が通じるため、言葉や表現、環境や人間関係について遊びを通じて健康的に学ばせることが重要です。

また、一人ひとりに対してどのように対応しているか、先輩保育士の子どもたちとの関わり方を参考にしても良いでしょう。

【保護者との関係性】積極的にコミュニケーションをとる

保護者と良好な関係を築くためには、積極的にコミュニケーションをとり、信頼してもらうことが大切です。ただし、保護者の気持ちに寄り添えば良いというものでもありません。相手の気持ちや要望を受け止め過ぎると、責任感の強い方ほど過度なストレスに晒されてしまいます。

理不尽だと思うクレームや無茶な相談など、一人で対処できないと判断したものは、他の保育士や園長に相談しましょう。適切な対処をすることで、理不尽なクレーマーだと思っていた保護者が一転して多大な信頼を寄せてくれるようになります。

【職場の人間関係】園長・先輩保育士に相談する

人間関係に悩んだとき、相手を避けたり無理にコミュニケーションをとろうとして失敗したりと、行動次第で余計に溝を深めることがあります。

積極的にあいさつ・報告や連絡など業務上必要となる話題でコミュニケーションをとり、ときには園長や先輩保育士に相談してサポートしてもらう方法もおすすめです。

対処しても人間関係の悩みが解消しない場合は、転職を視野に入れても良いでしょう。

【休憩・休日の確保】休みが取りやすい職場を探す

保育士の仕事は体力勝負の面もあるため、休憩・休日がしっかりと確保されている職場を探しましょう。適度な休憩・休日は心のリフレッシュにつながります。年末年始や夏季休暇の他、リフレッシュ休暇やバースデー休暇など独自の制度を導入しているところも多いため、自分に合った職場を探すことが可能です。

フルタイム勤務が不安な方は、無資格でも応募できる「保育補助」として短時間勤務から始め、保育現場に慣れることから始める方法もおすすめです。担任のサポートを行うパートやアルバイト勤務の人材も、多くの地域で需要があります。

【給料が低い】資格取得・研修受講に励む

保育士の給料問題を改善するために、キャリアップ研修や処遇改善のための事業が行われています。キャリアアップ研修はリーダー的職員の育成を目的としており、全国で通じる専門的知識を得られる内容です。

また、保育士の処遇改善事業ではキャリアアップ研修の修了内容に応じて、下記の金額が保育施設へ支給されます。

・副主任保育士や専門リーダー...月額4万円
・職務分野別リーダー...月額5,000円

資格取得や研修受講に励み、処遇改善によるメリットを得られる対象者を目指しましょう。

まとめ

保育士の仕事内容は事務作業や行事の準備など、多岐にわたります。職員数によっては一人あたりの1日に行わなければならない業務量が多く、勤務時間内に終わらない場合もあるでしょう。

同僚や上司に相談することで改善される問題もありますが、根本的な悩みの解消につながるとは限りません。

給料が低いと感じるのであれば上司や経営者に交渉する他、転職も視野に入れて動くこともおすすめです。また、行政が実施するキャリアアップ研修で知識を身に付け、給与面など能力に応じた待遇を得られる職場へ転職することで、保育士としての本来のやりがいを感じられるようになります。