待機児童問題が深刻な日本では、保育士への需要が高まっています。保育士の仕事に興味を持つ人のなかには、中卒でも保育士になれるのか気になる人もいるでしょう。中卒で保育士を目指す場合は、必要な資格や保育士として働けるようになるまでの手順を理解しておくことが大切です。
今回は、中卒で保育士を目指す方法について詳しく解説します。保育士資格の取得に向けた勉強方法も紹介するため、中卒で保育士を目指している人は参考にしてください。
目次
中卒でも保育士になれる?
保育士の仕事は、中卒でも目指すことができます。ただし、保育士となるためには保育士資格の取得が必須です。保育士資格は国家資格の1つであり、児童福祉法によって定められています。
保育士資格を持たない人は、保育士を名乗ることができません。また、保育士として働くためには資格取得後に保育士登録を済ませ、保育士証の交付を受ける必要があります。
中卒で保育士を目指す方法は、下記の2つです。
・保育士養成学校を卒業する
・保育士試験に合格する |
ここからは、保育士を目指す方法について具体的に解説します。
中卒で保育士を目指す方法(1)保育士養成学校を卒業する
中卒で保育士を目指す方法の1つが、保育士養成学校の卒業です。保育士養成学校は、保育士を目指す人を対象とした養成施設です。必要な単位を取得して卒業することで、保育士試験を受けることなく保育士資格が取得できます。
下記は、保育士養成学校で学習する主な内容です。
・保育の目的や本質
・保育対象への理解 ・保育内容や方法 ・保育実習 |
保育士養成学校では、子どもたちと向き合うために必要な知識を学ぶことができます。平成30年度における保育士養成学校の入学者数と定員充足率は、下記のとおりです。
入学者数 | 定員充足率 | |
---|---|---|
大学 | 18,354人 | 88.2% |
短大 | 21,567人 | 76.8% |
専門学校 | 6,274人 | 59.4% |
(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf )
保育士養成学校の入学者数は、入学定員数を下回っている状態です。定員充足率の数値を見ても、保育士養成学校への入学自体は難しくないと言えるでしょう。ただし、保育士養成学校に通うためには、高校卒業と同等以上の学歴が必要です。
「高卒認定試験の合格」が必要
高校卒業の資格は、高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)に合格することで取得できます。高卒認定試験とは、さまざまな事情によって高校を卒業していない人でも、試験に合格すれば高校卒業と同等以上の学力があると認められる制度です。
下記では、高卒認定試験の受験資格や試験科目などをまとめています。
受験資格(対象者) | 16歳となる年度から(年齢の上限なし) |
---|---|
開催時期 | 年2回(8月・11月) |
試験科目 | 国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語 |
地理歴史・公民・理科は科目選択制です。選択する科目にもよりますが、資格取得には8~10科目の合格が必要となります。また、科目合格制を採用しているため、一度合格した科目について次回の試験は免除されることが特徴です。何度か試験を受けながら自分のペースで資格取得を目指すこともできます。
ただし、高卒認定試験の効力が生じるのは18歳の誕生日以降です。18歳未満で試験に合格した場合でも、保育士養成学校に通えるのは18歳の誕生日以降となるため注意しましょう。
高卒認定試験の学習方法
高卒認定試験に向けて勉強するにあたり、まずは自分の学力を知ることが大切です。自分の苦手な部分を知ることで、今後の学習計画を立てやすくなります。効率よく学力をつけるために、科目タイプに合った学習方法を取り入れましょう。
科目タイプ別のおすすめ学習方法は、以下のとおりです。
○暗記力が必要な科目の学習方法
暗記力が必要な科目には、地理歴史・公民・理科などがあります。記憶を定着させるためには、反復学習がおすすめです。暗記系の科目は、試験範囲の改定などがなければ出題傾向が大きく変わることがないため、過去問を解いて苦手分野を克服することで学習効率が上がります。 ○理解力が必要な科目の学習方法 数学・英語など理解力が必要な科目の学習は、理解できていない部分までさかのぼって学習することがポイントです。過去問を丸暗記する方法もありますが、基本がわからないままでは応用が利きません。苦手な部分を理解したあとは、過去問で数をこなすことがおすすめです。 |
独学が難しいと感じる場合は、身近な人に聞いたり通信講座を活用したりする方法もあります。
中卒で保育士を目指す方法(2)保育士試験に合格する
中卒で保育士を目指す場合、保育士試験に合格して実務経験を積むことも1つの方法です。下記では、保育士試験の試験科目や試験日程についてまとめています。
試験科目 |
<筆記>
保育原理、教育原理、子どもの家庭福祉など <実技> 音楽に関する技術、造形に関する技術、言語に関する技術 |
---|---|
開催時期 |
筆記試験:4月・10月
実技試験:7月・12月 |
※試験日程は多少の変動がある場合もあります
筆記試験は9科目から160問出題され、実技試験では3分野のうち2つを選択して受験します。中卒で保育士試験を受けるためには、規定の勤務経験が必要です。高卒認定試験に合格することで、必要な実務経験期間を短縮することができます。
中卒で保育士試験を受ける場合は、必要な実務経験と保育士試験の勉強方法をチェックしておきましょう。
「5年以上かつ7200時間以上」の実務経験が必要
中卒で保育士試験を受けるためには、5年以上かつ7,200時間以上の実務経験が必須です。高卒認定試験に合格した場合は、必要な実務経験が「2年以上かつ2,880時間」となります。
保育士試験の受験資格に該当する主な児童福祉施設は、下記のとおりです。
・利用定員20名以上の保育所
・保育所型認定こども園 ・幼保連携型認定こども園 ・児童館 ・児童養護施設 ・母子生活支援施設 ・助産施設 ・障害児入所施設 |
ほかにも、認可外保育施設・幼稚園型認定こども園・放課後等デイサービスなど受験資格が認められる施設もあります。ただし、施設を管轄する都道府県に受験資格認定の申請が必要です。対象とならない施設もあるため、あらかじめ受験資格に該当するかどうか調べておきましょう。
児童福祉施設では、保育士資格がない人でも「保育補助」という形で働くことができます。保育補助に求められる主な仕事内容は、下記のとおりです。
・電話対応
・おやつや食事の補助 ・室内活動の準備 ・散歩の引率 |
保育補助の仕事は、保育士の指示のもとで行います。アルバイトやパートなど働く時間に融通が利きやすいことが特徴です。
保育士試験の学習方法
令和元年度の保育士試験合格率は、14.1%となっています。
(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf )
保育士試験は難易度が高いことが特徴です。筆記試験と実技試験で十分な点数を取れるように、計画を立ててバランスよく学習しましょう。筆記試験と実技試験に向けたおすすめの学習方法は、以下のとおりです。
○筆記試験に向けた学習方法
保育士試験の筆記試験では、9教科全てにおいて一定水準の得点が求められます。要点がまとめられた参考書や過去問を中心に、不得意な科目を徹底して学習することがポイントです。また、法改正や新しい子育て支援制度の開始など、最新情報への理解を深めておきましょう。 ○実技試験に向けた学習方法 実技試験に向けた学習は、1人で行うと自己流となったり苦手な部分に気づけなかったりします。さまざまな表現方法を学ぶためには、ピアノ教室や動画サイトで表現力を参考にすることがおすすめです。 |
独学に比べると費用はかかりますが、通信講座や保育士資格取得に特化したスクールを活用する方法もあります。それぞれの方法を比較検討して、自身に合う方法を選択することが重要です。
まとめ
中卒で保育士を目指す方法は、「保育士養成学校に通う」「保育士試験を受ける」の2つです。保育士養成学校に通うためには、まず高卒認定試験に合格しなければなりません。また、保育士試験を受ける場合は規定の実務経験が必要です。
高卒認定試験と保育士試験は、年2回開催されています。試験に合格するためのポイントは、出題傾向を把握して自分に不足している部分をしっかり学習することです。自分に合った保育士へのルートを選んで、保育士資格の取得を目指しましょう。