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年長児を受け持つ保育士にとって、「保育所児童保育要録」の作成はとても大事な仕事です。しかし、初めて年長児を受け持つ保育士のなかには、具体的に何を書けば良いかがわからず、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、保育所児童保育要録の概要・目的を解説した上で、保育所児童保育要録の基本的な書き方や書く際のポイントについて解説します。あわせて、記入例文も紹介するので、「保育所児童保育要録について詳しく知りたい」という保育士の方は、ぜひ参考にしてください。

保育所児童保育要録とは?

保育所児童保育要録(保育要録)とは、子どもたちの保育所での様子や発達状況、保育の過程、留意事項などを詳しく記録し、小学校に引き継ぐための大切な書類です。

厚生労働省が2018年2月7日に実施した「保育所児童保育要録の見直し検討会」では、保育所児童保育要録の意義と位置づけについて、下記のような見解を示しています。

・要録は、保育所保育を通じた子どもの育ちの姿を小学校に伝えるためのものであるという目的を明確にすることが重要である。
・要録の記載内容の意図について、読み手である小学校の教員も理解した上で読むことにより、小学校において要録が適切に活用される。

(出典:こども家庭庁「保育所児童保育要録の見直し等について(検討の整理)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/ea9b65ce/20231016_policies_hoiku_73.pdf

この一文からも、保育所児童保育要録は、子どもたちが小学校で適切な教育・指導を受けられるように取り計らうための重要な書類だとわかります。

なお、幼稚園では「幼稚園幼児指導要録」、認定こども園では「幼保連携型認定こども園園児指導要録」と呼ばれ、それぞれに名称が異なります。

保育所児童保育要録の内容

保育所児童保育要録には、「入所に関する記録」と「保育に関する記録」という2つの様式があります。

「入所に関する記録」の記載事項は、下記のとおりです。

・児童の氏名、生年月日、性別、現住所
・保護者の氏名・現住所
・入所年月日
・卒所年月日
・就学先
・保育所名・所在地
・施設長氏名
・担当保育士氏名

一方、「保育に関する記録」の記載事項は、下記のとおりです。

・児童の氏名・生年月日・性別
・保育の過程と子どもの育ちに関する事項(最終年度の重点、個人の重点、保育の展開と子どもの育ち、特に配慮すべき事項)
・最終年度に至るまでの育ちに関する事項

簡単に説明するなら、「入所に関する記録」は児童の基本情報を記載する書類、「保育に関する記録」は子どもの育ちを具体的に記載する書類となります。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿とは?

現行の保育所児童保育要録は、2018年4月1日から施行された「改定保育所保育指針」にあわせて改定されたものです。厚生労働省は、改定前の保育所児童保育要録と大きく異なる点として、下記の事項を挙げています。

・保育所保育における子どもの育ちの姿をより適切に表現する観点から、保育所保育指針に示される保育の目標を具体化した五つの「領域のねらい」に加え、新たに「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」についても様式に明記する。

(出典:こども家庭庁「保育所児童保育要録の見直し等について(検討の整理)」/ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/ea9b65ce/20231016_policies_hoiku_73.pdf

なお、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」とは、年長児の後半期までに保育所で育みたい資質・能力の指標であり、下記の10項目で構成されています。

・健康な心と体
・自立心
・協同性
・道徳性・規範意識の芽生え
・社会生活との関わり
・思考力の芽生え
・自然との関わり・生命尊重
・数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
・言葉による伝え合い
・豊かな感性と表現

ただし、これらの項目は必ず到達するべき目標ではありません。10の姿は保育所児童保育要録を作成するにあたっての目安であり、すべての項目について書き記す必要はないことを頭に入れておきましょう。

【例文付き】保育所児童保育要録(保育に関する記録)の記載方法

ノートを書く保育士

保育所児童保育要録は、保育所と小学校との間で教育・指導の連続性を保つための書類です。そのため、保育所児童保育要録の「保育に関する記録」を作成する際には、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を強く意識することが求められます。

ここでは、「保育に関する記録」における「保育の過程と子どもの育ちに関する事項」と「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」の書き方を記入例文とともに紹介します。

保育の過程と子どもの育ちに関する事項

「保育の過程と子どもの育ちに関する事項」の記載項目は、「最終年度の重点」「個人の重点」「保育の展開と子どもの育ち」「特に配慮すべき事項」の4つです。

ここでは、それぞれの記載方法やポイントについて、記入例文を交えながら紹介します。

●最終年度の重点
「最終年度の重点」は、年間指導計画における年間目標など、長期的な計画に基づいて設定した年長クラス全体のねらいを記載する欄です。記載する内容は、全員同じものとなります。

〈例文〉
・友だちと協力して遊んだり、課題に取り組んだりすることの楽しさや大切さに気づく。
・言葉によるコミュニケーションを通して、友だちと喜怒哀楽を共有することの楽しさを味わう。

●個人の重点
「個人の重点」には、それぞれの子どもを指導するにあたって、特に重視してきたことを記入します。

〈例文〉
・自分の考えや思いを言葉で伝えたり、友だちの言葉を理解したりしながら遊びや会話を楽しむ。
・まだ経験したことのない遊びや課題にチャレンジし、失敗する悔しさや成功する喜びを知る。

●保育の展開と子どもの育ち
「保育の展開と子どもの育ち」は、1年間で成長が著しかった点や、小学校での指導に必要と考えられる配慮事項などを記載する欄です。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識しながら、子どもたち一人ひとりの育ちを具体的に記入しましょう。その際、他の子どもと比べることがないように注意してください。

〈例文〉
・年長児の自覚を持ち、年下の子どもと遊ぶなかでは、おもちゃを譲ったりけがをさせたりしないように配慮したりするなど、思いやりを持って接していた。
・感情が高ぶると粗暴な言動が見られることもあるが、自分が粗暴な言動を受けたらどう思うかを考えさせると、反省の姿勢を見せる。

●特に配慮すべき事項
「特に配慮すべき事項」には、子どもの健康状態や、指導の際に配慮が必要な点を記入します。

〈例文〉
・卵アレルギーがあるため、給食の際には食材についての確認が必要である。
・生まれつき心機能が弱いため、激しい運動は禁止されている。

最終年度に至るまでの育ちに関する事項

「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」は、入所当初から最終年度までの育ちを記載する欄です。年長児クラスでの育ちを理解する上で、特に重要と考えられることをピックアップして記入しましょう。

〈例文〉
・1歳の入所当時は保護者と離れることを嫌がって泣くことが多かったが、2歳になる頃には保護者と離れて泣く友だちを慰めるようになった。
・4歳になると恐竜に興味を持ちはじめ、保育者に恐竜に関連する本を読むことをせがむようになった。

例文のように、年齢ごとに比較しながら記入すると、より伝わりやすくなります。

保育所児童保育要録を書く際のポイント3つ

保育所児童保育要録は、ただ記入欄を埋めれば良いというものではありません。保育所児童保育要録を書き終えた後は、主任や園長などにチェックされ、不備があれば訂正を求められます。

また、保育所児童保育要録は、施設ごとに書き方が決まっているケースも少なくありません。そのため、保育所児童保育要録を書きはじめる際には、先輩保育士にアドバイスをもらったり、過去の保育所児童保育要録を参考にしたりすると良いでしょう。

保育所児童保育要録を問題なく仕上げるためには、他にも注意すべき点があります。ここでは、保育所児童保育要録を書く際に、押さえておくべき3つのポイントを紹介しましょう。

小学校の先生がイメージしやすい言葉で書く

保育所児童保育要録を作成する際には、読み手である小学校の先生がイメージしやすい言葉で書くことが大切です。

例えば、子どもの個性を表す際に「毎日元気に遊んでいた」と記入しても、具体的な特徴が伝わりません。一方、「トランポリンや鉄棒で毎日元気に遊び、楽しく汗を流していた」と記入すれば、小学校の先生も体を動かして遊ぶことが好きな子どもだと深く理解できます。

特に子どもの育ちを伝えるにあたっては、情景が思い浮かぶように、具体的かつポジティブな言葉で書くことを意識しましょう。

1人ひとりについて異なる内容を書く

どの子どもについても同じようなことを書いたのでは、保育所児童保育要録の意味合いが薄れてしまいます。個人の重点や子どもの育ちなどは、1人ひとり異なる内容(=子どもの個性や特性がわかる内容)を書くように心がけてください。

1人ひとりに沿った内容を書くためには、日々子どもを観察し、メモを取っておくことが大切です。1日の保育業務が終わったところで子どもたちの様子を振り返り、少しずつ保育所児童保育要録に記入する材料を集めておきましょう。

誤字脱字に注意して書く

保育所児童保育要録は、子どもたちの小学校での学びをサポートする大切な書類であるため、誤字脱字は厳禁です。誤字脱字があった場合、性格や特性が小学校の先生に正しく伝わらない可能性もあるので、注意しましょう。

保育所児童保育要録を作成するにあたっては、パソコンやタブレットを活用するのがおすすめです。パソコン・タブレットで作成する際に、校正機能がある文書作成ソフトを使えば、簡単に誤字脱字を見つけられるでしょう。また、手書きに比べて修正も手軽です。

まとめ

保育所児童保育要録は、子どもたちが小学校で適切な教育・指導を受けられるように、保育所での様子や発達の状況などを記録して、小学校に提出する重要な書類です。そのため、初めて年長児を担当する保育士のなかには、不安を感じる方もいるでしょう。

しかし、今回紹介した記入のポイントや記入例文を参考にすれば、不慣れな方でもスムーズに保育所児童保育要録を作成できます。

年長児クラスの担任となった保育士は、子どもの育ちにきちんと目を配り、毎日を大切に過ごしましょう。その上で、1人ひとりの性格や特性が伝わる保育所児童保育要録を作成すれば、子どもたちの小学校での生活がより良いものになるはずです。