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保育園の子どもたちは、さまざまな経験を通して成長します。園外活動の一環となる散歩も、貴重な成長の機会だといえるでしょう。ただし、子どもたちが笑顔で楽しく散歩するためには、安全への配慮が欠かせません。万が一の事態に備えて、交通事故やトラブルに遭うリスクを最小限に抑えられるよう、入念に準備を進めましょう。

今回は、保育園で安全に散歩を楽しむためのポイントと注意点について解説します。散歩を予定している保育士の人は必見の内容です。

保育園で実施する散歩の「ねらい」

保育園の散歩には、さまざまな「ねらい」があります。まずは、一つずつ理解を深めましょう。

○実際に歩いて交通ルールを学ぶ

子どもたちは、実際に街や道路を歩く中でたくさんの交通ルールを学びます。

歩道を歩く
横断歩道を渡る
信号の意味を理解する
道路で遊ばない

子どもは大人より視界が狭いうえに、身体が小さく存在を見落とされがちです。園生活や私生活で交通事故に遭わないように、交通ルールを一つずつ理解させることが、散歩のねらいです。

○外の刺激に触れて感受性を豊かにする

子どもたちにとって、散歩中に出会う景色や生き物たちはすべてが新しい発見です。自然は子どもたちの好奇心を刺激して、感受性を豊かにします。散歩は、園内保育とは異なる経験ができる絶好の機会です。

○人と関わる中で協調性・社会性を育む

散歩は子どもたちにとって、立派な集団行動となります。集団行動の中では、以下のようなことを学ぶことができます。

列から離れずに歩く
前の子どもについていく
年下の子どもを歩道側にする
すれ違う人に挨拶する

子ども同士や周囲の人々へ配慮する中で、協調性や社会性を育むことも、散歩のねらいです。

保育園の散歩における事前準備の仕方

保育園の散歩を楽しく安全に行うためには、入念な準備が欠かせません。ここでは、必要な事前準備の仕方について解説します。

<ルートの設定>

保育園の散歩は、交通量の少ない道や時間帯を選ぶことが基本です。なるべく大通りを避けて、住宅地や歩行者専用帯が設けられている道を選びます。

<時間帯の設定>

歩行者や自転車などと接触する恐れがあるため、通学・通勤ラッシュの時間帯を避けることが大切です。人の動きが落ち着く10時以降であれば、安心して子どもたちを連れ出すことができます。

<ルートの下見>

ルートを下見することにより、気付けることは少なくありません。下見を通して以下のような気付きを得ることができるでしょう。

実際に歩いてみたら、思っていたより歩道が狭かった歩道の青信号が短く、急いで渡らなければならなかった歩道上に危険な立て看板があった

ルートを下見する際は、子どもの視点で歩くことが大切です。危険箇所があれば、迷わずルートを変更する必要があります。散歩で公園に行く場合は、敷地の広さやトイレの有無、遊具の安全性も確かめておきましょう。

<情報共有>

散歩の概要や注意点をまとめた計画書を作成し、保育士や保護者と事前に情報共有を図ります。子どもたち向けのしおりを作成し、お楽しみスポットや禁止事項などがわかるようにしておくことも大切です。

散歩当日に必要な保育士の持ち物

散歩当日は、以下の持ち物を用意しましょう。

計画書・しおり
着替えセット・おむつ
救急セット
予備の飲料水
ティッシュ
ビニール袋
警笛
防犯ブザー
虫よけスプレー
携帯電話
園児名簿

着替えやオムツなどのほか、安全対策として防犯ブザーも必需品です。トラブル発生時でも慌てずに対処できるように、携帯電話に必要な連絡先を登録しておきます。

散歩において保育士が注意すべきポイント

子どもたちは園内とは異なる風景に気を引かれて、注意が散漫になりがちです。散歩中はどこで何が起きるかわからないため、保育士はいつも以上に注意しなければなりません。

ここからは、散歩において注意すべきポイントを3つ解説するため、参考にしてください。

散歩前に子どもたちとルールを確認する

事前に子どもたちと一緒にルールを確認すれば、不意のトラブルを未然に防ぐことができます。子どもたち一人ひとりがルールを理解できるように、わかりやすい言葉でゆっくり話すことがポイントです。子どもたちに説明するルールには、以下が挙げられます。

列からはみ出ない
しっかり手をつなぐ
急に走らない
よそ見歩きをしない
勝手に家や駐車場に入らない
お店の前に並んでいるものに触らない

ルールを話す際は「なぜ守らなければならないのか」という理由も説明しましょう。

安全を意識しつつ楽しく声かけをする

興味のままに散歩を楽しめる子どもがいる一方で、慣れない雰囲気に緊張してしまう子どもも少なくありません。散歩中は安全を最優先としながらも、楽しい声かけを意識する必要があります。

例えば、きれいな草花を見かけたら、名前や特徴などを教えて興味を持たせましょう。線路沿いを歩く際は、電車の色や形に注目してみることも楽しい工夫です。

同じ道であっても、季節によって表情は異なります。声をかけながら移り変わる景色を一緒に楽しむことで、子どもたちは四季を肌で感じることができるでしょう。また、声かけをすることは、熱中症をはじめとした、体調不良の早期発見にもつながります。

横断歩道の信号が黄色に変わったら渡らない

大人と子どもでは、歩行ペースは大きく異なります。全員を一度で渡らせたいと考えがちですが、横断歩道を急いで渡らせる行為は極めて危険です。慌てた子どもが転倒した場合、本人や他の子どもたちが横断歩道上に取り残されてしまう可能性があります。そのため、横断歩道の信号が黄色や点滅に変わったら、必ず手前で待って次のタイミングで渡りましょう。

また、横断中は子どもが車道側に飛び出す恐れがあるため、先頭と最後尾だけでなく、中央にも保育士を配置して万が一に備えましょう。横断時は列が離れてしまっても仕方ありません。交通ルールを順守し、子どもたちを安全に渡らせることが何より重要です。

散歩中に限らず遊びの最中も常に見守る

目的地に着いた際も、遊びに夢中の子どもたちを見守ることが大切です。小さな子どもが歩行者と接触すれば、大きな怪我にもつながりかねません。特に、子どもが車道に出ると非常に危険です。一人の子どもに集中せず、広い視野を持って全体の動きを把握するようにしましょう。

また、草木を分けて遊ぶような場所では、植物の葉で手を切ってしまったり、毛虫に刺されてしまったりする可能性があります。子どもたちに注意喚起をするとともに、自らの目で安全を確かめることが重要です。状況によっては遊び場所を移動するなど、周囲の様子を見ながら適切に対処しましょう。

散歩中にトラブルが起きた際の対処法

どれだけ気を付けていても、散歩中にトラブルが起きる確率はゼロではありません。もしトラブルが起きてしまったら、速やかに役割分担をして以下の対処を取ってください。

<応急処置をする>

子どもが怪我をしたときは、患部の具合を確認して応急処置を施します。かすり傷など軽度の場合は、消毒して絆創膏を貼るなどの対処が有効です。一方で、頭部を打ったときや出血が著しいときは、すぐに病院へ連れていく必要があります。タクシーや送迎バスなどの移動手段もあるものの、一刻を争うときは迷わず救急車を呼ぶことが重要です。

<子どもたちを安全な場所に誘導する>

事件や事故に巻き込まれたときは、二次被害を食い止めるために、子どもたちを安全な場所まで誘導します。気が動転して予想外の行動を取る子どももいるため、慌てずに落ち着いた行動を促すことが大切です。

<保育園に報告する>

トラブルが起きた原因や状況をいち早く保育園に報告し、責任者や他の保育士に事実を周知することが重要です。子どもを病院に連れていく場合は、保護者に状況報告も行います。

<警察を呼ぶ>

事故や事件で相手がいる場合は、速やかに警察を呼ばなければなりません。併せて、警察が到着するまで相手が逃げないように、名前や連絡先などを聞くことも重要です。不審者に遭遇した際は、警報ブザーを鳴らすとともに周囲に助けを求めます。

なお、110番の通報時に伝える内容は、以下のとおりです。

事件もしくは事故であること
時間と場所
現場の状況
相手の特徴※事件の場合自分の身元

<事故報告書を記載する>

保育園に帰着したら事故報告書を記載して提出します。また、迎えに来た保護者に現在の状況を伝え、丁重に謝罪しましょう。

散歩中にトラブルが起きた際の対処法

保育園の散歩には、交通ルールを学ぶことや感受性・協調性を育てることなど、さまざまな「ねらい」があります。子どもたちが楽しく安全に散歩をするためには、事前準備が欠かせません。ルートや時間帯を設定したら、現場の様子を知るために下見も済ませます。

散歩当日は安全第一を心がけつつ、楽しい声かけを意識しましょう。万が一トラブルが起きた際は、速やかに適切な対処を取ることが重要です。充実した園外保育となるように、保育士同士で連携して楽しい散歩にしてください。