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保育士は、現在の日本を支える子育て世代と、未来の日本を担う子どもたちにとって、なくてはならない存在です。しかし「保育士は重労働で給料が低い」というイメージがあることから、一度離職して保育現場に戻らない潜在保育士は少なくありません。こうした潜在保育士や未来の保育士人材を確保すべく、2015年から保育士の労働環境・処遇改善を目指す施策がスタートしました。

この記事では、2種類の処遇改善加算の概要と自治体独自の処遇改善事例について解説します。

保育士の処遇改善加算とは|国が処遇改善を進める理由

保育士は、未就学児とその家族にとって欠かせない存在です。しかし、人手不足に悩む保育施設が多いことも事実です。東京都福祉保健局の発表によると、保育士の退職理由として最多だった理由は人間関係(33.5%)、次いで給与の低さ(29.2%)でした。ほかにも、仕事量の多さや長時間労働などによる退職が多く、業務の負荷と収入のアンバランスさが浮き彫りとなっています。

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

こうした状況を打破し、少しでも多くの保育士を確保すべく、政府は2015年に「処遇改善等加算」を新設しました。ここでは、現在施行されている2種類の処遇改善加算について解説します。

処遇改善加算I

2015年に始まった処遇改善加算Iは、施設の平均勤続年数によって加算率が上がる制度です。常勤職員だけでなく、パート・派遣などの非常勤職員も対象です。処遇改善加算Iの加算率は、以下の要素によって決まります。

●基礎分
基礎分は、各施設の平均勤続年数に合わせて、賃金に2~12%上乗せされる金額です。「対象となる全職員の勤続年数の合計値」を「対象となる職員数」で割った値が、施設の平均勤続年数となります。

●賃金改善要件分
加算当年度の前年度を基準年度とした賃金改善計画書と、実績報告書を提出することで定率加算されます。

●キャリアパス要件分
施設全体のキャリアアップに向けて以下の要件を満たし、かつ全職員に周知することで、キャリアパス要件を満たすことが可能です。

・役職や職務内容などに合わせた勤務条件と賃金体系の設定
・スキルアップのための具体的な計画
・計画に沿った研修の実施、あるいは研修機会の確保

なお、処遇改善加算IIの対象者がいる施設は、キャリアパス要件をクリアしたと自動的に見なされます。

(出典:内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r020730/shisetsu_kasan.pdf

処遇改善加算II

2017年に始まった処遇改善加算IIは、管理職クラスではない一定の実務経験を持つ職員を対象とする制度です。かつて保育士の役職は園長や主任などに限られており、「若手や中堅層がキャリアアップしにくい」「役職手当なしで指導者的職務を任される」などの問題がありました。処遇改善加算IIでは新たに以下の役職を設け、若手・中堅保育士のキャリアパス構築を後押ししています。

●職務分野別リーダー
約3年以上の経験を持ち、6分野の研修のいずれかを修了した保育士に発令される役職です。

●専門リーダー
約7年以上の経験を持つ職務分野別リーダーが計4分野以上の専門研修を修了し、研修終了後に専門リーダーの発令を受けると昇格できます。

●副主任保育士
約7年以上の経験を持つ職務分野別リーダーが計3分野以上の専門研修とマネジメント研修を修了し、研修終了後に副主任保育士の発令を受けると昇格できます。

(出典:内閣府「技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/shikumi.pdf

処遇改善加算Iと処遇改善加算IIの違い3つ

処遇改善加算IとIIはいずれも保育士の待遇改善に大きく貢献していますが、それぞれの加算対象や加算額の計算・配分方法は大きく異なります。あらかじめ両者の特徴を知っておくことで、「加算分が給与に反映されていない」といった勘違いやトラブルを防げるでしょう。

ここからは、処遇改善加算Iと処遇改善加算IIの違いを解説します。なお、いずれも内閣府の以下の資料を参考にしています。

(出典:内閣府「平成30年度子ども・子育て支援新制度市町村向けセミナー資料」/ https://www.ans.co.jp/u/okinawa/cgi-bin/img_News/178-1.pdf
(出典:内閣府「技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/shikumi.pdf

対象となる保育士

処遇改善加算Iと処遇改善加算IIでは、対象となる保育士の範囲が異なります。

<処遇改善加算I>
処遇改善加算Iは、認可保育園などに勤務する正規職員・1日6時間以上かつ月20日以上勤務する非正規職員が対象となります。また、保育士以外の事務員や給食調理員なども対象です。

<処遇改善加算II>
処遇改善加算IIは、約3年以上の保育士経験を持ち、以下のキャリアアップ研修を規定数修了した職員が対象です。

・乳児保育
・幼児教育
・障害児保育
・食育・アレルギー
・保健衛生・安全対策
・保護者支援・子育て支援

なお、職務分野別リーダーに就ける人数は園長と主任保育士を除く職員数の5分の1まで、専門リーダー・副主任保育士に就ける人数は3分の1までとなっています。

給与の上がり方

処遇改善加算Iと処遇改善加算IIでは、給与の上がり方に次のような差があります。

<処遇改善加算I>
処遇改善加算Iでは、基礎分・賃金改善要件分・キャリアパス要件分によって加算率が変動します。
基礎分加算率は、平均勤続年数1年未満で2%、平均勤続年数1年で3%と増え、平均勤続年数10年以上で一律12%となります。賃金改善要件分の加算率は、平均勤続年数11年未満の施設で6%、11年以上で7%です。ただし、キャリアパス要件を満たさなければ、2%減額されます。
平均勤続年数5年、賃金改善要件分とキャリアパス要件分を満たす施設の場合、対象となるすべての職員の給与に13%(基礎分7%+賃金改善要件分6%)が加算されます。

<処遇改善加算II>
職務分野別リーダーの給与に月額5,000円、専門リーダーと副主任保育士の給与に月額最大40,000円が上乗せされます。

手当の配分方法

処遇改善加算による手当は、国から職員に直接支給されるわけではありません。まず国が全職員の合計加算分を施設に支払った後、施設独自の規定によって誰にいくら配分するかを決定します。

<処遇改善加算I>
職員の適切な昇給を目的に、基礎分については基本給や手当などに充てるよう義務付けられています。賃金改善要件分については、「確実に賃金アップに役立てる」という条件を守れば、賞与などの形で職員に還元することも可能です。また、同一法人内の保育・教育施設の職員に充当してもよいとされています

<処遇改善加算II>
職務分野別リーダーは、月額5,000円の加算を受けられます。副主任保育士や専門リーダーは、1人あたり月額40,000円の加算です。ただし、以下の条件を満たせば、副主任保育士・専門リーダーの加算をほかの職員に分けることもできます。

・月額40,000円を支給する職員を1人以上確保する
・1人当たりの配分額は月額5,000円以上40,000円未満に収める

たとえば、専門リーダーと副主任保育士が計5人いる場合、国から施設に支払われる加算総額は、月額200,000円(40,000円×5人分)です。5人のうちA・B・Cさんに40,000円ずつ支払い、残りの80,000円をD・Eさんとほかの職員6人で分けると仮定します。この場合、D・Eさんの受取額はそれぞれ10,000円以上、ほかの職員の受取額は1人10,000円以下です。

なお、2022年までは加算総額の20%以内を同一法人内の保育・教育施設に分けることもできます。

各自治体が進める処遇改善の事例

国が定める処遇改善に加えて、自治体独自の保育士向け処遇改善制度を利用できる場合があります。たとえば、岡山市や京都市では、下記のような制度を保育士向けに実施しています。

・岡山市
岡山市では、市内で働く保育士に対して月額約9,000円の賃金上乗せや3年間の奨学金返済の補助(月額最大10,000円)を実施しています。また、市の補助金を受けて職員用宿舎を用意している保育所では、月額60,000円までの家賃支援を最大3年間受けることが可能です。

(出典:岡山市「岡山市で保育士になりませんか?」/ https://www.city.okayama.jp/kurashi/0000017762.html

・京都市
京都市では、独自の予算投入によって保育士給与水準を全国平均の1.34倍に高め、さらに独自の保育士配置基準を設けているため、ゆとりを持って保育業務に携わることが可能です。また、一定の条件を満たすと保育士宿舎借り上げ支援事業を利用でき、月額65,000円以内の家賃補助を受けられます。

(出典:京都市情報館「保育者として就職をお考えのみなさまへ」/ https://www.city.kyoto.lg.jp/menu3/category/47-40-1-0-0-0-0-0-0-0.html

岡山市や京都市のほかにも、独自の基準や助成金制度を整備し、保育士人材確保に取り組んでいる自治体はたくさんあります。国と自治体それぞれの制度を最大限に活用することで、保育士としてよりよい条件で活躍できるでしょう。

まとめ

保育士の処遇改善加算は、対象職員全員の平均勤続年数から加算額を算出する「処遇改善加算I」と、若手・中堅保育士のキャリアアップを主な目的とする「処遇改善加算II」に分かれます。これらの加算についてきちんと知っておくことで、保育士としてのキャリアビジョンを描きやすくなるでしょう。

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