01_syudougata.jpg

保育園には認可保育園と認可外保育園があり、企業主導型保育園は認可外保育園の1つです。通常の認可外保育園は国からの助成金がでません。しかし、企業主導型保育園は認可外保育園でありながら助成金がでたり、職員配置基準があったりなど、認可保育園の特徴も持ち合わせています。

当記事では、企業主導型保育園とはどのような保育園かについて、特徴や違い、仕組みを解説します。企業主導型保育園で働きたい方は、復職や転職にぜひ活用してください。

企業主導型保育園とは?

企業主導型保育園とは、企業が運営する保育園のことで、内閣府が管轄する認可外保育園の一種です。認可外保育園でありながら、職員の配置基準や設置基準、助成金の対象などは、認可保育園とほとんど変わりません。

ここでは、企業主導型保育園の特徴について詳しく解説します。

企業主導型保育事業とは?

企業主導型保育事業が開始した背景について、内閣府は次の通りに記載しています。

    企業主導型保育事業は、平成 28 年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度です。企業が従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために設置する保育施設や、地域の企業が共同で設置・利用する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成を行います。

(引用:内閣府「1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html/引用日2022/08/08

土・日・祝日の勤務や24時間の交代制など、企業ごとの従業員の働き方に合わせて、多様な保育サービスを提供できるよう設けられたのが「企業主導型保育事業」です。企業にとっては、優秀な人材の確保や従業員の働きやすさにつながるといったメリットがあります。他にも、地元の保育園が定員オーバーで入園できない子どもの受け皿となり、待機児童解消につなげるといった目的もあります。

複数の企業が共同で保育園を設置・利用したり、従業員以外の子どもを受け入れて地域に貢献したりと、柔軟に運営できるのが企業主導型保育事業の特色です。

企業主導型保育園の特徴

多様で柔軟な保育サービスを提供できる企業主導型保育事業には、認可保育園や一般の認可外保育園と異なる特徴があります。

企業主導型保育園の特徴として、下記のものが挙げられます。

・利用者と直接契約して保育園を利用できる
自治体の認定が下りなかった方でも、企業主導型保育園では利用者と直接契約の手続きをして入園が可能です。

(出典:内閣府「仕事・子育て両立支援事業の概要(企業主導型保育事業)」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/pdf/gaiyou-2.pdf

(出典:企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル「保護者様」/ https://www.kigyounaihoiku.jp/users

・企業と保育事業者が連携して運営できる
企業が一から保育園を設立するほかに、保育実績がある保育事業者と企業が連携して保育園を設置できます。

(出典:内閣府「パートⅠ企業主導型保育事業の立ち上げガイド」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/pdf/part1-1.pdf

・一般的な認可外保育園より保育料が安い可能性がある
認可外保育園として保育料を自由に設定でき、助成金が出るため一般的な認可外保育園ほど保育料の金額が高くない施設が多い傾向です。幼児教育・保育の無償化制度に当てはまる場合は、きちんと無償化の対象となります。

(出典:企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル「保護者様」/ https://www.kigyounaihoiku.jp/users

企業主導型保育園と事業所内保育園の違い

字面だけ見ると同じように思える「企業主導型保育園」と「事業所内保育園」には、下記のような違いがあります。

企業主導型保育園 事業所内保育園
市町村の認可 不要 必要
子どもの対象年齢 0〜5歳児 原則0〜2歳児
職員の資格 保育従事者の半数以上が保育士資格保有者 定員20名以上:保育士資格保有者
定員19名以下:保育従事者の半数以上が保育士資格保有者
地域枠の設定 定員の1/2まで設定可能 定員数に合わせて地域枠の開放を義務付けられている

(出典:内閣府「1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html

(出典:内閣府「地域型保育事業」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h270420/pdf/s1-3.pdf

「従業員枠」と「地域枠」とは?

企業主導型保育園の利用には「従業員枠」と「地域枠」の2つが設けられています。

従業員枠には、企業主導型保育園を設置・運営する企業で働く従業員の子どもが当てはまります。従業員枠での保育園の利用は基本的に、企業が定める必要書類を提出するだけで、企業側が保育の必要性があると判断したとみなし、市町村で保育の認定を受ける必要がありません。

(出典:企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル「保護者様」/ https://www.kigyounaihoiku.jp/users

一方、地域枠には、従業員枠以外で入園する子どもが当てはまります。企業主導型保育園は、地域枠の設置が義務付けられていないため、地域枠を募集していない保育園もあります。従業員枠と同様、必要書類を提出するだけで利用できますが、保育料無償化を受ける場合は、住民登録のある市町村で保育認定を受ける必要があります。

(出典:企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル「幼児教育・保育の無償化がスタートします。」/ https://www.kigyounaihoiku.jp/wp-content/uploads/2019/08/musyouka_annai.pdf

従業員枠と地域枠ともに、保護者のいずれもが就労要件などを満たさなければなりません。

(出典:内閣府「1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html

企業主導型保育園で働くメリット・デメリット

企業主導型保育園は企業が運営しているため、子どもの保護者の多くは、運営している企業の従業員です。そのため、一般的な保育園とは少し異なり、企業と密接に関係しているからこそのメリットとデメリットが、企業主導型保育園にはあります。

企業主導型保育園で、保育士としての就職・転職を考えている方は、メリット・デメリットをしっかり確認して、自分に合っているかを見極めましょう。

企業主導型保育園で働くメリット

企業主導型保育園で働くメリットとして、以下の4点が挙げられます。

保護者との連携が取りやすい
従業員枠で入園している子どもだと、保護者の方との連携が取りやすいのがポイントです。会社と保育園が近いことが多いため、急な病気やけがなど、緊急時のお迎えにもスムーズに対応してもらえます。
比較的園児の人数が少ない傾向にある
企業主導型保育園は、定員20名未満の小規模な園が多い傾向です。子どもの人数が少ないと、比較的ゆったりとした環境で保育ができます。一人ひとりにきめ細やかな保育をしたいという保育士の方におすすめです。

(出典:内閣府「企業主導型保育事業の実施状況について」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/hyouka-k_13/pdf/s2.pdf

自分の子どもを預けられる
保育士として働きながら、従業員枠で自分の子どもを預けられます。保育園探しをする手間がなく、出産を機に退職した保育士さんにとっても安心でしょう。。子どもを預ける保育園と勤務先が一緒なので、通勤時間が短縮できます。
待遇がよい園が比較的多い
保育園を設置する企業の給与体系や福利厚生、休暇制度を保育士にも反映している場合が多く、一般的な保育園の求人と比較して、待遇のよい園が多い傾向です。企業主導型保育事業は平成28年度から始まったまだ新しい制度のため、数年以内に新設した施設や十分に環境が整備された施設が多いのもメリットと言えます。

(出典:内閣府「1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html

企業主導型保育園で働くデメリット

企業主導型保育園で働くデメリットとして、以下の3点が挙げられます。

勤務時間が不規則
会社で働く従業員を支援するための保育園のため、従業員の労働時間に合わせて土・日・祝日の出勤や24時間保育を実施する園もあります。保育園によっては、シフト制で勤務時間が不規則となるので、事前に求人情報を確認しましょう。
正社員保育士の負担が大きい傾向にある
子どもの定員数が少ない保育園では、保育士の人数も少ない場合が多く、1人の正社員保育士に大きな負担がかかる傾向にあります。企業の従業員と同じ休暇制度があっても、有給休暇や急な休みを取りにくい場合もあるでしょう。
資格を持たないスタッフが多い場合がある
職員全体の半分以上が保育士資格保有者であればよいと定められているため、資格を持たないスタッフが多い可能性があります。正社員保育士として入社すると、責任のある仕事を任されやすく、ストレス・疲労が蓄積することも考えられます。

企業主導型保育事業で働くときのポイント

企業主導型保育園で働く前に、以下のポイントを確認しましょう。

定員割れがあるか調べる
保育のニーズが減少し定員割れとなると、突然の休園・閉園につながる恐れがあるため、過去数年間で定員割れがないか調べましょう。
運営している企業について調べる
運営している企業の経営状況がよくないと、保育園の運営にも影響が及ぶリスクがあります。ホームページの情報などを参考に、運営元の企業や連携企業の経営状況についてもしっかり確認しましょう。
園の設備を確認しておく
小規模な園では、園庭や遊具などが設置されていない場合も多く、子どもの遊びや保育にバリエーションを付ける必要があります。保育園の設備や周辺環境について、あらかじめ把握しておきましょう。

企業主導型保育園では、保育士資格保有者が全職員の半分以上いれば規定を満たすことができます。そのため、規定を満たしていれば、保育士資格を持たない人でも働ける場合があります。保育士資格を持たない方には、研修が義務付けられているので、研修内容をあわせて確認しましょう。

(出典:内閣府「1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html

まとめ

企業主導型保育園とは、認可外保育園の一種で、企業主導型保育事業という国の制度に則って設備された保育園です。企業が運営する保育園のため、基本的に従業員の働き方に合わせた保育サービスが提供されています。

企業主導型保育園は園児が少ない傾向にあるので、子ども一人ひとりに質の高い保育を提供したい保育士の方におすすめの職場です。自分の子どもを預けられるといったメリットもあります。保育園によっては、毎年定員割れをして運営に不安があったり、運営している企業の経済状況がよくなかったりします。企業主導型保育園で働きたい場合は、事前に保育園や運営会社について調べましょう。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています