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保育士さんの中には、保育園が用意する寮や社宅に住みながら働きたいと考えている方も多いでしょう。待機児童の問題もあり、保育施設や認定こども園のニーズは今もなお高く、国は保育士の確保や定着、離職防止を狙いとして、保育士宿舎借り上げ支援事業といったような施策も展開しています。

この記事では、寮・社宅付きの保育園を探している方に向けて、求人の傾向や、保育士宿舎借り上げ支援事業に関する概要を紹介しますので、ぜひご覧ください。

寮・社宅付きの保育園はある?

寮・社宅を提供する保育園は多く、特に東京都・大阪府をはじめとした主要都市、もしくは首都圏の保育園に見られる傾向です。理由としては「地方から上京した保育士さん向けに用意している」「保育士さんの家賃負担を減らして、長く働いてもらえるようにするため」といったものが挙げられます。一方で、事業所にとっては当然経営にも影響を与える施策のため、「社宅を利用できるのは、通勤に〇分以上かかる方が対象」といった要件が設定されている場合もあります。

保育園の事業所が用意する寮や社宅は、トイレやお風呂が共用の学生寮のようなアパート・マンションもあれば、自分自身でアパート・マンションを選べて、一定の家賃補助を受けられるパターンもあります。また、後ほど紹介する「保育士宿舎借り上げ支援事業」を事業所が利用して、アパートなどを借り上げ、保育士さんに貸し出すケースも見られます。

寮・社宅付き保育園はどれくらいある?

では、寮・社宅付きの保育園は、実際どれくらいあるのでしょうか?

参考までに、マイナビ保育士で「住宅手当あり」の条件で絞り込むと、2022年9月末時点で約481件の求人が見られました。都道府県としては、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・栃木県・茨城県・静岡県・滋賀県・大阪府・兵庫県・福岡県・沖縄県...など、数多くの都道府県から求人が出ています。

一方で、マイナビ保育士には登録者さま限定にご紹介している「非公開求人」もありますので、実際は上記の数値よりも、住宅関連の手当を行っている保育園はもっと多いと言えます。

例えば、借り上げ社宅制度については、以下のような条件を提示している求人もありました。

    ・借上社宅制度(個人負担10,000円/月※規定有)
    ・宿舎借り上げ制度あり:上限92,000円(規定あり)
    ・住宅手当:13,000円~30,000円※借上社宅制度(利用規定あり)

マイナビ保育士では、寮・社宅などの住宅手当や、家賃補助を提供している事業所のご紹介も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

(内部リンク: https://hoiku.mynavi.jp/special/allowance/

寮・社宅付きの保育園に勤めるメリット・デメリット

寮・社宅付きの保育園に勤めるメリットとしては、やはり家賃や共益費の負担が減ることがまず一番に挙げられます。また、寮や社宅の中には、家具・家電付きの部屋のこともあります。そういった場合は、引越しに際して新しい家具・家電を用意しなくていいのもメリットの一つです。

また、社員寮は勤務先の保育園と近いことも多いので、何かあった際にも安心ですし、早朝保育や夜間保育がある保育士さんにとっては便利な環境と言えます。

一方でデメリットとして、寮・社宅の場合は、部屋の中の大きな模様替えができない、内装のレイアウト変更ができない、といった場合があるでしょう。また、寮の場合は風呂・トイレが共用の可能性があったり、ゴミ捨てなどが当番制だったりと、ルールが多いケースもあり得ます。

保育士のための「保育士宿舎借り上げ支援事業」とは?

保育士宿舎借り上げ支援事業とは、保育士の就業継続を支援する策として、事業所が保育士の宿舎を借り上げるための費用を、全部または一部を支援する制度です。

あくまで事業所向けの制度なので、保育士の方が直接申し込んだり、国や自治体から直接貸付を受けたりする制度ではありません。しかしこの制度によって、借り上げ社宅を用意する職場や、家賃補助をしてくれる職場が増えると期待できるでしょう。

保育士宿舎借り上げ支援事業
事業の内容 都道府県又は市町村以外の者が運営する認可保育所、認定こども園、地域型保育事業のうち小規模保育事業(小規模保育C型を除く)及び事業所内保育事業であって認可を受けたもの又は加速化プラン対象認可外保育施設(公立を除く。以下「保育所等」という。)に対し、保育士用の宿舎を借り上げる費用の一部を補助する。

(引用:厚生労働省「保育士宿舎借り上げ支援事業の実施について」/ https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1376&dataType=1&pageNo=1/引用日/2022/09/30

また、補助基準額と補助割合については以下の通りです。

    【補助基準額】
    月額82,000円を上限として、市区町村別に一人当たりの月額(上限)の金額を設定

    【補助割合】 国:1/2、市区町村:1/4、事業者:1/4

(引用:厚生労働省「令和3年度 保育関係予算概算要求の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000677014.pdf/2022/09/30

補助対象者の範囲は?

平成27年4月13日に発令された、保育士宿舎借り上げ支援事業実施要綱において、実施要件と対象者の要件は以下のように記載があります。

    本事業の対象者は保育所等に勤務する常勤保育士のうち、次のいずれかに該当する者とする。

    ① 保育所等に新規(平成25年度以降)に採用された者

    ② 保育所等に採用された日から起算して5年以内の者。ただし、平成24年度以前に保育所等が借り上げる宿舎に入居している者を除く

(引用:厚生労働省「保育士宿舎借り上げ支援事業の実施について」/ https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1376&dataType=1&pageNo=1/引用日/2022/09/30

一方で、「令和3年度 保育関係予算概算要求の概要」には以下のように記載されています。

    【対 象 者】
    採用された日から起算して9年以内の常勤の保育士

    【 現 行 】
    採用された日から起算して10年以内の常勤の保育士
    ※以下の場合は、5年以内の常勤の保育士
    ○ 直近2か年の4月1日時点の待機児童数が連続して50人未満、かつ、直近2か年の1月の保育士の有効求人倍率が連続して 全国平均以下の市区町村

    ただし、待機児童数が50人未満(前年度)から50人以上(事業実施年度)となった場合で、かつ、直近2か年の1月の保育士の有効求人倍率が連続して全国平均以下の市区町村も5年以内

    【見直しの考え方 】
    ・要件を撤廃し、対象者の年数が予見可能となることで、保育士募集に際して支障が生じないようにする。
    ・事業の対象となる者とならない者との公平性等に鑑み、段階的な見直しを図るため、10年から9年にする。

    【見直し後 】
    採用された日から起算して9年以内の常勤の保育士とする。

(引用:厚生労働省「令和3年度 保育関係予算概算要求の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000677014.pdf/2022/09/30

保育関係の予算については、定期的に見直されているので、最新情報を詳しく知りたい方は、各自治体のホームページなどで保育士宿舎借り上げ支援事業制度の詳細を確認することをおすすめします。

一方で、保育士さんが直接申し込む制度ではないので、借り上げ社宅や寮を利用したい方は、補助対象者の要件について気にするよりも、保育士の実際の求人を見て福利厚生・待遇欄を確認してみるほうが役立つでしょう。

保育士宿舎借り上げ支援事業の利用方法

先述の通り、保育士宿舎借り上げ支援事業を申請するのは事業所(職場)です。そのため、「保育士宿舎借り上げ支援事業を利用したい」と考えた場合は、まずは勤務先に相談してみるとよいでしょう。

事業所が、保育士宿舎借り上げ支援事業を利用している場合は、事業所が用意した資料に必要事項を記載して、総務部・人事部などの担当者の方に書類を提出する作業が必要になることが多いです。(もちろん、事業所によっては書類の記載が必要ない場合もあります)

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(引用:大阪市「大阪市保育士宿舎借り上げ支援事業補助金交付申請書」/ https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/cmsfiles/contents/0000519/519490/syukusya_youkouyoushiki.pdf

例えば、事業所が自治体に申請書を出す際に、上記のような「雇用証明書」が必要となる場合もあります。そのため、職場の担当者の方が保育士の方に必要情報を確認すべく、社内向けに別途書類の記載を依頼するケースがあるかもしれない、といった意味合いです。

保育士宿舎借り上げ支援事業を利用するメリット・デメリット

保育士宿舎借り上げ支援事業を利用している事業者の場合、すでに事業者が宿舎を借り上げているケースが多いです。その場合は、物件を探したり、不動産屋さんに行って内見したり契約したりする...といった手間がなくなるので、保育士さんにとってはありがたいでしょう。

また、事業者が保育士宿舎借り上げ支援事業を利用している場合、事業者は自治体から補助を受けています。そのため、同事業を利用していない事業所よりも、保育士さんの家賃負担が軽減されるケースが多いと言えるでしょう。

デメリットは基本的にないものの、国の支援制度なので今後の動向は分からない(廃止や縮小される可能性もある)点に注意が必要です。また、自治体によっては独自に補助を上乗せしている場合もあるので、「こっちの市の保育園にしておけば、制度が充実していた...」といった後悔をしないよう、納得できる職場選びをしましょう。

また、保育士宿舎借り上げ支援事業を利用している保育園だからといって、保育士さんの家賃負担が0円になるとは限らないので、その点も念頭に置いておきましょう。

まとめ

保育士として寮や社宅を利用したい場合は、まずは保育士の転職サイトや、転職エージェントに確認して、自分に合った求人を紹介してもらうことがおすすめです。首都圏を中心として、住宅手当のサポートや家賃補助を行っている事業所は多くあるので、手当の条件などを比較検討してみるとよいでしょう。

また、マイナビ保育士では、住宅手当や家賃補助をはじめ、高給与の求人や退職金ありの求人など、金銭面を重視している方向けの求人も多くご紹介できますので、ぜひお気軽にご相談ください。