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保育施設には、公立と私立の2つがあります。公立は、都道府県や市区町村といった各自治体が運営主体、私立は社会福祉法人や株式会社が運営主体となります。

保育士求人には現在、「株式会社が運営する保育園」からの求人情報が多数掲載されています。しかし、株式会社が運営する保育園が増加したのは2000年以降であることから、どのような保育園なのか・働きやすいのかが気になる保育士さんも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、株式会社が運営する保育園の概要から、株式会社が運営する保育園の給料、働くメリット・デメリットまで徹底解説します。

株式会社の保育園とは?

株式会社の保育園とは、株式や営業による利益が運営資金となる保育園のことです。営利目的で事業展開ができる点が最大の特徴である一方、同じく私立保育園に分類される社会福祉法人とは違って、国・政府からの補助金や税制に関する優遇は受けられません。

また、保育園には公立保育園と私立保育園の2種類があり、公立保育園は各都道府県・市区町村などの自治体が、私立保育園は社会福祉法人と株式会社が主な運営母体となります。

株式会社や有限会社、NPO法人が私立保育園の設立・運営に参入できるようになったのは、2000年に「保育に関する規制緩和」が決定されてからです。それまでは、自治体以外だと社会福祉法人しか保育園を設立・運営できませんでした。2000年の規制緩和以降、株式会社などによる私立保育園は都市部を中心に設立され、現在では全国的に広がっています。

なお、保育施設のもう1つの種類分けとして、「認可保育園」「認可外保育園」の2種類があります。「自治体が運営する公立保育園=認可保育園」というイメージを抱く方も多くいますが、2000年に「保育に関する規制緩和」が実施されてからは株式会社・NPO法人の運営する保育園でも、設置基準を満たすことで認可保育園としての参入が認められるようになりました。

(出典:内閣府「保育に関する規制緩和等について ①」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/review/wg/youho/k_1/pdf/ref4-5.pdf

社会福祉法人の保育園との違い

前述の通り、私立保育園の運営元は主に社会福祉法人と株式会社の2つとなっています。しかし、社会福祉法人と株式会社の違いについて詳しく理解していない方は多いのではないでしょうか。

そもそも社会福祉法人とは、「社会福祉事業の実施を目的に設立された法人」のことです。

■社会福祉法 第二十二条

    この法律において「社会福祉法人」とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。

(引用:e-GOV法令検索「社会福祉法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000045_20220615_504AC0000000066/2022/11/5

都道府県や政令指定都市、中核市が所轄となり、保育園に限らず、保育や医療・介護に関する事業を行います。非営利団体となるため、法人税の一部非課税といった優遇措置があることも特徴です。

また、社会福祉法人による保育園の運営資金は、主に補助金や寄付金となります。

一方で、株式会社は社会福祉法人と違って営利団体となるため、法人税をはじめとした税に関する優遇措置・制度がありません。また、経営者の理念とアイデアによって事業の立ち上げができる点も特徴です。

このように、社会福祉法人と株式会社にはさまざまな違いがあり、保育方針も基本的に異なるといえるでしょう。

株式会社が運営する保育園はどれくらいある?

内閣府が行った「保育所等の運営実態に関する調査」からは、全国における株式会社が運営する保育園数を把握できます。なお、当データにおいて株式会社が運営する保育園は「営利法人」と示されます。

社会福祉法人 営利法人 学校法人 その他
保育所 86.9% 4.9% 2.8% 5.4%
認定こども園 60.2% 0.8% 36.7% 2.3%
小規模保育事業所 17.9% 38.2% 7.5% 36.4%

(出典:内閣府「保育所等の運営実態に関する調査結果」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s8.pdf/2022/11/5

上記データを見ると、株式会社が運営する保育所・認定こども園は比較的少なく、小規模保育事業所が多い傾向にあることが分かりました。また、小規模保育事業所においては、ほかの運営主体よりも群を抜いているともいえます。

株式会社の運営する保育園の給料

株式会社の保育園で働く保育士の給料は、運営する株式会社によって異なることが特徴です。1つの目安として、厚生労働省が「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果」で公表しているデータを下記に紹介します。

株式会社 社会福祉法人
施設長 346,324円
(平均勤続年数10.4年)
547,834円
(平均勤続年数25.3年)
保育士 227,781円
(平均勤続年数4.1年)
258,901円
(平均勤続年数10.4年)

※常勤職員の給与には、月額給与のほか、賞与の年額の1/12が含まれる。

(出典:厚生労働省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果( 収 支 状 況 等 )」/ https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/163-1a.pdf#page=33/2022/11/5

株式会社が運営する保育園の平均給料は、施設長で約34万円、一般的な保育士で約22万円でした。なお、社会福祉法人の運営する保育園のほうが給料は高く、株式会社の運営する保育園と比較すると施設長は約20万円、保育士は約3万円高いことも分かります。

株式会社では、勤続年数の短さによって給料が低くなっていることが考えられます。しかし、株式会社の運営する保育園は処遇改善に積極的であるため、今後は給料の改善も期待できるでしょう。

また、前述の通り株式会社の保育園は、運営する株式会社によって給料が大きく異なるため、求人を探す際は各会社の給料をしっかりと確認することが大切です。

株式会社の運営する保育園で求められるもの

株式会社の保育園で着実に給与アップを目指すなら、求められることを把握し、かつ各スキルを身につけるとよいでしょう。株式会社の運営する保育園で求められることには、下記が挙げられます。

●独自のカリキュラムに対しての対応力
株式会社の保育園では、利用者の満足度・利益率を上げるべく、保護者や子どものニーズに合わせた独自のカリキュラムや保育サービスが存在する場合があります。そのため、このような多様なカリキュラムやサービスへの対応力は非常に求められます。

●保護者や子どもをお客さんとして対応するホスピタリティ
株式会社の保育園は利益重視で運営しているため、保護者や子どもはお客さんと考え、おもてなしの心や思いやりが必要です。「お客様第一主義」とまではいかないものの、ただの保育園の先生と保護者や子どもの関係性ではないことを念頭に置いておくとよいでしょう。

●IT化に対応する柔軟性
株式会社の保育園では、業務の自動化などITに関する新たな取り組みに積極的な傾向にあります。そのため、新しい設備や機器に慣れる柔軟性が求められます。

株式会社の運営する保育園の求人の特徴

株式会社の運営する保育園の求人情報には、下記のような特徴があります。

    ●月給は地域により異なるが正社員求人の場合、約20万~25万円前後
    ●保育士経験があると優遇される可能性がある
    ●求人によっては借り上げ社宅制度が利用できるものもある
    ●教育カリキュラムや保育研修が充実している職場もある

保育園を運営する株式会社や求人によっても特徴は大きく異なりますが、全体的に保育士経験のある正社員保育士はもちろん、初めて保育士として働き始める新人保育士にとっても働きやすい環境が整っているといえるでしょう。

株式会社運営の保育園で働くメリット・デメリット

株式会社の運営する保育園での勤務は、株式会社ならではのメリット・デメリットが存在します。

たとえば、社会福祉法人が運営する保育園では家族経営が多い傾向にあるものの、延長を含め全員が会社の社員となるため、同じ社員という立場でフランクな関係性が築ける可能性が高いといえます。

このように、株式会社の運営する保育園でも、勤務を検討するならメリット・デメリットを把握することが大切です。メリット・デメリットを把握することで、自分にあった保育園を選べるようになるでしょう。

ここからは、株式会社の保育園で働くメリット・デメリットを、各項目に分けてそれぞれ説明します。

株式会社運営の保育園で働くメリット

株式会社運営の保育園で働くメリットは、下記の通りです。

●待遇や処遇改善への取り組みが積極的
株式会社運営の保育園は、保育園で働く保育士の待遇・処遇改善への意欲が大きいことが多く、大規模な株式会社は特に積極的な傾向です。待遇・処遇改善への取り組みが実施されることで、さらなる収入・労働環境の改善が期待できるでしょう。

●収益や運営方針が明確
株式会社運営の保育園は、収益や運営方針・保育理念をオープンにするところも少なくありません。収益や運営方針が明確だと、応募先の選定もしやすく、働き始めてからミスマッチを感じるリスクも大幅に低下します。

●転居などに対応しやすい
保育園を運営する株式会社は、全国に複数施設を設立・運営するケースがあります。加えて、グループ展開している場合は希望の勤務地が選べるケースもあり、転居などに対応しやすくなっています。社宅や社寮、家賃補助が整備されている場合は、さらなるメリットを感じられるでしょう。

●研修や教育カリキュラムが整っている
営利目的で保育園を運営する株式会社は、業績を上げるためにも質の高い保育士の育成に取り組んでおり、本部でのあらゆる研修や教育カリキュラムを実施するケース・情報交換の機会を設けるケースが多くあります。新人保育士であっても、比較的早い段階での成長が期待できるでしょう。

株式会社運営の保育園で働くデメリット

株式会社運営の保育園で働くデメリットは、下記の通りです。

●園長や上司の経験年数が浅い場合がある
株式会社運営の保育園は、公立保育園と比較して経験豊富な園長・上司が少ないことが実情です。なかには企業から派遣された園長もいて、日々保育現場で活躍するベテラン保育士たちよりも現場を熟知していないといった可能性もあるでしょう。

●異動になる可能性もある
株式会社運営の保育園は、希望に合わせて勤務地が選びやすいというメリットがある一方で、キャリアアップなどの理由によって勤務地の異動を打診されるケースもあります。子どものいる家庭にとっては、大きなデメリットとなるでしょう。

●効率性を重視されやすい
株式会社運営の保育園は、利益を求めるため効率性・効率化を重視する傾向にあります。利益重視により人員削減や残業の常態化が起きている職場も存在するため、求人探しの際は注意が必要です。

●保護者のニーズにより業務が増える可能性がある
株式会社運営の保育園は、利益の追求によって保護者の要求に合わせた独自のカリキュラムや保育サービスを積極的に取り入れる傾向にあります。そのため、働く職員たちはそれらを受け入れる柔軟性が非常に求められることを覚えておきましょう。

まとめ

株式会社の保育園とは、「運営資金が株式や営業による利益」となる保育園を指します。営利目的で事業展開ができる一方で、同じく私立保育園にあたる社会福祉法人の運営する保育園と違って補助金や優遇措置が受けられず、給料も低い傾向にあることが特徴です。

しかし、株式会社運営の保育園は、保育士に対する待遇や処遇改善への取り組みに積極的であり、柔軟性が高いというメリットがあります。その一方で、園長や上司の経験年数の浅さや独自のカリキュラムやサービスを受け入れる柔軟性が求められるといったデメリットもあるため、求人探しの際は職場情報をきちんと確認しておくことが大切です。

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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています