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保育士の給料は、基本給のほかにもさまざまな手当が支給されることが特徴です。

手当と聞くと、「各園が独自に支給するもの」というイメージが強くありますが、保育士人材の不足による待機児童問題が取り沙汰されている近年、国や各自治体から手当が支給されるケースもあります。

しかし、どのような手当を得られるかは職場や勤務地域によって大きく異なるため、まずは保育士に支給される手当の種類を把握しておくとよいでしょう。当記事では、保育士に支給される手当の種類や、国・自治体が保育士に支給する手当について詳しく紹介します。

保育士が受け取れる手当の種類

保育士は、「基本給」のほかにも、あらゆる種類の手当を受け取れる場合があります。手当によって効率的な給与アップも見込めるため、多くの保育士さんにとって魅力的な制度となるでしょう。

保育士が受け取れる手当の種類は、大きく分けて次の3種類があります。

    ●保育園が支給する手当
    ●国の政策として支給される手当
    ●自治体の政策として支給される手当

いずれの種類においても、すべての保育士が受け取れるわけではありません。国や自治体の政策として支給される手当であっても、勤務先の保育園が対象となるかどうかは細かに異なります。そのため、これから保育士求人を選ぶ方は、「気になる求人の職場には具体的にどのような手当が支給されるのか」をあらかじめチェックしておくとよいでしょう。

保育園が支給する手当8種類

保育士が受け取れる手当には、主に「保育園独自の手当」「国からの手当」「自治体からの手当」の3種類があり、各種類のなかでも具体的な種類の手当が数多く存在します。また、「求人情報などで記載されている手当の種類の多くは保育園独自の手当」といえるほど、保育園が働く保育士に対して独自に手当を支給するケースが多々あることも特徴です。

そこで次に、多くの保育園で支給されている代表的な手当の種類(保育園独自の手当)を詳しく紹介します。なお、前述の通り、ここで紹介するすべての手当がすべての保育園で支給されるわけではありません。あくまで代表的な手当の種類となることを覚えておきましょう。

特殊業務手当

特殊業務手当とは、保育園で実施する行事・イベントに対して支給される手当のことです。保育士は運動会や発表会といった行事の際、通常の保育士業務に加え、準備や打ち合わせといった特別業務を行う必要があり、多くの負担がかかることとなります。日中は子どもたちのお世話がメイン業務となるため、残業・時間外労働や持ち帰りの仕事が続くケースもあるでしょう。

特別業務手当はこのような作業負担への対価として支給される手当であり、支給方法が大きく異なることも特徴です。行事・イベント時に「特別業務手当」という項目で手当てを支給する保育園もあれば、すでに基本給に含めている保育園もあります。

資格手当

資格手当とは、国家資格である保育士資格の保有者に対して支給される手当のことです。保育園では、保育士資格を保有していない方でも「保育補助」として活躍できます。資格手当は、主に保育士の有資格者を適切に評価するために設けられた制度であり、多くの保育園が取り入れている傾向です。

とはいえ、当然すべての保育園で「保育士の有資格者=資格手当の対象者」となるわけではないことにも注意しましょう。また、手当額も園によって大きな差があるため、事前のチェックが必要です。

役職手当

役職手当とは、「園長」や「副園長」、さらに「主任」といった管理職に対して支給される手当のことです。多くの保育園で取り入れられている手当であり、基本的に責任の重さに見合った手当額を受け取れます。

また、近年では国の政策によって「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」などの中間管理職が新たに設立されました。これにより、役職手当を取り入れている保育園は中間管理職に対しても手当を支給するようになっています。

通勤手当

通勤手当とは、自宅から職場までの通勤で必要となる交通費に対して支給される手当のことです。ほとんどの保育園で取り入れられている手当ですが、園によっては手当額に上限を設けている場合もある点に注意しましょう。

また、マイカー通勤のできる保育園の場合は、自宅と職場の往復にかかったガソリン代に対して通勤手当が支給されるケースもあります。しかし、このケースにおいても上限額が定められている可能性があるため、同様にチェックしておくことが大切です。

扶養手当

扶養手当とは、扶養家族がいる保育士に対して支給される手当のことです。扶養家族に応じて手当額が異なるかどうかは園によって異なるものの、家族を養う保育士にとっては大きな助けとなるでしょう。

しかし、保育士は世帯主ではない女性が多いことから、扶養手当を取り入れている保育園はさほど多くありません。扶養手当を受けたいのであれば、求人情報をしっかりチェックするようにしましょう。

住宅手当

住宅手当とは、保育士が住む自宅の住宅費や家賃に対して補助・支給される手当のことです。住宅費や家賃は大きな割合を占める固定支出となるため、実家住まい以外の保育士にとっては大きな助けとなるでしょう。

しかし、住宅手当を取り入れている保育園であっても、手当額はもちろん、「職場から○km以内の住宅に限る」といった条件も大きく異なる点に注意が必要です。

また、待機児童数が多い地域の場合、保育士の処遇改善策として自治体が家賃補助をするケースもあります。このように勤務する保育園や地域によって大きく異なるため、求人情報だけでなく自治体の政策もあわせてチェックするとよいでしょう。

残業手当

残業手当とは、その名の通り残業に対して支給される手当のことです。所定労働時間を超えた時間分に発生する手当であり、保育士だけでなく労働者であれば受け取る権利があります。

残業手当の扱いは一般的な企業と同様で、あらかじめひと月あたりの見込み残業時間を設定したうえで基本給に組み込む(みなし残業)保育園もあるため、どのような条件で残業手当が支給されるかは事前の確認が必要です。

ボーナス・賞与

ボーナス・賞与とは、正社員(正職員)を対象に支給される特別手当のことです。基本的に年1回または2回支給されます。園によっては、パート職員に対して支給するケースもあります。ボーナス・賞与額は、月給額をベースとして決定されるため、勤務経験が長いベテラン保育士や役職者ほど多く受け取れることが特徴です。

また、ボーナス・賞与制度を取り入れていれていない職場も珍しくありません。しかし、ボーナス・賞与制度を取り入れていない保育園は、保育士の基本給を高めに設定し、制度を取り入れている保育園で働く保育士の年収と大きな差が生じないようにしている場合もあるため、ボーナス・賞与の有無のみで判断するのは避けましょう。

国が保育士に支給する「処遇改善等加算」

保育士が得られる手当のなかには、国から支給されるものもあります。国は現場の保育士が不足している現状を改善するための政策として「処遇改善等加算」を実施しており、これに伴って保育士に手当が支給されるという仕組みです。

●処遇改善等加算
処遇改善等加算Ⅰは、平均経験年数に応じて「2~12%」の手当が加算される制度です。

    【基礎分】
    職員1人当たり平均経験年数に応じて加算率を設定(2~12%)

    【賃金改善要件分】
    賃金改善計画・実績報告が必要。「基準年度の賃金水準を適用した場合の賃金総額」及び「人件費の改定状況を踏まえた部分」に対し、賃金改善を行うことが要件(6%。平均勤続年数11年以上の施設は7%)

    【キャリアパス要件分】
    役職や職務内容等に応じた勤務条件・賃金体系の設定、資質向上の具体的な計画策定及び計画に沿った研修の実施又は研修機会の確保、職員への周知等が要件(満たさない場合、②から2%減)

(引用:内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算IIについて」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/kaizen/kyufu_kasan1-2-1.pdf/引用日2022/11/6

●処遇改善等加算Ⅱ
処遇改善等加算Ⅱは、若手リーダー~副主任保育士に対して月額5,000~40,000円の手当が加算される制度です。

    副主任保育士・中核リーダー・専門リーダー(月額4万円の処遇改善)・職務分野別リーダー・若手リーダー(月額5千円の処遇改善)等を設けることにより、キャリアパスの仕組みを構築し、保育士等の処遇改善に取り組む施設・事業所に対して、キャリアアップによる処遇改善に要する費用に係る公定価格上の加算を創設

(引用:内閣府「処遇改善等加算IIの仕組み」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/shikumi.pdf/引用日2022/11/6

また、処遇改善等加算の創設によって、新たに「保育士キャリアアップ研修制度」も創設されました。保育士はキャリアアップ研修を受講することで、処遇改善の対象となる各役職を目指しやすくなります。

保育士キャリアアップ研修の主な研修分野は、次の8つです。

    【専門研修】
    (1)乳児保育
    (2)幼児教育
    (3)障害児保育
    (4)食育・アレルギー
    (5)保健衛生・安全対策
    (6)保護者支援・子育て支援

    【マネジメント研修】

    【保育実践研修】

(引用:内閣府「処遇改善等加算IIの仕組み」/ https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/shikumi.pdf/引用日2022/11/6

なお、処遇改善等加算は対象となる保育園を介して、保育園の判断によって各保育士に支給される形となっています。したがって、実際の支給額は職場・働き方によって差が生じる可能性があることも覚えておきましょう。

自治体が保育士に支給する手当

自治体によっては、保育士不足を解決するために独自の手当を支給しているところもあります。さまざまな自治体でバラエティ豊かな支援制度が用意されているため、一度チェックしてみるとよいでしょう。

たとえば、札幌市では札幌市内にある保育園の勤務職員に向けて、「札幌市保育人材確保に向けた一時金給付事業」が実施されています。

目的 資格の新規取得者の確保、就業継続及び採用後一定期間における離職防止を図り、保育人材を確保することを目的とし、市内の認可保育所等に保育士等として勤務する者(採用から3・6・9年勤務を続けた保育士等)に一時金を給付。
交付対象 【補助交付対象事業者】
認可保育所、認定こども園、地域型保育事業所、札幌市一時預かりを実施している幼稚園

【補助交付対象者】
次のア、イの要件すべてに該当する保育士資格又は幼稚園教諭免許を有する者を対象。

ア:雇用契約上、その労働時間が1日につき6時間以上、かつ、1月につき20日以上と定められていること。

イ:保育所等において現に保育士等として勤務し、当該年度の4月1日を基準日と、基準日時点で同一の保育所等における勤続年数(系列施設などにおける人事異動等は、同一の保育所等とする)が、保育士等としての正規採用日から起算して、一時金の種類の区分を満たしていること。

※〇年目の考え方3年目:勤続3年以上4年未満/6年目:勤続6年以上7年未満/9年目:勤続9年以上10年未満
給付金額等 各年目一律100,000円※交付対象者本人の口座へ直接支給となります。

(引用:札幌市「保育人材の確保に向けた事業について」/ https://www.city.sapporo.jp/kodomo/kosodate/hoikusikakuho/hoikushi.html/引用日2022/11/6

このように、地域によっては一時的に補助金が支給されるという制度もあるため、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

保育士が受け取れる手当の種類は、大きく分けて「保育園が支給する手当」「国の政策として支給される手当」「自治体の政策として支給される手当」の3つがあります。なかでも保育園が独自に支給する手当にはさまざまな項目があり、園によってどのような手当を取り入れているか大きく異なる点も特徴です。

「転職して、収入をより増やしたい」と考えている保育士さんは、各求人情報から手当についても確認するとよいでしょう。しかし、保育手当の有無や手当額だけで判断するのはおすすめしません。自分に合った職場を見つけたいという場合は、ぜひ全国の保育士転職サイト「マイナビ保育士」のキャリアアドバイザーにご相談ください。一人ひとりの条件に適した求人情報をご紹介いたします。

※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています