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保育士の主な仕事内容は、保護者の代わりに子どもを預かり、年齢・発育状態に適した保育を実施することです。しかし、単純に子どものお世話をすることだけが保育士の役割ではありません。保育園の円滑な運営を進めるため、さらに保育の基盤を整えるためにも、多くの事務作業を進める必要があります。

保育士の事務作業には、主に書類作成が挙げられます。そこで今回は、保育士が作成する書類の種類から、保育士の業務負担を軽減させられる「書類仕事の見直し方法」まで具体的に説明します。

保育士が作成する書類の種類

保護者から預けられた子どもたちのお世話は、保育士のメインとなる仕事内容です。しかし、保育園の円滑な運営を進めるため、さらに保育の基盤を整えるための書類作成業務も、保育士にとって非常に重要な役目となります。

保育士は日々多くの書類を作成する必要があり、メイン業務の負担となるケースもあるでしょう。保育士が作成する書類は、次の通りです。

    ●保育指導案
    ●保育日誌
    ●連絡帳
    ●おたより
    ●保育経過記録

ここからは、各書類の概要と、書類作成時のポイントを分かりやすく解説します。

保育指導案

保育指導案とは、保育の具体的な方向性を示すための計画書のことで、「指導計画」とも呼ばれています。子どもの年齢・クラスや発育状況にもとづき作成するもので、保育内容や保育のねらいといった保育計画を立てるために必要なものです。

保育指導案を作成することによって、「保育士は子どもに対してどのような援助・配慮をすべきか」といった内容が明らかにでき、子どもたちが充実した保育園生活を送ることにもつながります。

保育指導案は多くの項目を記入する必要があるため、慣れていないうちは大きな負担が生じる業務となるでしょう。しかし、対象となる子どもたちを保育現場でしっかりと観察し、かつ前年度までの保育指導案を参考にすることで作成がスムーズになります。加えて、保育所保育指針も参考に、実際の保育指導・保育目標をイメージしながら作成すれば、よりよい保育指導案を作成できるでしょう。

(出典:厚生労働省「保育所保育指針解説」/ https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf

保育日誌

保育日誌とは、日々の保育業務を記録した日誌のことで、日々の保育状況はもちろん、その日に起きた出来事や子どもの様子、保育士の思いといった内容を記録します。保育日誌を欠かさず作成することで、業務中に見えなかった課題を発見できます。加えて、保育指導案の作成にも役立つでしょう。

保育日誌で記入する項目は保育園によっても大きく異なるものの、基本的に日付や子どもの健康状態・様子、その日に実施した保育内容や行事・カリキュラム、保護者への連絡事項が挙げられます。

保育士が保育日誌に無理なく取り組むためには、情報を整理しておくことが最も重要です。情報を整理したうえで保育日誌の作成にスムーズに取り掛かるためにも、日誌に記入する要点リストをあらかじめ作っておいたり、日中の保育業務中に、保育日誌に記入する内容をメモしておいたりするとよいでしょう。

連絡帳

連絡帳とは、保育士と保護者の間で子どもに関する情報交換を行うためのコミュニケーションツールであり、保育士は「保育園での出来事」、保護者は「自宅や家庭での出来事」を記録します。保育士と保護者にとっては、信頼関係を築き上げるために重要なものです。

連絡帳をスムーズに作成するためには、「保護者が知りたい情報」は何なのかを把握しておきましょう。保護者は、子どもがどのような1日を過ごしたかだけでなく、どのような成長をしたかといった気持ちで連絡帳を見るケースがほとんどです。

これらの情報を分かりやすく伝えるためには、ビジネスシーンにおいてもよく使われる「5W1H」を活用することがポイントです。加えて、保護者が不快に思ったり、不安な気持ちを抱えたりしないよう、なるべくポジティブな内容の記載を心がけましょう。印象的な出来事を1つにまとめて書くとより伝わりやすくなりますが、子どものちょっとした面白いエピソードを沿えるとより喜ばれます。

【関連リンク】
伝わりやすい連絡帳を保育士が書くためのコツ・書き方を紹介!

おたより

おたよりとは、保護者に向けて保育園での子どもたちの様子を伝えたり、その月の行事やイベント情報を共有したりするために作成するお知らせ・手紙のことで、基本的に月1回など定期的に発行します。また、おたよりにはさまざまな種類があり、クラス担任をもつ保育士の場合はさらに「クラスだより」を作成することもあります。

おたよりを作成するうえで最も悩みの種となるのが、「書き出しの文章はどうすればよいか」「読みやすい構成にするにはどうすればよいか」の2点でしょう。

なるべくスムーズにおたよりを作成するためには、「季節感のあるあいさつ文を取り入れる・普段からおたよりに組み込む話のネタを溜めておく・テンプレートやイラスト・写真を用いる」の3つがポイントです。また、おたよりの作成業務を初めて担当する新人保育士さんは、先輩たちが作成した前回までのおたよりを参考にするのもよいでしょう。

保育経過記録

保育経過記録とは、保育日誌・連絡帳などをもとに、一人ひとりの園児の出来事や成長などを個別に記録した書類のことで、「児童票」「個人記録」などとも呼ばれています。「健康・生活に関する情報」「人間関係」「感性・理解力・表現力・運動能力」「家庭との連絡事項」など、子どもの発達に関わるあらゆる項目を記録します。

保育経過記録は、後から誰が読み返しても問題なく引き継げるよう、具体的にかつ分かりやすく書くことが大切です。また、保育日誌と同様に情報整理がされていなければスムーズに作成するのは困難となるため、保育活動中に子どもたちの様子を観察しながら、成長を感じた部分をメモにとっておくとよいでしょう。適宜、単語や箇条書きを活用するなどして、より読みやすくすることもポイントです。

【関連リンク】
【年齢別】児童票の書き方!保育経過記録を書く4つのポイント

書類仕事の見直しで保育士の業務負担を軽減!

近年では、保育士不足が全国で目立っています。厚生労働省が発表した調査データによると、保育士の離職率は9.3%でした。そのうち、退職理由として「仕事量の多さ」「労働時間の長さ」を挙げた方は多くいます。

保育士の退職理由ランキング
1位 職場の人間関係(33.5%)
2位 給与の低さ(29.2%)
3位 仕事量の多さ(27.7%)
4位 労働時間の長さ(24.9%)

(出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」/ https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

IT化が著しく進む近年、書類業務を自動化する企業も増加しました。しかし、保育業界ではすべて手書きで書類作成を行う保育園や、昔ながらの運営方針から変わらない保育園も珍しくありません。このような職場の場合、業務量の圧迫によって残業や持ち帰り仕事が発生する可能性も十分にあるでしょう。

保育士業務改善のためには、書類仕事の見直しがまず重要です。ここからは、保育士の業務負担を軽減させられる書類仕事の見直し方法について詳しく説明します。

記録・書類業務の見直し・工夫

保育士は、目的の異なる多くの書類を作成する必要があります。しかし、具体的な目的が異なる書類同士で、似たような内容を記入するケースは多々あるのではないでしょうか。

保育士の書類作成業務の負担を軽減させるためには、日頃から作成している書類がすべて「本当に必要なのか」をまず見直し、効率化を図れないか検討することが重要です。

保育士が作成を担当している書類を洗い出し、目的・記入内容はもちろん、その書類を作成することによってどのような効果が得られているかを明確にしましょう。たとえば、他に作成している書類と同様の内容が記されており、作成による効果もさほど大きくない書類は、見直しの必要性がある書類といえます。

ただし、「削減」のみを見直しの目的にすると、保育そのものの質が落ちるおそれがあります。そのため、書類ごとの目的をきちんと精査しながら進めることがポイントです。

(出典:厚生労働省「保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000763301.pdf

ICTの活用

保育士が行う書類作成の業務効率化を図るためには、ICTシステムの導入・活用もおすすめです。

保育士が作成すべき書類は、多岐にわたります。作成業務だけでなく、書類を管理するためのスペースを確保したり、書類を整理したりする時間も必要となるでしょう。ただでさえ多忙な保育士にとって、書類管理・書類整理のイレギュラー業務はさらなる負担になりかねません。

しかし、ICT化によって入力・修正作業を大幅に効率化できるだけでなく、各種類の膨大な書類を一括で管理でき、書類を探す手間や整理をする手間も省けます。職員同士での共有も容易となり、各書類の進捗状況も簡単に把握できます。書類作成・管理業務にかかっていた時間が短縮すれば、結果としてメインの保育活動により集中できるようになるでしょう。

(出典:厚生労働省「保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン」/ https://www.mhlw.go.jp/content/000763301.pdf

まとめ

保育士は、保育指導案や保育日誌、連絡帳、おたより、保育経過記録など、日々多くの書類を作成する必要があります。加えて、これらの書類は適切に管理しておかなければならず、業務負担が重くなる大きな要因といえるでしょう。

書類作業が原因で、仕事に対して前向きになれない場合は、積極的に見直し案を検討することが重要です。また、パソコン上で書類作成・管理業務が行え、かつ保育士同士での共有が容易となるICTシステム導入の提案もおすすめです。

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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています